おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第62話

 

 

「おっちゃーん!」

「……」

「……ッ」

「サ……師匠!」

 

ナルトがマダラに手を振りながら駆け寄ってくる。

マダラはナルトを視認すると、僅かに身をかがめた大人のサスケに寄りそうボルトを見た。

 

「入れ替わったのはお前の力か」

「……」

 

答えは返ってこないがマダラはそれを肯定と受け取る。

見たことのない力だが、身代わりの術に近しい何かなのだろうか。分析するには状況が状況だ。何度も使えるような術ならばいいが、サスケの表情に余裕はなくかなり消耗しているようだ。

 

「にいさ、タジマー!敵!アレ!」

「おっちゃーん!アレェ! 敵アレ!」

 

サスケの様子を観察していたマダラの耳に、イズナとナルトの声が届く。振り返りみれば彼らが指さす先には、片目を抑えながら怒りに表情が歪んだ白い男の姿が一人。

身を屈めていた大人のサスケが一つ深く息を吸った後、背筋を伸ばした。

 

「……タジマ、アレの目をうちはイズナが潰したが油断するな」

「アレがお前らが以前も苦戦した相手、ということか。なるほど、あれが 大筒木……」

「おっちゃーん!イズナの兄ちゃんなんだけど!」

「うわ待ってナルト!今それはまず」

 

ナルトがマダラに訴える。

ナルトの言葉にマダラはイズナを見やると、イズナの手の平に付いた血と布が裂けた脇の部分から怪我の箇所が見え息を呑んだ。

 

「俺のこと庇って怪我して」

「ナルト!よりにもよってタジマに言うなって」

「タジマさん!イズナさん、私たちの為にすごい無理してるんです!」

「おっさん、コイツ俺の見立てじゃ痛みを止めるために幻術かけてるはずだ」

「サクラとサスケまで! えっと……」

「……」

 

イズナはサスケの口を塞ごうとするが、手が汚れているため体の前で手を握りしめると引っ込めた。

マダラがイズナに一歩近づく。幻術を解かれる、そう思ったイズナが身を引いた時、ウラシキの方から大きなチャクラの波動を感じた皆は空を見上げた。

先ほどイズナが潰したはずのウラシキの左目が、いつの間にか回復している。

 

「お、おっちゃん……アイツ……」

「……」

 

マダラがウラシキを見上げる。

陽の光を背に宙に漂うウラシキの表情は、不気味なほど暗い。

 

「師匠、まさかアイツまた自分の目を」

「……その前に片付けるぞボルト」

 

ウラシキが何をしようとしているのかわかっているのか、ボルトとサスケが頷き合った。目をどうするつもりなのか。

ウラシキが次の行動を起こす前に、そうボルトとサスケが駆け出した。

すかさずイズナも追撃する。

 

「イズナさん⁈ 大丈夫なのか⁉︎」

「なんか知らないけど奴に勝手させたらまずいんだろ!」

「そ、そうだってばさ! 弱いうちに叩き潰さねぇと!」

 

ボルトが手の平にチャクラを集中させる。その小さな手の中には次第に風のようなものが集まり、一つの渦を巻いた玉が現れる。

 

「螺旋丸!」

 

「⁉︎ アレって、俺がエロ仙人から教わった……」

「……螺旋丸か。お前のより出来がいい」

「おっちゃん⁉︎ 俺だってちゃんと練習してんだけど!」

「練習な。ならば一発くらいかましてこい」

「言われなくてもそうするつもりだってェの!」

 

ナルトがボルトの後に続いた。

ボルトの攻撃をかわしたウラシキが地上に降り立った時、ナルトはすかさず後ろから狙った。

また螺旋丸かと思ったウラシキは呆れたように振り向くが、そこには誰もおらずはてと目を瞬かせる。

 

「ーーはァ?」

「こっちだぜ!」

「!」

 

突如ウラシキの頭上から声が響いた。

空には枯葉が数枚舞っている。その中の一つがウラシキの方へひらりと舞い降りながら煙を立てると、そこから人影が現れた。ナルトだ。その片手には先程ボルトがウラシキに放った物より大きな、青く光る渦の玉があった。

 

「ーーそこからだと⁉︎」

「螺旋丸‼︎」

 

ウラシキはナルトの螺旋丸をくらい地面に叩きつけられるが、すぐに身を起こすとナルトの首根っこを掴もうと腕を伸ばす。だがその腕はイズナにより阻まれ、ウラシキとナルト達は再び互いに距離を取った。

 

「よくも……よくも……」

 

怒りが頂点に達したのだろう。ウラシキからは禍々しい気配が感じ取れる。釣り竿を握り、それを乱雑に振り上げる。地面に無造作に叩きつけるが、竿の動きを見切ったイズナと大人のサスケがウラシキへと間合いを詰めていく。

サスケの刀が、イズナの持つクナイがウラシキの首元へと迫る。捉えられる、そう思ったのも束の間、ウラシキは二人の動きを読むと空中に旋回し避けた。

イズナの背後に赤い釣竿の先が鋭く迫る。身を翻し避けるが、思ったよりも伸びていた釣り竿の先端に少しかするかとイズナが微かに表情を歪めたその瞬間、強く肩を引かれ長い黒髪が前に飛び出していくのが見えた。

 

「!ーーにいさ」

 

イズナが先程までいた地面を釣り竿が深く抉る。

その間にマダラが振り翳した拳をウラシキは難なく受け止めた。マダラはもう片方の拳も繰り出すが、それも受け止められると持ち前の体の柔らかさで身を捻り足蹴にする。

 

「おっちゃん、入った!」

 

ナルトの期待をはらんだ驚きの声が響く。

最初の頃よりは着実にこちらの攻撃がウラシキに届いている。このままいけば倒せるのでは、そうナルトは胸の内で思った。

だがマダラがウラシキに蹴り飛ばされると、ナルトはきゅっと口を結んだ。

 

「タジマさん!」

 

サクラの悲鳴に近い声がマダラを呼んだ。

マダラとのもつれあいで汚れたウラシキがやっと生まれた隙に今度こそはと震える手を片目に添えると、一息置いてからその目を抉り取った。

嫌なしめった音が全員の耳に届く。

ウラシキはそれを口元に運ぼうとするが、その動きを待たずして淡く光る青い光の剣のようなものがウラシキを薙ぎ払った。

大きく舞った砂埃の中、どさりと地面に落ちる重い音が聞こえた。

何が起こったか理解できなかったボルトが、目を見開きながら周囲を見渡した。

 

「……え、あ……えええ⁉︎ タジマのおっちゃん、今のって⁉︎」

 

服についた砂を払いながらマダラがナルト達の元に歩いて来た。

その顔は少しばかり不満気だ。

 

「何をぼさっとしている。動けるなら動け、お前らも」

「あ、はい。確かに、ウラシキも目に集中してたし……」

「おっちゃん。俺たちはおっちゃんみたいになんか伸ばしてドガッてできねぇってばよ」

 

ナルトがマダラに抗議する。

ボルトは額に滲んだ汗を拭いながら、ウラシキが飛んで行った方へ目を凝らす。

 

「これでもう流石にウラシキも……!」

「な⁉︎ おっちゃんのアレくらってまだ動けんのかよ⁉︎」

 

あの一撃で無事ではないだろう、そう思ったボルト達だがウラシキが飛んでいった場所から動く音が聞こえると緊張感を高めた。

 

「倒しても倒しても復活されたら意味がねぇってばよ」

「……タジマ、あれはあるか」

「……ない。カカシに持たせた」

 

大人のサスケからの問いに、マダラは首を横に振った。

砂埃が晴れると、再び宙に浮いたウラシキが全員の前に現れた。その姿は先程とは変わり、黒い刺青のような模様が顔面の中央を走り、そして鳥の羽のようなものが顔の横に広がっていた。

 

「! アイツ、やりやがった! しぶといやつだってばさ、ウラシキのヤツ!」

「その言葉、そのままあなた方にもお返ししますよ……ククク」

 

ウラシキが真っ直ぐにナルトを目掛けて下降する。サクラとそのそばにいた少年の方のサスケがナルトの腕を引き遠くへと駆け出した。ウラシキが追いかけようとするのをマダラとイズナが間に入り止める。

ウラシキの手刀がイズナの脇腹に鋭く入った。

 

「……グッ」

「おやおや、そんなに動いてて大丈夫ですかァ?」

「……ッ、言ってろ」

 

イズナが印を結ぶ動作をする。ウラシキがニヤリと笑みを浮かべマダラから手を離しイズナに向かい再び拳を振り上げようとしたその時、イズナが大きく息を吸った。

 

「今だ、兄さん‼︎」

 

イズナが低く身を落とす。

その後ろには万華鏡写輪眼に切り替えたマダラが控えており、いつのまにか印は結び終え火遁の術が今まさに放たれようとしていた。イズナもマダラに続いて同じ印を結んだ。

 

火遁 豪火球の術

 

大きな炎がウラシキを挟み込む。

だが中から悲鳴は聞こえない。

 

(逃げたーー!)

(逃げたかーー)

 

イズナもマダラも周囲の気配を探り、ウラシキの行方を追う。

濃い煙の中、空気の揺らぎを見つけたイズナはその奥へクナイを投げつけた。当たる音はせず、瞬時に何かがイズナに向かって返された。先程投げたクナイだ。イズナが避けると同時にウラシキの腕が煙の中から伸ばされた。イズナが避けるよりも先に、マダラがウラシキの腕を掴み上げ遠くへと投げ飛ばす。

 

「ッ!」

「……どこを見ている、馬鹿めが」

 

苛立ったウラシキが上半身の筋肉に力をこめ腕を振りマダラを捻り潰そうとするが、ウラシキの動きよりも早くマダラは背後に回り込むと全身に光の鎧を纏い、その光から伸びた剣でウラシキを地面に叩きのめした。

ウラシキは呆然とした表情で地面に伸びた状態のまま、更に光の剣を振りかざそうとしているマダラを見上げた。マダラの赤い写輪眼に冷たく見下ろされる。

 

「ガハッ……ナゼ‼︎」

「……」

「まさかアナタも……ッ」

「……さあな?」

 

ウラシキに暗い影が落ちる。このままではーーそう思いウラシキは起き上がり抵抗するが、その背後を切り付ける何者かがいた。大人のサスケだ。鋭く磨がれた刀の刃がウラシキの肩を深々と切り裂いた。

 

「油断したな、ウラシキ」

「……こんなことで、ワタクシがァ!」

 

ウラシキはサスケから距離を取る。その間にもマダラは剣を構えており、

 

「兄さん!」

「ああ」

 

「ーーッ」

 

無情にもウラシキにその刃は振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

辺りには地面が抉られたことにより大きな砂埃が舞った。

轟音が聞こえなくなった後、サクラは視界が悪い中二人の名前を呼んだ。

 

「ゲホッゲホ……サスケくん、ナルトォ!」

「ゲホゲホゲホ、俺は大丈夫サクラちゃん! あとサスケも隣にいるってばよ!」

「よ、よかった……イズナさんは」

「ここにいるよ……ゲホゲホゲホ、こりゃひどい。俺も大丈、ゲホゲホ……じゃないや、ゲホッゴホッ」

「イズナさん! どこですか⁉︎ いま」

 

咳き込む声が聞こえたサクラは、何か吐き出される音を聞くとイズナの声を頼りに走り出そうとした。

ナルトとサスケもまずはイズナの元にと動こうとした瞬間、彼らにとって馴染みのある声が聞こえてきた。

 

「……これは一体。おーい、ナルトォ!タジマさーん! いますかー!」

 

「⁉︎ この声って……カカシ先生じゃねぇ⁉︎」

「ああ、だな。ぜんっぜん、見えねぇけどな」

「カ、カカシ先生ー!」

 

マダラと別行動をしていたカカシがこの場に合流したらしい。

イズナの様子が気がかりなサクラが声を張り上げる。声を聞いたカカシがサクラ達の元に駆け寄ろうとするが、それを止める影があった。

 

「何者だ⁉︎ グッ」

「……ククク、天はワタクシに味方したということです……! これで遡れば!」

 

カカシのくぐもった声と、張りを失ったウラシキの声が聞こえた。疲れを感じさせる声音に、先ほどのマダラの攻撃はウラシキに通用していたことが判明する。だが倒しきれていなかった。

 

(そんな、カカシ先生ーー)

 

まさかカカシがやられたのか、そう思ったサクラがガクリと膝を落とすがその後に聞こえた声にはてと首を傾げることとなる。

 

「あ、それは……!」

「ククク、ハハハハハ! これまでのあなた方の抵抗も無意味に……ンン?」

 

ウラシキの笑い声が頭上へ移動したと思った頃、サクラ達の上空から聞こえて来たのは大きな爆発音であった。

先程のマダラの攻撃よりも大きな音が里の外れに響く。

爆発はしばらく続き、そしてその爆風で周囲の煙は晴れ、砂埃に汚れたマダラ達、そして何事かよくわかっていない呆然と突っ立っているカカシの姿が現れた。

 

「カカシ」

 

マダラがカカシの元にゆっくりと近づいていく。

 

「タ、タジマさん、敵は」

「……いま爆発した」

 

カカシは自身の両手を見つめた。何者かに奪われる前、カカシの手には丸い包みがあった。マダラがアパートで用意した、起爆札が詰め込まれた包みだ。

奪われる、そう思い咄嗟にチャクラを流したがその直後に大規模な爆発が頭上で聞こえた。まさかーー

 

「さっきのは……まさか」

「起爆札で処理できるなら、初めからもっと用意しておけばよかったか」

「え、じゃあ敵って」

「爆散した」

「爆散、した……?」

 

よくわからないが、合流した途端敵は居なくなったらしい。

カカシの背後から数名の人影が現れた。火影に依頼した救援だ。マダラの監視役の忍もいる。ゾロゾロと集まったものの、つい先程までカカシが持っていた包のおかげで戦いは終わったが。

 

「カカシさん、報告にあった不審人物とは……」

「もう終わったみたい……? 火影様の指示通り、あとはこの周辺の隠蔽処理を頼んだ」

「は、はあ」

 

強敵が待ち構えているものと思っていたカカシも、これには拍子抜けだ。自身が持っていた起爆札の塊でどうにかなるとは想像もしていなかった。

カカシが応援の忍達にそう伝える側で、視界が鮮明になった事でイズナの位置を視認できたサクラ達が傷口を抑えながら立つイズナの元へと駆け寄っていた。

 

「イズナさん!」

「イッ……はぁ。さっきの爆風、カカシがアイツを爆散させたって?」

「らしいな。おい、大丈夫かよアンタ」

「ああサスケ、大丈……ッ」

「イズナさん!」

「! おいカカシ! 怪我人がいんだ!」

「何⁉︎ イズナさんか!」

 

イズナの体がぐらりと揺らぐ。

かけていた幻術がいつの間にか解けていた。

倒れる、そう思った時イズナの体をマダラが支えた。

 

「ッ……に、さ」

「……カカシ、ここに医療忍術ができる忍は?」

 

マダラの声は落ち着いている。だが普段と比べても、恐ろしい程落ち着いているように聞こえた。まるで声の震えを隠すように。

ナルトは、マダラがイズナを支える手に力を込めたのを見た。

 

「あちらに医療忍者が。すぐに病院へ運びましょう」

 

カカシが周辺の状況を記録取っていた女性の忍を一人呼んだ。

辛いのか、イズナの口数は減っていく。サクラとサスケがイズナに声をかけ続けているが、反対にマダラは静かにイズナの身体を支え続けているだけであった。

 

マダラ達の様子を、応援が来る前に木陰に身を潜めた大人のサスケとボルトは静かに見守っていた。

 

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