【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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激辛。


13.今日は辛口で

 アクアとルビーの高校入試、そのおよそ3ヶ月前。有馬かなは、ネットドラマの撮影の現場で人知れず嘆息していた。

(これがヒカルさんの言ってた、上の思惑のドラマね……)

 有馬かなは女優を自認している。まあ? 確かにアイドルを誘われたし? アクアにそこら辺のアイドルより何倍もかわいいとか言われちゃったし? 歌も踊りもそこそこ(有馬かな基準)出来るし? 女優の合間で良ければやっても良いかな~?? なんて思ってはいる。要するにカメラに向けてやってた「私を見ろ」をファンに向けてやれば良いんでしょ、楽勝じゃない。と考えている。

 有馬かなは伊達に天才ではない。今でこそ天才役者の肩書きは同年代の黒川あかねに譲ってはいるが、それは世間の評価だ。有馬かなは全く衰えていない、ただそれを出す機会が中々無いだけで。たまにフラストレーション発散のために、ヒカルのYouTubeチャンネルで時々行われる“カミキミッション”という、細かく設定されている特定のシチュエーションで、5分間完全アドリブのみという地獄のような寸劇をやっている。アクアと、そういうちょっとした恋人ごっこみたいなことが出来る上に、演技の訓練にもなる一石二鳥なこの企画は、かなは結構好きだ。

 ひとつ前の現場は中々楽しかった、低予算ながらもスタッフも全員で良い作品を作ろうとしてたし、ネットドラマながら星3を超える中々の好評作品だった。自分はちょい役だったが、中々楽しい現場だった。

 だがせっかくの主演だから、それにお世話になっている鏑木Pだから。と飛び付いたこの現場は控えめに言って最悪である。

 予算ギリギリなのはまだ良い、スケジュールに余裕がないのもネットドラマならままあることだ。台本は滅茶苦茶で原作崩壊、肝心の遺されたヒロインがカレーを食べるあのタイトル回収をするラストの名シーンすらカットされているが、14巻を半クール(6話)に捩じ込むのだから、仕方がない。まだ飲み込める。原作にないキャストやオリキャラ、まあこのアクア程ではないイケメン軍団を売るためなのは分かった、上の意向には逆らえない。後学のために、あと鏑木Pとの顔繋ぎに来たアクア曰く、スタッフの質はかなりのもので、演出と監督の腕前は信頼できるらしい。演出のことが分かる役者ということで、スタッフの反応が良かったのも面白かった。ここら辺は、時々苺プロでヒカルが経験談として語る貴重な話をアクアから又聞きしているので知っていたし理解していた。

 ただただ、演者の演技レベルがひどい。棒読みもいいところである。恐らくまともな訓練もうけていないだろう。有馬かな的な表現をするなら、本気で演技したら大根役者が浮き彫りになってぶり大根といったところか。もはや調理されている。

「オマエサァ、ソンナカオシテテ、タノシーノ?」

「何の用?」

 その中でも、主役の鳴嶋メルトは、まだマシな方だ。やる気はないが、少なくとも撮影が始まれば演技をしようとしている。他は全部棒読みだ。

(でもそれ、逆効果なのよね)

 演出の事は有馬かなにはよくわからないが、少なくとも演じているメルトよりも、演じていない素のメルトの方が()()()()()()合っている感じがした。格好良く見せようとしすぎてお前さぁ、というよりフォマエになってるので、鏑木への挨拶と顔つなぎ目的で現場に付いてきていたアクアが笑いを堪えていた。無表情だったが、かなは彼が拳を握りしめて我慢しているのを間違いなくみた。自分だってちょっと笑いそうだったがこらえた。プロなので。

(態度は昔の自分みたいね、ほんとやられる側になって初めて気づくものね)

 鳴嶋メルトはソニックステージで今売り出し中のモデルらしい。確かにソニックステージは大手だ、その圧力もわかるし、天狗になるのもわかる。恐らく昔の自分のように一切の挫折もなくランクアップしてきたのだろう。今回のドラマだって自分の踏み台程度にしか思ってないことは良く分かる、自分もそうだったので。

 

「アクア、少し良い?」

「何だ?」

「ちょっと聞きたいんだけど」

 

 だからまぁ。最低な役者、期待されないネットドラマ、再生数も怪しい。自分が求められているのは最低限の作品クオリティ保持のみ。そんな現場に自分を引っ張ってきた鏑木Pに“一泡ふかせてやろう”と企んでいた。

(この有馬かなを舐め腐った代償を、ちょこっとでも払わせてやるわ! ぐうの音を上げさせてやる!)

 

 一方メルトはアクアとかなが何やら親密そうに話し合っている場面を目撃したことを、意外にも運が良いと考えていた。

 “アクかな”といえば自分が小さな頃にやっていたドラマや映画での定番子役コンビである。天才子役有馬かなと秀才子役星野アクア。流石のメルトも、名前だけは知っていた。なので流石に普通に挨拶を交わした。

(へぇ、やっぱり仲いいんだあの二人……いや、距離近くない?)

 メモを片手に何やら話し合っているようだが、アクアとかなは距離が近い。恋人でも中々なさそうな距離感で話している。

 スマホで調べてみると、二人は仲良しみたいな記事が沢山出てきた。最新のSNS投稿によれば、(ルビー)のおねだりでアクアに手料理を作って貰い、彼の妹と共に食べたとかそういう話まで出ている。

(……まあ、小さい頃からずっと一緒の仲良しって感じか。にしても近くない? というか普通、こういう収録についてこないよね? え、カレカノとかそういう仲? マジか)

 何やら真剣そうな顔で会話をしている二人を見て、妙な勘違いをしていた。当たらずも遠からずと言ったところではあるのだが……。

 

 ☆

 

「うっ、やりやがったな……」

 

 鏑木はかなの目論み通り、ぐうの音を上げていた。この作品はイケメンモデルたちの顔繋ぎも兼ねた販促番組程度で、あとはスタッフの練習や熟練度の上昇、そういった経験値の獲得程度でしかない、やる前から爆死するのが見え見えの作品だ。赤字にならなければ、まあ良し。赤字になっても、まあコラテラルダメージだ。その程度の作品だ。原作が数年前に終わっているのも、原作ファンに幻滅されるのも、星1爆撃されるのも分かりきった上のものだ。

 だが、だからといって肝心のモデルがある程度は目立たなければ意味はないし、それのバランスが崩れるとモデルの事務所や上からチクチク言われるのは自分である。

 成程確かに、他のモデルが登場するシーンは抑え目に演技しているのが分かる。流石有馬かなだと感心するほどだ。

 だが、それ以外の部分。ヒロインが単独で登場するカットで、好き放題しているのが問題であった。

 

「なんだこの気合いの入った演技は。テレビ(地上波)じゃねぇんだぞ……」

 

 有馬かなは演技に煩い。そもそも、役者で演技に煩くないのは少数だろう。だが他の演者に口出しする程の事はしないし、作品を崩すようなことはしないと踏んだから、あのレベルにしては安価な有馬かなをメインヒロインに採用した。

 ネットの反応は「ヒロイン以外全滅」……まあ、これは予想できたことだ。だが、「今日あまはヒロインだけのシーンだけ見ろ」「ヒロイン一人のシーンは良くできてる」というような反応が存在するのは予想外である。別に原作読者層の導線は期待していないが、それ以外の層でも似たような反応がちらほら出ている。つまりモデルが有馬かなという輝きに、やや食われている。やや、というのがミソだ。つまり、有馬かなは少しも本気ではない。あくまで好き放題やっているだけである。遊んでいると言っても良い。巨星(スター)の演技と評されるような奴の()()がどれ程のものかは、言うまでもないだろうが。

 

 鏑木が何か言おうにも、演技してるだけですけど何か? と返されるのがオチだし、そもそも女優に演技を抑えろと真っ向から言う等出来るはずもない。もっといえば有馬かなは弁えるべき部分できちんと弁えていたし、前述の通り本気は少しも出してない。そんなこと言おうものなら、苺プロから自分が切られるのは明白であった。プロデューサーとしてこれほど致命的なことはない。特にヒカルやアクアは、ネット出演に対するハードルが低いのも良い。有馬かなや他の所属タレントだってそこそこ使える。

 アイは……もうあんなのをネットに連れてくるのはほぼ無理だ。予算的な意味でかなりきつい。大舞台の主役なら使い勝手抜群なので、もちろん切られるのは痛手過ぎる。

 

「収益的にはプラスの要素だけどさぁ……」

 

 普通の低予算現場なら、ありがたい存在だ。作品が崩れているわけでもなく、有馬かなに100%視線を吸われるわけでもない。絶妙なバランスで目を引く演技をしている。好き放題しているとは言ったが、完全にそういうわけではない。アドリブも殆どなく台本通りだ。しかも作品評価を底上げして、意外にも星1.5くらいに保っている。2には行かなそうだ、イケメン鑑賞としても、低レベルなので当然だが。

 だがこの現場はそうではない。それを分かった上で、しかも自分に責任が及ばない範囲で好き放題している。売り上げもそれのお陰でそこそこ出ているので、自分からは何も言えない。どうも有馬かならしくない頭の使い方……と、ここまで考えて鏑木は気づいた。

 

「アクアの仕業だな、あいつめ……」

 

 鏑木が責任を取ると分かった上で、有馬かなに入れ知恵をしている。星野アクアは、演技の舞台で演出家のような考え方で演技をする。演出にも当然造詣が深いし、何よりコミュニケーションを重視する役者だ、誰が責任を取ってどのくらいなら鏑木が黙り込むしかないのかを見定めるくらいなら出来るだろう。あれでいて演技は未熟を自称しているが、「アイツが未熟なら俺はなんだ!?」となりそうな役者はごまんといる。比較対象がヒカルやアイなのが恐ろしい。

 特に、シーンの切り替えやカットだってあるのに、シームレスに演技のレベルが無段階変化している点だ。演出にも理解のある自分が見ると非常に気持ち悪いのだが、視聴者の殆どはそんなものを気にしないだろう、という判断がアクアの手癖を感じる。視聴者にとってはただ上手いか下手か、そのどちらかしかない。こんな妙技を使えるのは、少なくとも鏑木はかな位しか知らなかった。というか、今初めて認知した。

 

「有馬かなを舐めてたか」

 

 さてどうしてやろうか。やられっぱなしは性に合わない。うまいことやり返しつつ、なんとか言い返せない程度の……。そこではたと気づいた。

 

「有馬かな……“アクかな”……なるほど?」

 

 鏑木の持っている企画の一つを使えば、なんとでもなるだろう。鏑木は悪い笑みを浮かべた。

 鍵は有馬かなだ。




頭脳は東医大卒身体は学生、高校生役者アクアvs酸いも甘いも噛み締めた歴戦フリープロデューサー鏑木
ファイッ!

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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