【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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確定したので投稿です


星の夢を その3

 ヒカルとアイはワークショップでの出会いを通じて、次第に惹かれあっていった。些細な会話で盛り上がったり、鏑木に教えてもらった隠れ家的な所で一緒に食事をして、その思った以上の値段に二人で目を剥いてみたり。

 そんな学生らしいと言えばらしい、生ぬるくて甘酸っぱくてもどかしい関係を続けている内に、いつしかアイは「演技を教えて欲しい」と言ってヒカルを自室へ招くようになるまでになっていた。

 

「私の演技って違和感あるんだって。もっと普通に出来ないの? って。どうしたら良いと思う?」

「いや、どうしようもないでしょ。アイ、変だし」

 

 でも、この会話だって中身の薄い嘘だらけだ。お互いにそれを自覚しながらも、嘘の会話を続けていく。

 

(何してるんだろうな、僕は……)

 

 彼女の束縛から解放され、多少なりとも心に余裕と冷静さを取り戻してしまえばわかる話だ。依存先を変えただけだ。まるで派手な寄生虫(ロイコクロリディウム)だと自嘲する。見目の美しさで、次の寄生先を探しているだけ。分かっている、己こそがルッキズムの権化。だがそれをやめられるかといわれれば、そうでもなく。

 

「アイの方が変だって!」

「ヒカルの方が変だよ!」

 

 こんな馬鹿で薄い会話を繰り返していた。

 非常識なのは自分の方だ。仮にもアイドルの家にやって来て、平気な顔をして居座っているのだから。厚顔無恥とはまさにこの事だろう。そうしても尚、嘘をつき続けられる程にどうしようもなく空っぽな自分が嫌いだった。だから。

 

「もう少し身なりに気を遣った方が……」

「……やだよー」

 

 べっ、と舌をだして嘘をつく彼女が、どうしようもなく眩しく見えた。

 

 ☆

 

 それからというもの、アイは見違えるように綺麗になっていった。嘘というドレスと化粧で全身を着飾った彼女はどんどん人気になっていった。

 

 その当時を知る当時のB小町No2、新野冬子はその頃を懐かしそうにインタビュー形式での取材で、インタビュアー役のアイへそう語る。

 

「まぁ、そりゃあもう昔のアイは凄かったわよ」

「えーっ!? 今は!?」

「今も凄いけどね、なんていうのか……良くも悪くも人間味が薄かったわ」

 

 ニノのあけすけな言葉に「そりゃそうだけども!」と笑いながら答える。

 

「もうなんていうか、凄い嫉妬して。まさに『アイドル』の化身みたいな感じだったんだけど。そんなアイが変わったのって、たぶん双子を預かった時期あたりよね。あの辺から一気に人間味が出てきてさ」

 

 あなたは無自覚だったんだろうけど、と苦笑する。ニノは一番近くで一番長くアイドルのアイを見てきた。同僚として、友人として……嫉妬と信仰の対象として。

 

「無敵のアイドルだったあなたが、突然普通の女の子みたいになるんだもの。こっちとしてはビックリしたわよ」

「……まあそうだねー……あの頃はニノの事も全然見えてなかったかも」

「お互い様よ、それは。私もアイを見てなかった」

「そうかも。……ニノ、髪切った?」

「今更。……あのときは、ごめんね?」

「それも今更だけど……うん、良いよ。私もごめんね」

 

 B小町時代に一度起こしたニノが一方的に怒鳴り散らして、喧嘩別れのようになったことがあった。あの頃はまだ十代の少女だった、感情的だった。

 ニノのそれに、アイはその感情に対して感情ではなく嘘で対応してしまった。お互いに本音をぶつけ合えれば、少しは違ったのかもしれないが。そうはならなかった。

 それから、結局初期メンバーはアイ以外の全員がB小町を抜けたが、それぞれの道は別だ。渡辺は今何をしているのかはっきり把握はしていないが、生きてはいるらしい。高峰なんかは早々に結婚して仕事をやめた。

 当のニノは、苺プロで数年はモデルとして本名名義で活動し、まあ、そこそこ売れて今でもちょこちょことした生きていける程度の稼ぎを得られる、小さな仕事をしている。

 

 そのためか、仕事以外では会う機会もなかった。旧B小町の解散後もそうだった。アイを見る機会も余裕も、ほとんど無かった。

 お互いに歳を重ねて、大人になって、機会を得て、余裕も出来て。それで、ようやくお互いの事を見ることが出来た。

 

「ねぇニノ。また髪伸ばさない? あの頃みたいに」

「アイ……あのねぇ、確かに中身は人間らしくなったけどガワはあんたティーンもかくやじゃない! なによ化粧も薄いくせにこのぷにぷにすべすべは!」

「むー!!」

 

 ぐに、とアイの頬を揉みくちゃにする。中身は確かに人間らしくなった。時折無駄遣いを気にするような言動とか、双子がかわいいあまりに自慢してくることとか、そういうところは。だがこのナチュラルボーンアイドルボディは現役さながらである。ニノはほうれい線が気になるし皺も少し増えてきたというのに、アイとかいう女は少女性を保ちつつ大人の色気まで兼ね備えて、肉体的にはアイドルとしてレベルアップしているまであるのである。

 ずるじゃん、とニノは思った。中身抜きで基礎スペックの差がひどすぎる。

 

「ちゃんとケアした結果ですぅー! 最近枝毛も気になるし化粧ノリも昔より悪いんですぅ~!」

「でもコレ30代のお肌じゃないでしょ~!? うわいい匂いする」

「嗅がないでよ!? ……ふふっ、あはは……あーおかし」

「そうね。……変わらないとこもあるわね」

「そんなもんじゃない? そしてさ、変われる部分もあるじゃん」

「そうかも……ふふっ、あはは! そうね!」

「ぷっ、ぶふっ! そうだよ! あー、おなかいたい!」

 

 あの頃(ティーン)のように、二人して笑い転げる。そんな懐かしさに呼応してか、ニノがなにかを思い出したように話し出す。

 

「そういえば……アイが残してあった、あの昔のブログのヤツなんだけどさ」

「あー、パスワード変えてなかったしね。うん、わざと残しといたよ!」

 

 ニノの問いに、あっけらかんとした態度でアイは肯定した。

 昔のB小町のブログが、パスワード45510がそのままで残されていた。今ではすっかりアクセス数が伸びないが、広告料だけで細々とやっている古いブログサイト。そんな場所に編集段階で残されていた、当時のアイの本音。もう一度みんなと仲良しに戻りたい、という弱音。

 それを見たのは、ちょうど()()()()()。もし事務所から離れていたら、そんな弱音を認めなかっただろうとニノは思う。認められずに永遠に執着していたかもしれない。あのストーカーの一件で、もしアイがアイドルのまま死んでいたらと思うと自分でもどうなっていたかわからない。ゾッとする。

 

 長い時間をかけてアイをアイドルじゃなくて人間としてみられるようになった今だからこそ、アレを呑み込めたのだと。

 

「もしかしたら高峰(たかみー)あたりなら覗き見するかなって思ってたんだけど。まさかニノにみられるとはなー」

「あなた、不器用ね」

「そうだよ。知らなかった?」

「知らなかったわ。だって、正真正銘のアイドル様に見えてたんだもの」

「あの頃はウソウソの実の全身嘘人間だったからね! ウソウソのぉ~」

「は?」

「ゴメン冗談! 怒らないで!」

 

 ウソウソの実ってなんだ。超人系(パラミシア)か? と余計な思考に気を取られる。そんなしょうもない小ボケをごまかしたいのか、アイは話をそらしてくる。

 

「あー、そういえばニノは結婚する気ないの?」

「ないわよ。アイを見ててわかった。私子供育てる才能無いって」

 

 子育ての自信がないのも事実だし、アイドル時代に付き合っていた彼氏ともずいぶん前に別れた。だが結婚しない一番の理由は目の前のあぶなっかしい少女が理由なのだが。それを気がついたのか気がついてないのか、アイはのんきに自分の意見を述べる。

 

「えー? 私が育てた子なのに、アクアとルビーはあんなに良い子二人になったんだよ? ニノならいけそうな気もするけどなぁ」

「でも良い子成分、50%カミキさんで50%ミヤコさんでしょ」

「私要素ゼロ!?」

「ゼロではないわよ。アイの要素だな~って部分はあるよ。悪い意味で」

「ひどい!」

「いやでもアクア君のあのモテっぷりと、ルビーちゃんのちょっと抜けてる部分はアイ成分でしょ。幼馴染みに彼女に。友達も女の子多いし。ほれ、ぐうの音もでまい」

「ぐう」

 

 このぐうの音を口にだす、可愛い友人に……人間としても心底惚れ込んでしまったせいで、男との恋愛がバカらしくなっている自分がいるからだ。だからせめて……この子の友人として、親友として胸を張ろう。そう、胸を張って……。

 

「自分でぐうとか言う部分は、ルビーちゃんもたまにやるわね」

「そう? やっぱりそこは()()()なだけあるな~癖が似てるのかな」

 

 胸を……ちょっとまて。コイツなにか変なことを言わなかったか? ニノは即座に違和感に気づき、真実にたどり着いた。

 

「……? 養子で……おい、アイあなたまさか」

「あーっ!! あー!! カンチガイシテルー! ヨウシダヨ! ヒカルクンノシンセキノコ!」

 

 とうとう、秘密を知る誰もが恐れていた事態である。アイがうっかりと失言してしまった。あまりの大ポカに漏らした本人が慌てるあまりに棒読みになっている。今世紀最大の嘘吐き(アイドル)とまで呼ばれるような、自称嘘吐きがこれである。

 敢えてアイを擁護すると、彼女はニノとの正式な和解が出来て非常に気が緩んでいた。そのため、友人に秘密を共有したいと言う、心の奥に沈んでいた想いが顔を出してしまったのだ。漏らした相手がニノで、幸いこの部屋には誰も居なかったのが不幸中の幸いだった。

 せっかくの決意をふいにされ、やべぇ秘密を聞かされたニノは、深く深くため息を吐いた。まあ、今のアイとはこういうヤツなのだと納得もしていたが。

 

「はぁ……。ねぇそれ、通ると思う?」

「思わない……ねぇこのボイスレコーダーどうやって消すの?」

「貸して。もう……」

 

 ……まあ。あばたもえくぼということで。ひんひん情けない泣き声を上げながらボイスレコーダーをおぼつなかい手付きで弄っているのを取り上げて、データを削除した。

 むしろ、こうした欠点を見せてくれる方が……今のニノとしてはうれしかった。

 





アイ死亡ルート回避にひつようなものその2

・ニノが狂わない、苺プロから退職しない

すべての元凶の元凶は姫川愛梨だが、もう一人の元凶はアイの「友達」であったニノの発狂。原作では明言こそされていないが、ヒカルとリョースケを引き合わせた張本人だと思われる。(追記:明言された)
おそらく発狂の切欠は、アイの妊娠を知ったことと、苺プロからの辞職だろう。一挙手一投足で読者も登場人物も狂わすんだからファム・ファタールが過ぎるぜアイ。

推察にはなってしまうが、アイを殺したいけど死んでほしくなかったという矛盾した思考の末にリョースケをけしかけたのだと思われる。(追記:しかもリョースケはニノが隠れて付き合ってた彼氏だったことも判明)
アイが完璧なアイドルでいるうちに殺したい、でも死なせたいわけでもないという中途半端な想いゆえに「本当に死なせてしまった」ので狂った。アイという完璧なアイドルならストーカーぐらい撃退できるとでも思ったのだろうか?

本作ではヒカルの作り上げたカバーストーリー「親戚の子を引き取る」と「ヒカルが事務所立ち上げてないしアイとくっついたので拾ってくれない+アイがいる芸能界に関わり続けたいので苺プロで崖っぷち芸能人やるしかない」という状態により、なんとかギリギリ正気を保っており、10年以上しっかりとアイを見ることでアイへの崇拝をなんとか友情に戻すことに成功。
そのかわりにアイの友情が友情というには重すぎることに。
原作でも大概? それはそう。でも原作よりマシやろ。

ちなみに本文で説明することはないですが。
本作品においては、バタフライエフェクト(ヒカル微真っ当化)の影響でニノはアイが身籠ったあたりで嫌気が差してリョースケと別れています。例の星のドームも別人が送ったもの。つまり、刺し殺しに来たのはリョースケではない似た役割(ロール)をツクヨミに与えられた者。運命の殺人鬼ではなくあくまで「幸運な男」止まりだったので防がれてしまったということになっています。

原作を見る限りだけでも類は友を呼ぶとはいうがアイの回りには変人しかおらんのか? アイそのものが変人だから無理? そっかぁ……

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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