【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
「おにいちゃんやったねぇ! オタク爆発させちゃったねぇ!」
「悪かったって」
「あのシーンでかな先輩、トマトより真っ赤になってたんだけど? トマティーナ開催しちゃったの?」
「開催してないが。なんだ、今晩はトマト料理なのか?」
「ううん、消費期限ギリギリのそうめん」
「そういや残ってたな」
自宅で二人で反省会……というか、純粋にルビーになじられていた。前回のあかねとの会話で、うっかりあかねを発火させて、自分もついでに引火してオタクくんとオタクちゃんという中々こってりとした本性の一部が放映されてしまったからだ。まあ、アクアは生まれついてのドルヲタというレッテルがもうあるので今更だが、あかねも中々可愛らしい見た目に反して、そういう部分があるというのはギャップがあるため、一部で人気だ。主な視聴者層を考えると、反応は賛否両論といったところだが。真顔で有馬かなについて語る彼女のファンガールっぷりは中々圧がある。
「で、おにいちゃんこれどうすんの? ネットの反応は完全にオタクちゃんさぁみたいな反応してるんだけど」
「どうにでもなるさ。それに、今回やって色々気づいたこともある」
今のアクアは恋に迷う若人ではなく、“演技”に全力を尽くすプロの顔だ。こういう真面目な顔もかっこいいなぁ、と見とれながらも話を聞く態勢に入るルビー。
「俺はまず、全員の性格タイプを調べるところから始めたんだ。黒川あかねがあんな風に発火するとは思わなかったが、これはこれで収穫だ」
アクアはスマホに残したメモを確認しながら妹に解説する。
「まず、“今ガチ”に参加している六人は、結構モチベーションが違う。つまり、恋愛とは別に何かしらの目的がある奴がいるってことだな」
「へー。まあ確かにおにいちゃんも表向きは“演技幅のため”だもんね。あ、MEMちょは分かりやすいかも。YouTuberだし、登録者と視聴者目当て」
「当たりだ。まあMEMちょは分かりやすかったな。次に
「え、ゆきぽんそんな読み方なの苗字。
「お前はもう少し勉強を……いや、確かに中々みない苗字だな。これを機会に覚えておけばいいだろ」
「はーい。うーん、なにか目的があるように思えなかったけど? よく映ってたなー位で。あ、でもおにいちゃんにも他の男の人たちにもアプローチかけてたような?」
こてん、と首をかしげるルビーに可愛らしさを感じながらも、今は自分の目的を話す時間だ。
「それだよ。ゆきは次の仕事のために、沢山画面に映るのが目的だ。だから初めは俺たちの反応をみるためにアプローチをしかけてたんだ」
「えー? 純粋そうだと思ったのに」
「良くも悪くも、高校生ながらに芸能人らしい娘だよ」
もっともこれは、オフレコで“事務所の先輩に仕事を取られるから必死”という裏話もあったからこそ理解できたのだが。
「で、熊野ノブユキは……普通だな。番組に出て本気で恋愛するつもりではあるが、やや受け身だ。この番組で出会って恋をして……みたいなつもりらしい」
「あ、普通だ」
「だろ。森本ケンゴは、もっと消極的というか……カメラがあると緊張して、素を出せなくなってしまうタイプだ。だが話が出来ないわけではないし、話してみると中々面白い。自分の専門の会話が音楽関連だからその方面の流行は敏いし、その気になれば作曲まで出来る。やるときはやるタイプと見た」
「バンドマンだっけ? 遊んでそうなイメージあるのになんだか硬いね」
ここからがポイントだ、とアクア。ルビーも姿勢を正した。
「問題は黒川あかねだ。あいつは積極性と主体性が無さすぎる。話していて分かったが、演劇以外には殆ど縁の無い生活を送ってきたみたいだ。つまり会話の幅もネタもない、一芸特化の不器用で真面目な……まさしくオタクちゃんだ。あそこで発火しなければ、見せ場はひとつも無かったぞ。正直に感想をいうなら、この番組は向いてないな。かな風に言うなら『なんでこんな番組に出てきたのよ。おとなしく舞台に引っ込んでれば良かったのに』ってところか」
「うわぁ」
結構仲がよさそうに画面では話していた。少なくとも自分とかなが中々嫉妬の炎が燃え盛るくらいには。まあでも私達はアクアとキスしたし? というメンタルマウントで乗りきったが。だが、アクアからの評価は辛辣でキツい。アクアのそういう冷静な評価は、大体キツイが。正論マンな上にかなの影響なのか批評時は若干口も悪いので。なによりも引いたのは一字一句違わずに有馬かなが、オタクを爆発させていたあかねに言っていた台詞とピタリと合致したからだが。
「恋愛リアリティーショーっていうのは、思っているより嘘が少ない。台本もない、あるのは演出だけだ。俺は初回だから警戒して完全装備して行ったが、他に俺みたいに完全装備で嘘の鎧を装備してたのは……たぶんMEMくらいだな。あいつ、YouTuberとしての顔しか見せなかった」
「……嘘が少ないのは良いことじゃない?」
「そうでもない。『嘘は最大の防御』なんだ。演技しているから、嘘だから誹謗中傷も気にならない。だが、そうでないなら?」
「そのまま自分に突き刺さる……あ、だからアクアは『アクアの演技をしてるアクア』とかいうよく分かんないことしてたんだ」
「ああ。まあ、それだけじゃないが。それよりも問題は黒川あかねだ」
他の四人は良い。己の道を行くアーティスト気質な面を感じるケンゴ、他人の意見にさらされてもそれすら利用するようなしたたかさを感じるゆき。元々底抜けに明るく裏表もないしコミュ力もあるノブユキに、元々ネットの荒波を泳いで、二年でYouTubeで36万、TikTokで60万を超える登録者を抱える生粋のネット住人のMEMちょ。もちろん、人生経験を積んで精神的にも肉体的にも過酷な医療従事者としての経験があるアクアもそういったものに強い。最大の理由は真横に常に口の悪くて可愛らしい幼馴染みが居たからだが。常に論争をしてきたようなものだ。だがあかねは違う。
「まず黒川あかねはメイン視聴者層に知名度が無い。少なくとも中高生には知られていない。誰? って感じだ」
「まあ確かに、かな先輩は知ってたみたいだけど、私は知らなかったし。先輩はそういうアンテナ広いもんね」
「かなのその辺は流石だよな……次に、真面目でなんでも真に受けてしまうような性格で、消極的なので溜め込んでしまう性質もある。そのためディレクターの言いなりになってしまうだろうし、不満やストレスも溜め込んで隠す。まあ、演劇では大丈夫ってことは台本があると大丈夫なタイプなんだろうな」
かな曰く、台本さえあれば、アドリブも何もかも完璧に役をこなせる“天才役者”とのこと。ならば、台本がない今ガチにおいて、あかねはかなり不利な環境に居ることになる。例えるなら地雷原にその身一つで飛び込んでいるようなものだ。気がつかずに地雷を踏み抜いてしまえばおしまいだ。自分を晒す恋愛リアリティーショーとはそういう場所である。アクアも他のメンバーもそれを承知で飛び込んできているはずだ。
「ねえおにいちゃん。控え目に言って重症じゃない? 爆発するやつじゃん」
「もちろん重症だ。だが、治療法はある。そのためにこれを用意して貰ったからな。対症療法的だが、一時しのぎにはなるだろ」
「あ、なるほど。それでこれかぁ……台本がないとダメなら、即興でも作っちゃえば良いもんね! あ、かな先輩着いたよ。覚悟決めてねおにいちゃん♡」
「……わかった、だが出来るだけ青春っぽく頼むぞ」
アクアは顔が真っ赤になっていた。どうも弱くなったのは二人相手限定ということになるらしい。
☆
(あの後、さんざん夫婦ごっことか恋人ごっこさせられたが……まあ、その甲斐はあったな。リハーサルとしては満点だった。二人ともやっぱ演技上手いな……)
翌週、収録日。アクアは“持ち込み企画”を番組Dに話し、それがゴーサインが出た。もちろん中身は検閲済みだ。苺プロにも許可を取り持ち出した“これ”は、中高生も視聴者が居る人気コンテンツだ。撮れ高としてもバズとしても一定の価値が得られる。なにより今回入っている内容は、現役の恋する乙女達が考えた夢のシチュエーションの詰め合わせだ、間違いないだろう。これもまたある意味での“リアリティーショー”だ。
「アクたーん、その箱! もしかして?」
「流石はYouTuberのMEMちょ、目敏いな」
跳ねるようにやってきたMEMと共に、カメラを意識しながら悪巧み顔でにやりと笑って見せる。
「ご明察の通り、カミキミッション出張編だ」
番組の演出が信用なら無いなら、演出をこちらでコントロールしてしまえ。それが出来るのが恋愛リアリティーショーだ。
リアリティーだよリアリティー
リアリティーこそがエンターテイメントなんだ
必要なのは“現実”ではなく“現実っぽさ”
だからリアリティーのためには嘘も必要
現実先輩にはなにせ本当に嘘のような本当の話がたくさんありますからね、進化論に喧嘩売ってるようなカモノハシとか、セルフ焼き畑農法して自分だけ生存しようとする上に毒性と耐火性まであるユーカリとか
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