菜花黄名子を曇らせたい!   作:わらしべいべー

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【前回のあらすじ】
・親は碌でなしコンビ結成!
・おい、サッカーしろよ
・アルテメットドライブ・フライングバードアターック!!





ますどら

 

 

 

 

「パーフェクト・カスケイドが…全滅だと…!?」

 

 トウドウが驚愕の声を漏らす。サカマキが会議の場で報告したその事実は、この場にいる全員の動揺を誘うには十分だった。

 

「………ああ、おそらく間違いない。全てのメンバーとの通信が繋がらん。大きな損傷を示す信号も届いている…まず全滅が最も可能性が高いだろう…」

 

「そ、そんな…」

 

 議員の1人が魂が抜けたように椅子にへたり込む。

 パーフェクト・カスケイドはエルドラドの全てを結集させた最強の兵器。その実力は、シミュレーション実験の内容を何度も確認してきた彼らが1番よく知っている。

 最大出力ではあのフェーダ最強のチームであるザ・ラグーンにも匹敵する実力を持つ軍団がたった1人に壊滅させられたなどあってはならなかった。

 

「おのれUSAGIめ…!!」

 

「な、なぜこうなったサカマキ!!USAGIの対策に関しては特に重点的に施行していたはずだろう!?」

 

「…計算外、としか言いようがない。こちらもわずかな情報しか得られなかったが、恐らく奴はミキシトランスを使用した。…パーフェクト・カスケイドが計算する間すら与えずに制圧したのが私の推察だ」

 

「み、ミキシトランスだと…」

 

 これまでUSAGIが見せて来なかった手だ。データにない未知の手札を切ったことで容易な撃退を可能にしたのだろう。

 

「ど、どう責任を取るつもりだサカマキ!!ベータも回収できず、雷門共も未だ健在!更には貴重な最大戦力を失う始末!これでどうフェーダに対抗しろと言うのだ!」

 

「責任を追及している場合か!!今の我々にはなんの盾も無いのだぞ!今フェーダ共が侵攻でもしてくれば…!」

 

「その通り」

 

 その瞬間、会議室の扉が派手に吹き飛んだ。議員たちは突然の出来事に、慌てふためく。一部は椅子から転げ落ちてしまっていた。

 砂煙の中から現れたのは、数十人の子供。フェーダ所属のセカンドステージ・チルドレンだ。

 

「ふぇ、フェーダ!!?」

 

「ふふ、USAGIから聞いたよ。今エルドラドは素っ裸同然なんだってな。なら制圧するなら今しか無い。そうだろうメイア」

 

「ええギリス。邪魔なルートエージェントたちがいない今、絶好の好機。ふふ、どうしてあげようかしら」

 

「く、クソッ!アルファ!聞こえるか!ムゲン牢獄にいる他のルートエージェント全員でここに来るんだ!!」

 

 どれほどの時間稼ぎになるかは分からないが、いないよりかはマシだ。その一心で声を荒げるが、返答どころか、映像すら空中に映らない。

 

「無駄よ、ここに来るまでにエルドラドの施設は全て制圧済み。ふふ、会議に集中して他の部屋との通信が断絶されてることに気づかなかったのかしら。本当間抜け」

 

「そ、そんな…」

 

 エルドラドの全機能がフェーダに制圧されると言うあまりに絶望的な状況。しかし他の議員が慌てる中でもトウドウとサカマキは現状をどうにか打開しようと思考を巡らせる。トウドウはきっかけを作ろうと冷静に会話をしようと試みる。

 

「…SARUはどうした。こんな大規模な作戦に奴が関与していないわけがない」

 

「彼なら野暮用さ。ふふ、僕らセカンドステージ・チルドレンの最終目標のための最後の下準備」

 

「これから私たちをどうするつもりだ」

 

「決まってるわ。私たちフェーダの作る世界創生の狼煙になってもらうの。…貴方たちの死によってね」

 

「ヒ、ヒイィ!!?」

 

 恐怖で議員の1人が非常口の方へと駆け足で逃げていく。フェーダの1人から放たれたシュートがその議員の頭蓋に命中し、そのまま動かなくなる。

 

「………」

 

「他のおじさんたちもこうなりたくなかったら大人しくするのが賢明だよ」

 

 …悔しいが、この現状で打てる手は何も無い。トウドウはここまでかと言わんばかりに静かに瞳を閉じた。

 

「それじゃあ、じゃあね」

 

 それと同時に、派手な爆発音が辺りを包んだ。

 

 

 ──この日、エルドラドはフェーダによって完全に制圧された。そしてその一報はフェーダによってその日のうちにこの未来都市全域に知れ渡ることとなる。

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 はろはろー!みんな大好きフェイくんだぜー!

 

 いやー、パーフェクト・カスケイドは強敵でしたね…。しかし所詮はロボット!原作ルートを破壊した雷門の敵じゃあないんだよねー!!え、ラビットマン?ちょっとよくわからないですね…。

 

「ねぇ、フェイ…!本当に裏切ったの…!?」

 

 はいというわけで、ニケちゃん戦ですね。現在ヒステリックになって叫んでおります。落ち着かせる為にも、ここは誠実に答えてあげましょう。

 その通りでしゅよー!僕ちゃんもうフェーダは辞めまーす!見よこのカッコイイ雷門ユニフォームを!美しいだろう…。

 

「…ッ、なんでッ、私たちだけの世界を作るんじゃなかったの!?」

 

 いやー、やり方が良くないっすね…。目に映るもの全て傷つけるみたいな青臭い殺傷力ばっか発揮してても、出来上がるのはディストピアですよ!ワタクシそんなカメムシみてぇに青臭い世界勘弁かな!

 あとサッカーのルールちゃんと守りなさい!もう、あんだけ口酸っぱく言ってたのに当然のように破っちゃって…。キミに勝ち目はない、大人しくお縄につくことを推奨する(パーカス風)。

 

「……そう、そうなのね。あはは、そう言うこと…」

 

 なんかブツブツ言い始めた。ニケちゃんたまにこういう所あるんだよねぇ。やっぱりお年頃なのかなぁ…。

 

「わかったわ…!フェイ、貴方そいつらに操られてるのね…!タイムマシンを提供してる協力者がいたはず、きっとそいつのせい…!そうに違いない!!」

 

 いやそれ拙僧の専売特許なのですが!現実逃避もここまでくると清々しいですね…。ニケちゃん絶対にネットの噂とか陰謀論妄信しちゃうタイプでしょ。

 兎に角、さっきベータちゃんに啖呵切った手前、説得でなんとかしたかったんですけど無理そうですな!だってニケちゃん超能力フル稼働の殺意全開だもの。あかんこのままやと死ぬぅ!!

 

「フェイ…!待ってて!今助けてあげるから!!!」

 

 メンヘラもここまでくると迷惑ですね(無慈悲)。

 はいというわけでこのままでは試合もクソも無いので、心強い助っ人になんとかしてもらいましょう。

 せーの、助けてサリュエモーン!!

 

「ッ!!?」

 

「そこまでだよ、ニケ」

 

 キャーッ!ステキーッ!なんて素早い念動捌きなのー!一瞬でニケちゃんを拘束したわー!凄い!バナナあげちゃうっ!

 

「さっ、SARU…!?どうしてここに…いえ、邪魔しないで!私はフェイをッ…!!」

 

「フェイの言葉が聞こえていなかったのかい?君はフェーダのルールを破った。拘束をするにはそれだけで十分だよ」

 

「フェイ…アイツは…?」

 

 お、天馬きゅん。その手のファンが集る程度にはボコボコにされてるようで何よりですね。

 あの人はフェーダのリーダー!フェーダの中で1番強い人だぜ!バナナ大好きだから今度餌付けしてみたら?

 

「フェーダのリーダー…!?」

 

「天馬そっくり…」

 

「やぁ、久しぶりだねフェイ。相変わらず面白いことをしてるようで何よりだよ。…でも予想外だったなぁ、君が裏切るなんて。クク」

 

 お、向こう合わせてくれてますね。邪悪な笑いが隠しきれてないところを見るにサリュー視点では天馬きゅんたちがよっぽど滑稽に見えてるのでしょう!事実そうだから何も言えねーけど。

 

「これから君は僕らの敵…ってことで良いよね」

 

 うむ、今日からフェイ君はイナズマレジスタンスだぜ!

 

「ふふ、なら君が裏切るだけのチームがどれほどなのか試してみようかな?試合はまだ後半戦なんだろう?なら僕が監督になろう。いいかな?」

 

「は、はいっ!」

 

「ニケ、君は謹慎だよ」

 

「…ッ!〜ッ!!」

 

 口も拘束されて何も喋れませんねぇ、ふぉー、哀れすぎて可愛くなってきますよ…。

 

 さてさて、ここからはサリュー君率いるフェーダ戦になる…と言いたいんだけど、ゴメンネサリュー君!ノリノリのところ悪いけど今回はワタクシの計画優先でやらせてもらうよ!

 はいというわけでドーーーーン!!!

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 フェーダとの後半戦が始まるその瞬間、地面が大きく揺れた。

 

「な、なんだ…!?」

 

「地震…!?」

 

 しかし地震のように継続した揺れが起きているのではなく、大きな振動が定期的に来ている。これにはSARUたちも予想外なのか各々が瞠目している。

 

「皆んなあれを見ろ!」

 

 神童が指差した先の大気に、大きなヒビが入っていた。それは天馬たちにとって酷く見覚えのあるのもだった。

 

「うっ…!あれは…!?」

 

「まさか!!」

 

 ドンッと再び大きな揺れが起きる。それと共に亀裂はみるみると広がっていく。まるで何かが内側から叩いているかのようだ。

 そして3度目の振動で完全に空間が決壊。ぬるりと中から空飛ぶ巨大な黒のドラゴンが現れた。

 

「どっ、ドラゴン!!!??」

 

「なんでぇーーっ!!?」

 

 恐竜ではない、本物の空飛ぶファンタジーのドラゴン。あまりの予想外の乱入者に全員が驚愕で動きが止まる。

 

「フッ、フハハハハハッ!!成程!それが君のやり方か!USAGI!やっぱり君は最高だよ!」

 

 響くSARUの笑い声。

 …USAGIだと!?全員がドラゴンの上に注目する。

 

「やぁやぁやぁ!試合前にお邪魔するぜ!皆んな大好きフェーダのヒーローラビットマン!今日はドラゴニックナイトスタイルで参上だぜい!」

 

「USAGI!!」

 

 西洋風の剣を手で弄びながら軽快に雷門に顔を出す。

 突然の意外すぎる乱入者。もしかすれば孔明や劉備たちを狙って追ってきたのかもしれない。そう思いベンチにいるメンバー含めて全員が孔明たちを守るために警戒状態に入る。

 

「おいおーい、そう怖いフェイスしないでって。今回は別件なんだよ。主に用事は二つ!」

 

「……」

 

「まず一つはこの超カッコいいドラゴンを自慢しに来たこと!凄いでしょー、ボールで捕まえて洗脳したんだー。火だって吐けるよ!…んで、もう一つが」

 

 その瞬間、USAGIはその場から消失。全員がUSAGIを見失い必死に視線と顔を動かす。

 USAGIはMFのポジションにいたフェイの隣にいた。

 

「うわっ!?」

 

「この子★」

 

 USAGIは素早くフェイを拘束具で体を縛り、そのまま腕に抱える。

 

「テメェ!!」

 

 真っ先に動いたのはベータだった。ミキシトランスをして容赦なく蹴りをお見舞いする。しかしUSAGIはそれを片腕でしっかりとガードする。

 

「チッ!」

 

「ベータチャン!雷門に入ったんだね!びくびく震えてた頃も可愛かったけど、今の勇ましい感じも良いよ!」

 

「黙りやがれこの狂人が!!」

 

 他のメンバーも黙ってみているわけでは無い。フェイを取り返そうと一斉にUSAGIに特攻していく。しかしフェイに触れるその寸前にUSAGIはフェイごと消失する。

 いつの間にか彼はドラゴンの上へと戻っていた。

 

「もう、皆んな乱暴なんだから!…さて、久しぶりだねフェイ君!最後に会ったのは去年辺りかな?聞いてたよ?君裏切ったんだってぇ?シクシク、ラビットマンはとても悲しい…」

 

「…うん久しぶりだね、ラビットマン。君も相変わらず元気なようで何よりだよ。今日も仕事かい?」

 

 USAGIはフェイの頬を荒く掴み、目の鼻の先まで顔を寄せる。

 

「むふふ、ならわかるよね。これから自分が何をされるのか…」

 

「フェイを…離すやんねーッ!!」

 

 光輪の矢。

 なんの躊躇もなく化身技の蹴りをUSAGI目掛けて打ち込む。USAGIはそれを再び片腕で受け止める。

 

「容赦ない!あるわけないか」

 

「フェイも、人形も…返してもらうやんね!!」

 

「きゃーっ、そんな怖い顔で睨まれたらラビットマン泣いちゃーう!…無理は厳禁だよ、身体中痛い癖に、よくやるぜぇ」

 

「…ッ!ゴフッ…!」

 

「ほらぁ、ダメじゃん!怪我人はー…、お帰りくださいっ!」

 

「きゃあっ!?」

 

「黄名子!」

 

 足を掴まれ地上に投げ返される黄名子。地面に叩きつけられる直前に天馬がうまくキャッチする。

 

「じゃあ拙者の用事これだけなんで、バイビー」

 

「逃すわけねぇだろうが!!」

 

 ベータが怒号と共に飛び上がる。敵はドラゴンに乗り空にいる、ならまずはあのドラゴンを地上に叩き落とす。そうして足元のボールをドラゴン目掛けてお見舞いしようと振りかぶる。

 

「オルカちゃん、ヨロシク」

 

「!!!」

 

 ベータのシュートを遮る形で現れたのはオルカだ。気味が悪いほどの弧を描いた真っ赤な瞳が、ベータを貫く。

 

「久しぶり、ベータ。ちょっと見ない間に随分様変わりしたわね」

 

「…それはこっちのセリフだ。なんだその首のマシンは?流行りのファッションにしても似合わねぇぜ!」

 

「もう、失敬ね。生まれ変わったって言って欲しいんだけどー。…ベータに勝てるくらいにね!」

 

「…ッ、ほざけ!!」

 

 ベータが知る余地はないが、今のオルカはセカンドステージ・チルドレン化に加えてUSAGIの洗脳強化も加算されている。

 いや、オルカだけではない。先程の一瞬で、ニケとサリューを除くフェーダの全員がUSAGIによって洗脳されてしまっていた。

 ベータが地上に弾き返されたのと同時に、フェーダの全員が天馬たちをマークする。

 

「あ、そうだ。一応この人らも貰っておこうっと」

 

 そう言いUSAGIはスフィア・デバイスの封印モードを起動。徳川慶喜や近藤勇を含めたその場にいた停止している人間を全員封印してしまった。

 その光景に瞠目した沖田が叫ぶ。

 

「近藤さん!慶喜公!」

 

「ぜ、全員あの玉に吸い込まれてしまったぞ!?」

 

「よしよーし、じゃあ最後に…」

 

 USAGIはスフィア・デバイスを真上の空に蹴り上げる。直撃と同時に空間に大きな亀裂が入り、そのまま巨大な空間のガラスが落下して、世界が崩壊していく。まさにあの中国での光景の焼き直しだ。

 

「じゃあ今度こそ、サヨナラー!」

 

「ゴホッ…!待つやんね!USAGIッ!!!」

 

 叫ぶ黄名子。しかし当然USAGIは反応せず、ドラゴンも止まらない。崩壊した時空の穴へと入る寸前、フェイが叫んだ。

 

「黄名子ッ!」

 

「!」

 

「……信じてるから」

 

「…ッ!フェイ!フェイーーーッ!!!」

 

 黄名子の叫びも虚しく、USAGIはドラゴンと共に空間の割れ目へと消えていってしまった。黄名子は悔しさでその顔を歪ませ歯噛みする。全員が同様だ。

 しかし悔しがっている暇もない。空間の崩落は始まっているのだから。

 

「うわぁ!?ま、不味いよこれ!」

 

「兎に角逃げるぞ!」

 

「逃げるつっても、どこにだ…!?ここにはキャラバンもないぞ…!?」

 

 白亜紀で使った小型のものを使用するには時間が足りなさすぎる。このままでは崩落に巻き込まれて、またあらぬ時代に飛ばされるかもしれない。

 万事休すかと思ったその時、突如タイムホールが開き、そこからイナズマTMキャラバンが現れる。

 

「おーい!皆、早く乗れい!」

 

「アルノ博士!」

 

 どうやらタイムマシンが直ったらしい。空間のガラスが雨のように落ちてくる中、全員がキャラバンへと乗り込んでいく。

 

「待ってトーチャンどうしょう!」

 

「上に乗ってもらえい!その大きさならギリギリ保護圏内じゃわい!」

 

「よし、トーチャン!頑張れ!」

 

「ギャウ!?」

 

 全員が乗り込んだことを確認し、キャラバンはその時代から急いで抜け出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 自然あふれる緑の地。洞窟の中とは思えないほどに美しいその光景は、この世のものとは思えないほどに幻想的だ。

 そこに似つかわしくない亀裂が空間に入る。空間が割れ、そこから巨大な黒のドラゴンが現れた。USAGIはフェイを連れてドラゴンから降りる。

 

 …フェイの脳裏に蘇るは自分が連れ去られる場面を何もできずに絶望した表情で見ていた最推しの姿。

 何かを堪えるように小刻みに体を振るわせる。

 

「…ふ、ふふっ、んふふふふっ」

 

 フェイとUSAGIは同時に盛大に溜めていたものをぶちまけた。

 

「「あーっはっはっはっはっは!!はぁー、最高ー!!黄名子様の曇り顔最高ーーー!!!」」

 

「いやぁ、予想はしてたけどあんな美味しいもの見られるなんて思わなかったよ!」

 

「わかるー。ちゃんと録画してたよね?」

 

「勿論!こんな美味しいところコレクションにしないわけにはいかないからね!ほいこれカメラ」

 

「どれどれ…うひょー!すんばらしい!見てよこの開ききった瞳孔!芸術的じゃない?」

 

「いやいや、この無力を嘆くように歪んでる口元も中々だよ」

 

「うわっ、ホントだ。良ぃ…。絵にしたいくらいだ…」

 

「これだけで1ヶ月は生存可能だよねー」

 

「ねー」

 

 アギャギャギャギャギャ!!!

 2人の笑いが洞窟にこだまする。生き甲斐とも言える栄養素をたっぷり摂取できたことでフェイは最高にご機嫌だった。

 ひとしきり笑った後、フェイは一息つく。

 

「…ふぅ。さて、あとはここで皆んなを待つだけだね」

 

「うん、ここで時空最強イレブンを完成させる。それで準備はパーペキになる!」

 

「その通り!更にこれから起こすことを考えると、笑顔が止まらないよね!」

 

「「あははははーっ!」」

 

 愉快に笑うUSAGIとフェイ。すると、フェイが入ってきた亀裂の奥からさらに4人の影が現れた。マッチョス、ウォーリー、ストロウ、そしてSARU。

 フェイは分身デュプリを解除し、己を縛っている鎖も外す。

 

「お帰り3人とも。フクロテナガザルもお疲れ、いやーごめんねこれからって時にさ」

 

「はは、誰が世界一喧しい猿だよ。…どうせ暇つぶし感覚だったからね。それよりも君の豪快なやらかしの方がよっぽど楽しかったさ」

 

「えへへー、それ程でもー。…あ、そう言えばニケちゃんは?」

 

「彼女なら一旦チームと一緒に帰したよ。今頃謹慎中なんじゃないかな」

 

「ああ、お気の毒に…。私の母上をボコボコにしたばかりにこんなことになるなんて…我悲しいっ!」

 

「相変わらず君の言葉の軽さは世界一だね。…それよりもこれからどうするんだい?分身デュプリまで使ってさ」

 

「ふふ、前に俺様が雷門について話した時のとこ覚えてる?」

 

「ああ、前に興味本位で聞いたら凄まじい熱量で話されたアレか。相変わらず君は相当にあのチームにお熱なんだね」

 

「そう!そして知った時空最強イレブン!それはもう、作るしかないよねって話!」

 

「…そしてそれを最後に盛大に破壊する、と。君らしいね。ククッ、僕好みでもある」

 

 どれだけ優れたチームでも、味方の裏切り一つであっさり盤解するものだ。それにこれからのフェーダの計画を考えれば、どれだけ強さがあったとしてもほぼ無意味同然である。

 フェイはイナズマイレブンを愛している。その愛ゆえに歪ませたいし、壊しもしたい。とんでもない拗らせ方をした厄介ファンなのだ。…それはそれとして最後には全てを乗り越えて雷門が勝つと確信しているが。

 フェイは一頻り笑った後、デュプリに向かい直る。

 

「…さて、3人ともお仕事ご苦労様。良い働きぶりだったぞ!お父さん嬉しい!」

 

「あ、ありがとうっす…」

 

「おう!親父の為ならなんだってするぜ俺たちは!」

 

「ま、なんだかんだで中々楽しかったしなぁ。寧ろ軽い休暇みたいなもんやったで。あ、一応雷門の皆んなの記憶処理は済ませといたで。ま、軽いもんやから僕らの顔見たら思い出すかもやけど」

 

「充分充分、ありがとウォーリー!…さて、お腹も減ったし、ここいらでご飯でも食べよっか!今日はフェイ特製ルーのカレーライスだぞー。サリューも食べる?」

 

「じゃあいただこうかな。君の作る料理はどれも絶品だからね」

 

「俺は辛口にしといてくれ!あの特製スパイスが美味いんだよなぁ!」

 

「お、落ち着いてマッチョス…。あ、父さん、俺なんか手伝うっすよ」

 

「じゃあ向こうにある調理セット準備してほしいな」

 

「わかったわ。ほら行くで2人とも」

 

 3人はデータ空間に仕舞われている調理セットを準備していく。フェイはSARUと2人きりになる。

 

「おや、今いるデュプリはここにいるのが全員なのかい?」

 

「うん、他のみんなはちょっとお仕事中。これから起こす一大イベントのためのね★」

 

「ふふ、どうやら良い感じに時空を荒らしてるみたいだね。…そろそろ完成しそうかい?」

 

「うん、もう8割はできてるよ。でもあと一押し足りない。だからこの場を借りて完璧に仕上げるってワケ」

 

「ははっ、確かに物語の中だなんて絶好の穴場だもんね。…それにしても、漸くだ。漸く僕らの宿願は達成される。あの時は済まなかったね。プロトコル・オメガを処理した直後に大仕事を任せてしまって」

 

「いいってことよ。前から言われてたし、ワタクシの人生最後の大仕事でもあるからね」

 

「…そうだね。これが終わればもう君と会えないと思うと残念だ」

 

「…我という魂を犠牲にすることで、セカンドステージ・チルドレンの宿願は完成する。そうすれば、本物の新人類になれる」

 

「その通り。…君と言う犠牲を伴ってしまうのは本当に心苦しいよ。今でも思う、本当に君が死ぬ必要があるのかって…」

 

「良いんだよ。そもそもこの計画を発案したのも僕様だし、サリューたちが死なずに生きてくれるのなら是非もなしだ」

 

「………」

 

 この計画を実行すればほぼ100%フェイは死ぬ。だが得られる恩恵は全体で見ればこの上なく大きい。

 …しかしSARUはこの唯一と言っても良い友を失いたくない。だが種として前に進むには方法はこれしか無い。SARUの覚悟は決まっていた。

 

「そんな怖い顔しないでって!」

 

「…フェイ」

 

「見えない先を見るよりも明るい今を見た方が楽しいさ。吾輩たちに無駄にできる時間はないのだからなぁ!ハッハァー!」

 

「…そうだね。セカンドステージ・チルドレンの今は明るく、そしてこれから未来も明るくなる」

 

 そうだ、今は彼の起こすイベントに胸を傾けよう。

 彼の好きな笑顔で思い出をいっぱいにしてあげるのが、せめてもの手向けだから。そう思い、SARUは楽しそうに笑うフェイの隣に座った。

 

(…彼の残り少ない時間を共にするためにも、今を目一杯楽しまないと損だからね)

 

 

 

 

 

 ー

 

 

 

 

 

「………」

 

「ね、ねぇウォーリー…」

 

「しっ。……軽い気持ちで盗聴器落としたらとんでもない話聞いてもうたな」

 

「…親父は寿命で死ぬんじゃないってことか?」

 

「いや、寿命もあるやろう。でもその前にあのフェーダの計画とやらで死ぬ。それだけや」

 

「そんな…!どうにかできないの…!?」

 

「無理やな。父さんの情報をこちらが得られん以上、計画の内容もわからん。それに止めようと動いてもこっちの消失権は父さんにある。下手な行動をしても父さんの中に戻されるだけや」

 

「………ッ」

 

「くっ…」

 

「…とりあえず、この情報を全員に同期させる。これは知っておくべき情報や」

 

「…良いのかよ。マントとか、知らねぇ方が良いんじゃないのか?」

 

「……後から知って詰め寄られるよりかは100倍マシやわ。まぁ、あのクール顔が破顔して慌てふためく姿はちょっと見たいけどな」

 

「…ちなみにさ、ウォーリーは父さんにはどうして欲しいの」

 

「…そやな。僕は父さんの思うがままにやって欲しいって思てる。そりゃ死ぬのはごっつ悲しい。けどあんな楽しそうにしてる父さんの邪魔してまで無理に生きて欲しいとも思わへん。…どの道父さんは短い命や。最期は好きにやらせた方が良いやろう」

 

「最期どころか、生涯好き勝手やってた気もするがな…」

 

「はは、違いないな。…ま、兎も角、僕は父さんが何するにしても大人しく従うってスタンスや。僕らはデュプリ、飽くまで父さんの手足なんやから」

 

「……」

 

 そう淡々と述べるウォーリーの言葉にストロウは何も言えずただ俯くだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

「だあぁ!!」

 

「はあぁ!!」

 

 何も無い荒地で衝突する力。その余波で大地は割れ、少ない草木が吹き飛ぶ。

 岩が飛び交い、竜巻が起こり、あちこちで爆発が起きる。まさに天災と呼べる現象を起こしている両者は、すでに丸3日は戦い尽くしだった。

 共にプライドが高いが故の譲り合いなぞ一切無い本気の殺し合い。互いの体力が限界に近づく中、ついに決着の時は訪れた。

 

「カッ…ガハッ……、ぁ…」

 

 地面に伏したのはマントだ。ザナークの渾身の一撃が体のど真ん中に突き刺さり、そのまま立つ気力を刈り取った。

 しかし対するザナークも満身創痍だ。頑丈にできているエルドラドの改造ユニフォームも、その上半身はその原型を留めていない。その姿は先ほどまでの戦いの苛烈さを物語っていた。

 

「ハァーッ、ハァーッ…!よ、ようやく、倒れたか…!」

 

 この戦いの勝者はザナークだった。災害の如きマントの超能力に凄まじい速度で適応していき、最終的にセカンドステージ・チルドレンの力をほぼ完全にモノにしてみせた。

 そんな彼から真っ先に出てきたのは歓喜の感情だった。

 

「…く、ククッ、手に入れたぞ…!奴に対抗しうる力を…!!」

 

 ようやくあのUSAGIに一泡吹かせられる。そう思うとこれからが楽しみで仕方ない。

 しかしとんでもない女だった。セカンドステージ・チルドレンは皆このような怪物揃いなのだろうか。無論負けるつもりなど毛頭ないが、USAGI含めて多数で対峙されるとなると厄介だ。タイムマシンも直さなければいけないし、この場所にはもうしばらく世話になりそうである。

 すると突如風を切る音と共に拳ほどの岩が顔面に迫ってきた。ザナークは咄嗟に拳で岩を破壊する。

 

「……お前」

 

「う…ぐっ…!ガハッ…!…ま、まだ私は敗けていない…!!」

 

 腹を抑えながらも立ち上がるマント。ザナークからしてみれば何十発も自慢の拳や蹴りを受けて尚立ち上がるのだ。改めてセカンドステージ・チルドレンが伊達だけの存在では無いことを痛感する。

 

「チッ、マジでしぶてぇな。…だが続きをやるってんなら付き合うぜ。今度は立ち上がれないくらいに徹底的になぁ…!」

 

 ザナークが再び戦わんと構える。身体はボロボロだが、そんなことはザナークには関係ない。それに心なしか治癒力も上がっている気がする。これもセカンドステージ・チルドレンの力ということだろうか。

 その気満々のザナークだが、肝心のマントがなんの音沙汰もない。全力で迎え撃ってやろうと思っていたのに、ただその場で立ち尽くしている。

 

「なんだ、どうしたお前?かかってこないのかよ」

 

「…そ、そんな…、父さんを…!?」

 

「あ?」

 

「く、クソッ!フェーダめ…!父さんを殺して目標を達成するだと…!?ふざけるな…!!」

 

「おい」

 

「許さない…!絶対許さない…!!全員ぐちゃぐちゃにして時空の穴に捨て去って…」

 

「返事をしろやぁ!!」

 

「は──ぐふぅ!!?」

 

 痺れを切らしたザナークの一撃が鳩尾に入る。堪らずマントは嗚咽を漏らしながら2、3歩後退する。

 

「さっきからブツブツブツブツ、喧嘩をするのかしないのかハッキリしやがれ!!」

 

「ゴホッ、オエッ…!き、貴様…!!」

 

「ハッ、ザマァねえぜ。…ん?」

 

 ふとザナークは周囲がやけに暗がりになっていることに気づく。風もやけに強い。

 

「なんだ、さっきまで晴れてやがったのに…」

 

 突然の変化に戸惑うが、その正体はすぐに現れた。

 突如響く轟音。何かの機械が鳴っているものかと思ったが、よく耳を傾けるとそれは風切り音だ。それと同時に押し寄せる半端では無い突風。

 疲労しているとは言えザナークとマントをして、立つのが精一杯の環境。

 

「うおぉ!!こいつはぁッ!?」

 

 かろうじて開いた視界の先にあったのは暗雲から現れる竜巻だ。

 赤く、そして何より巨大。雲を巻き込み、空高くまで立ち上る竜巻など歴史長しと言えどコイツだけだろう。

 

(…これが父さんの言ってた歴史上最大の台風、クララジェーン)

 

 曰く、世界のあらゆる樹立記録を更新し、破滅的な被害を人類にもたらした最強の暴風らしい。一体何をどう考えればアレをミキシマックスするなどという発想に至るのか。我が父ながら理解ができない。

 しかし想定外なのはこちら側が必要以上に疲弊してしまっていることだ。今の状態であの台風に直撃すればいくらセカンドステージ・チルドレンでも無事では済まない。

 …正直嫌である。嫌であるが、父の任務を果たせなくなることが何よりの失態だ。

 

「……ザナーク・アバロニク」

 

「あぁ!?なんだこんな時に!!」

 

「このままでは私たちは2人ともあの台風に巻き添えになって死ぬ。今の私たちにあの台風を打ち消す力など残っていないからな」

 

 仮に残っていたとしてもあの規模の台風をどうにかできる存在などそれこそ我が父しかいまい。

 ザナークはマントの話を黙って聞いている。彼もまた現状を理解していた。

 

「だが一つだけこの状況を打開できる方法がある。…ザナーク・アバロニク。お前がこの台風の力をモノにすれば良い」

 

「…!!成程な…!明快だ!」

 

 ザナークは意図を理解したのか立ち上がる。

 つまるところ協力だ。先程まで啀み合っていた彼と息を合わせるなど嫌々にも程があるが、背に腹は変えられない。

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

 ザナークはその身の力を解放する。

 先程自分と戦った時よりも更に強いエネルギーを発している。マントは改めてザナーク・アバロニクという男の潜在性に戦慄する。確かにこれならばフェーダの戦力としても申し分ない。

 

(………)

 

 マントには未だフェイが一体何を考えて動いているのかは理解できない。ザナーク・アバロニクにあの台風の力を与えることで何をするのかも、なんのメリットがあるのかも。

 しかしただ一つ分かったことは、フェーダが我が父の命を使い何かを企んでいるということだけ。

 

(…そんなことは断じて許容できない。父さんの命を薪のように扱うなど…!!)

 

 だが、フェイの命が短いことは事実。遅かれ早かれフェイは死ぬのだ。

 ならばそのわずかな砂時計の残りをどう使おうがフェイの勝手。しかしそれでも、どうしてもマントは割り切れない。マントは、フェイを死なせたく無い。それがどうしようもないこととわかっていても。

 

「づおぉぉ!!」

 

 ザナークが台風へと特攻してはその度に弾き返される。

 …このままではジリ貧だろう。今フェイのことを考えていても仕方ない。今は命令を遂行しよう。ザナークを援助する為、マントは痛む体を動かして援護に徹することに専念した。

 

 思考停止。それが現実逃避と理解していても、マントはフェイの命令を遂行する手を止めなかった。

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 元の時代の雷門中に帰還した天馬たち。

 キャラバンの上に乗っている恐竜にサッカー部顧問の音無が腰を抜かすアクシデントを経由しながらも、その翌日に何とか情報を整理する場を設けた。

 お互いに一通りの情報を交換した中、神童が声を漏らす。

 

「……フェイがフェーダで、あいつはそれを裏切り、それが原因で連れ去られたか…」

 

「フェイは仲間のフェーダを助けようとしてるんだ!…だから悪い奴なんかじゃないよ!」

 

「…それは分かっている。俺もあいつが悪人だとは俺も思っていない。問題は…」

 

「フェイがどこに連れ去られたかだよな…」

 

「USAGIのやつでっけぇドラゴンに乗ってたよな!多分どっかの時代から連れてきたんだろうけど、ドラゴンってそもそも歴史上に実在したのか…?」

 

「…わからん、そこは調べてみるしかないだろう。アレほど特徴的な見た目をしているんだ。伝承を調べれば何かしらは出てくるはずだ」

 

「うぐぐ…、色々起きすぎて頭がこんがらがる…」

 

 兎も角、急がなければ。あのUSAGIに攫われたのだ。何をされているか分かったものではない。事は一刻の猶予もないだろう。

 全員がそれに同意する中、ふと狩屋が不満げに声を漏らす。

 

「…っていうかさ、色々あったせいでスルーしてたけど、俺ベータが仲間になるの反対だからな?」

 

「仲間になった覚えはありませんよ。飽くまで協力関係。お互いが目的を達成するためのビジネスパートナーと呼んでもらわないと」

 

「どっちも似たようなもんだろ!俺たちのことボコボコにした挙句に監督まで取りやがって…!俺はこいつと一緒にプレーするとか絶対反対だからな!!」

 

「いや〜ん、怖いわビッグちゃ〜ん」

 

「きゅう?」

 

 演技地味た態度でビッグに抱きつく。しかしこちらを見つめるその表情は嘲り一色だ。

 

「こ、コイツ…!」

 

「落ち着け狩屋。大介さんの話を聞いただろう。彼女は時空最強イレブンの1人になったんだ。エルドラドとも完全に縁を切ったみたいだし、最低限信用はできる」

 

「ああ、俺が保証する。ベータは俺たちと共に戦ってくれるさ」

 

「霧野センパイ… 」

 

「ま、古臭いデザインのユニフォームを着ないといけないのは不満ですけどねぇ」

 

「お前…!」

 

「何ですかその目は。生意気だわ」

 

「お、落ち着いて2人とも!喧嘩は良くないよ!折角仲間になったんだから…」

 

「だから仲間になったわけじゃねぇって言ってるだろうが!」

 

「うぇっ!?ご、ごめん!?」

 

「チッ」

 

 ベータの怒声に天馬は萎縮してしまう。ベータがこの雷門の雰囲気に馴染めるのはもう少し先になりそうだ。神童はこれからのことを少しだけ憂い、小さく嘆息する。

 

 その時、部室にジャンヌが入ってくる。先程まで怪我人の面倒を見ていた彼女は神童にそれを報告する。

 彼女はすっかりこの雷門に馴染んでいた。マネージャーたちとも打ち解け、今では気楽に話せる仲になっているようだ。最近の話題はもっぱら恋バナのようで、ジャンヌが顔を真っ赤にしている光景がよく目撃されている。誰の話題で盛り上がっているのかは言わずもがなだろう。

 

「…ところで黄名子の様子はどうだ。手酷くやられていたが…」

 

「…怪我のほうはもう大丈夫です。ですが、やっぱり全然元気がなくて…」

 

「…そうか」

 

「黄名子…」

 

 フェイが連れ去られた直後は尋常ではない動揺を見せた黄名子。この時代に帰ってからも、酷く追い込まれた様子だった。近くで声をかけてもなかなか反応しないので、しばらくは安静にするのが良いと判断しているのだが…

 皆が黄名子のことを心配していたその時、唐突にアルノ博士が現れる。

 

「うわっ!?あ、アルノ博士…。いつの間にこの部室に…」

 

「ほっほ、妙な空気の中すまないの。じゃができるだけ早くお主らに知らせた方が良いと思ってな」

 

「?」

 

「まぁ、前置きはいらんな。…フェイの居場所がわかったぞ」

 

「!ほ、本当ですか!?」

 

「ウム、だが当然フェーダ…一緒にUSAGIの反応もある。奴との戦闘は避けられんだろう。……気をつけておけ。これはワシも先程知ったが、奴はパーフェクト・カスケイドを単独で壊滅させたらしいからの。全く恐ろしい奴じゃ」

 

「なっ!?」

 

「アイツら11人をたった1人で…!?」

 

「奴は未だこちらに見せていない手札があるのだろう。正直得体が知れん。実力も悪い意味で保証されとる。…それでも行くのか?」

 

「……行きます。それでも。居場所を教えてください!」

 

 天馬のまっすぐな瞳をアルノ博士は見る。…フェイが雷門を自身の協力者として決めた理由が少しだけわかった気がした。

 

「良い返事じゃ。…とはいえやつは少し変わったところにおる。どうやらパラレルワールドを自ら生み出して、そこを拠点としておるようじゃ」

 

「パラレルワールドって…」

 

「時代を分岐させて独自の時代を作ってるってこと…?」

 

「ウム、まぁ言った方が早いの。ズバリフェイはアーサー王が実在した世界におる!」

 

「え、ええっ!?アーサー王って、あのアーサー王!?」

 

「で、でもあれって架空の人物って話聞いたことあるんだけど…」

 

「だからこそのパラレルワールドだろうな。エルドラドがサッカーを消そうとした時と同じ要領で、アーサー王が実在した世界を作り出したのだろう。…成程な、それならあのドラゴンにも合点がいく。本物のファンタジーからやってきたんだからそりゃドラゴンもいるわけだ」

 

「む、無茶苦茶だ…」

 

 しかしあのUSAGIならやってしまえるという確信もある。しかしこれで行くべき場所は決まった。

 

「…エルドラドの最高戦力が倒されたにも関わらず、サッカー禁止令が未だ解除されず、インタラプトも修正されていない。これはつまりフェーダ、若しくはUSAGIが歴史改変の修正を止めているということじゃ。…ワシはこれを明らかな誘いと考えておる」

 

「サッカーとフェイを取り戻したかったら自分の元に来い…ということか」

 

「その通り。奴は待ち構えている。その歴史の先でな」

 

「……」

 

 全員に緊張が走る。あの悪魔が何もせずに待っているわけがない。しかしここで止まるわけにもいかない。フェイの為にも、サッカーのためにも、封印し攫われた皆のためにも。

 

「皆んな、出発の準備をしよう」

 

 神童のその言葉に全員が力強い返事をする。アルノ博士が用意したアーティファクトを受け取り、全員が動こうとしたその時。

 

「待って!ウチも行くやんね!」

 

「黄名子!?」

 

 部室の扉から飛び出してきた黄名子。さっきまで保健室の布団で寝ていたという話だったが、どうやら扉の向こうで先ほどの話を全て聞いていたようだ。

 

「ウチも絶対付いて行く!フェイも人形もみんなも!全部取り返すやんね!!」

 

「でも…」

 

 先程まで酷く病んでいた様子だっただけに黄名子を連れて行くことに戸惑いが生まれる。そんな天馬の心を代弁するように神童が口を開く。

 

「…本当に大丈夫なのか」

 

「…うん、フェイが、フェイが助けを求めて待ってるの。いつまでも布団のお世話になるわけにはいかないやんね!」

 

 妙な違和感はあるが、普段通りの彼女に戻っているようだ。それに今の彼女はテコでも動きそうにない。USAGIと戦うとなれば黄名子の力が必要なのも事実だ。神童は了承の意を伝える。

 黄名子が全員に感謝を伝える中、ふとベータは黄名子に問いを投げかける。

 

「ねぇ、黄名子さん。貴女ってばどうしてそんなにフェイ・ルーンに拘ってるの」

 

「えっ」

 

「えじゃないですよ。私ずーっと見てましたけど、貴女がアイツと会ったのってついこの間でしょう?その割には会った時から随分とご執心みたいですけど…知り合いだったりします?」

 

「そ、それは…」

 

 確かに。そう天馬たちも思う。黄名子がフェイを気に入っていると考えても、これまでのスキンシップは異常だ。仮に好意を持っていたとしても、会ってすぐにそれは少々違和感がある。それならばベータの言い分の方が納得出来るというものだ。

 

 対する黄名子は言葉を濁していた。いや、適当に誤魔化すことはできる。できるが、それが今の最善なのかという疑問が彼女の中に残る。黄名子がこれまで親子だという事実を隠していたのは、飽くまでフェイとエルドラドに勘付かれないためだ。

 しかし今やフェイは攫われ、エルドラドも歴史観測の機能をほぼ停止している。ならばここで下手に怪しまれるよりも、いっそ全てを告白してしまうのが良いのではないだろうか。黄名子は改めて雷門の皆を見る。

 

「…黄名子?」

 

(…やっぱり、これ以上理由無く皆んなを騙すのは嫌やんね)

 

 黄名子は決心をつけて、ゆっくりと口を開く。

 

 

「──皆んな、聞いてほしいことがあるやんね」

 

 

 








フェイくん→デュプリ:薄々自我があると気づき始めてたりする。まぁでもやること変わんないよねってことで賽の河原ルート爆走中

デュプリ→フェイ:フェイが死ぬのは絶対嫌派と父に黙って従う派で別れている。が、どちらも基本的に劇重感情を持っている。約半数はアスレイと黄名子ちゃんのことが嫌い。


【今日の格言!】
・見えない先を見るよりも明るい今を見た方が楽しいさ。吾輩たちに無駄にできる時間はないのだからなぁ!


【フェイのコメント】
・究極刹那主義のワタクシだからこそ出てくるクソイケメソな台詞ですね。青春時代って良いよね。目標さえあれば、一瞬一瞬が輝いてるのだもの。前世でできなかったことが今世ではやりたい放題!そういえばどこかの偉人が人生の最後に青春を置きたいみたいなこと言ってたけど、青春真っ只中で死ねる拙者はむしろ超ラッキーなのでは…!?





・ハーメルン用きゅうついったー。絵とかたまに投稿するから暇やったら巡回しといて

・落書きとかまとめてるところ。リクはこっち

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