【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
案の定というべきか、やはりと言うべきか。アイの妊娠が発覚した次の休暇の日、社長に大事な話があるとだけ伝えて、苺プロダクションへ赴いた。
アイとヒカルは、これ以上何か余計な心配ごとを考えられる前に
「おい、話ってなんだ」
「
「……は?」
「いや、本当に申し訳ありません……」
壱護はなに抜かしてるんだこのクソアイドルと思った。数秒ほど理解不能な状態に陥り、アイの言っていることを飲み込むまでに少し時間を要した。少なくともB小町をここまで育て上げた実力者であり、頭も回る方である壱護はそれからわずか二分ほどで事態を把握できた。
孕まされた側のアイがあっけらかんとしていて、孕ませた側のヒカルが申し訳なさそうにペコペコ頭を下げてるので、だいたいどういう経緯か察してしまった。
「おま……おまえぇぇ……この、クソアイドル……!」
彼は今にも膝から崩れ落ちそうなのを、なんとか、かろうじて堪え忍んだ。ここまでくるのに、かなりの金と苦労と時間を掛けてきたというのに子供が出来た、と明け透けに言うアイドルがいるか。いたわ、目の前に。壱護の胃は突発的なストレスでキリキリ痛み、ついでに軽く目眩と吐き気までしてきた。
別に事務所から隠れて男を作るのはいい。そんなものは他のやつらもやっていることだ、例えばニノとか。飲酒やたばこをやってるようなのもいた、芸能界では未成年でそういうのをやるのはよくある話だ。クスリに手を出してないだけマシと考えるしかない。
そうした痛い目を見た過程で壱護も
そこにこのクソアイドルは言うに事欠いて男連れてきて子供出来ちゃった、である。
「……どうするんだ、堕ろすのか?」
「産むよ」
「じゃあ仕事はどうする、辞めんのか?」
「やめない。子供も生んで、アイドルも続ける」
きっぱりと断言したアイ。経産婦アイドル、という胡乱な単語が彼の脳裏によぎったが切って捨てた。誰が推すんだそんなアイドル。
少なくとも
だが、しかしである。ここで切って捨てるにはアイはB小町の中枢に据えすぎた。だったらどうするか。秘密裏に産ませて隠し通す。これしかないのだ。
「ハァー……とんだ業突張りだなオイ……ええと、おまえが相手でいいのか? 名前と、あと年はいくつだよ」
「いえ、その……ええと、事務所は無所属ですが、劇団ララライ所属のカミキヒカル、15歳です。あの、すみません……」
「あのワークショップ繋がりか、しかもアイより年下かよ……いや、こっちこそクソアイドルが悪いことしたな……子供のことはどうなんだよ」
「覚悟はもう決めました。こうなれば一蓮托生です。僕のことは事務所の稼ぎにでも何でも使ってください」
「お前の所属云々は後で良いか? 正直パンクしそうだ」
「分かりました」
壱護は深く深くため息を吐き出し、なんにせよ事実確認をしなければならないと覚悟を決めた。
「いちおうな、一応まずは、体調不良名目で活動休止を出す。それから、産婦人科に行くぞ。確かによく見りゃあ腹が少し出てるが、万が一、万が一だが、出来てなくて、ものすごい便秘ということもある……たぶん」
「あの、斉藤社長、それが便秘ならアイはもう死んでるのでは……」
「言うな。言うんじゃない。俺は検査キットだけ見せられてもまだ信じないからな!? クソッ、タイムマシンはどっかにないのか!?」
「あはは、そんな未来の道具がここにあるわけないよ? 佐藤社長バカだなー」
一番気楽にケラケラ笑ってるのが妊娠した当事者なので、壱護はヒカルに生暖かい視線を向けた。今のところは、比較的人の良さそうな子としかみていなかったので。
「でもそこら辺の病院だとまずいですよね?」
「さすがにな。行くのは地方、九州は宮崎県だ」
「……これってもしかして、婚前旅行!?」
「おまえなあ……」
かくして、妊娠秘匿ワケアリご一行は一路、神話の地・宮崎県の山中の総合病院へと向かうこととなった。そこであるのが、もうひとつの運命の出会い……産婦人科医・雨宮吾郎との出会いである。
★
(ちょいちょいちょいちょい!! えっ!? 本物!?)
その当の
(アイのそっくりさん……なわけないよね!? 長年のファンの俺が見間違えるわけないし! しかもあんなイケメン連れて来てた! 男!? アイに男が!? ぐおおお……しかもあの男の子! アイと同い年かそれ以下くらいか!? の、脳が破壊される! アイが男連れで
ぎちぎちと自分の中にあるファンの部分が苦しんでいるのがわかった。医師としては祝福すべき事柄だと思う。アイが母親なんて子供も嬉しいだろう(ファン特有の特大偏見)。だが実際に男が出来ているアイという構図をまじまじと見せつけられてしまったゴローは無事(?)に脳が破壊された。ゴローが頭の中に飼っているイマジナリーさりなちゃんも脳が破壊されて「んぎいいい!!」と嫉妬で狂っているので、現時点でのアイのファンとしてはおそらく正常な反応である。
一方で、ゴローはヒカルが芸能人だとこの時は気がついていなかった。というのも、この段階でのヒカルはテレビ出演こそしているものの、ロードショー等での映画のテレビ放映が中心で、ドラマではちょい役や脇役程度だった。そのため、SNSやBBS等の特定のコミュニティーにおいては有名だったが、なんとなくテレビを見ているようなメイン視聴層は名前を言われれば聞いたことがある程度の認識で、顔と名前が一致することはほぼ無かった。一応さりなは子役としての彼を認知していたが、ゴローに紹介は一切しなかった。そういうことやると結婚するという宣言に「ヒカルくんとしたら?」みたいなことを言われかねないので。そういうわけで世間での知名度的にはアイととんとんかちょい上といったところで、ヒカルが本格的に知名度が上がるのは動画配信を始めた辺りになる。
「アイ……本当にどうしてこうなった」
「!」
社長が人がいなくなったと思い、そう溢すのを隠れ見ていたゴローはおもわず聞き耳を立てる。
「せめて一言相談してくれれば……」
「相談したら止めるでしょ」
「当たり前だろ」
「本当にその節は申し訳なく……」
顔を青ざめさせている壱護、壱護に申し訳なさそうにするヒカル、吐きそうな顔をしているゴロー。この事情を把握した空間において、一番あっけらかんとしているのが当事者であるアイだ。笑顔が眩しくて生は数倍かわいい等とゴローは現実逃避し、そそくさと逃け出してエコー検査の準備を看護師たちに指示した。そしてすぐにエコー検査の結果は出た。
「妊娠十週目の、双子ですね」
「双子……」
「双子、ですか……」
深刻そうな顔をしている壱護とヒカル。当然だろう。十代で出産というだけでも母子ともに危険が伴うのに、その上双子なのだ。しかも、
その上、バレたらアイドルとしても終わりである。人生と命をかけたバクチに他ならない。だというのに。
「本当に産むのか? 妊娠がバレただけでもお前も事務所も終わりだ」
「んー……先生はどう思う?」
そう話をアイから振られて、そのときのゴローは医師としては患者の意見を尊重すると言った。
だが
ガチ濡れ場(R18)って需要ある?
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