【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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「カミキヒカルが良い子? ふふっ、面白い冗談だね」

「今はそうかもしれない。でも、初めから本当に良い子だったらカミキヒカルは星野アイと出会うことなんかないよ。あの子はとんでもない嘘つきなの」


星の夢を その1

 

 目の前には命だったものがバラバラになって置いてあった。

 

 小さな頃、蟻を踏み殺したことが切っ掛けだったのだろうか? 今でもよく理解していないし、なぜそんなことを始めてしまったのか、今思い返してみてもどうだったのかは分からない。

 

 ただ、気がつけば小動物を、バレないようにバラバラにしている自分が居た。

 

 これの始まりは、それこそ20年以上前の話で……つまり、中学生の時期の話。確かに同年代の中学生と比較しても、家庭環境はあまり恵まれていなかったのは事実だったけど……まあ。中二病とか言われる、あの年代特有の精神的なアレだったのだろう。

 それを言うと「絶対違う」とか「ストレスが原因だろそれ」とかって五反田監督もアクアも口を揃えて言うが、僕にとっては若い頃やっていた恥ずかしい記憶ということになる。他人に話すのは少し気恥ずかしいのだ。だが、映画のクオリティのためと言われれば、役者としても話しておくべきだろう、登場人物(キャラクター)の背景や内情というものは。

 

 これは、僕がアイと出会って、愛を手に入れる前。そして彼女と愛を育み、そして手に入れる話だ。

 

 

 14~5歳頃のヒカルは、はっきり言ってやさぐれていたといっていい。精神的に非常に危うい状態で、何か切っ掛けがあればコロリと人の道から外れてしまうような危うさがあった。

 

 どんなに仕事で活躍しても、ちっとも心に空いた穴が埋まらない。一度壊れた心が二度と戻らないように、ひび割れた心を誤魔化して(ウソをついて)いる時点で、もう半分手遅れのようなものだ。心の奥底ではいつもいつも疑念(不満)が渦巻いていて、それが心の壁を削ってひび割れさせていた。

 

(本当に自分は生きていていいのか? 僕なんかに価値はあるのか?)

 

 これは至極当然な話であるが、自分に対する自信がない者は、どれだけ高みに至ってもどれ程恵まれていたとしても、幸せで満たされない。自分が恵まれていると思う前に、あいつの方が恵まれている、自分はそれに比べれば……という考え方に陥ってしまう。ましてや多感な時期である小中学生の期間だ、余計にそういった考えに陥ってしまう。

 案外、自信がない、才がないと公言する者は、それでも自分は他人と比較できる唯一のモノを持っている、と無意識にでも思っているものだ。何も言わずに心の中でそういう気持ちを押し留めている者程、満たされない。むしろ満たされていないから、如何に自分が優れているのかと喧伝しようとする。

 ただでさえ親の愛というものを一切教えてもらえなかったヒカルは、その傾向が顕著に現れていた。もちろん、育ての親代わりだったララライの劇団員たちはとても良くしてくれたが……ヒカルの心の中には「所詮他人だ」という考えがあった。

 

 もちろん、心が変わるチャンスが全くなかったかと言われるとそうではない。だが、ヒカルはチャンスを目前にして躓いて転んでしまったのだ。

 

 その最悪の転機は11か12歳の時だったろうか。女優……姫川愛梨に肉体関係を迫られ、そして一度きりとはいえ体を重ねてしまった時であった。

 

 一応フォローしておくが、姫川愛梨がたとえ肩まで芸能界という一般社会とは全く毛色の違う、別世界にどっぷりと浸かってその常識に慣れきった女の上に小児性愛者(ぺドファイル)*1だからといって、普通の子役程度に手を出すほどではない。

 

 そう、普通の子役であれば。

 

 ヒカルは、小学生にして既にその壊れかけた精神を平常に見せようと誤魔化して常に演技しているような子だった。とびきり美しい見た目に、子供らしからぬ聞き分けの良さ。そして、時おり顔を見せる子供のような顔を持っていた。

 その子供らしからぬアンバランスさに、愛梨は狂わされたと言って良かった。もちろん、一時の気の迷いといってしまえばそれまでだが……少なくとも愛梨にとってその瞬間はそれが真実であった。そして、彼が何を求めているのかもよく分かった。愛梨は芸能界という荒波を泳いで、少なくとも表舞台に立てるほどの実力と経験を磨いてきた。芸能人だけでなく、この業界は、どこか歪んだ人間が多い。もちろん愛梨はその歪んだ人間の一人だったが、経験を重ねて、それを自覚しコントロールする術を持っていた。

 

 だから彼の幼い心も、どのように誘えばいいのかもすぐにわかった。

 

「あなたに、生きる意味を。愛をおしえてあげる」

 

 その言葉は、ヒカルにとって蜂蜜よりもずっと甘い甘い毒だった。

 愛梨にとっての愛が、歪んでいるというのもあった。

 

 だが結果として、肉体を重ね、放ち。快楽を与えられてヒカルはこう思ったのだ。

 

(こんなのが……こんなのが! 「愛」であってたまるか……!)

 

 愛を知らぬが故に、愛に理想を持ってしまっていた。愛には種類があり無数の意味があるなど、子供に説いて理解できようか。だから、これが愛ではないと否定しつつ、これが愛なのかという納得をしてしまった。嫌悪感と共に、その行為に対する依存を抱いていた。

 学校では教えてもらえない男女の真実。知識としては知らされていたが、事実として自分から解き放たれるそれ。小学生の彼にとってはあまりにもグロテスクで……しかし、快感を伴うものであったのは事実だった。

 

 もし、性の快楽に溺れられたのならば、どれ程彼の心の救いとなったのだろうか。自分は女性を篭絡できる魅力があると思えたのならば、どれほど幸福だっただろうか。

 そういう意味では、彼の心の穴を塞ぐチャンスではあったが、ヒカルはそうはならなかった。

 

 それ故、この時を切っ掛けに、ヒカルの心は更に壊れていった。そして壊れれば壊れるほど、演技と魅力に、美しさに磨きがかかっていく。結果として、いつの間にか「天才役者」の看板(レッテル)を得ていた。あきれる程に貯金が増えていったが、ヒカルの心にはちっとも響かず、ストレスが溜まる毎日を送っていた。そして、そのストレスの捌け口として、初めは害虫を。次第に、害虫でもない昆虫に。

 

 そして中学生になると、児童施設から飛び出すように一人暮らしを始め、そして初めて小鳥に手を掛けた。それも、わざわざペットショップで購入したものを。してはいけないことをすることで、手のひらの中で失われた命。それに対する罪悪感とそれに伴う精神的な負荷を重みとして、自分の価値(生きる意味)を感じていた。命を奪った自分がまだ誰にも裁かれていないということは、まだ生きていても良いのだと、当時のヒカルは感じるようになり始めたのだ。

 

 ☆

 

 しかし、幸か不幸か。結局姫川愛梨とヒカルはそれ以降、身体を重ねることは疎か、連絡を取ることもなかった。

 

 愛梨はあの後すぐに売れない役者と結婚し、芸能人としても、当時のヒカルよりも一つも二つも上のステージに登っていってしまったためだ。要するにヒカルが邪魔になったし、もう会う必要もなくなったので捨てた、ただそれだけの話である。これに関しては、ヒカルとしても願ったり叶ったりといったところである。誰が好き好んで小児性犯罪者(チャイルドマレスター)の側にいようとするのだろうか。これ幸いにとヒカルは速攻で着信拒否にした。

 

 しかし、ヒカルはその一件以降、より純朴な少年として振る舞うようになった。心のひび割れを隠すために、普通になるために、それを演じるために。より強く濃い嘘で覆い隠したのだ。

 

 事の転機が訪れたのは、劇団ララライが主導したワークショップの話からだった。

 

「ワークショップに参加してみないか?」

「ワークショップ、ですか?」

「ああ、どうだ?」

「えーっと……そもそもワークショップって何ですか?」

 

 こてん、とかわいらしく首をかしげて、さも分かりませんと言わんばかりにきょとんとした顔をして見せるヒカル。金田一はそんな様子のヒカルを見ながら思う。

 

(やっぱ歪んでんなぁコイツ……だが、ここ最近はもっと擬態が上手くなりやがった)

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()ヒカルを見て、金田一はそう判断したのだ。歪んでるヤツほど、普通じゃないヤツほど良い演技をする。

 

 そもそも、日常生活においても人間は多かれ少なかれ無意識に演技をしているものだ。例えば電話口に、上司に、友人に、家族に。だが、常に意識して演技をしている人間は少なく、そうした人間は自分が歪んで普通じゃないことを自覚し、その上で普通を取り繕っている。だから常日頃から演技を意識しているようなヤツは当然演技が上手いし、感性が他の人間と違うからより魅力的だ……というのが金田一の持論である。

 

 ゆえに金田一はこの状態のヒカルを見て、このように思うのだ。

 

(もう一段階伸びそうだな。若いヤツはいいなぁやっぱり!)

 

 金田一はヒカルの私生活については一切触れていない。それ故に姫川愛梨(チャイルド・マレスター)に逆レイプされたとか、そういったことは認知していないし、そもそも手を出されることを考慮していない。だって万一の対策として知識と、コンドームまで常備するように言いつけてあったのだから。故に単に成長したんだろう、としか考えられないのだ。

 そう考えながらも、ワークショップについて説明していく。

 

「ワークショップっつうのは……あれだ、職業体験みたいなもんだ。講習会と言い換えても良いな」

「ああ……なるほど、それは分かりました。……で、僕とそれに関係があるんですか?」

 

 副音声でそういうの参加するのめんどくさいんですけど、と言っているように感じたが、金田一は敢えて無視して続ける。

 

「なんか勘違いしてるみたいだが、参加つっても劇団ララライが指導側なんだから、お前も教師側だ」

「え? そうなんですか」

 やはり勘違いしていたようで、目を丸くするヒカル。

「お前もそろそろ誰かに教えてみる経験は一度はしておいた方がいいと思ってな。今後も劇団から抜けるつもりはないんだろ?」

「まあ、今のところは」

 

 曖昧な返事をするヒカルに、金田一は続ける。

 

「まあ抜けたにしても、誰かに教えたり、誰かから教えを請われたりする場面は絶対に出てくるからな。無駄にはならんと思うが。どうだ?」

 

 無駄にはならない、と聞いてカミキは思わず考え込む。

 

(ワークショップっていうからには、外部から人が来るんだろう。それも、教えてほしい人たちが)

 

 やってくるのは自発的に学ぼうとしているか、所属している芸能事務所やら何やらから、仕事の幅を広げるために演技についても勉強してみないかと後押しされたか、そのどちらかだろう。そういう意欲的な人たちがやってくるのは目に見えていた。

 

(となれば……)

 

 中学生らしからぬ異質な考え方を発揮する。そうなれば、普段から関わっている役者とは別分野の芸能人が来る可能性が高いと踏んだ。

 つまり。新たな出会いがある。ヒカルにとって必要なのは、鮮烈な印象として心の傷となって残っている、愛梨との関係を忘れさせてくれるような人だ。

 女優はダメだ。今のヒカルにとって、女優とは結構な地雷である。だが、ワークショップに来るような女性は、まだ女優ではない。ならばヒカル的にはまだ、ギリギリ、なんとかセーフであった。女優候補なら、()()()()()()()()

 

「分かりました、受けてみます」

「わかった、そのつもりで次のスケジュールは組んでおく」

 

 二つの一番星が出会う日は近い。

*1
ぺドフィリア(小児性愛)に該当する人物のこと。pedophile




この嘘つき夫婦がよぉ!!!!ってなったので投げました。ストックはありません

二次創作ヒカルハッピーエンドへの道
絶対にやらなければならないことは、カミキヒカルと姫川愛梨の接点を断つこと。
一番大事な部分です。ここを断たない限りヒカルに負荷が強くかかって、結果アイは逃げます。
しかもお前の息子やぞと暴露される前に断つ必要があります。時限イベントですね。ヒカルの中で愛梨がどうでもいい人、赤の他人の枠にいる内に引き剥がさないと重みで押し潰されるので、関係を持ったらすぐ切るのが吉です。放っておけばそのうち息子のことが夫にバレて死にます(無慈悲)
仮にすぐ引き剥がしたとしてもこの時点での輝は愛梨に依存していしまいますが、一時的な関係であればそこまで後を引かないので「次の姫川の立場」としてアイを利用する程度にまで落ち着けばセーフです。

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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