おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第71話

 

マダラの元いた時代に来てから何日か過ぎた。

サスケはというと、ヒカクの家とマダラがいる屋敷を行ったり来たりしていた。

ヒカクの養子という扱いにはなったが、居候先は初日に放り込まれた部屋のままだった。場所を移動した方が良いのではないかと話はあったが、向こうも家庭を持っている事と屋敷の部屋も余っている事から好きに選べと言われ、サスケの希望で滞在先を変えることは無くなった。ヒカクの家を出入りしているのは、やることが無い間は家事の手伝いを任されたからである。

 

地面の砂を蹴る音が鳴る。

ここ数日はヒカク同行の元、サスケは里の中を歩き回っていた。あまり知らない町並みが続いたが、時々知った名前の店が目に入る。見覚えのある名前の店は、確かにサスケの記憶の中でも老舗の一つだったと思い出す。

時々ヒカクが周囲への挨拶を交えながらサスケを案内するが、特段盛り上がるような会話は二人の間にはなかった。

少し退屈だと、サスケは周囲ではなく前を歩くヒカクの背中を見上げた。マダラよりは線は細いだろうか。だが忍びとしては十分に鍛えられた体付きだ。

 

(こいつもおっさんとイズナの奴みたいに戦に出てたんだよな……。そういやおっさんてどこにいるんだ? 最初の日以外、全然捕まらねぇ)

 

「……おっさん、どこ行ってんだよ」

 

道すがらサスケが愚痴をこぼすとヒカクにすぐさま叱られた。

 

「こら。おっさん、ではないでしょうが。まったく」

 

四年ぶりに元の時代とやらに戻った事もあってか、マダラは日中はどこかへ行っているようだった。サスケも二日目からは基本的にヒカクと行動しており、マダラと共にいる時間は少なかった。

 

「戻ったばっかだろ。そんなにやる事あるのか?」

「あの方もあの方で色々……いいかサスケ、こちらもあなたをいつまでも客人扱いするわけにはいかない。明後日からは簡単な任務からでもこなしてもらうつもりだ。迷わないように、早く里の中を覚えなさい」

「……」

「返事は? これだから最近の子は……やれやれ」

(……いつの時代でも言われてるのな、その言葉)

 

返事をしなかったサスケにヒカクはため息をつきながら項垂れる。最近の子はと言うが、サスケはヒカクよりも未来の時代を生きていた人間であるが。

 

周囲の景色が変わり、ある場所に差し掛かったところでサスケはある建物に目を留めた。ヒカクは一度サスケを見下ろした後、視線の先の建物を見た。

 

「ああ、ここは……アカデミーか。もう少し幼ければ通わせようと思っていたが」

「アカデミー……」

「……気になるのか?」

「……別に」

 

サスケが通っていたアカデミーよりも屋根やら壁やら少し綺麗に見えるが、中から聞こえてくる賑やかな声は変わらないものであった。教室や庭からは、声変わりのしていない声が聞こえてくる。サスケも一年程前までは通っていた。

 

「行くぞ。午後も共に、今度はうちは地区を回る予定だからな。あまり悠長にはしていられない」

「……ああ」

 

促され、サスケは名残惜しさを感じながらもアカデミーを後にした。

 

サスケはただヒカクの側について里を歩く。

里中をまわりにまわった後で、今度は顔岩の下に辿り着いた。岩肌に浮かび上がった顔は、この時代ではまだ一つだけ。

 

「この辺りからなら眺望もいい。今までに歩いてきた場所は覚えられたか?」

「……」

「返事は返しなさい。サスケ、どうなんだ?」

「覚えた。複雑な道でもない」

「……それならいい。はぁ」

 

サスケの態度に先が思いやられると、ヒカクは本日何度目か忘れたため息をまたついたのだった。

 

 

 

 


 

サスケ達が里中を歩き回っている頃、マダラは里の中心部からは外れた道を歩いていた。記憶にある景色と比べながら歩いていると、進行方向の奥に柱間の姿を見かけた。こんな所で何をしているのかと尋ねようとした時、反対方向から扉間が有無を言わせぬ表情で近づいて来るのが見え足を止めた。

弟の存在に気付いていないのか、柱間はマダラの方を振り返った。

 

「! そこにいるのは……オーイ、マダラァ! お前もここで何をーー」

「兄者ァ! こんな所にいたか」

「⁉︎ と、扉間! 誤解ぞ! 決して俺はサボっていた訳ではない! のぉ、マダラ。マダラは信じてくれるはずだ、なぁ? なぁ!」

 

そうは言われても、マダラも今しがた見かけたばかりなのだが。

ビクビクと震える柱間に、マダラは静かな声で告げた。

 

「ああ……こう言う時、先に弁解しようとすると余計に疑われるんだったな」

「マ、マダラァ! 本当だ! 俺は、本当にサボってなどいないのだ!」

「柱間、サボりかどうかは知らんが早く後ろを見ろ」

 

そう言われた柱間が振り返ると、すぐ背後に佇む凄んだ表情の扉間に肩が大きく跳ねた。そして冷や汗を垂らしながら、困ったように眉尻を下げる。

 

「と、扉間よ……急にいなくなったのはすまんかった。だがどうしてもこればかりは俺でもどうしようもなく」

「兄者、それは公務より優先すべき事か? それは一体なんだろうな。マダラ、お前もこんな所で何をしている」

「変わった景色がないか里を回っていただけだ。暫く忙しなかったからな。後であるお前らとの打合せは忘れてない」

「本当にサボりではないぞ……。おおそうだマダラ、うちはの方は大丈夫なのか? 引継ぎが上手く行っていないようで難儀していると小耳に挟んだが」

「……なんとかやっている。で、お前はこんな所で何をしてたんだ。何はともあれ、さっさと戻ってやれ。わざわざソイツが探しに来るくらいだからな」

 

マダラと扉間の目が合う。

これまでの経験からか、扉間がマダラの顔を長く見ることはない。そもそも見つめ合うのも気分がいい物ではない。今回はマダラの方が先に視線を外した。

 

「……行くぞ兄者」

 

柱間が弟に引き摺られていく様を見送る。

この先にある場所は先日すでに見て回っている。マダラは踵を返すと、二人の気配がすぐに消えたのを感じながら来た道を戻った。扉間がよく使っている術で飛んだのだろう。

ゆっくりと道を歩く。

空に流れる雲が太陽を隠した時、視線を地面から正面に上げた。

 

(……それにしても、柱間は何故あんなに弁解しようとしていた? サボりだとすれば火影の自覚がなさすぎやしないか。本当の理由はなんだったんだか)

 

用事があったのならそう言えばいいではないか。マダラもいたのかと気づいた時の掛け声といい、柱間にとってはまるで本当に何かあったかのようだ。やましいことをしていた可能性もなくは無いが。マダラはナルトがコソコソと何かやっていた時のことを思い出した。

 

(急に慌て出す時は大抵何かある……後で聞くとするか。どうせまた会う)

 

理由を知る人物はすでに姿はなく、後で確かめればいいと引き続き時間が来るまで里内を回ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

そろそろ待ち合わせ場所に指定された火影塔の近くにでも行こうかと歩いていると、マダラの向かっている先からヒカクとサスケが歩いてくるのが見えた。向こうも気付いたのか、二人とも目線をマダラに向けている。側に来るなり、ヒカクが先にマダラに軽く頭を下げた。

 

「今日も二人で回っているのか」

「はい。午後からはうちは地区に戻りますが」

「そうか」

「おっさん」

「こら」

「おっさん、こんなとこで何してんだよ。忙しいんだろ?」

 

ヒカクに呼び方を咎められるも効果はなく、サスケはいつも通りマダラに話しかけた。

 

「俺も里を見て回っていた。これから柱間……火影と例の事象に関しての打ち合わせがある。なんだその顔は、暇してると思ったか?」

「暇だろうが何だろうが、その辺うろついてても別におっさんの自由だろ……例の事象?」

「俺やお前が巻き込まれた、いや巻き込まれているというのが正しいか。その件だ」

「俺抜きで? 呼ばれてるのはおっさんだけなのか?」

「こら、サスケ。何度言ったらこの子は。舐めた態度を取るのはやめなさいと何度も何度も」

「ヒカク、諦めろ。無理だ。サスケのそれは俺以外に対しても常にそんなんだ。面倒見てもらってる上司に対しても変わらん。矯正するより、諦めた方が早い」

「はぁ、最近の若者はこれだから……」

 

ヒカクの深いため息がサスケ達の耳に響いた。

おっさん呼びをやめさせたとて、今度はカカシのようにマダラも呼び捨てにされるだけだ。それはそれでヒカクにとっては問題だろう。

 

「その件についてはそのうちお前も呼ばれるかもしれないがな。今日のところはヒカクと里内を歩き回っていろ」

「大体の構造は同じだろ。方角さえわかれば迷わねぇよ」

「フン、迷っても誰も助けないからな」

 

マダラはここ何日かまともにサスケを見ている時間がなかったが、いつもと変わりなさそうである。

慣れない場所で気がまいっているかと思ったが、自信がある様子からして杞憂だったようだ。

 

「さっさと道を覚えろ。そうすれば任務でもなんでも出来るようになる」

「俺はここで働きたいわけじゃ」

「いつまでもタダ飯を食わせる程俺もヒカクも優しくはないぞ。働くんだな」

「おっさんもこの間までアイツんとこの居候だったくせによく言うぜ」

 

サスケのマダラへの返しも通常運転だ。

ヒカクは顔を引き攣らせながら二人のやりとりを見守っている。

マダラとサスケの視線が真っ直ぐにぶつかる。負けじとサスケはマダラから目を離さなかった。今の里の地理などすぐに覚えてやると、サスケの目はそう語っていた。

 

 

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