【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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想定以上の速度でストックが埋まったので連投です


星に夢を その7

 子役問題は、結論から述べればなんとかなった。特に問題であった、重要なエピソードである、嘘しかなかったアイが本物のアイを見つけて、ラストシーンで双子を抱き締めるというカット。これはアイたっての要望で外せない、ということで熱望していたシーンであり、他はどうとでも誤魔化せたが、これだけは無理ということで、ついでに他の双子が必要なシーンも停滞していたのだが。

 

 それを何とかしてしまったのはアクア……というよりも、アクアの知り合いを自称する幼女だった。その出会いは、映画とは別のドラマ現場の仕事終わりでかなとアクアが(もちろん変装してはいるが)公園で黄昏ているという場面からになる。特にかなの目が死んでいた。カアカアとカラスが上空で鳴いているが、かなは何だかバカにされているように感じた。

 

「あー……ウエットティッシュあるかしら」

「ある。……それは失礼すぎね?」

「分かってるけど、こればっかりは気持ちの問題なのよ」

 

 そう言われてアクアからサッと差し出されたウエットティッシュで、傷つかない程度に唇を消毒といわんばかりに拭いているかな。ついにというべきか、ようやくというべきか。かなが別の男性俳優とのキスシーンが撮られたという、まあただそれだけであったのだが。

 別に誰が悪いという話ではない。NGを出していた訳でもないし、ずっとアクかなのセット恋愛というわけにもいかない。相手だって仕事をしただけだし、そもそも相手役はそのテのシーンを何度も経験したベテラン俳優だし、相手の機嫌などのバランス感覚が優れていたのでリテイクなしで一発成功させてくれたし、かなもそのようにした、演技に妥協はしないので。なんなら訳知り顔でアクアとかなに事前に一言謝罪を入れてきたくらい律儀な人だった。ドラマの内容的にはそのキスで最終回だったのも気が多少楽ではある、気休め程度に。

 ちなみにアクアは恋愛ドラマにおける、口さがなくいうのであれば体のいい当て馬役だった。こればっかりはドラマのメインが年齢差の恋を描いたものなので仕方ない。同年代の幼馴染「五河未来」を選ぶのか、それとも憧れのお兄さん「飛鳥響夜」を選ぶのか? 少女「古井麻宵」の揺れ動く複雑な感情と恋愛模様を描いたそれなりの名作であり、いわゆる年上好きな層にはぶっ刺さり、瞬間最高視聴率10%を記録することになる。もう既にシーズン2が制作予告されており、こちらは未来が主人公と明言されており、局もアクかな路線からの引き込みを計画しているぐらいだ。役者としても俳優としても、ありがたいことこの上ない。

 

 それはそれとして、いざそれを演技した本人達が気持ちを整理できるかというとそれは別である。

 

「なんか思ってたよりも、って感じではあったけど。それでも嫌なものは嫌ね」

「演技してる最中は気にならないんだけど、こうして落ち着くとな……」

 

 二人して、幸せを吐き出しているんじゃないかという位の深い深い溜め息を吐いた。フリルやヒカルといった先達曰く慣れるしかない。ちなみに全く参考にならなかったのはあかねの「演技手法的に気にならないかな」である。フリルも結構メソッド寄りなので「あかね、それは天才の思考」と返していた。メソッド演技はデメリットとして演者本人にも影響を与えてしまうので。

 そんな幸せを逃がしている二人に、突如背後から話しかける存在が居た。あいかわらずゴスロリチックな真っ黒な衣服に身をつつんだ幼女。

 

「やあ。久しぶりだね、()()()おにーさん。あと、初めましてだね、有馬かなさん」

 

 何をかくそうツクヨミであった。アクアは物凄く面倒事の予感がして思わず顔をしかめた。だがかなからすれば今のところアクアの知り合いっぽい唐突に現れた幼女である。

 

「え、あ、はい、初めまして。……って誰よ!? アクアの知り合いなの!?」

「そうだよ。一昔前までは、()を一方的に知ってるだけだったんだけどね。まあ、今の私は、カテゴリ的にはあんまり会いたくない知り合いなんじゃないかな?」

 

 ひと昔前ってあんたどうみても幼稚園児じゃない、ていうか自分で会いたくない相手って言う? 昔のアクアみたいなこと言う子ね。かなは内心思ったが口には出さなかった、成長したのだ。アクアは精神衛生上、かなが思ってることもツクヨミが口走ってる事実もあえてスルーし、眉間に皺を寄せながら観念してかなに紹介した。

 

「コイツは自称・ツクヨミ。高千穂で言ってた謎の幼女だ」

「うげ……勘弁しなさいよ……」

 

 有馬かなはついにオカルト側から私の方に寄ってきてしまったといわんばかりに言葉を漏らした。しかもよりにもよって月読尊を名乗ってくる、かなからしたらたまったものではない。ツクヨミはそんな反応の二人を、慈愛の微笑みで見つめながら続ける。

 

「映画、子役が居ないみたいだけど」

「なんで知ってるのよ!?」

「気にすると胃に穴が空くぞ。僕はもう気にしない」

「助けてあげようか? 私なら適任でしょう?」

 

 まだ映画の情報は公にしていないのに、そう自信満々に言う幼女。まあたしかに言われてみれば、雰囲気としては小さい頃のアクアに近い雰囲気を感じる。ここからワガママになれば結構ルビーも行けそうな感じはする。そう真剣にありなのでは? と思い始めるかなとは裏腹に、アクアは嫌そうな顔を続けて答えた。

 

「適任かもしれないが、おまえ神の理とやらはどうした? 自称ツクヨミがこんなところで子役って」

「ツクヨミは芸名みたいなものだよ。本当にそれなわけないでしょ? ん……まあ、あんまり上司に逆らえる立場じゃない……とだけ言っておくね」

「ああ……」

 

 なにやら哀愁を漂わせているツクヨミにアクアは少し同情してしまう。しかし、渋い顔からは戻らない。基本的に他人には良い顔ばかりしている(かな目線)アクアがこれだけ嫌悪感を顔に出すのは珍しい。というか神とかアクアから言い出してるし、本当に激ヤバオカルト幼女なのかと、聞きたいような、聞きたくないような。かなは小さなパンドラの箱が目の前にあるような気分だった。そして基本的にこういうの相手にはなにもしない、と決めているのでスルーを決めて不思議幼女として扱うことにした。

 

「じゃあ……あー、まあまずはうちの事務所に呼ぶしかないか。どこにも所属してないよな?」

()()()()プロの子役って紹介すれば、()()()()()()だよ。実際似たようなものだしね」

「……………………そうか」

「そ、そうなのね……」

 

 なにやらヤバそうな空気を感じたのでアクアもかなも頑張ってスルーした。そんな様子を善きかなと言わんばかりにうんうん頷いてるのが余計に怖かった。

 

 アクアはやはり、渋面から戻らなかった。というのも、ツクヨミという幼女は微妙に苦手なのだ。神の使いとか神とかその辺のオカルト話は深く考えないようにしているが、それ以上にまるで幼子をみるような眼で自分に視線を向けてくるのが、なんとなくむず痒い。例えるなら、近所のお姉さんが向ける、大きくなったけどまだまだ子供だねって感じの生暖かいというか、生温い視線と仕草だった。なによりも、その見守るような視線に、身に覚えのない既視感があったから。

 

「……一応聞いておくけど、上の誰から?」

「聞かない方がいいよ?」

 

 アクアがそう恐る恐る聞くとにこっ、と不自然なほどの作り笑顔を向けてそう言ってくるのだから、かなとしてはたまったものではない。

 

「あ、アクアがなんとかしてよね!? あんたの引き寄せた子でしょ!?」

「わかってるから服を引っ張るな」

 

 気がつけば、仕事でかながキスしたことについてのモヤモヤはいつの間にか消えていた。

 

 ☆

 

 そういうわけでアクアが連れてきた「自称とこたちプロ所属の子役ツクヨミ(芸名)」はヒカルがその演技力に納得し、アイは思わずツクヨミに抱きついて気に入ってしまうほどのレベルで、当時の明らかに浮世離れしていたが、やはり子供でもある、という不思議な双子を一人二役で演じた。その様はアクアとルビーが恥ずかしくなるぐらいに類似しており、あかねをして「まるでずっと近くで観察していたみたい」と言えるほどの完成度であった。

 もちろん経歴を怪しんだ監督や壱護なんかは、出演させる前に聞いたこともない芸能事務所が存在するか調べたところ、確かに存在しているらしく、とこたちプロダクションという名前できっちり株式会社として登録されていたし、ペーパーカンパニーというわけでもなさそうと言う結論に至った。決め手となったのはホームページにツクヨミの名前と写真があり、企業方針として演者の自主性を重んじていますと書いてあった。

 信頼できそうなので電話も掛けてアポイントメントを取り、向こうのマネージャーと契約をきちんと結んだ。ちなみにツクヨミの保護者はそのマネージャーだったというオチである。

 アクアとかなはその一連の流れを見ていたのだが、余計にうさんくさく感じてしまった。結局他にぴったりな子役も他にいないし採用となった。ちなみにアクアとルビーが二人とも必要な場面では映像合成を使うとの事。アクアは、技術の進歩だなあと現実逃避していた。

 

 そんな話がようやくまとまり、本格的に作品のクランクアップに目処がたった。アクアとかなはかなの家に帰宅した。

 

「どっと疲れたわね……あれ、あかね達は?」

「今日は女子会だって言って母さん達とカフェに行くそうだ。……気ぃ使われてんなあこれ」

「そうね……バレバレだったってわけね」

 

 二人揃って、溜め息をつこうとして、やめた。幸せが逃げていくだけなので。しばらく演技してるとき以外はこんな感じで溜め息つきまくりなので、あかねが主導で気を利かせて二人きりにしてくれたのであった。

 

「まあ、そうね。慣れよね結局」

「そうなるな」

「じゃあアクアと私がキスしまくって回数重ねれば良いのよ!」

「なるほど? 一理あるな」

 

 アクアは空気に呑まれたのか、あるいは最近は見せていなかったはっちゃけゲージがMAXになったのか。アホなことを言い出したかなに同意した。もしくは、単なる建前と茶番にのっかっているだけともいう。とにかくアクアもかなも、前述のドラマキス事件の影響なのか、反動なのか。テンションがおかしかった。

 

「じゃあまずはこれから! このピザ○テトに、このすし○こを振りかけるわ」

「うまいのか?」

「名付けてピザのこ。もう震えるぐらい美味しいから。しかも美少女のちゅーつき。はむ」

「なるほど、これを食べろと。よし任せろ」

「んー♡ んちゅ♡ あーくん♡ あーくん♡」

「よしよし、かなは可愛いな。……確かにこれヤバいくらい旨いな」

「でしょ? ……かなの味はどうよ?」

「知ってるだろ、前から病みつきだよ」

「ん♡ んー♡ おかわりはどう?♡ ガマン出来なくなった方が負け♡」

「よーし、負けねえ」

 

 とんとソファーに押し倒されて、アクアはキスの雨を降らせた。かなはんーんー言いながら、しばらくはキスされる度に漫画のように両手両足を嬉しそうにパタパタさせていたが、それもやがて全身でアクアに蛞蝓のように絡み付いておとなしくなった。

 

 結論から言えば。かなはアクアとのキスは少しも慣れなかったが、その後から、仕事でのキスはいくらかマシになった。やはりこういうものは最終的には、気の持ちようである。





ツクヨミ「子役なんですけど! とこたちプロ……? に所属してるんですけど!」

常立(とこたち)プロ。……別に嘘は言ってない。天之常立(タカマガハラ)に属してるし子役として現場に送りこまれたし。


本作の設定において、アクア達を転生させたのは幽世の神である大国主命です。もちろん嘆願したのはツクヨミちゃん(月読尊ではないが、導きを司る小さな祠に住まう神ではあった)。描写的に十中八九あの祠の神であるツクヨミちゃんが自分を助けたゴローとさりなの魂の転生を願い、嘆願を受けた土地神の猿田彦と天鈿命女から天照大神→素戔嗚尊→大国主命と話が回っていってアイとヒカルが芸能を押し上げるが子を失えば壊れると見た天細女がアクアとルビーの肉体を転生先に推薦したというかたちになりました。ちなみにすんなり転生できた最大の理由は二人とも精神的に純粋な子供だったから。原作でもツクヨミちゃんが言ってましたがゴローもさりなも「子供」だった。それだけの話ですね。

ツクヨミちゃんは神々の中では下っぱの下っぱもいいところなので黄泉の国の事しか知らなかったんですが、その辺の大事に巻き込まれて結果的にアマテラスと繋がりが出来、導きの神としてルビーとアクアの近くに(眷属のカラスと共に)派遣された、ということになりました。その際に多少なりとも力を増させるために月読尊とのコネクションまで得てしまった上にアクルビが某島根の妹系女神になんかシンパシーを感じたのか眼をつけられていて、迷惑料としてツクヨミちゃんが子役として送り込まれることに。
実は不思議パワーには個人裁量権が少しだけあり、ほんの少し道を整えてあげる程度なら出来る。それ以上は神々のルールに抵触するのでダメ。結局は本人次第。
ちなみに子役派遣に関してはルール的にはセーフ。

現在は実際に転生を行った大国主命や根の国の管理者である素戔嗚尊が上司に当たる。暇してる高天原の神々の一部でアイの周囲はちょっと人気で、特にアイは芸能系の神々の中では結構なイチオシ、特にストーカーを退けた後あたりから。ストーカー云々以前は曇らせ好きな荒御魂あたりから人気だったが、ストーカー撃退からそこら辺の神々は興味を失った。
なので加護と祝福をこっそり与えてる曇らせ嫌いな芸能神が結構いる。そのため、アイの周囲が妙に若々しくなっているし、モロに受けたアイとヒカルは若々しい容姿を保っている。別に金運とかそこら辺の加護は与えていない、フツーに本人たちが持つ天運。

という神話的オカルティックな事情は本編にはほぼでてきません。ぼんやりと脳内で設定したものを改めて文章にしてみたらごちゃごちゃしてました。
よく考えなくても原作で怪しい幼女をスカウトしてきました、で「アクアはどうやってスカウトしてきたんだ」とは思われても自称ツクヨミのへんちきりんな幼女に違和感を持たれてないの妙だな? 芸名が「ツクヨミ」はかなりアレなような気がするんですが、結局他に適役もいないからなのかスルーされてましたし……やっぱりなんだかんだオカルト存在なんですねツクヨミちゃん。

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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