菜花黄名子を曇らせたい!   作:わらしべいべー

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自分で書いててコイツ外道だなって思い始めました。


【前回あらすじ!】
・オレはザナークだぁー!!ちゃあぁーーーッ!!
・ハハッ★夢の国に招待してあげるよ!(甲高い声)
・ジュラシックワールドin雷門





あすれい

 

 

 

 

 

 

 

 

 菜花黄名子は今から数年後にアスレイ・ルーンと出会い、やがて子を授かる。その子供こそがフェイ・ルーン。今黄名子の目の前にいる少年だ。

 

 黄名子はフェイに己が隠していた真実を全て話した。自分がフェイの母親であることも、アスレイとの関係性も、なぜここに来たのかも。

 アスレイ同様、今しかないと思った。互いに心の内側を告白する場は。今この時しか。

 

「………」

 

 フェイは顔を俯けて沈黙している。…やはりショックだろうか。唐突に仲間としていた存在が自分の親だったなどと言われれば言葉も失うのも無理はない。

 しかしここで手を緩めるわけにはいかない。ここでフェイの内心を知らないといけない。彼の本心を。

 

「…ウチはね、アスレイに頼まれてあの時代にフェイを見守りに来たの。…フェーダのボスの命令で雷門の皆んなに取り入った貴方を」

 

 沈黙。フェイは表情を影に落として何も語らない。

 

「貴方はずっと前にアスレイの前から姿を消して、フェーダに入った。…生まれつきのセカンドステージ・チルドレンだったから」

 

 沈黙。

 

「でもっ、ウチは考えられない!フェイが姿を消した時にはまだフェーダは発足すらしてなかった!」

 

 フェイは当時5歳。フェーダがまだ形すらなかった頃に、自発的にフェーダのために行動するなどあまりにも不自然だ。…ならば別の第三者の干渉があったと考える方が自然だろう。

 何かがあったのだ。セカンドステージ・チルドレンの力に目覚めたあの時に、彼の運命を変える何かが。

 

「教えてフェイ!どうしてフェーダなんかに入ったの!?なんで急に家からいなくなっちゃったの!?──あの時貴方に何があったの!?」

 

「……」

 

「フェイ!!」

 

 黄名子は焦っていた。フェイに何があったのか、フェイが何を隠しているのか。…そして結局フェイはどちらなのか。洗脳されているのか?本心なのか?

 痺れを切らした黄名子は俯いていたフェイの襟を掴んでその表情をあらわにする。

 

「…!?」

 

 フェイは泣いていた。ボロボロと大粒の涙を溢しながら、黄名子を見ていた。

 

「ふぇ、フェイ…?どうしたの!?どこか痛いの!?」

 

「………知ってたよ」

 

「え?」

 

「知ってたんだよ、最初から。黄名子が僕のお母さんだってこと」

 

「───」

 

 黄名子は絶句する。まさか最初から見抜かれていたとは思わなかった。アスレイも同様に驚愕の表情を浮かべている。

 

「なん、で、どうして…」

 

「…フェーダに入ってから間もない頃に調べたからね。今のご時世、少し調べれば経歴付きで簡単に出てくる。…だからビックリしたよあの時は。写真で見た子供の頃の母さんと瓜二つの人が雷門に入ってきたんだからさ」

 

「……」

 

「それでその後ちょっと調べたらすぐに気付いた。君が過去の母さんだって。…元々はいなかった顔も名前も母さんと同じ人が突然タイムルートに出現するなんて不自然だからね」

 

 …つまり、つまりだ。フェイは最初から自分が母親と理解していながら接していた。

 フェイを心配しにいった時も、人形を奪われて落ち込んでいた時も、ずっとずっと、母親だって気付いていて───

 

「…君が無理をしてるってことは気付いていた。確かに菜花黄名子は僕の母さんかもしれないけど、それはもっとずっと先の話だ。…今の君にそんな重荷は大変すぎるでしょ?」

 

「……ッ!」

 

「心配してたんだ。無理してるんじゃないかって、自分に言い聞かせてるんじゃないかって。ずっとずっと心配してた」

 

「ぁ、あぁ…!」

 

「だから嬉しいんだ。こうしてちゃんと本心で話してくれたことが。泣いちゃうくらいに」

 

「ああぁ…!!」

 

 何がフェイを見守るか。心配されていたのは自分の方ではないか。

 フェイがどのような形であれ、自分をここまで想ってくれている。その事実が黄名子にとって何よりも嬉しかった。

 黄名子は力いっぱいフェイに抱きつく。

 

「ヒュッ」

 

「ごめんねぇ、ごめんねフェイ…!こんな弱いお母さんで…!」

 

「キッ、黄名子はちゃんと決断して僕のところに来てくれた。僕と同じ歳で親になる選択をした。それだけでも偉いよ。僕は嬉しい。…こんなにも、愛されてたんだなって」

 

「うぐぅ…フェイぃ…!」

 

 遂には泣き出してしまう黄名子。それをフェイは優しげにあやす。

 そんな2人に気を遣いながらも、アスレイが近づいてくる。

 

「…フェイ」

 

「…やぁ、一応、父さん…なんだよね」

 

「ああ。……フェイ、お前は洗脳されてないのか?」

 

「洗脳…ああ、ラビットマンのことか。うん、僕は洗脳されてないよ。自分の意思でここに来た。…それはその持ってる機械が証明してるよね」

 

「……!」

 

 アスレイが隠し持っている機器。それは簡単に言えば洗脳状態の人間を見抜けるものだ。いざとなれば無力化をして洗脳を解くつもりだったのだが、機器には何の反応もない。

 

「ならば、どうして私の前からいなくなったんだ」

 

「…誘拐されたからだよ」

 

「誘拐、だと?」

 

「…セカンドステージ・チルドレンは元々人類の正当な進化として研究が進められてた。寿命の問題が発覚するまでは沢山のセカンドステージ・チルドレンは強制的な研究対象となってた。どこからかその情報を知った研究者に僕は拉致された」

 

「…待て、だが当時はまだSSCの研究は行われていなかったはず…」

 

 アスレイはエルドラドの幹部だ。フェイを探していた当時に、そんな情報が入ってたのならば見逃すはずがない。当時血眼になって探していたのだから尚更だ。

 

「どんな時代にも政府の裏を掻こうとする人間はいるよ。…一足先にセカンドステージ・チルドレンの存在を知った反政府の組織が政府撲滅用の兵器として運用しようとしていた。僕はそこに研究対象として拉致されたんだ」

 

「そんな…まさか…!ではフェーダは…!」

 

「うん、フェーダはそこから脱走した子供達の手で組織された。そんな世界ばかりを見てきたから、SARUたちは世界を、今の人間を恨んでいる」

 

 未だその反政府組織は表向きにはなっていない。いや、なるはずがなかった。彼らのデータ資料、痕跡などの証拠も含めて当時のSARUたちが全て消してしまったから。

 SARUたちは自分たちの過去を語らない。それが忌々しい物だと理解しているからだ。故にこの情報はアスレイも初耳のものだった。

 

「…けど僕はそうは思っていない。確かに僕らは研究で酷い目にはあったけど、だからと言って今を生きる人たちを淘汰するのは間違ってるって思う」

 

「フェイ…」

 

「だから僕はSARUの提案に乗ったんだ。サッカー抹消による自分たちの存在消失の防止。フェーダにある記録映像で見た彼らなら、雷門なら、イナズマイレブンなら!SARUたちを止めてくれるかもしれないって…」

 

 …確かに短期間にここまでの伸びを見せた彼らならば、近いうちにフェーダたちにも届きえるかもしれない。その可能性にフェイは希望を見出したのだろう。

 

「そしてその予感は当たってくれた。今天馬たちは確実に強くなっている。きっとフェーダの皆んなも止められるって信じてる」

 

「フェイ…お前は…!」

 

「…今まで連絡もしなくてごめんなさい。でも僕はSARUたちを見捨てたくない。みんな助ける方法を探したかった。だから僕は…」

 

 その為にもSARUたちに勘付かれるわけにはいかなかった。SARUたちを助けるにはまずは信用を獲得することが1番大事だから。フェイはそう言いたいのだろう。

 

「…私はずっと間違えていたんだな。お前が心の底からフェーダに入ったなどと勘違いして…」

 

「全然いいよ。むしろそう思うのが自然だと思う。それに父さんが良い感じに話を通してくれたおかげで僕もあんまり疑われずに済んだしね!」

 

「…ははっ、お前と言うやつは」

 

 フェイの笑顔に思わずアスレイは思わず笑みを溢す。自分があれだけ疑りを探っていた裏でフェイは1人で彼らを止めようと動いていた。その事実にアスレイは胸を締め付けられる。

 

「…お前はずっと1人で戦っていたんだな」

 

「…うん」

 

「…すまなかったな。本当に、気づいてやれなくて」

 

「ゔゔ〜、フェイ〜!」

 

「えへへ、ただいま」

 

 その言葉と同時に2人はフェイを抱きしめた。今までできなかった分まで沢山。

 少しばかりフェイは苦しそうだったが、満更でもなさそうにそれを受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上 げ て 落 と す っ て 知 っ て る ぅ ?

 

 

 

 はぁー、黄名子様を騙すのは胸が苦しいですわ〜!とっても辛いですわぁ〜!ギャギャギャギャギャ!!アスレイ?知らんな。

 いやぁ、慣れないことするのはきついなぁ。家族と喋るってこんな感じだよね?ちょっと不安になってきた。ま、疑い晴れたなら結果オーライだけどね、あははははっ!

 

 おっほん。えーはい、ご察しの通り、今語った内容は7割本当、3割嘘です!

 我やフェーダのみんなが反政府の研究所にいたのは本当!でも僕はそこに自分から行ったんだよね〜。

 というのもだ、実は私当時5歳のニケちゃんが拉致されてるところを超ラッキーなことに目撃してしまったのだ!なので咄嗟の判断で拉致担当の兵士さんの前でアシクビヲクジキマシター‼︎して無事誘拐されることに成功!それでサリュー君たちと会えたんだわけである!流石私、判断が早い!

 そこから4年後くらいに十分に力がついたと判断して、サリュー君たちと共に脱走計画を講じてこれを実行!派手な爆発と同時に悪は滅したのだ…。それで流れでフェーダ結成ってね!いやー、フェーダの原作前ってこんなことになってたんだね。おぢさん初めて知っちゃった!

 

 ついでに言うと雷門に皆んなに勝って欲しいのも、フェーダのみんなを最終的には助けたいのも本当である。

 なんだかんだで最後はハッピーエンドが1番だからね!…まぁ、それまでに雷門の皆んなに頑張ってもらう必要性はあるけどね。ウサササッ。

 

 そんなわけで無事修羅場を突破と。まぁ、いずれやることだったし、ここで消化できてラッキーだね!

 これからのことも考えると…ウフフ、涎が止まりませんなぁ!!

 

 さてひとまずアスレイさんを明確な味方につけられたことですし、早めに皆んなのところに助っ人に行きましょか!

 

「…ああ、すぐにタイムジャンプ用のマシンを用意しよう。だが、どうやら彼らは日本の幕末と白亜紀に飛ばされた者の二手に分かれているようだ。どちらに行くんだ?」

 

「うーん…、フェイ、どうするやんね」

 

 ここは二手に分かれるべきだと小生思いまーす!ここには未来の道具もいっぱい!それぞれに助っ人に行けるなら時代間で通話できる通信機器も持って行けそうだからね!

 

「なるほど!流石ウチの子供やんね〜」

 

 アッ、キモチイイッ…

 危うく昇天しかけた…。ちょっとなでなでは反則だと思うんですよ私!

 

「あ、でもフェイと会えなくなるのはちょっと寂しいやんね…」

 

 儂も寂しいよぉ!!

 でも通信機器があるからそれで会話できる!これで我慢しましょう!

 

「うんっ、わかった!じゃあ早速お願いするやんね!」

 

「ああ、だが彼らのタイムルートに干渉するマシンを用意するのには少しばかり時間がかかる。それまで待っていてくれないか」

 

 りょーかい!

 返事を聞いたアスレイさんは優しく微笑んでどっかに瞬間移動していった。

 …さてさてさーて、ちょっと時間もできたことだし、皆んなの様子でも見ておこうかな!デュプリもみんなと接触した頃だと思うし…

 

「ねぇ、フェイ。待ってる間一緒にお話ししようよ。…ウチ、話したいこと沢山あるやんね」

 

 はぁい!喜んで!!

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

「どこなんだここはーーーーーッ!!!」

 

「…五月蝿い」

 

 USAGIによって別の時代に飛ばされたザナークとマント。彼らは雷門の面々とはまた違う時代へと飛ばされていた。

 

「…1903年。比較的最近ね」

 

「チッ、面倒くせぇことしやがって…!」

 

「…一緒に流れ着いたタイムマシンも壊れてる。すぐにこの時代からは出られそうにないわね」

 

「これじゃあ今すぐアイツの所にも戻れねぇか」

 

「まだとう…ラビットマンに挑むつもりなの?」

 

「当然だ。俺はあいつに勝つまでやる。散々俺をコケにしやがって…!」

 

「…大した執念ね。戻っても良くて洗脳がオチよ」

 

 そう、今のままでは実力差が明確なのもザナークは理解していた。だが立ち向かう手が全く無いわけではない。

 

「…奴と戦った時、俺の中から湧き上がる感じたこともない力を感じた。アレを完全に自分のものにできれば、奴をぶちのめせる」

 

 ザナークは直感であの時の力の暴走とこの力が同類のものだと理解していた。この力を完璧にコントロールできればあの忌々しい兎を叩きのめせるとも。

 

「……」

 

「オイ、お前知っているんだろう。この力のことを。思えばお前が来たのも力を与える為だとか言ってたなぁ。それがコレのことか?」

 

「…ええ、そうよ。貴方は生まれ付き選ばれていたの。セカンドステージ・チルドレンに」

 

「あ、なんだそりゃ」

 

「生まれつきの遺伝子異常から生まれた超人的能力を持つ存在…。ザナーク・アバロニク、貴方が他とは違う超人的力を持っていたのも全てはセカンドステージ・チルドレンだから」

 

「……ほぉ、それで、お前もそうなのか?」

 

「ええ、実質的にはそうなるわ」

 

「成る程なぁ。ならぁ!!」

 

「!」

 

 突然ザナークは殴りかかってきた。マントは咄嗟に後ろに退いて攻撃を躱す。拳は地面に激突し、軽く陥没する。

 

「…何をするの」

 

「クク、そう言うと思ったぜ。なに、せっかくお手本がいるんだ。この力のことをご教授願おうと思ってなぁ!!」

 

「ッ!」

 

 そのままザナークはマントへと襲いかかってくる。完全に叩きのめすつもりだ。こちらも真剣に対応しなければまずいだろう。ザナークの獣のような攻撃を捌きながら、マントは呆れの感情を露にする。

 

(父さんから気性は荒いと聞いてたけどここまで馬鹿だなんてね…)

 

 しかし彼のやることも無下にはできないのだ。

 というのも、ここにくる際にフェイから同期で受け取った言伝は、『ザナークを強くして、その時代にある赤い台風とミキシマックスさせろ』だった。

 正直意味がわからない。台風云々もそうだが、そもそも何故この男を強くする必要性があるのか。こいつを強くしてもフェイ自身がやられる可能性が高まるだけだ。

 

(…父さんはフェーダと共に旧人類を淘汰して、菜花黄名子を自分のモノにする為に動いていると思ってた。…けどそれは違う?)

 

 かつて一度だけ、マントは同期の際にフェイの思考を見たことがある。

 一言で言うならばそれは狂気だった。彼の頭の中は菜花黄名子という存在で埋め尽くされていた。あまりにも強く、ショックの大きな情報に、情報を受信した瞬間に数分ほどフリーズした。それほどに膨大かつ強烈な感情。

 読めたのは一瞬のことだったので、それ以上のことはわからなかったが、少なくとも彼の行動原理はあの菜花黄名子という存在に対しての狂気的なまでの執着だ。

 

 男が女に対して強い感情を見せること自体は決して珍しいことではない。

 だからマントはフェイがその黄名子を自分のモノにするために動いていると考えたのだ。…その命を削ってまで。

 

 もちろん今の行動も決して黄名子を手にするのに関係ないとは言えないが、何かが引っ掛かる。フェイの行動が読めない。

 

(…そもそもあの雷門に父さんは必要以上に干渉しすぎている。プロトコル・オメガのサッカー抹消がなくなった以上、大人しく離脱しても良いはずだ)

 

 今回のザナーク・ドメインも含めて強力な実験台は十分にフェーダの元に送れたはずだ。エルドラドが別の動きをしてきたのなら、USAGIとして直接叩いた方が早い。

 それに彼らを別々の時空へと飛ばす行動にも疑念がある。

 他のデュプリと同期しているからわかる。彼らを落とした時代はそれぞれの時空最強イレブンを完成させるために必要なオーラがある時代だ。

 

(何故、父さんがそれを知っている?円堂大介はその場で述べる以外の選手の情報を語っていなかったはずだ)

 

 何か。何か秘密があるのだ。

 誰に対しても口にしたことがないような、重要な秘密とその狙いが。

 だが仮にその秘密があったとしても、今のフェイの行動に整合性がなさすぎる。フェイはどうしたい?勝ちたいのか?負けたいのか?

 

(まさか、まさか父さんはもう既に狂ってしまって──)

 

「オラァ!」

 

「ッ!──ぐふっ!?」

 

 思考に余裕を奪われたからだろうか。ザナークの鉄拳がマントの土手っ腹に入った。マントは2、3歩後退する。

 

「ゴホッ!ゴハッ…!?」

 

「オイオイどうした?避けてばっかでよ。いい加減そのセカンドなんちゃらの力を使いやがれ」

 

「はぁ…っ」

 

 コイツ、さっきから黙って受けていれば調子に乗ったことを言う。あまりの身勝手さにマントの中にある怒りのメータがみるみるうちに振り切っていく。

 

「おっ」

 

 ザナークは即座に異変に気づく。空気が変わった。先程までは瑞々しかったものが、熱く、ひどく乾いたものになる。

 その時、マントの横にあった岩が浮いた。いや、横だけではない。そこら中にあった荒地の岩がまるで重力が逆転したかのように浮き始めたのだ。その一つ一つに明確な敵意がある。

 

「へぇ、なるほどなぁ。そういうこともできる訳か」

 

 瞬間、一斉に岩はザナークへと隊列を成して襲いかかる。ザナークはそれを拳で殴り壊して対処しようとするが…

 

「ッ!硬ぇ!」

 

 明らかに見た目以上の硬度。そのまま岩の蛇行にザナークは飲み込まれる。

 が、ザナークは即座にその硬さに対応。岩の山を突き破って外に出てくる。しかし少しばかりのダメージを負ったのか、多少の血と傷がある。

 

「なんだ、やりゃあできるじゃねぇか」

 

 ザナークは空を見上げる。そこには超能力で浮遊するマントの姿があった。

 そのサイドには刺突武器のような形状の岩があり、その殺意を隠そうともしていない。

 

「…そこまで言うなら貴方のお望み通り殺す気で相手してあげるわ。ザナーク様。精々死なないでね」

 

「ハッ、上等!!」

 

 誰もいない荒野の中、2つの強大なオーラが衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 事故により幕末にミキシマックスのオーラ保持者を探しながら周囲を探索することになった天馬たち一行。

 円堂大介が語るには、この時代にいる坂本龍馬、そして沖田総司が力に該当するらしい。しかしこの広い江戸の地。特定の人物が簡単に見つかるわけもなく──

 

「はっはっはっ!お前ら、今日のは全部オレっちの奢りだからな!がんがん食えよぉ!」

 

「あ、ありがとうございます龍馬さん」

 

 いた。あっさりいた。

 探索を始めて数分後くらいに水田地で転がってきたところを遭遇。そう、この目の前にいるぽっちゃり体型の男こそ。坂本龍馬その人であった。

 どうやら探索前にサッカーをしているところを見ていたらしく、それで興味を持って天馬たちに近づいてきたらしい。そんなわけで、龍馬に気に入られた天馬たちはこうして現在料亭で食事を食べさせてもらっているわけだ。

 

(…まさか龍馬さんが膨よかな体型の人だったなんてビックリだ)

 

(確かに…写真と全然違うなぁ…)

 

 全員が龍馬に対して訝しむ中、錦は1人出された食事に有難くあり付いていた。流石この中で1番無礼講に長けた人物と言える。

 

「美味いぜよ!おかわりありますか!」

 

「おっ、お前中々がっつきが良いなぁ」

 

「ほら、おかわりだ!」

 

「有難いぜよ!」

 

 そう言われて錦は龍馬の隣にいる赤髪の筋骨隆々の男から白米のおかわりを受け取る。

 

「えっと、貴方は…」

 

「おっ、そういや自己紹介がまだだったな!俺はマッチョスって言うんだ!」

 

「マッチョス…って外国の人?」

 

 この時代ではいまだに海外からの入国は難しかった記憶がある。天馬たちは首を傾げる。

 

「コイツ実は外国から来たらしくてなぁ!入国が厳しくて密航してきたらしいんでオレっちのところで匿ってんだ」

 

「み、密航!?」

 

「はっはっは!どうしてもこの国でやりたいことがあってなぁ!」

 

「ご、豪快な人だなぁ…」

 

 そんなこんなで食事を進めながら話を聞いていく。なんでも龍馬は日本を世界に向けて開いた国にしたいという想いがあるようだ。

 しかしその為には権力を持つ幕府を崩さなければならない。なので幕府を守る新撰組とは命を狙われる側にいるようなのだ。実際、龍馬と会った時も新撰組の隊士と思われる人達に斬りかかられていた。

 

「それしてもすみません、こんなにご馳走してもらって…」

 

「いいってことよ!仲良くなれた祝いじゃ!…それに、聞きたいこともあったしな!」

 

「聞きたいこと…?」

 

「おうっ、見たぜあんたら!球を蹴り合って凌ぎ合いをしてたよな!なんて言うんだあれは!?」

 

 龍馬は探索の前に天馬たちがしていたサッカーの練習のことを言っているようだ。坂本龍馬は常に新しいことに目を向けていた。この時代にはまだ浸透していないサッカーも大いに彼の興味をそそったのだろう。

 

「え、はい、サッカーって言うんですけど…」

 

「さっかぁ!!その響きからして、異国の遊びだな!?」

 

「えっと、それは…」

 

「天馬、ここは俺が。…はい、サッカーは異国から流れて伝わった伝統あるスポーツです」

 

「やはりか!しかも伝統もあるときた!これは言えるかもしれないぞ…!」

 

 そう言うと、龍馬は食事の席から一歩下がり、天馬たちに頭を下げた。その思わぬ行動に天馬たちは面食らう。

 

「ちょ、龍馬さん!?」

 

「頼む!お前たちの力をオレっちに貸してくれ!この通りだ!」

 

 歴史上の偉人が唐突に自分達に頭を下げて願いを乞う現状に天馬たちは困惑を隠しきれていない。龍馬の横にいた中岡慎太郎が嘆息して龍馬に声をかける。

 

「……龍馬、事情も説明せずにいきなり頼みを乞うのは相手を困らせるだけだぞ」

 

「おっと、そうじゃったな!すまん!」

 

「い、いえ…」

 

「…それで、何故俺たちに力を貸して欲しいと?」

 

「うむ、実は俺たちは数日前に現幕府の大名である徳川慶喜の下にお会いしに行ったのだ」

 

「幕府の政権を天皇に返還してくれってな!」

 

「え、ええっ!大政奉還!?それって大丈夫だったんですか!?」

 

「大丈夫なものか。龍馬がそれを申した瞬間に周りの隊士に斬りかかられたわ。…しかしそれでも慶喜公の広い懐によって死罪だけは免れた」

 

「いやぁ、あの時の新撰組の視線は恐ろしかったわ!」

 

 下手をすれば死ぬところだったと言うのに、ヘラヘラと笑う龍馬。ある意味肝が据わっている人物だ。

 

「して、ここからが本題だ。意外なことに慶喜公は俺たちの意見を真っ向から否定なされなかった。慶喜公もまた今の現状に多少の危機感を持っていたそうでな。…だが、今の幕府を崩するとなると、相応の危険性がつきまとう」

 

「だから慶喜様はオレっちにこう言ったのだ!ならばその異国のものの価値を私に証明してみせろとな!そうすれば認めてやらんこともないと!」

 

「当初は万屋にある流れ物で賄おうかと考えていたのだが…あそこにあるものではどうにも価値を十分に理解してもらえなさそうでな…」

 

「それでこのサッカーが選ばれたと…」

 

「その通り!異国にこれほど熱く沸る文化があると知ればきっと慶喜公も国を慮り、政権を返納してくださるはず!」

 

「ちなみに期日以内に価値を示すことができなければ、俺と龍馬とマッチョスはもれなく斬首だ」

 

「え、ええっ!?」

 

「オレっちたちはこの国の為にも異国の価値を絶対に示さにゃならん!だから力を貸して欲しい!どうかこの通りだ!」

 

 再び頭を畳に押し付ける龍馬。

 ここで天馬たちが断れば大政奉還は成されず、歴史が変わってしまうかも知れない。そうなればサッカー以前の問題が山と出てくる。それにミキシマックスをする上では坂本龍馬の協力は必須。天馬たちの答えは決まっていた。

 

「その頼み、お受けします!」

 

「…感謝する!!」

 

 

 

 

 ー

 

 

 

 

 次の日、天馬たちは龍馬たちと共に慶喜公のもとに訪れていた。

 周りにいる衛士からの突き刺すような視線を潜りながらも、慶喜の前に謁見する。

 

「9日ぶりだな、坂本龍馬。して、私を満足するに足る異国のものは見つかったか?」

 

「はいっ、勿論でございます!」

 

 龍馬はサッカーについて説明。慶喜は少しばかり興味ありげな反応を見せる。

 

「…ふむ、実はなこちらも先日そのサッカーとやらを行う集団を新撰組の隊士が捕縛したのだよ」

 

「えっ!?」

 

「おおっ、真でございますか!?」

 

「うむ、彼らの言うことは皆興味深くてな、丁度斬首を止めていたところだ。折角の機会だ、聞くにサッカーは多数対多数で行うもののようだからな。そちの坂本龍馬の軍と我が徳川慶喜の軍で合戦をしようではないか」

 

「合戦…!!」

 

「だがこの戦に勝敗は関係ない。飽くまで私を満足させることができるかがそなたの大政奉還を呑む条件としよう」

 

 意外な提案に天馬たちは驚く。しかし歴史を変えないためにもこれを飲まない訳にはいかない。龍馬は天馬たちの許可を得て、慶喜に了承の意を伝える。

 

「ふふ、ならばすぐに始めよう。…そなたら、彼らを連れてきなさい」

 

「はっ」

 

 新撰組の隊士がどこかへ行き、数分後に数人の少年を連れてくる。彼らは皆手枷をつけられていたが、特別ぞんざいな扱いをされてるようには見えない。

 というかその面子には天馬たちは酷く見覚えがあった。

 

「つ、剣城!?それに白竜たちも!」

 

「まさか、天馬か!?」

 

 そこにいたのは時空の穴に落とされた時にはぐれた剣城たちだった。天馬たちはお互いに驚愕の顔を浮かべている。

 

「ほう、そちら知人だったのか。まぁ良い、ならば話も早かろう。今からそなたらにはそこの者とサッカーとやらで戦をしてもらう。…仮に余を満足させることができれば釈放も許してやろう」

 

 そんな天馬たちを置いて慶喜はトントンと話を進めていく。

 

 

「さ、異国の競技であると言う、サッカーとやらの魅力。余に存分に示しておくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 ふむふむ、幕末の方は順調に進んでますね!

 白亜紀の方はまだ合流できてない感じかな、まぁ広いし仕方ないね。んでザナーク様の方は…うわぁ、ドラゴンボールの修行みたいなことやってる。派手だなぁ。

 って言うかマントちゃんの思考がノイズかかってて読みにくいんですけど…。ま、順調にザナーク様が強くなってるからいっか!

 

「それでね〜、その時ウチの友達がお餅にきな粉つけたら面白いよね!って言ってね、それでもちもち黄粉餅ができたやんね」

 

「へぇー、その黄粉はどうやって出したの?」

 

「え、うーん…、なんか念じたらいけたやんね!友達が必殺技はイメージとひたすらな特訓が大事って言ってたし、黄粉餅はウチも大好きやからすぐできたやんね!」

 

 わかるー、ワタクシももちもち黄粉餅は推しへの究極的なイメージで習得したもんー!そこに至るまでに一体幾つの黄粉餅を食したことか…。これも愛ゆえだね!

 しかし逆に言えば必殺技はそこまでしないと習得できないのだ。特に他人の技となるとかなり修得が難しいイメージだ。サリューのシェルビットバーストとかやってみようかなって思ったけど結局無理だったし、実はこの世界はオリジナルの技を作る方が案外簡単だったりするのだ。

 おかげて拙僧の技スペースも黄名子ちゃんと原作フェイくんの技以外は全てオリジナルで埋まっているのでござる。俺様もファイアトルネード打ちたかった…。

 

「それでね……あれ、フェイ。このキーホルダー綺麗やんね!」

 

 そう言って黄名子ちゃんはわっちの鞄についている砂時計型のキーホルダーを触った。あー、サリューから貰った誕プレだね。

 結構前時代的なのに利便性重視主義者のサリューがこんなの渡してくるなんてあの時は驚いたぜー。

 

「真っ赤で綺麗やんね…」

 

 宝石の粉末らしいからね。キーホルダーとは言えかなり値は張ってると思うぞ。その赤、サリューは吾輩に似てるとか言ってたなぁ。

 

「うーん、でもフェイは赤はあんまりイメージに合わないやんね…」

 

 ま、確かに黄名子ちゃん的に某のイメージカラーは髪色の緑とかだよね!

 やっぱサリューは俺っちの化身とかミキシトランスした時のイメージとかのほうが強いのかな?まぁどっちにしろ確かにあれが本来の拙者だから何も間違ってはないんだけどね!

 

「そうだ!ならウチが何か買ってあげるやんね!まだちょっと時間かかるみたいだし、ちょっと待っててね!」

 

 エッホント?あっと、黄名子ちゃん俺様の意識をおいたまま張り切って近くの商店に行っちゃいました。

 そんで数分後黄名子ちゃんは茶袋を持って笑顔で帰ってきた。うーん可愛い、天使!

 

「はいっ、これあげるやんね」

 

 おやおや、これは…黄名子ちゃんカラーのネックレス!おおっ、超可愛いね!

 

「えへへ、それでウチはこっち」

 

 黄名子ちゃんが持ってるのは人形にかけられてるのと同じデザインの色違いのネックレス。こっちはフェイくんカラー!おそろじゃーん!かーわーいーいー!

 

「えへへ、喜んだなら良かったやんね!」

 

 そりゃもうね、黄名子様から渡されるものは全て天上からの賜り物ですよ!私嬉しすぎて死んじゃいそう!!ヒャーッ!!

 

「…本当はもう一つあったんだけど、それはもう少し後に渡すやんね」

 

 あ、きっとロビンくんのことですね!すごく気にしてたしなぁ。うーむ、これはロビンくんの役目は決まったようなものなのではなかろうか!

 

 …っと、あら。デュプリからの同期だ。

 えーっと、ストロウ君からだね。確か白亜紀に送ってたけど、もしかしてみんな見つかったのかにゃー?しかし直接会話通信をご所望とは珍しいですね。

 ちょっと折角なんでお話ししましょうか。

 

 ちゅーわけで、黄名子ちゃん、我ちょっとお手洗い行ってくるねー。

 

「うん、行ってらっしゃいやんねー」

 

 

 

 

 

 ー

 

 

 

 

 

「……ふふ」

 

 フェイが離れた後、黄名子は鞄の中にある茶袋を取り出す。

 中身を開けるとそれは人形だった。あの時USAGIに奪われてしまったロビンの人形。その別カラーだ。全体が黄色く、どことなく黄名子と同じ髪色をしているようにも見える。

 

「………」

 

 店に入ってすぐに目に入ったこの人形。実は隣には奪われた物と全く同じものも売られていた。それをフェイに渡しても良かったが、やはりフェイに渡すべきなのはあのアスレイに渡された人形なのだ。

 黄名子は買ったネックレスの丈を短くして、人形につける。

 

「…待っててフェイ、絶対USAGIから人形を取り返してみせるから」

 

 そんな決意のこもった言葉は誰にも聞かれることなく、しかし彼女自身の心にはしっかりと刻み込まれた。

 

 

 

 

 






補足:デュプリの戦闘能力は本体(フェイ)の5分の1程度だぞ!


【今日の格言!】
・上 げ て 落 と す っ て 知 っ て る ぅ ?

【フェイのコメント】
・曇らせの基本ですね。上げてから落とす。そして落としてから上げる。この感情サイクルによって曇らせ好きの我々は生活必需エネルギーを摂取しているのです。そこ、DV夫みたいだなとか思わないの!

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