菜花黄名子を曇らせたい!   作:わらしべいべー

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【前回のあらすじ】
・死んでると見せかけて死んで無いけど死んじゃうフェイくん
・フェイ「これとは別に黄名子ちゃん写真集とかあるで」
 アスレイ「まじ?」
・フェイくん大好きトリオ集合!フェーダは死ぬ!





おるか

 

 

 

 

 

 

 

 羨ましかった。

 

 常に前を立つその姿が、それゆえに驕れる姿が、見せつけられるその圧倒的力が。ずっと羨ましかった。

 私たちルートエージェントは上下社会の激しい組織。1人秀でたものが出れば他の人員はその秀でた存在の配下になるしかない。これを覆す方法はただ一つ、実力で勝利すること。

 

 けれど私たちにはそれはできなかった。特にエージェントコードを持つ3人にはきっと逆立ちしても勝てない。十分理解していたことだった。

 

 けれども欲しかった。力が。

 私たちがエルドラドにいて学んだことは、圧倒的な力こそが他を支配するに至ると言うこと。ならば弱いままの自分達はきっとこのエルドラドから解放されたとしてもずっと弱く、支配され搾取される側だ。

 それは嫌だ。

 黙々とエルドラドの命令に従っているうちに私たちの心の中にはきっとそんな欲望が芽生えていたってわかる。

 

『オハヨウ諸君★今日から君たちは儂らの仲間じゃよ』

 

 だからこそ、これは運命だと思った。

 目の前にいるかつての排除対象だった狂人USAGI、そしてその仲間たち。

 私たちは彼らの科学力でセカンドステージ・チルドレンとして生まれ変わった。困惑と混乱はすぐに吹き飛んだ。この自分達の体の中から出てくる圧倒的力!念動力にテレパシーなどの常人には扱えない超能力!

 自分で能力を行使して真に理解する。これが彼らが今まで見ていた景色。圧倒的支配者の立場!

 

 常々思っていた。フェーダが羨ましいと。

 自由に力を行使して支配できる彼らが羨ましいと。社会そのものを破壊して新たな世界を作ろうとする彼らが羨ましいと。

 だがもうそんな羨望に垂れる必要も無くなった。自分達がそうなったのだから。今私たちは自由なのだ。もう堅苦しく支配されることはない。

 

 私たちは力を手に入れて、自由になったのだから。

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 

「なのに、なぜだ!なぜなんだ!!」

 

 そう叫んだのはドリムだ。

 すでに試合は前半を過ぎて後半戦も半ば。得点は1-0。雷門が優勢。

 

 端的に言えば、ルートエージェントたちの実力は雷門のメンバーには及んでいなかった。

 ルートエージェントたちはそのほとんどが雷門の動きに対応しきれていなかった。ボールはことごとく奪われ、躱され、かろうじて得点を許さない程度だ。自分達が圧倒するビジョンを描いていた彼らの妄想は奪われたボールと共に打ち砕かれる。

 

「ど、どうしてだ…。俺たちは確かに強くなったはずなのに…!」

 

「クソォ…!」

 

 確かに彼らは慶応の時よりも遥かにパワーアップした。しかしはっきり言えばその実力はフェイのデュプリと比べれば一歩劣ると言わざるを得ない。彼らとの激戦を乗り越えた雷門が遅れをとる理由はなかった。

 それでも尚必死に彼らは喰らいつく。ここまで変わり果ててまで得た力を、自分を否定されたくなどなかったから。

 

 激しい競り合いの末に明後日に飛ばされたボールをオルカがカットする。

 

「…はぁーあ、どいつもこいつも使えないわよねぇ。でしょうベータ」

 

「随分余裕ね。他のお馬鹿さんたちはメンタルブレイク寸前なのに」

 

「ふふ、ま、強者ゆえの余裕ってやつよ♪」

 

「……今は貴女がキャプテンなんですね。オルカ」

 

「ええ、私実験体で1番強いもの。強い奴が支配権を得るのは当然でしょう?」

 

 他のメンバーと違ってオルカは随分と余裕な様子だ。それは自分が敵含めてこの中で1番強いという自負から来るものなのか、それとも勝敗そのものに興味がないのか。

 

「…支配?随分安っぽい概念に囚われてるようで」

 

「安いわけないでしょ!だって私たちはずっとその価値観で生きてきたんだから!強い奴が支配できる!強者の当然の権利!そうでしょ、ベータ」

 

「……」

 

 それはエルドラドでずっとベータがしてきたことだった。自分が強いから他を足蹴に扱う。オルカは今自分がしていることはその延長線上にあることに過ぎないと言いたいのだろう。

 エルドラドでの過酷な環境で歪まされた価値観。それが今の彼女に多大な影響を及ばしてしまっていた。

 

「私はSSCの投与薬の被験者の中でも特別適性が高かった。私は選ばれたのよ!支配者として、搾取者として!」

 

「…ッ!」

 

 オルカから暴風の様に溢れ出るオーラ。SSC化の薬によって本来の何百倍にも膨れ上がらされたその力は今やニケすら超えているだろう。

 弧を描いた赤の瞳がベータを貫く。

 

「なんで余裕なのですって!?決まってる!その気になれば、私1人でも勝てるからよ!!」

 

「きゃあッ!?」

 

 ベータを吹き飛ばし、どんどんと前へ上がっていくオルカ。突然の単独特攻に全員の動きが一瞬遅れる。

 だがそれでもこの旅で単騎で攻め上がってくる相手は嫌というほど見てきた。即座にディフェンスに回った霧野が対応する。

 

「…ッ!?速い!」

 

「貴方たちがトロいのよ!!」

 

 ディフェンスを全員ごぼう抜きにし、そのままゴール前まで躍り出る。

 そのままオルカは背から青黒いオーラを溢れ出させる。ベータは瞠目する。あれは正しく化身のエネルギー。オルカが化身を使えるなど聞いたこともなかった。SSC化は本人の潜在的能力も底上げできてしまう様だ。

 

「慈愛の女神メティス!」

 

 現れた化身は、どこかベータの化身とよく似ていた。

 驚愕しているベータを置いて、オルカは一気に畳み掛けんと動く。

 

「アームド!!」

 

 化身をその身に纏い、そのままシュートの体勢に入る。

 ボールを地面に踏みつけ、赤と青の二つに分かたれる。そのまま視線の上に飛び、それを追うようにオルカも飛び上がる。

 そしてそのままオーバーヘッドで二つのボールを両足で蹴り落とし、一つに集約する必殺技。

 

「ダブルショット!!」

 

 それはベータが最も得意とするシュート技だった。しかし威力は桁違いに高い。

 抉る様に迫るシュートは拮抗虚しく信助の大国謳歌を破り、ゴールネットを撃ち抜いた。

 

「ふふ、あははははっ!どうベータ!凄いでしょ!?これが今の私の力!」

 

「………オルカ」

 

 こうなってしまったのはきっと自分のせいなのだろう。あの日、自分が弱くて、何も知らなくて、あの狂人が恐ろしくて震えて、彼女の本心も何も気づかなかったから、こうなってしまった。

 漠然とした悔やみだけがベータの中に残留していた。

 

 

 

 ー

 

 

 

 

 それからの試合はオルカの独擅場だ。

 敵である雷門だけでなく、味方すらも置いていく荒々しすぎるプレー。力任せに、強引に敵を蹂躙するその姿にかつての彼女の面影は残っていない。

 

「オルカぁ!!」

 

「…!」

 

 そんな彼女にベータは真正面から衝突する。

 

「ベータ…!いい加減諦めたら…?貴女はもう私に敵わない!私は漸く、貴女を超えたのよ!!」

 

「勝手に決めてんじゃねぇ!!こっちはまだ負けを微塵たりとも認めてねぇんだよ…!」

 

 互いの化身が衝突する。

 それはボールの奪い合いというより、戦闘に近かった。化身の幾つもの銃撃が縦横無尽に暴れ回り、相殺と回避を繰り返していく。

 

「オラァ!」

 

「ッ!?」

 

 銃弾に扮したベータが遂にオルカからボールを奪い取った。

 

「やっぱり力にかまけて技術はペーペーのままだなぁ!」

 

「…調子に、乗るなぁ!!」

 

 ディフェンスコマンド03。

 足元のボールにまとわりつく電気のエネルギー。まるで自我を持ったように浮き上がり、そのまま浮遊し勢いよくオルカの元へと向かう。しかしそれを黙って受ける彼女では無い。

 

「チッ、ディフェンスコマンド06!」

『マグネットドロー』

 

 咄嗟に放った必殺技。両足の磁力に反応して惹きつけられていたボールは再びベータの元へと戻る。が、それに気を取られている間に既にオルカは目の前にまできていた。

 

「クソッ!」

 

「ふふ、これで振り出しね」

 

 再びこう着状態に入る2人。技量の差を込めても実力はほぼ拮抗している。このままではジリ貧だ。しかしそれはベータ1人での場合の話。ベータに加勢しようと天馬たちが駆ける。

 

「邪魔、しないで!!」

 

「うぐっ!?」

 

「ま、またコレやんね…!?」

 

 オルカの念動力に体を縛られ、身動きが取れなくなる雷門。コレでは助力するどころか碌にプレーもできない。

 しかしプレーができないのは相手も同じの様だ。荒々しいオルカのプレーに巻き込まれたからか、オルカを除いた全員が既に地に伏している。審判がいれば即刻試合中断というレベルだろう。

 今動ける存在はオルカとベータの2人だけだった。

 

「これでゆっくり話ができるわねベータ…!」

 

「……何のつもり。こんな試合を無茶苦茶にしてまで」

 

「確かに雷門との試合も重要だけど、その前にちゃんと証明しないといけないって思ったのよね。そう、私がちゃんとベータを超えたって証明が」

 

「……どうしてそんなに私を…」

 

「どうしてぇ?」

 

 オルカの赤に染まった両の眼がベータを貫く。

 

「…本当に何にも理解してなかったんだねベータは」

 

「……?」

 

「ラァッ!!」

 

「ッ!!」

 

 言葉を吐き捨てた瞬間にオルカは襲ってくる。飛んできたボールを咄嗟に脚で防ぐが威力の大きさに大きくのけぞらされる。

 隙ができた瞬間をオルカは見逃さない。弾かれ上に上がったボールを追随し、シュートを放つ。

 

「シュートコマンド08!!」

『ラブ・アロー』

 

「うごぉッ!?」

 

 シュートはベータの胴体に直撃し、そのまま地面に叩きつけた。冗談なしに人を殺しかねない一撃。化身を出してなければ危なかっただろう。

 そうしてオルカは咳き込むベータの体を踏みつける。

 

「ウガッ…!?」

 

「私はねずっとベータが羨ましかったのよ!誰よりも強くて支配者面な貴女が心底ね!」

 

「私だってずっとそうなりたかった…!貴女みたいに強くなりたかった…!でも私には才能はなかった!だからずっと嫉妬してた!!」

 

「知ってる?私貴女と会うまではチームの中でも爪弾き者だったのよ。弱いから!!」

 

「貴女に近づいたのも少しでも自分を強く見せたかったから!!私は貴女の近くにいるから強いってみんな思うでしょう?下手に手なんか出せないでしょ!?」

 

「心底腹が立ったわ!こうやって他人に取り入らないと強く出られない自分に!!いつまで経っても弱い自分に!!」

 

「だから今の私は最高に幸せなのよ!!私が誰よりも強くなった!!誰よりも支配者になれた!!」

 

「もう少しで私もこの調整機無しで活動できる様になる…!そうすれば私は本物になれるのよ!!誰よりも強い本物に!!」

 

「アハ、アハハハハハハ!!!」

 

「オ…ルカ…」

 

 これがオルカの思いの丈だった。ずっと彼女が内心で溜め込んでいたもの。

 ベータは思う。正に因果応報だ。過去に行ったことや蔑ろにしてきたことが自分に返ってきただけ。内心で自嘲する。友人などと言っておきながら、己は彼女の何も理解しようとしていなかった。その結果が今。

 唯一の友人は自分からこうなることを望んでしまった。

 

「うぐ……ゴホッ」

 

「無駄よ、無駄無駄!今の私とベータじゃ測りきれない差があるんだから」

 

「…だから、それをテメェが、決めんじゃねぇよ!!」

 

「!!」

 

 ミキシトランス、ビッグ。

 オーラの奔流と共にオルカを吹き飛ばす。

 

「そう言えば手に入れてたわねそんな力!私には意味ないけど!!」

 

「ラァッ!!」

 

 互いの蹴りがボールにぶつかり合う。周囲にいる数人を吹き飛ばしながらも、力は拮抗。互いに弾かれボールは空に上がる結末となる。数度跳ねながらベータの方へと転がるボール。

 

「ハァ、ハァ…!あっはは…、流石ねベータ。短期間で前よりずっと強くなってる。…本当、憎たらしい…!!」

 

「こっちの台詞だ…!妙な薬に頼りやがって…!」

 

「ハッ、でもね。やっぱり旧人類は私たちセカンドステージ・チルドレンには勝てない。生物的に私たちが優位!それを教えてあげる!」

 

「!」

 

 突如オルカにどこからともなく現れたエネルギーが集まっていく。それはオルカの身体に吸収されていき、みるみるうちに力が増していくのが遠目でもわかる。どういうことかとベータは周囲を見る。

 

「まさかテメェ…!」

 

「あっははは!気づいた!?もう遅いけどね!!」

 

 今オルカは他のメンバーからオーラを吸い取っているのだ。

 どうせ使えないのならば自分が使い倒す。歪な支配者の発想。このままでは倒れている彼らはエネルギーを全て吸い取られて死んでしまう。それを察した瞬間、ベータは走り出していた。

 

「オルカ!やめろテメェ!!」

 

「ふふ、いーやッ!!」

 

「ッ!…やめやがれ!!」

 

 放たれる渾身のシュート。流石に生身で受けるわけにはいかなかったのか、エネルギーの吸収を解除してボールを防ぐ。

 

「全部は吸いきれなかったわね。まぁいっか、これだけあればできるわ…!」

 

「あ?」

 

 オルカは既に十分すぎるエネルギーを仲間たちから奪った。そのエネルギーで何をするつもりか。嫌な予感がベータの背を突く。

 

「ベータ…、貴女に教えてあげる!私が一体何者になったのかを!!」

 

 瞬間、叫びと共にオルカの身体から溢れ出るオーラ。ただ暴風の様に出しているのかと思えば、そうではない様だ。

 みるみるうちにオルカの身体が変質する。髪は紅色に変化し、肌は若干の白みを帯び、瞳は更にその狂気を増す。

 

「ハァーッ、ハァーッ…!…ふ、ふふ!できた!できたわ!!」

 

 オルカは自身の手を見て歓喜に打ち震える。考えていた通りにうまくいく時ほど嬉しい瞬間はない。

 自身の身体から滲み出るあのオーラ。オルカは完全にあの力をものにしたのだ。

 

「ついに手に入れた!ついにモノにできた!!USAGIの力!!!」

 

「貴女…、何言って…」

 

 そう言葉をこぼすベータだが、確かにオルカの言う通りだった。今彼女の身体から感じる力は紛れもなくUSAGIの力。狂気と気持ち悪さを孕んだ親しみすら生まれる圧倒的邪悪。まるでUSAGI本人が目の前にいるかの様な圧倒的存在感。

 

「あっははははははは!!!」

 

「…………」

 

 理解している。この選択は恐らくオルカ自身のものだと。USAGIがいなければこうはならなかったとはいえ、ここまで彼女を追い詰めていたのは自分だ。

 しかし、それでもこう溢さずにはいられなかった。

 

「絶対許さねぇ…!あのクソUSAGIがッ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 突然だがセカンドステージ・チルドレンになれる薬を作ったのはこの僕フェイである。

 

 セカンドステージ・チルドレンの力でパッチアップされた脳みそを使って、俺様の遺伝子をもとにして作り出した薬。

 原作ではセカンドステージ・チルドレンから元の人間に戻る薬があった。ならば逆も可能というガバにも程がある理論だったけどなんとまぁ完成しちゃったんだよねこれが。

 

 しかし欠点もまた存在する。

 一つは施術後暫くは専用の調整機械が無いと超能力を扱うことができなくなること。もう一つが理性の崩壊だ。

 特に重篤なのは二つ目で、過度に適正が無い限りは必ず起きる副作用。さっきも言った通りこの薬の素材僕の細胞と遺伝子だから、投与した人皆んなわっちみたいな性格になっていくんだよね。力もだけど。

 

(本当は使うつもりなかったんだけど、まさかメイアちゃんが持ち出しちゃうなんてなぁ…)

 

 気づいた時には時すでに遅し。フランスから帰ってきた時には、ルートエージェントを使った便利な兵隊が完成しちゃってたというわけだ。

 

「まぁ、それはそれで良いよね。天馬きゅんたちが強くなる肥料になってもらおっと」

 

 SSCを人間に戻す薬であっさり元に戻るし、そこのところは心配しなくても大丈夫である!

 

「にしても怖いなー、女の戦いってやつ。巻き込まれたくはないもんだぜ〜」

 

 他のメンバーの遺伝子にあるワタクシのオーラを使って自分の遺伝子を強化するとは、強さに対する執念がすごい。

 正直原作ではモブキャラも良いところな彼女があそこまで化けるとは思わなかったね。ゲームアニメでは絶対に見られなかった光景だ。ベータちゃんもすっかり雷門っぽくなっちゃってるし、これだから原作崩壊はやめられない!止まらない!

 あいぶらびみーコラボの化身をここで拝めるとは!いやー、モブキャラにも気は配るものですねぇ!

 

「…さて!オルカちゃんたちが頑張ってる間にやることやんなきゃ!」

 

 じゃないと態々ニケちゃんを逃してまでこのエルドラド本部を開けた意味がなくなっちゃうからね!正直こういう機械をいじるのは苦手なんだけど、曇らせのためならなんら問題なしッ!何より手引きした洗脳された敵が戦う中1人破滅のために暗躍する俺様!実にラスボスっぽい!

 サリュー君たちには雷門への挑発用の放送を繋げてるって言っておいたし今のうちだね今のうち!

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

「USAGIの細胞が投与薬の正体…!?」

 

「そうよ、アイツの細胞にはなんでか知らないけどそういう力があった。取り込んだ旧人類をセカンドステージ・チルドレンに変化させてしまう細胞。まるでウイルスよ」

 

 傷を手当てされているニケから告げられる真実。それはベンチにいる彼らを動揺させるには十分だった。

 

「元に戻る方法はあるのか」

 

「……さぁ。少なくとも私は知らないわね。薬を作ったUSAGIなら知ってるんじゃないかしら」

 

「…マスター」

 

『ああ、聞いていた。…全くもって厄介なものを作ってくれたな奴は』

 

 USAGI。彼の脅威と影響は最早リーダーであるSARUを超えていると言って良い。フェーダの中で何よりも優先して排除するべき対象だとトウドウとアルファの考えが一致する。

 

「それにしても、ふふ、私なんかを助けて良いのかしら。その気になれば私は貴女たちを一瞬で肉塊にできるのよ」

 

『貴様に気を許したつもりは毛頭ない。状況を鑑みて敵の可能性は低いと思ったに過ぎない』

 

 現状は藁にも縋りたい程に切羽詰まっている。たとえ裏切られる可能性があろうとも、味方につけておきたかったというのがトウドウの本音だった。

 

「そう。ま、勝手に解釈してなさいな。私は私のやることをするだけよ」

 

 どの道USAGIを倒し歴史を変えるまでの関係だ。それが終われば再び敵同士になる。ニケもトウドウも油断は微塵たりともしていなかった。

 

「…とは言っても、まずはあの元旧人類をどうにかしないといけないところだけどね」

 

「…ベータ以外はまだ動けていない。力を増したせいで拘束力も増している。こちらに刃が向くのも時間の問題だな」

 

 幸運にもオルカ以外のメンバーは再起不能。今彼女の意識は全てベータに向いている。最早試合の体を成していないが、時間も残りわずか。試合の勝敗はベータにかかっていると言って良い。

 

(まぁ、今のあの女に勝てるかは知らないけどね)

 

 推し量るに今のオルカは普段のUSAGIとほぼ同等の力を持っていると言って良い。ベータにとっては厳しい戦いになる。

 

(…チッ、力が強過ぎて干渉もできない)

 

 超能力の力は意志の力で増すこともある。オルカにとって今彼女との試合を邪魔されるのは何よりも許されないことなのだろう。

 現実を見てこの時代の未来は彼女1人に懸かってしまったことを認めざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 オルカは他のメンバーの遺伝子から発せられるオーラを回収。それを取り込み、自身の中にあるSSCの遺伝子を強化したのだ。その力は先程の比にならない。

 

「うがぁッ!?」

 

「はいゴール♡」

 

 放たれたシュートがベータごとゴールを撃ち抜く。強烈な痛みと吐き気が彼女を襲う。

 

「ゴホッ、ガハッ…!」

 

「あっはははは、力の差が歴然になっちゃったねぇ!今のベータすっごく無様よ!」

 

 ベータは痛みに耐えながらもかろうじて立ち上がる。その瞳は極度の疲労とダメージで虚になりながらもオルカを捉えている。

 

「オ…ルカ…」

 

「ああ、良い。その表情とても良いわベータ!見せて!もっと、もっとその苦しんだ顔を私に!!」

 

「…嫌よ、このビッチが」

 

「…痛め足りなかったかしら」

 

 ベータはそのままおぼつかない足取りでポジションに戻る。今や2人しか動くことのできないこのフィールドで再び試合が再開する。

 

 そこからはまさに蹂躙。オルカは背後にあるゴールを無視してベータを徹底的に攻撃し始めた。

 ベータは腹や頬にめり込む打撃を受けながらもボールを奪おうと必死に足掻く。しかしその様は側から見ればあまりに痛々しかった。見ていることしかできない天馬たちに焦りが募る。

 

(不味い…!このままじゃベータが…!)

 

 実力差は明白だ。このままでは彼女がやられるだけやられた上で負けてしまう。しかし拘束は外れない。視線の横でザナークが雄叫びを上げながら破壊しようとしているがそれでもあと一歩自由には至らない。

 しかし諦めるわけにはいかない。フェイの遺志を汲むためにも、取り戻すためにも。

 

(何か方法があるはずだ。何か…!)

 

「……おい天馬」

 

「…え、白竜?」

 

「俺に考えがある。全員に伝えてほしい」

 

 

 

 

 

 ー

 

 

 

 

 

「ハァッ、ハァッ…!」

 

「初めて知ったわ、貴女がこんなにタフなんて。でも…」

 

「……ゴホッ」

 

 ついに限界が来たベータはミキシマックスが解け、地面に伏す。もはや目の前にいるかつての友人からは浅い呼吸しか聞こえない。

 それを見たオルカはこの上ない喜びに満たされる。

 

「…勝った。勝ったわ!!倒せた!ワタクシがベータを!今見下ろしている!!」

 

 私が勝った!!

 そんな勝ち誇った高笑いだけが辺りに木霊する。オルカは自分の宿願をようやく達成できたのだ。笑わずにはいられない。

 

「我はようやく乗り越えた!儂の中にある壁を!ずっと立ちはだかっていた忌忌しい壁を壊せた!!」

 

 オルカの心の中には常にベータがいた。それはセカンドステージ・チルドレンとなっても自身の心に巣食い続けていた。しかし今それは取り除かれた。それが嬉しくてたまらない。

 

「ふふ、大丈夫よ。貴女は後でしっかり僕の愛玩具にしてあげるから」

 

 肉体的には勝利した。ならば次は精神的にひれ伏させる。それをもってオルカはベータを超えたと証明できるのだから。

 が、それは後でいくらでもできる。一旦内におる興奮を醒まし、冷静にゴールを見据える。

 

「…ふぅ、さて。後はゴールを決めるだけだね」

 

 一応は試合という形式。勝ち越しているとはいえ、勝利は確実なものとしていたい。試合時間は残りわずかだが、心に大きな余裕ができたオルカは悠々とゴールに歩き出そうとする。

 

「……なんで」

 

「ん?」

 

「なんでそんなふうに酷いことができるやんね…!友達だったんでしょう!?」

 

 そう声を荒げたのは黄名子だ。黄名子はベータからオルカのことを少なからず聞いていた。ほんの少し、そっけない態度での返答だったが、ベータがその友人のことをとても大切に想っていることはちゃんと理解できていた。だからこそ、今の状況に我慢ならなくなってしまったのだろう。

 しかしオルカはどうでも良さげに聞き流す。

 

「貴女に俺様たちの何がわかるの?何の関係もない部外者が私たちを語るのはやめてほしいんだけど」

 

「関係なくなんかない!だってウチらはベータの仲間だから…!」

 

「…チッ、わっちはそういう歯に衣着せた薄っぺらい台詞が1番嫌いなのよ!」

 

「薄っぺらくなんか無い!ウチも!皆んなも!フェイも!ちょっとの間だけどちゃんと絆があった!貴女みたいに友達友達言いながら痛めつけてる方がよっぽど薄っぺらいやんね!」

 

「このッ、口を閉じろ旧人類がぁ!!」

 

 我慢の限界を迎えたオルカの蹴りが無防備な黄名子に放たれる。

 その瞬間だった。遮るようにベータがキレのある動きでオルカに衝突したのは。

 

「ッ!?なんで!?気絶したはずじゃ…!?」

 

「一瞬本当に気失ったけどな…!どっかの馬鹿のせいで目が覚めたぜ…!!」

 

 弾き飛んだボールがベータの足に収まる。

 喜ぶ黄名子たちだが、状況が好転したわけでは無い。未だベータは肩で息をしていて、試合時間も僅かだ。

 

(…ダメージがなくなったわけじゃない。今の状況はただの痩せ我慢に過ぎないわ。さっさと叩きのめして追加点を取る!)

 

「はぁッ!!」

「だぁッ!!」

 

 2人はゴールをもぎ取るために再び衝突する。ベータは競り合っているボールを奪わせまいと持ち堪えているようだが、地力の差は歴然。このまま押し切れるとオルカは確信する。

 

「ぐぐぅ…!」

 

(…なんだ?)

 

 違和感。

 これだけ力を入れているのに未だに押し返せない。相手はミキシマックスはおろか、化身すら発動できていないにも関わらずだ。

 いや、それどころか相手の力がみるみる大きくなってすら思える。いや、なっている。

 

「な、なに!?なんで!?どうなって!?」

 

 オルカの動揺と同時にボールが上に上がる。ベータはそれをすかさずカット。シュートの体勢だ。

 

「虚空の女神アテナ!!」

 

(なんで…!どうして…!!)

 

 その瞬間、オルカは気づく。ベータの身体に供給されている膨大なエネルギーに。そのエネルギーの供給元は、雷門の面々。

 

(こ、こいつらぁ…!!)

 

 化身ドローイング。

 他のメンバーに化身のエネルギーを供給する技術。しかし供給しているのは化身エネルギーではなくオーラだ。本来なら難しい技術だが、全員が偉人の力を得ている今の雷門ならば十分可能な技。

 他のメンバーのオーラを得たベータは短時間ながら今のオルカに匹敵できる力を得た。

 

「…ふっ、ざけんなぁ!!」

 

 慈愛の女神メティス。

 その化身の形は、紛れもなく自分の前を歩いていたベータの憧れの証。そうなりたいと願った形。

 すっかり赤に染まってしまった彼女の願望そのものをむき出しにして、ベータのいる空へと跳んだ。

 

「勝負だオルカ…!借り物の力同士どっちが強いか勝負しようぜ…!当然勝つのは俺だがなぁ!!」

 

「できない!!できないできないできるわけがない!!ワタシはアナタを超えたんだから!!ベータぁ!!!」

 

 宙で翻り、2人は同時に必殺技を放つ。

 

「「アテナアサルト!!」」

 

 2対のエネルギーの奔流からなる銃撃が光を伴って衝突した。ベンチを吹き飛ぶのではないかと思うほどの余波が辺りを襲う。

 オルカは思う。確かに強い。しかしまだ自分の方が上だと。このまま競り合っていればベータを吹き飛ばして自分の勝ちだ。オルカは超能力もフルに稼働させて全力でボールを押し込む。

 

 その瞬間のことだった。突如ベータが化身をアームドした。

 巨大な力の塊同士でぶつかり合っていた状態。そんな中で突然片方の力が消えて仕舞えばどうなるか。

 力の重心がズレて、スパイクに挟まれ変形していたボールがすり抜けるようにオルカの足を抜け、顔の真横を通過する。

 

「…は?」

 

 そのままベータはオルカを踏み台にし前に出て、鋭いシュートをゴール目掛けて放った。キーパーが倒れ伏しているゴールは当然ネットを揺らす。

 動揺から地面に転がり落ちるオルカ。そんな彼女をベータは何の感情も無い目で見下ろす。

 

「な、なんで…!?」

 

「勝負を焦ったわねオルカ。私は最初から力勝負をするなんて一言も言ってないわ」

 

 間隙を縫う、という言葉がピッタリと当てはまっただろう。

 頭に血が登った彼女ならば必ずあのタイミングで全力を出してくると確信していた。そのタイミングを寸分違わず見極めたからこそもぎ取れたゴール。

 

「………」

 

 何かがオルカの中で折れた音がした。

 この戦いは読みを違えたオルカの完全敗北だ。しかしそれを受け入れられるほど今の彼女は冷静ではない。自分の心が折れていることにも気づかずに執念を燃やして立ち上がる。

 

「ま、まだよ!まだ試合時間はある!ベータはもうオーラを使い果たした!貴女1人なら私が…!!」

 

「無駄じゃよ」

 

 その声と同時にオルカの意志に反して雷門全員の念動力が解けた。完全に自由の身になる。

 

「あ、アルノ博士…!?」

 

「ふぃー、間に合ったわい」

 

「ど、どうやってこのフィールドの中に…」

 

「スフィア・デバイスのシステムを弄るなど儂にかかれば朝飯前じゃよ」

 

 ホッホと髭をいじりながら笑う。

 

「な、何をしたのお前!私の超能力が勝手に解けるなんてあり得ない…!!」

 

「何簡単じゃよ。このフィールドに超能力を阻害する電波をちょちょいと出させてもらったわい。もう卑怯なことはできんぞ」

 

「う、うぅぅぅ!!」

 

「オルカ…、もう諦めて。貴女はルートエージェントのオルカなの。セカンドステージ・チルドレンじゃない」

 

「私はッ!究極の力を手にしたはずなの!誰も彼もをねじ伏せられる力を…!!ベータも超えられる力を!!」

 

「…本当は、分かってるんでしょ。そんな力で勝っても意味なんて無いって」

 

「五月蝿い!五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!意味ならある!私が貴女を超えることに意味が!!もう弱い私なんかじゃないって!誰にも見下されないって!!」

 

「そんな力持ってても私には勝てなかった。…独りよがりじゃ勝てないってことぐらい、貴女が1番よく知ってたでしょ」

 

「そんなわけない!!私は貴女になりたかった!!1人で何でもしてしまう貴女に!!でも、なんで、届かないのよ…!!今の私はベータを超えているはずなのに…!」

 

「………」

 

 鏡を見ているようだった。かつての自分と同じ道を歩いた友人。

 力でどんなこともできると思っていた、絶対的な力こそが全てだと思っていた。そんな少し前の自分を写した鏡。ならば自分がするべきことはきっと一つだろう。

 

「オルカ、私は…」

 

「触るな!!」

 

「ぐっ…!」

 

「ベータ!!」

 

「私はセカンドステージ・チルドレンになったのよ!!最強の種に!!旧人類ごときが触れるなぁ!!」

 

「……ッ」

 

「私は他とは違うの!!特別なの!!私は!私は私は私は私はぁ!!!!」

 

 発狂したように喚き回るオルカ。どうやら話し合いでの解決は困難なようだ。

 

「…降伏の意思なし。ほれ、皆。反撃時じゃよ」

 

「…うん、そうだね。行こうみん」

 

「待って」

 

 天馬が全員に発破をかけようとした時に、なぜかベータが待ったをかけた。

 

「……もう、必要ないです」

 

「えっ…」

 

 そう言われると同時に気づく。オルカの声が聞こえなくなっていることに。

 どういうことかと全員がオルカの方を見ると、なんと彼女は白目をむいて失神していた。

 心神喪失。彼女は自分が手に入れた全てを否定されて完全に自失してしまったのだ。

 

 ベータはオルカに近づき、静かに抱きしめた。

 

「……ごめんね、オルカ。本当にごめんね…」

 

 

 ──雷門VS元ルートエージェント。元ルートエージェント側のメンバー全員の試合続行不可につき、2-2で引き分け。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 

 試合終了後、元ルートエージェントたちは全員拘束、回収され、拠点に運ばれていった。これからはアルノ博士やサカマキによって元に戻る方法を模索するらしい。

 

 天馬の中にはいまだにモヤモヤとした感覚が残っている。あんなに後味の悪い決着は初めてだった。力に溺れて、最後まで堂々としたプレーができなかったあの試合は、サッカーをこよなく愛する天馬にとって悔いが残るものでもあった。同時に出てくるあのような薬を作ったフェーダに対する怒り。絶対に彼らを倒すと改めて天馬は誓う。

 車で運搬される彼らを見送る中、おずおずとした様子でベータが話しかけてきた。

 

「…その、さっきはありがとうございます。助かりました」

 

「うん!全然大丈夫だよ!俺たちは仲間だからね。むしろこれからももっと頼ってほしいくらい!」

 

 あれだけトゲトゲしていたベータが素直に礼を言ってくれたことに嬉しくなって笑顔で応える天馬。周りのメンバーも温かい目でベータを見守っている。

 

「それに礼なら白竜に言って。白竜の作戦のおかげで勝てたんだからさ!」

 

「…そう、なら、ありがとう」

 

「…俺は勝つための策を開示しただけだ。勝利を掴み取ったのはお前自身の力。礼を言われるほどでも無い。寧ろそれまで助力すらできなかった俺たちこそ恥じるべきだ」

 

「そうだな。あそこまで超能力を派手に使ってくるなんて、もっと対策を考えておくべきだった」

 

「でももう大丈夫だよね!あの超能力を防げるマシンがあるからさ!」

 

「流石は未来の博士やんね!セカンドステージ・チルドレンの対策もバッチリ!」

 

「…礼ならフェイに言ってやれい」

 

「えっ?」

 

「実はこの超能力を阻害するマシンを作ったのはフェイなのじゃよ。彼奴がワシのラボに来たばかりの頃に作った習作だったのじゃが、思えばあの頃から奴らと戦えばこうなることを見越していたんじゃろう」

 

「フェイが…」

 

「……また、助けられたな」

 

「…うん。やっぱり、ウチの子供は凄いやんね」

 

「ああ、大したやつだよ。アイツは」

 

 やはりフェイは自分たちのことを見守ってくれている。こうして助けられた今だからこそ改めて覚悟できる。必ずフェイを取り戻すと言う覚悟が。

 

(待ってて、フェイ…!)

 

 その時、聞き馴染みのある声があたりに響いた。

 

『こんにちは、旧人類のみんな』

 

 全員がほぼ同時に声の聞こえた上方向へ向く。そこには巨大な立体映像に投影されたSARUがいた。

 

「SARU…!?」

 

『知ってる人もいるだろうけど、僕はSARU。フェーダを率いている者だ』

 

『ご存知の通り僕らの目的は君たち旧人類を弾圧して、僕たちセカンドステージ・チルドレンの支配する新時代を作り出すことだ』

 

『市民も大量に攫って、不安になってる人も多いだろうけど攫われた彼らは決して悪い扱いにはなっていない。寧ろ幸福になっていると言っても良い。何せ僕らの作る新時代の新たな住人になれるんだから』

 

「…あの野郎、何が幸福だ。オルカたちみたいに全員支配しようとしてるくせに…!!」

 

『だけど利口じゃない君たちはきっと反抗しようとするだろう。希望があるなんて宣うだろう。…だからここから証明してあげよう。希望なんてもう無いんだと』

 

『今この街には僅かなエルドラドの残党とライモンと呼ばれるサッカーチームが来ている。彼らはこの町で唯一僕らに反抗している存在と言って良い。事実、さっき僕たちの派遣したチームが一つ倒された。旧人類にとっては彼らが最後の希望と言って良いだろう』

 

『だからこれを倒して僕らがはっきりとこの世界を支配できたと言う証明にする。もう誰も逆らってはいけないと言う証明にね』

 

『…聞いているかいライモン。僕らフェーダは君たちに勝負を申し込む。明日の午後、エルドラド本部に来ると良い。ちなみに時間までに来なかったら、市民に無差別攻撃を始める。…フィールドで待っているよ』

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃー、これでお仕事終わりっと」

 

 後は雷門が頑張ってサリューたちと対峙してラストスパートに入ってくれるだけである。しかし熱い勝負だった!アニメで言うと強大な戦いの始まり!って感じかな?ベータちゃんのベストアバウトも見れたし、黄名子ちゃんも問題なく活躍してたし、ワタクシ的には大満足だね!

 あ、そうだそうだ。外の様子見とかなきゃ。定期観察は大事だからね、大事。

 

「……ん?」

 

 突然だが、俺様的にはこの黄名子ちゃん曇らせ大作戦は概ね上手くいっていると思っている。

 小さなイベントから信頼と幸福を積み重ねていって、告白イベに離別、そして死別イベ。全て滞りなく行えて、ジェンガを崩し落とす準備は最終スパートに入っていると良い。側から見ればこのまま行けば最高のフィナーレを迎えられること間違いなしと思うことだろう。

 

 しかし僕ちゃんはたった一つ大きなミスをしてしまっていた。

 決して作戦に不足があったわけではないが、強いて言うなら相手を侮っていたと言うべきだろうか。何せ原作の描写だけでは未知数な部分が多過ぎた。他に手札を隠していてもなんらおかしくない存在。だからこれはただの注意不足。

 しかしこれを放置していれば今後大きな影響を及ぼす可能性がある。ここまで来て曇らせ台無しなど目も当てられない。念のためストッパーはつけておいたけどさっき述べた通り未知数部分が多すぎる。不安の芽は摘んでおくに過ぎたことはないのだ。

 だからこそこの状況はラッキーだと言うべきだろう。態々探す手間が省けたのだから。そのまま窓から身を乗り出し、エルドラド本部の頂上に飛び立つ。

 

「やぁやぁ、いらっしゃい!久しぶりだねー、マスタードラゴンちゃん!」

 

『………』

 

「特異点の崩壊に巻き込まれてないようで何よりだよ。それで?こんなところに何の用ですかな!」

 

『……貴方と話をしに来ました』

 

「良いね。丁度儂も誰かとお話しして暇潰したい気分だったんだー。……で?話だけしに来たわけじゃないんでしょ?」

 

『…貴方ならば、私がここに来た意味がわかるはずですよ。フェイ・ルーン』

 

「………」

 

 ま、バレてるわな。

 此奴を洗脳した際に感じた、まるで内側に入り込まれるような違和感。どうやらあのドラゴンちゃんは僕ちゃんの心の中を見てしまったらしい。えっちですねえっち!

 どこまで見たのかは知らないけど、どの道某がフェイだとバレているのだ。超山場が始まるまでにどうにかしなければならない。要は口封じだ。

 

『正直、己が目を疑いました。貴方が黄名子の未来の息子だと知った時は。本当に貴方のような存在が黄名子の子供なのかと』

 

 何も間違ってないぜ!恨むならフェイ・ルーンの中身に俺ちゃんを選んじゃった神様的なアレを恨んでね!

 

『私は黄名子の願いを叶えてあげたい。黄名子の理想を現実にしてあげたい。どこまでも子どもを想っているあの子に、幸せになってほしい』

 

 それは無理なお話しですよ、奥さん。

 

『だから私は知りたいのです。何故貴方がそのような凶行に走ったのかを。その心の真意を』

 

「聞いてどうにかなると思う?」

 

『…行動をやめないと言うのならば、私は貴方をここで止めなければならない』

 

「できるの?君に」

 

『無理にでもして見せます。このような事実を黄名子に知らせるわけにはいきません』

 

「それは困るなぁ。そこが1番美味しいところなのに。メインディッシュを取られるわけにはいかないヨ!」

 

 さながら気分は展開が盛り上がったところでゲームを取り上げられる子供の気分だ。原作キャラの頼みといえど、それだけは了承しかねる。

 と、マスタードラゴンちゃん戦闘体勢だね。どうやら本気で止める気らしい。まぁ予想と違うけどこう言う展開もアリか。サッカー関係ないところだけがキズだけど。

 いや今からでも誘おうかな。恐竜ができるんだしドラゴンもできない道理はないよね。

 

「よし、じゃあ超次元らしくサッカーで決着つけようぜ!」

 

『お断りします』

 

 ぴえん。

 

 

 

 







・SSCになれる薬:フェイくんの細胞を主成分として開発された薬。投与することでセカンドステージ・チルドレンのようなフィジカルや頭脳、超能力を扱えるようになるぞ!ただし時間が経つごとに性格がフェイくんっぽくなるので注意だ!因みに同じ遺伝子を持っているのでフェイくん的にはかなり好き勝手できたりする。


【今日の格言】
・にしても怖いなー、女の戦いってやつ。巻き込まれたくはないもんだぜ〜

【作者のコメント】
・志村、うしろうしろ。


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