【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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柷投稿100話。


90.ヴィヴァーチェ(活発的な速度で)

 光陰矢の如しと言うように、時間というものはあっという間に過ぎ去ってしまう。フリルの七色キッチンが始まってから既に半年、フリルが本格的にアクアと付き合いだしてから数ヶ月が経過していた。その間にもフリルとアクアはゆっくりと確実に距離を詰めていき、ハグやキスくらいならば殆ど毎日(もちろん人目を気にしながらだが)日常的にしているほどにまでなっていた。だが、この先にまではいっていなかった。不知火フリルも興味が無いと言えば嘘になるのだが、自分からいくのはなんか違う……と思っていた。アクアが基本的に相手の意思を尊重するタイプ故に、彼にしてはゆったりとしたかなり常識的な恋愛を重ねていた。

 

 これで焦れてきたのは、アクアの方だった。元々愛に飢えていた節のあるアクア(ゴロー)だが、アイとヒカルの血故か、あるいは愛に飢えていたアイを見ていたからなのか、どちらかは不明だがすっかり欲張りになってしまっていた。そこまではアクアも自覚しているところなのだが、もうひとつアクアは自覚していない部分があった。

 それは、アクアがある程度の人生を過ごしてから転生したという、特異な経験ゆえの無意識の感覚。アクアは無意識下で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思っている。端的にいえば時間のロスを恐れている。これはルビーにはない、アクアだけの感覚だろう。それゆえにアクアは何処か生き急いでいるように見え、危うさのようなものを感じるために不思議と異性は惹かれてしまうのだろう。

 その様は現代のオム・ファタルだ。

 そこに加えて、元々転生前からそういう恋愛事というよりも“女遊び”が主だった事、転生して高校生になってから怒涛の勢いでハーレムロードを駆け上がっていった事。それらの経験も重なって、恋愛とは「決める時に一息に決めてしまうもの」となってしまっていた。

 

 そう、アクアは実はこういう焦れったいゆったりとした普通の恋愛は、前世も含めて人生初だったのだ。

 

(まいったな……)

 

 もちろん、本当なら焦る必要など何処にもない。少なくとも、フリルとしては他に魅力的な男が現れたとしてもアクアに付いていく位の意気込みでアクアと青春恋愛を楽しんでいるし、アクアも手放すつもりは毛頭無い。フリルがそういう、アクアからしたら少し……いやかなりジリジリとしてもどかしい恋愛を楽しんでいるのも理解している。理解しているが、アクアとて男である。特に下半身の単装マリン高角砲はみなみの一件でも分かる通り、アクアの本能ともいうべき存在。アクアの理性が焦れてきているということは、本能はもっと焦れている証だ。しかし、それを他の嫁達で解消するのは()()だし、失礼だろう。

 結果的に、アクアはフリルへの気持ちを溜めることとなってしまい、遅延戦術の術中に嵌まっていた。フリルはそれを知ってか知らずか、番組でも距離を詰めるようになっていった。

 調理中や、配膳中などに、あくまでも不可抗力的に見せかけて距離を詰めてくる。上から求められている“アクフリ匂わせ”だ。アクアが近いと苦言を言う程ではないレベルで、自然に距離を詰めていく。

 

「今日はいままで習ったことの復習として、焼きそばを作っていくよ」

「フリルちゃんが一人で作るってことだね!」

「この半年でずいぶん成長したな」

「これも二人のお陰かな。最近は本当に時々だけど自炊もしてる」

「ほんと!? えらいっ!」

 

 いまの収録中だってそうだ。自然に立ち位置をアクアの側にしてみたりしているが、しかし決して近くはないというもどかしい位置。手慣れた手付きで野菜をカットし、焼きそばをサッと作っていく姿は確かに成長を感じるが、アクアとしてはもどかしい気持ちだ。だからだろう。この収録後のいつもの打ち合わせの前に、つい、ルビーにお願いしてしまったのは。

 

「すまん、ルビー。頼めるか?」

「おにいちゃん……やるんだね、今……! ここで……!」

「今ここでやったらいろんな意味でダメだろ」

「それはまあ、そうだけど!」

「まあでも、近いうちに決着をつける」

「おっけ!」

 

 ルビーには、去り際にお土産楽しみにしてる、と言われてしまった。すっかり自分が女の子を増やすことに慣れきってしまったルビーに申し訳なく思うが、だからといって止められそうにもない。

 

(そろそろ我慢の限界だぞ……? フリル)

 

 アクアがそう決心していると、フリルが身支度を終えてやってくる。

 

「お疲れさま。あれ、ルビーは?」

「急用が出来たらしい」

「そっか。じゃあ二人で行こうか」

「ああ」

 

 いつもの打ち合わせに使う、信頼出来る完全個室のカフェに入り、紅茶で一服する。ここのところはフリルの腕前もメキメキと上達し、簡単な料理ならアクアはアドバイスする程度でも良い程になっていた。本当に成長著しい。そのため、打ち合わせとはいっても殆ど形式的なものになっていた。

 

「それで、どうしたの?」

「いや。次のデートの話でもしようと思ってな。ルビーが居たら……お互いに失礼だろ」

「本当に変なところで律儀だねアクアは」

 

 そんな風にとぼけながらも、フリルはアクアの瞳が獣のようにギラついているのを見逃さなかった。まるで獲物になった気分……いや、獲物なのだ、事実。暗闇で嵐の夜を過ごす時間を終わらせにきたのだ、彼は。狼は羊に狙いをつけたのだから。

 

(これは……ハマるわけだね、みんなが)

 

 普段はいかにも理知的な男が見せる、愛を欲する獣としての本性。この先が退廃的な底無し沼の地獄だとしても、進んでしまえる程の魅力があるし、その責任を取るだけの甲斐性もある。

 

「で、何処にデートに行くの?」

「まあ街中を適当にブラついて、食事して……って感じだな」

「まあ普通だね、女装することを除けば」

「……まあな」

 

 普段なら肩を落とす程の女装の話題にも、多少押し黙った程度で話を続けるアクア。それをみて、間違いなくフリルは確信する。

 

 決戦の日は次のデートだと。

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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