菜花黄名子を曇らせたい!   作:わらしべいべー

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【前回のあらすじ!】
・猫被り系女子、捨て猫系女子になる
・霧ジャンを信仰しなさい!さすれば勝利を約束せん!
・ワンダバ「私の存在意義が…」



うさぎ!

 

 

 

 

 

 

 

 突然のトラブルにより撤退したザナーク・ドメイン。彼らはマントの用意したアジトで体を休めていた。

 

「お前、アレはどういうつもりだ」

 

「どういうつもりって…貴方の望み通り彼を骨のあるプレイヤーにしてあげただけよ」

 

「フン、俺の目には明らかな悪意がこもってたように見えたがな」

 

「まさか。私がジャンヌ・ダルクに個人的な恨みがあるとでも?」

 

「そっちじゃねぇよ、あの餅女にだ」

 

「………それこそ気のせいよ。彼女とは初対面だもの」

 

「ふん、そうかよ。まぁあの口先だけのピンク野郎がそれなりになったのは事実だからな。容認してやる」

 

「……」

 

「フン、テメェが本当は何の目的で俺たちに与してるのかは知らねぇが、まぁ精々利用させてもらうぜ。俺の楽しみのためにな」

 

 そう言ってザナークは部屋を出て行った。

 1人残されたマントは部屋の椅子に腰掛けて、フェイに現状を連絡する。

 フェイとデュプリは互いの任意を取ることで必要なだけの情報を同期できる。分身デュプリを除いてだが。アレは完全な同一存在に近いので、そもそも同期の必要がない。思考は常に共有状態だ。

 まぁそれでも飽くまで共有の権限はフェイにあるので、無理矢理マントたちの情報を同期することもできるが、フェイはただの一度もそれをしたことがない。

 

「…ふふ、父さんが私たちのことを1人の存在として見てくれてる証かしら」

 

 父さん。それはフェイを指した言葉に他ならない。

 

 結論から言うと、マント含めたデュプリたちには自我がある。

 というのもそもそも彼らデュプリは原作フェイのデュプリとは全く異なる。

 彼らは洗脳の超能力の応用で人格をプログラムされている。なので人形化身ではあるものの、中身は原作のデュプリとは全くの別物であり、かつその大元はフェイ自身のイメージに大きく依存した再現物だ。

 早い話、彼らに思考し、知恵を身につけることを無意識にフェイが決めてしまっていたのだ。誰だってファンならそのキャラクターが動いて笑っているところを見たいのは当たり前だから。

 

 つまり、彼らは原作のような単なる深層心理から生まれた幻影ではなく、本当に独立した存在として生きている。

 普通は感情の無いプログラムとして作ったものが原作フィルターありきとは言え、感情豊かに振る舞っていたら違和感を感じるものだが…、

 

「父さん、不思議と人の情には鈍いものね」

 

 デュプリにとってフェイは父だ。文字通りの創造主であり、自分たちのことを慮り、隣にいてくれる人。例えそれが本物足り得ない、愛玩具に向けるそれであったとしても、デュプリたちにとってはそれで満足だった。

 

 …故に気に入らない。あの菜花黄名子が。あれほどにまで自分たちの父に求められている彼女が、歪んでいようが無償の愛を捧げられている彼女が。

 しかしだ。デュプリたちはフェイの全てを知らない。情報の同期は飽くまで自分たちの情報を与える手段。フェイの中にある情報を彼の許可なしで見ることはできない。なので彼が自分たちが生まれてくる以前に何を見て経験し、何を思ってきたのか、何故そんなにも狂ったように1人の存在に執着するのかもわからない。つまり彼らに原作知識は存在しないのだ。

 

 マントが懐から取り出すは、彼女がこっそりと撮影した黄名子の写真。フェイに頼まれ撮ったものだが、その顔はヘラヘラと笑っていて見ていて腹が立つ。

 

(お前のせいで父さんはもう…!!)

 

 デュプリたちが気づいた時には、状況は最早取り返しのつかないところまで来ていた。もうフェイ・ルーンは止まらない。

 この本編の問題が終わった時、彼に待ち受けているのは彼にとっての幸福かつ絶対の死だけだ。

 

「菜花黄名子、私たちは貴女を絶対に許さない」

 

 やるせない怒りを表すが如く、一切の情なく、ぐしゃりと写真を握りつぶした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦に勝利した天馬たち一行は、国のために一晩先に帰ったシャルル王子の待つ城へと帰還していた。王子への謁見が終われば晴れてこの時代ですることも終わりである。

 

「いやぁ、一時はどうなるかと思ったけど無事オーラもゲットできたし万々歳だね!」

 

「それにしてもワンダバの持ってる銃がなくてもミキシマックスできるなんてな。驚きだ。何かコツとかあったのか」

 

「…どうなんだろう。俺もいつの間にかなっていたって感じだから、よくわからないんだ。すまない」

 

「ま、不味いぞ…、タダでさえ監督の座を奪われ気味だというのに、ミキシマックスをする役目さえ無くなってしまえば…」

 

 己の存在意義に危機感を持ち始めたワンダバを他所に天馬たちは楽しい話に会話を弾ませる。

 

 そんな中、黄名子は1人沈んだ表情を浮かべていた。

 彼女の脳裏に映し出させるあの時の記憶。自分を憎たらしげに睨むあの少女の顔。

 普段ならば軽く流しているはずなのに、何故かやけにそれが頭に残った。まるでヘドロのようについて離れない。彼女は一体何だったのだろうか。

 

「どうしたの黄名子。あんまり元気ないけど…」

 

「な、何でもないなんね!今度あのザナークが来た時にどうやってやっつけてやろーって思ってて…」

 

「確かに、今回引き分けにまで持っていけたのは運が良かった。ずっと奴が遊んでいたからこその結果だ」

 

「じゃあ帰ったら特訓ぜよ!今度こそあのザナークに勝って一泡吹かせてやる!」

 

 そう意気込む錦。確かに今回彼らを同点にまで追い込むことができた。さらに強くなって挑めば勝利することも幻想ではないだろう。

 

「…それにしても、謁見が終われば俺たちはもう帰るのか」

 

「…そんなにジャンヌに会えなくなるのが寂しいか?」

 

「……そうだな、寂しい」

 

 珍しく自分の内心を素直に吐露する霧野に神童が驚いていると、ジャンヌから声がかかった。

 

「みなさん、そろそろ到着しますよ」

 

「よし、じゃあ先に帰ったシャルル王子に謁見して早く帰ろう!」

 

「……ねぇ、天馬。気のせいだと思うけどさ、向こうのほうから煙が上がってる気がするんだけど」

 

「えっ?」

 

 信助の言葉に釣られて指差された方を見ると、確かに黒い煙が上がっていた。しかもあの方向は自分たちの向かっているシャルル王子のいる城だ。

 

「た、大変だぁ!!」

 

「!?」

 

 前方にいた兵士が天馬たちの前にやってくる。どうしたのかとジャンヌは問いかける。

 

「城が、シャルル王子のいらっしゃる城が倒壊して燃えているんだ!それだけじゃない、近隣の街も…!」

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 天馬たちが城に駆けつけた頃には火の手は完全に城全体を覆っていた。

 

「酷い…!」

 

「誰かー!いませんかー!?シャルル王子ー!」

 

「いたら声をあげてほしいやんねー!」

 

 しかし天馬と黄名子の呼び声には誰も答えない。妙だった。これだけ火の手が回っていると言うのに悲鳴の一つも聞こえてこない。

 

「2人とも!」

 

「神童センパイ!そっちはどうでした!?」

 

「ダメだ、誰もいない」

 

「そんな…」

 

「いったい誰がこんなこと…!」

 

「ああ…シャルル王子…!」

 

「大丈夫かジャンヌ!」

 

 動揺して膝をつくジャンヌを霧野がなだめる。

 ようやく勝利の吉報を届けられると思った矢先にこれだ。周りを見ると明らかな破壊痕がある。何者かの人為的行動なのは明らかだろう。誰の仕業かはわからないが到底許せる所業では無かった。

 

「…しかし妙だ。これほどの騒ぎだと言うのに倒れてる人1人いない」

 

「…確かに」

 

 何者かに襲われたにしても、遺体にしろ怪我人にしろ誰もいないと言うのは実に不自然だった。

 

「……とにかく探すしかない。あと行ってないところはどこだ?」

 

「…玉座の間です」

 

 天馬、黄名子、ジャンヌ、霧野の4人は本来王子に謁見するはずであった玉座の間へと急ぐ。そして勢いよく両開きの扉を開く。

 玉座の間も他同様火の手が部屋全体を覆っていた。しかし部屋の真ん中には何と人がいた。それは探し人であったシャルル王子だった。

 

「シャルル王子!」

 

「…ぅ、そ、そなたら…帰ったのか…!」

 

「大丈夫ですかシャルル王子!」

 

「良かったです、無事で…!」

 

 幸運にも目立った傷はない。特別命に別状はなさそうだ。

 

「今運ぶやんね!」

 

「しっかり掴まっててください!」

 

「──逃げよそなたら!!」

 

「え」

 

 その瞬間、前にいた天馬とジャンヌはシャルル王子に突き飛ばされる。

 その瞬間、シャルル王子に赤紫色のボールが直撃する。

 

『封印モード』

 

 そしてそのボールから紫色の光が発せられ、シャルル王子はその場から消え去ってしまった。いや、ボールに吸い込まれたと言う方が正しいか。

 

「シャルル王子ーッ!!!」

 

「あのサッカーボールは!」

 

「誰だ!出てこい!」

 

 するとシャルル王子を封印したデバイスがゆっくりと浮いて玉座へと向かう。

 4人の視線が玉座へと向く。そこには部屋に入った時にはいなかった存在が玉座に座していた。

 

「ゔっ!?」

 

「…ッ!?」

 

 4人はそれを見た瞬間に吐き気を催した。見た目ではない。そもそも姿は炎の陽炎でよく見えない。アレの発する異様な雰囲気に気分を害したのだ。

 そんな4人の気も知らず、その存在はボールを手に嬉しそうな声を上げた。

 

「シャルル王子ゲットだぜ!これでお城勢は全員コンプリート!フランス図鑑完成!ほっほぉ、これで拙者は偉人マスターにまた一歩近づいたわけなんだよね★」

 

「…兎?」

 

 そこにいたのは兎だった。

 遊園地でありそうな兎の着ぐるみの顔に丈の長いローブを着用した妙な存在。その奇抜な容姿に一瞬困惑するが、気分の悪さを振り払い、すぐに王子を取り返すために吠える。

 

「お前は誰なんだ!王子を返せ!!」

 

「はっはっはー!名乗れと言われたのなら仕方ない!」

 

 兎男はそのまま玉座から跳び上がり、回転しながらスタイリッシュに4人の前に着地する。そしてマントを翻し、ポーズを決めて名乗りを上げる。

 

「天が呼ぶ!地が呼ぶ!月が呼ぶ!時空を股にかけるフェーダのヒーロー、ラビットマンとはー…ワタシのことだ!!」

 

 決めポーズを決めた瞬間、何故かラビットマンの背後が派手に爆発する。その気味の悪い気配からは似つかわしくないコミカルな態度に天馬たちは一瞬言葉を失う。

 

「…お前はエルドラドなのか」

 

「あんな趣味悪い奴らと一緒にしないで欲しいぞ!俺ちゃんはフェーダのヒーロー。歴としたヒーローだよ、エッヘン」

 

「フェーダのヒーロー…?わからないが、その様子だと他の人たちが消えたのもお前の仕業か!」

 

「おふこーす」

 

「…貴方の目的は何?どうしてこんなことをしたやんね!」

 

「ジャンヌ・ダルクの歴史をぶっ壊すため」

 

「何のためにそんなこと!」

 

「尊いものの為にだぜ!拙者はフェーダのヒーローラビットマン!儚い愛のために戦う戦士なのだよ…」

 

「ふざけた奴め…!!」

 

「わっちはいたって真面目だぜ!んで、その為にも最後にそのジャンヌ・ダルクを封印しないといけないワケ」

 

「えっ、私…!?」

 

「そんなことは絶対させない!」

 

「ふふ、流石は霧野くん。すっかり王子様だねぇ。試合見てたよー!カッコよかったぜー!」

 

「こいつ、俺たちの試合を見ていたのか…」

 

 まるで道化のようにふざけているが、同時に得体が知れない存在だ。油断すれば首をそのまま落とされるのではないかという何もないが故の恐怖が背中を伝う。

 

「よし、じゃあここはサッカーやろうサッカー!勝った方が要求を呑めるってことでさ!俺っち君らを見た時からずっと試合したいと思ってたんだー!」

 

「……わかった」

 

「よし、じゃあ決まり!」

 

『フィールドメイクモード』

 

 瞬間、玉座の間に簡易的なサッカーフィールドが展開される。先ほどザナークと戦った時に使ったものとはひとまわり小さい。

 

「勝負は簡単、我か君ら、どっちかが相手陣営から一点取ったら勝ち。シンプルでしょ?」

 

「…けどそっちは1人やんね」

 

「えっ…もしかして心配…してくれてる?ハァキナコチャンマジテンシ…。けど大丈夫、某は1人で問題なし!あ、ボールはそっちからで良いよ」

 

 ラビットマンはボールをこちらに転がしてくる。天馬はそれを受け止める。

 

「…ジャンヌさんは下がっていてください」

 

「…わかりました。お願いしますっ」

 

「うん」

 

 準備ができた3人を見るとラビットマンはにっこり笑った…ような気がした。

 

「よーし!さぁてめーら、サッカーやろうぜ!」

 

 

 

 

 

 ー

 

 

 

 

 

 

 はいちゅーわけで始まりましたよ雷門VSワタクシ!

 メンバーは見ての通りの3人だけど、黄名子ちゃんがいるのがちょっと予想外…。大丈夫か儂、まともにプレイできるかね…。尊さで失神しないことを祈ろう!

 

 と言うわけで俺様の用意した電子ホイッスルで試合開始ィー!!

 

 ああーっと!ボールを受け取った天馬きゅん、いきなり化身アームドだぁ!時間制限も特にないので短期決戦を仕掛けてきたぁ!

 そして風を纏った必殺シュートを棒立ちしてる我の背後に蹴り飛ばす!

 

「真マッハウィンド!!」

 

 マッハウィンドだぁ!!ご丁寧に真に進化済み!

 だが僕はそれを足で踏んで止める!ははは、サリューと同等のフィジカルを持つ私にこの程度の攻撃が効くと思っているのかね。

 

「と、止められた!?」

 

 お手本のようなリアクションありがとうございます。

 ぶっちゃけ、今のレベル20前半くらいの天馬きゅんたちでは、推定レベル60の吾輩を正面から打倒するなど土台無理なのだ!

 というわけでボール返却。ラスボスは舐めプが基本ですので。ほら天馬きゅん、はりーはりー。

 

「…ッ!!うおぉぉぉ!!」

 

 天馬きゅん果敢に攻めるぅ!しかし某の前に来る直前に横にパスを回す!それを黄名子ちゃんがカット!おお、流石に冷静だ!

 

「行くやんね!やきもちスクリュー!」

 

 ぐあぁぁぁぁぁ!!可愛いぃ!

 何あのシュートの後のポーズ!尊すぎて思わずゴールへと見過ごしてしまいそう!けどごめんよ黄名子ちゃん、サッカーは無情なのだ。はいカットっと。

 

「あ!」

 

「くっそー、黄名子のシュートでもダメか…!」

 

 はっはぁ!無駄無駄ァ!君たちの目の前にいるのはサリューを蹴落としてラスボスになる男なのだからなぁ!ホイ返却。

 

「…黄名子、ぶっつけ本番だけどいける?」

 

「大丈夫やんね。あれくらいしないとあのラビットマンは倒せない!」

 

「うん…行こう!」

 

 おっと、天馬くんと黄名子ちゃんの2人が攻めてくる!ってあれ、何でか天馬くんがアームド解除してる。なんでや?

 

「ミキシトランス、ジャンヌ!」

 

 おや、このタイミングで霧野きゅんがミキシトランスした。何故や??

 っと、そうこうしてる間に2人が攻めてくる!あの2人専用のシュート技とかはなかったはずだから、シュートチェインでもするのかぁ!?

 

「よし、行くぞ黄名子!」

 

「はいキャプテン!」

 

 2人は息を合わせて炎と共に回転飛び!そのまま2人で同時にシュートを打つ!!……ってウソォ!!?

 

「「ファイアトルネードDD!!」」

 

 マジかぁーーッ!!キミらそれできるのぉ!?アームド解除したのは黄名子ちゃんと力の幅を合わせる為かぁ!!それに加えて霧野きゅんのジャンヌオーラで威力をパンプアップ!

 凄すぎる!ゲームじゃ絶対できない戦法だぁ!!これはスタンディングオペレーションものだぞ!

 ならば、こちらも必殺技で返さねば…無作法というもの…。

 

 行くで!この私がこの世界に生まれ変わって最初に習得した必殺技ァ!

 どこからともなく取り出したきな粉餅をボールにぶち当てて敵の攻撃を防ぐ、ふざけていながらも結構優秀な必殺技!!

 

「もちもち黄粉餅!」

 

 頭の上にボールと餅をばっちり頭に乗せてバッチリ確保!イェイ、ピースピース。

 

「う、ウチの技!?」

 

「なんであいつが菜花の技を…」

 

 いやぁ、黄名子ちゃんが好きすぎてこの世界でサッカー始めてすぐ練習したんだよね。練習当初餅の生み出し方が全くわからなかったのは、今となっては懐かしい思い出である。

 さて、そろそろ時間なので決めようと思うぞ!再び地面から餅を出現!ボールと共に打ち上がった餅を蹴り込んで放つシュート技!

 

「やきもちスクリュー!」

 

 餅が爆発して相手ゴールにシュー!!

 

「今度はやきもちスクリュー!?」

 

「どうなってるんだ!?」

 

 ふははっ、推しの技は連携技以外は全てコンプリートしてるのだよ!これこそオタクの究極形態だぁー!

 

「もちもちきなこも──きゃーッ!」

 

 きゃーっ!!

 あの有名なネタをここで拝むことができるとは!!思わぬ収穫ですよ!録画機材設置して正解ですね。

 

「ラ・フラム!」

 

 炎の壁でガード!ここにて炎対餅の戦いが勃発!餅の勝ち!せめてアームド習得して出直してきな!貫通!

 ゴーール!ラビットマンの勝ちィ!イェーイ、ラビットマンのゴールパフォーマンス!欲しけりゃあげるよ★

 

「そ、そんな…」

 

「負けた…?」

 

 そう負けた負けた。ちゅーわけで危なげなく勝利!レベリングの大切さを思い知ったようだな!

 さて、あとはジャンヌちゃんを封印するだけ…ってあれ、なんか踏んだ。

 

「あっ!」

 

 ……あ、あーッ!!これはアレじゃないか!フェイくんが本編にアスレイさんに持たされてたぬいぐるみ、通常ロビンくん(非公式名称)!

 

 いやぁ、本編では自分の化身と容姿が似てるからって理由でフェイくんの化身不発の原因になったりしてた奴なんたけど、そういえばわっちはもらう前に親離れしちゃったからなぁ。まぁ、今のワタクシの化身はロビンくんには似ても似つかないんですけどね!

 

「か、返すやんね!」

 

 めっちゃ黄名子ちゃん喰らいついてくる。あ、良い。すごく良い顔してるよ今!ちょ、もうちょっと右向いて!カメラに映んないから!

 この人形は大方黄名子ちゃんがアスレイさんに渡されたんでしょうな。後でオイラに渡そうとしてた感じかな。というか持ち歩いてたんだねこれ。可愛いかよ。

 

 とりあえず持ち帰りましょう。これは曇らせの気配しかしませんからね!返して欲しけりゃ勝ってみせろーだ。取り返そうと走ってくる黄名子ちゃんを華麗に躱す!あ、こけた。

 

「ぐぅ…!」

 

「黄名子、大丈夫!?」

 

「そ、それを、返すやんね!」

 

 嫌です(即答)。

 はいつーわけでちょっと名残惜しいけど、勝利報酬としてジャンヌちゃんも戴いちゃいますねー。

 

『封印モード』

 

「きゃっ!?」

 

「ジャンヌ!!」

 

 おっと霧野くんジャンヌを庇うー!しかし無駄ァ!これはフェーダがエルドラドのスフィア・デバイスを改造して作った特注品!一気に多人数も封印可能だぜ!オラッ、一緒に封印されるんだよ!

 

「ぐうぅ…!」

 

「霧野先輩!ジャンヌ!」

 

「うおぉ!戦旗士ブリュンヒルデ!!」

 

 お、化身だして対抗してきた。しかし無駄無駄ァ!お主程度の戦闘力では防ぎ切ることはインポッシブルだぜ!まとめて封印じゃ!

 

 と、瞬間、城の壁が豪快に破壊!イナズマTMキャラバンが突入!

 キャラバンの後ろから入ってきた剣城きゅんが化身アームド状態のデスドロップを儂目掛けて打ってきた!容赦ねぇ!あるわけないよね!普通に明後日の方に蹴り返すけど、その隙に4人は回収されちゃいました。あーあ。

 

「ワンダバ!すぐに行ってくれ!」

 

「分かっている!」

 

 そのままキャラバンはあっという間にタイムジャンプしてしまった。この時代の人間のジャンヌちゃんも連れて行って。

 

「………行ったね」

 

 はいこれにてやること終了ー!!お疲れ様でしたー!

 

 そう、これがワタクシの考えたプラン。歴史破壊作戦である!

 無理矢理にタイムパラレルを起こして、ジャンヌ・ダルクという偉人を歴史から引き剥がすというこの作戦!これなら程よい感じにラスボス感を出しながら、今後も霧ジャンが見れるという訳なのだ!

 歴史の歪みでブラックホールが起きかねない危険行為だが、まぁタイムパラレルが確定する本編終了までなら問題ないでしょ。

 それにロビンくんもゲットできたし、正に一石三鳥だね!

 

 さーて、僕もサリューに顔出してから帰ろっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●●●

 

 

 

 

 

 

 

 無事にジャンヌ・ダルクのオーラを手に入れ、2人目の時空最強イレブンの力を手に入れた天馬たち。しかしその成果に反して車内の空気は重々しかった。

 

「………」

 

 負けた。完膚なきまでに。

 こちらの化身も必殺技も全て打ち砕かれての敗北。そのことに戦った3人は酷く落ち込んでいた。

 そんな彼らに代わって剣城がワンダバに問いかける。

 

「……あのコスプレ野郎、ラビットマンとか名乗ってやがったが、アイツは一体なんなんだ」

 

「…私たちのいる未来のテロリストだ。無作為に都市へ数々の被害を出していてな。世間からは狂人・USAGIと呼ばれている」

 

 その事実に神童が反応する。

 

「…それって確か前にフェイに見せてもらったニュースに書いてあったぞ。フェーダのテロリストだと」

 

「フェーダ…?なんだそれは。エルドラドじゃないのか?」

 

「……それを話すと長くなる。すまないが、続きは帰って全員が揃ってからにしたい」

 

「…わかった」

 

 どうやら未来にはエルドラドの他にも自分たちの邪魔をする組織がいるのかもしれない。唐突に現れた別種の敵に神童たちの表情は険しくなる。

 しばらくの沈黙の後、霧野が静かに言葉を溢す。

 

「……すまない、ジャンヌ。俺たちが負けてしまったばっかりにこんな事に…」

 

 自分たちの失態のせいで、本来その世界で英傑として名を馳せるはずのジャンヌ・ダルクを連れてきてしまった。霧野は彼女の過ごすはずだった一生を壊してしまった事に責任を感じる。

 

「…良いんです。蘭丸たちはシャルル王子の、私たちのために戦ってくれました。それに対して責任を追及するなんて、できるはずがありません」

 

「ジャンヌ…」

 

「あの変な鎧を着ていた方は封印、と言っていました。ならシャルル王子や皆さんもまだ取り戻せるはずです!」

 

「……そうだな、ありがとう。少しだけ気が楽になったよ」

 

 

 

 

 ー

 

 

 

 

 

(……俺たちの必殺技が全然通用しなかった)

 

 ベータとの親善試合の時も大量点差で良いようにやられた。

 しかし今回はそういうのとは全く次元が違うレベルだと天馬は感じた。ただ単に強いのではなく、オーラというべきか、あまりにも邪悪な気配。吐き気のするほどのそれ。何というか、同じ目線にすら立てていないと感じた。

 

(いや、しっかりしなきゃ!俺はチームのキャプテンなんだ!悔しいのは俺だけじゃない、2人のこともしっかり見てあげないと!)

 

 隣にいる黄名子の様子を見る。彼女もあの敗北で気を落としてしまっているようだ。天馬は優しく声をかける。

 

「…大丈夫だよ。今回は負けちゃったけど、次がある。ベータの時だって俺たちはボコボコにされちゃったけど、勝てたんだ。ラビットマンだってなんとかなるさ!」

 

「……そう、やんね」

 

 返ってきた返事はいつもより弱々しい。勝敗以外に何か彼女の中で引っかかっていることがある様子だ。その彼女の落ち込みように天馬は心当たりがあった。

 彼女が持っていたウサギの人形。アレをラビットマンに取られてしまったのだ。試合の時以外は肌身離さず持っていたもの。相当大事なものだったと伺える。

 それを自分の実力不足で奪われた事に相当堪えているようだった。

 

「……あの人形は、ウチが大事な人にあげる為に持ってたものやんね。だからウチにとっても大切な人形…」

 

「黄名子…」

 

「それを取られるなんて、ウチ全然ダメやんね…」

 

「………」

 

 そんなことはない、と声を大にして言いたかった。しかしあの人形の重さは黄名子自身しか知らない。

 今それを追求することもできたが、ここには他に人もいる。聞かれたい話ではないかもしれないし、多少なりとも1人の時間が必要だろう。時には下を俯く時間も必要なのだ。

 

 そこから元の時代に戻るまで、誰1人として言葉を発することはなかった。

 

 

 

 








【今日の格言!】
・天が呼ぶ!地が呼ぶ!月が呼ぶ!時空を股にかけるフェーダのヒーロー、ラビットマンとはー…ワタシのことだ!!

【フェイのコメント】
・ラビットマンの登場口上!僕が丸一日かけて考えたあまりにカッコいい台詞!…でも何でかサリューたちには不評でした。解せぬ。


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