【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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91.プレスティッシモ(最速で)

 デートの日。フリルが待ち合わせ場所に到着すると、そこには絶世の美女がいた。

 

(いやなにあれ……?)

 

 いや、見れば分かる、あれはアクア……もといまりあだ。いつも通りの茶色のウィッグを被っている。ただ、物凄く気合いが入っている。丁寧に施されたナチュラルメイク、長い睫毛、ウィッグはいつもよりも丁寧にケアされているのか艶があり風に吹かれるとさらりと流れる。服装もセットアップではなく、緑のカーディガンとスカートに、少し薄手の白いロングシャツを着ていた。茶色のトートバッグを肩に提げて、黒ストッキングに茶色の靴。手持ち無沙汰なのか、頻繁に髪をいじっている。思わず立ち止まって見てしまいそうなほどに抜群に決まっていた。唯一、アクアがアクアであることを示すアクアマリンの宝石のブレスレットと、見覚えのある機種のスマートフォンだけが彼を彼たらしめていた。はたとこちらに気がつくと、ぱっと表情を明るくして、こちらに駆け寄ってくる。

 

「『りる!』」

 

 “りる”とはアクアの考えたフリルの愛称だ。アクアもフリルも、特徴的な名前故に衆人環視の中で呼び合うと騒がれて鬱陶しい。それ故に“りる”という愛称が産み出されたのだが。こちらを見て笑顔になるまりあ(アクア)にどきりと心臓が跳ねる。

 

(かわっ……! やば……!)

 

「ごめん、まり。お待たせ、待った?」

「『ううん、大丈夫』」

 

 あれは危険だ。なんなら男の状態よりもヤバイ。現にあの笑顔を目撃した通行人の男性が、一瞬足を止めてしまったほどだ。

 フリルは考える。もし本当にアクアが女の子だったら? ルビーそっくりの見た目なのに普段は無表情で冷たいのに、こういう風なときだけ明るかったり柔らかい笑顔を浮かべるのだ。しかも面倒見もよくて知的で。ここまで考えてフリルは妄想を停止した。

 

(……アクアが男でよかった)

 

 心からそう思う。アクアがもし女性だったなら、もう異性どころか同性にもモテまくるだろう。そんな内心を知ってか知らずか、まりあ(アクア)はこちらの眼をじっと覗き込んでくる。顔が良い。メイクのせいなのか、演技のせいなのか、あるいは両方か。本当に女性的だ。

 

「『どうしたの? ほら、行くよ?』」

「あ……うん」

「『ほら、手』」

「ん」

 

 手を繋ごうとすると、当たり前のように恋人繋ぎにしてくる。フリルからすると、珍しいのだ。普段は受け身なアクアが攻めようとしているのは。フリルでなくても、こういう普段の生活でアクアが攻めようとする時は大体夜に移行してしまうので、恋愛において攻めるアクア、というのは大変貴重である。フリルは思わず押し黙ってしまうと、まりあ(アクア)が心配したのか声をかけてくる。

 

「『どうしたの? 大丈夫?』」

「大丈夫。うん。いこっか」

 

 手を繋いで歩き出す。もう秋に差し掛かっているというのに、繋いだ手は妙に熱を帯びていて、少し汗ばんでいた。

 

 彼に連れられてやってきたのは、ここ最近SNSで人気のスイーツが食べられるカフェだ。当たり前のように席の予約をすませており、待ち時間も殆どなくスムーズに席に案内される。フリルが気になっていると言っていたのをアクアは覚えていたのだろう。本当にマメな男だ。

 

「どうしよっか?」

「『じゃあこのパフェにしようよ。確か気になってるのってこれだよね?』」

「よく覚えてたね」

「『たまたまね』」

 

 注文するのはかなり大きなパフェだ。二人で食べるような大きなサイズで、一人で食べるのは少し躊躇われる。だから、気になってはいても、食べに行こうとは思えなかったのだが。

 

(何がたまたま、よ。ほんと……もう……)

 

 こういう細かい気配りが出来るから、アクアは女の子が増えても気にならないのだろう、彼女たちも。

 

「飲み物は……ホットミルクティーで」

「『私はホットティーの……レモンかな』」

 

 注文をすると、早速紅茶が届く。紅茶に舌鼓をうちながら、アクアを見る。本当に所作が丁寧だ。見ていて飽きないし、時折髪を耳にかける仕草が妙に色気がある。

 

(アクアってえっちだなぁとは思ってたけど。女装してもえっちだ……)

 

 そんな思いに耽りながら、アクアを見つめているとあっという間に時間が過ぎ、気がつけば目の前にパフェがやってきていた。

 

「おお……大きいね」

「『そうだね。これは2人で食べるやつだね』」

 

 改めて目の前に現れると、中々のサイズだ。その大きさに圧倒されていると、アクアは自然にパフェスプーンを手に取り、一口分掬うと、こちらに差し出してくる。

 

「『はい、あーん』」

「……恥ずかしいんだけど……」

「『やめとく?』」

「やめない。あーん……あ、おいし」

 

 なんか、当たり前のように食べさせようとしてくるアクア。なんだかやり込められているような気がして、フリルも反撃と言わんばかりにスプーンを手にとって、アクアに突き出した。

 

「はい、おかえしのあーん」

「『はむ……ん、おいし』」

「えっろ」

「『フリル?』」

 

 彼の、小指で少しはみ出したクリームをぬぐう仕草がもうなんかエロい。はむとか言うんじゃない。フリルは無自覚なのか意識してるのかわからないドスケベアクアに心臓がばくばく激しい鼓動を打っている。その様子を見たまりあ(アクア)が、眼を細めて更に行動を進める。

 

「『……ふーん、こういうのが好きなの? はむ』」

 

 まりあ(アクア)は挑発するかのように自分でパフェを掬って食べる。唇の端に白いクリームがちょこっと付いて残っているが、それを舌でぺろりと舐めとる。フリルの理性は半分ほど何処かにいってしまい、本音が出る。

 

「めっちゃ好き」

「『でも後でね? ほら、ここは喫茶店だよ?』」

 

 長い長い沈黙の後、絞り出すようにフリルは「わかってる」と言った。

 

 

 そこから、フリルにとって長い長い時間が過ぎた。パフェを長い時間をかけてわざわざ一口ずつあーんしあいながら食べ、なんとか消費し終えると、そこからは特に目的もなくレディースの服を物色したり、アクセサリーや、グルメなんかも。特に買うわけでもなくブラブラと歩き回っている。その間も手は恋人繋ぎで握られたままで、時折きゅっと握りしめては顔を赤らめてこちらを見てみたり、人目を盗んで顔を近づけてきたり。まりあ(アクア)の全力の健全な誘惑に、フリルはすっかりやられてしまい。ディナーを終えた頃には、フリルは完全に出来上がっていた。

 

「『今日は楽しかったね?』」

「そうだね……」

 

 タクシーで()()()に向かいながら、やはり後部座席で手を繋いだままで。にぎにぎとこちらの反応を確かめるように柔らかく握ってくる。

 

「『どうする? もう帰ろっか?』」

「やだ」

「『ふふ……じゃあ、このままだね』」

 

(こんな、こんなの……我慢できるわけない……! アクアがこんな風に焦らせるなんて……)

 

 あくまでもアクアはフリルから来て欲しいと、そういうことなのだろう。あるいは、今まで散々自分が煽ってきた仕返しか。ホテルに到着して、部屋を選んでいる時間すらもどかしい。部屋に入ると、もうフリルの方が辛抱出来なくなってしまって、アクアに抱きついた。ぐりぐりと身体を押し付けて、気持ちをぶつけていく。

 

「ふー、ふー……」

「『ね、フリル。どっちがいい? アクアと、まりあと』」

「どっちもがいい」

「『しょうがないなあ。ほら、まずはキスしよっか?』」

「する」

 

 期待して顔を上げると、そのまま唇を奪われた。なんのことはない、アクアだって限界だったのを、必死に我慢していただけなのだ。その瞳はギラギラと獣のようで、その瞳に映る自分の瞳も、なんだか獣のように飢えていた。

 

「んー、んふ、ん……ん……は……」

「『ベッドいこっか』」

「ん……♡」

 

 フリルの長い長い初めての夜が始まる。






必要な分は見せたということだ。これ以上は見せぬ

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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