【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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21.カミキミッション出張編

 カミキミッション。カミキヒカルのYouTubeチャンネル“ヒカルチャンネル”で人気のシリーズ動画。正式名称は「カミキヒカルの無茶振りミッション~台本無しで五分アドリブ~」(ヒカル命名)だったが、長いので#カミキミッションで統一されている。界隈では更に略して“神木見”でも通じる。

 出演する演者がアイ、ヒカル、アクア、かな、ルビー、時には旧B小町、変わり種にぴえヨンまでと粒揃いの顔が良くて単価の高い芸能人達が、夢のようなシチュエーションで演技をする。視聴者をターゲットにしてアクアやかな、時にはアイが恋人みたいなことをカメラに向かって言ってみたり、複数人で演技したりと様々だ。

 略称はもうひとつ“ヒカルの無茶振り”とも言われているが、その理由は投稿者コメントに必ず演者のコメントとして一言記されているものが「設定が細かすぎて間違えそうになった」「恥ずかしすぎるシチュで演技終わってしばらく顔から火が出た」「ヒカルさんマジ許さん」「しがらみ案件じゃなかったらやらないピヨ」等と大体悪態と苦言が出てくるためである。なんならヒカル自身が自滅していることもある。そのためエンタメ性もあり視聴者層の幅を選ばず人気である。

 ヒカルとコラボといえばこれ、という風潮もあり、ヒカルとコラボすると演技させられるという中々恥ずかしい体験を受けられる。初々しい演技をしたり、中には驚くほど堂々と演技をする才能のあるYouTuberも出てきたりする、面白い企画である。

 アクアが持ってくる企画……学生同士の楽しみ方としても中々面白そうなものであった。

 

「今回は、カミキミッション“今ガチ”出張版だ。これで手っ取り早く皆の夢見るシチュエーションをやってみようっていうことだな。籤引きで」

「え、マジのカミキミッション!? くじ引き!?」

「……ランダムか」

「私、見たことある。ちょっと楽しそう」

「ああ、知らなかったのか? 俺はヒカルさんと同じ事務所でカミキミッションも何度もしたことあるぞ」

「ほ、ほんもののカミキミッション……出張版! わあ……!」

「あかねちゃんはなんか詳しそう~?」

 

 狼狽えるノブユキとケンゴ、面白そうとやる気のゆきに、顔には出していないが巻き込まれるのが嫌だがバズにもなるので内心複雑なMEM、唐突に降って湧いた“生カミキミッション”にやや興奮して目を輝かせるあかね。それぞれが面白い反応を引き出している。これだけでこれを出した価値があるだろう。

 アクアが持っているのはもっぱら生放送やコラボで使われる“カミキミッション出張版”に頻出する手を突っ込むタイプのプラスチックで作成されたいわゆる“抽選箱”だ。側面にはわざわざ“カミキミッション出張版”と描かれ、隅っこには苺プロの企業ロゴとデフォルメのカミキヒカルまで描かれたものだ。舌をだしており絶妙に腹の立つ顔をして居る。コラボ相手からは悪魔の箱呼ばわりされているそれは、しかしアクアの監修入りではある。

 

「そんなに警戒するな。この中にはウチの事務所所属の「現役乙女」たちが考えた甘ったるい夢のシチュエーションから、素人でもギリ出来そうなものを選んでいれてある。5分間という縛りもない。いくつかハズレ……間違えた、やや難易度の高いものがあるが」

「ねえアクたん!? 今ハズレって言った!?」

 

 ぴょこぴょこ飛び付いてくるフリをして「やめろぉ~、無茶振りはやめろぉ~」とうめくMEMを片手で制して続ける。ジタバタ暴れる姿がやけにコメディチックなのは彼女の芸風なのだろう。アクアとしてはよく言う、今のところ一番嘘の仮面をかぶってるくせに、という気分だ。

 

「相手はランダム、内容もランダムだ。その方が楽しいだろ? まあ、恋愛シチュエーション限定の王様ゲームみたいなもんだと思ってくれ。王様はあいにくこの箱だが」

「アクアくん、質問良いかな。えっと……同性同士になることはある?」

 

 ゆきからの質問に、あえてあくどい笑みを浮かべて黙ってスルーしてみる。

 

「……さて、ルールを説明するぞ」

「えっ」

「冗談だ。同性同士のが見たいならヒカルチャンネルで幾つか種類がある。演技自体は渾身だから是非見てくれ。個人的には複雑だが」

「ほっ……」

 

 ゆきよりもあからさまに安心した男性陣を尻目に、アクアは大きめのサイコロをスタッフに運んで貰いながら説明する。MEMは「昔こういう番組無かったっけ~? サイコロ振ってさぁ、その出た面の話をするやつ……なんだっけ?」と的はずれな反応をしていた。

 

「まず、一人ずつこの箱から、シチュエーションを引く。どうしても無理なら、ゲーム中に一度だけ引き直しが可能だ。そうしてシチュエーションを決定したら、サイコロを振って相手の異性を決める。男子なら1と2は俺、3と4はノブユキ、5と6はケンゴ。女子はゆき、MEMちょ、あかねの順で、数字の割り振りは同じ。シチュエーション再現の前に、最大で10分間の打ち合わせが可能。演技時間は指定無し、それこそ10秒でも良い……簡単だろ?」

 

 とはいえ他の皆はしり込みするのは目に見えている。だから見本を見せねばならない。

 

「じゃあ、まずは見本として俺がやって見せる」

 

 アクアはこの箱に“仕込み”をしている。上部にアクア用として貼りつけてあるくじがあるのだ。事前に準備していたかなり軽いシチュエーションだ。もちろんこのレベルのものが沢山入っているという証明だ。

 

「よし、出たぞ。内容は……『少女に壁ドンと顎クイして「◯◯、俺のものになれよ」と名前を呼び捨てて迫る俺様、それを受けて胸をときめかせて「はい……」と消え入りそうな声で答える少女』か」

「あ、それくらいなんだ……」

「素人向けって言ったろ」

 

 ほっとするノブユキを尻目にサイコロを振る。相手は……MEMちょだ。

 

「よし、相手はMEMちょだな。打ち合わせは必要か?」

「ふふん、アクたん。そのくらいなら必要ないでしょ~?」

「そうか。じゃあ……」

 

 余裕綽々といった風のMEMに、アクアは全力の本気をぶつけてみることにした。

 ずい、と突然接近すれば、思わずたたらを踏み背後の壁に追い詰められる。カメラはその様子をおっているのをアクアは確認もせず感覚としてカメラの位置を感じながら、カメラに映えるように壁ドンをする。ぐっと片足をさりげなく押し込んで逃げられないようにする。

 

「……」

「ひぅ……な、何……?」

 

 じっと彼女の瞳を見つめてやると、ややたじろぐ。ここだ。もう片方の手で顎を優しくつまみ、引き上げてキスでもするのかという距離まで接近。そのまま彼女を落とすつもりで囁く。

 

「MEM……俺のものになれよ」

「は、はぃ……」

 

 中々会心の出来だ、と自分を誉めてやり、ちぢこまって赤くなったMEMを解放する。彼女はそのまましおらしくなったままだった。

 

「ざっとこんなもんだな。どうよ?」

「なんつーか、ザ・お手本って感じ! すげーな、さすが役者」

「でも、これならなんとかやれそうだ」

「行けそうな気がするね?」

 

 こうして始まったシチュエーションは、()()()自分のキャラに比較的合ったシチュエーションがあたり、順調にこなしていく。例えばゆきはケンゴとで、からかって遊ぶ小悪魔な子とそれに振り回される男の子、MEMとノブユキとでは距離が近くてどぎまぎする先輩に頼られる後輩、などだ。一周目でずっこけられたら困る。

 

「つ、つぎは私の番だね……がんばるぞー……」

「そんなに気張るなよ」

 

 なにやら緊張した面持ちで、一枚くじを引くあかね。そこには「14へ行け」とだけ書かれている。普通のくじの方が多く入っているなかでこれを引き当てるのは、ある意味あかねは持っていると感心するアクア。

 

「あっ……」

「お、あかねは知ってるな。それは“無茶振りミッション”だ」

「アクたんの言ってたハズレ!?」

「ハズレじゃない。ほら14ボックスから引くんだ」

「14へ行けってどういう意味?」

「さぁ……?」

 

 追加で現れた、無地の白にゴシック体で14とだけ記されているあまりにも無機質な抽選箱にごくり……と思わず息を呑む一同。いわゆる“ハズレ枠”として14へ行け(死ぬがよい枠)が数枚だけヒカルミッションには存在していた。

 

「無茶振りミッションと言っても、あかねなら問題ないだろう。この中にあるのは、現役の劇団員や俳優がやるような内容ってだけだ。演技に関わらない奴にとっては無茶振りってことだよ。とはいえ、普段動画投稿の方にされている本家“カミキミッション”の内容よりも低レベル版だ」

「それでも素人の私たちには、かなり高レベルなんだけどなぁ……でもそれなら大丈夫そう?」

 

 ゆきがなんとかなりそう、みたいな雰囲気を出しているので少し脅しておくことにした。怖がられないと絵的におもしろくない。

 

「まあ、大多数はな。だが一部ちょっとマニアック過ぎて理解の及ばない内容が含まれている。端的に言えば怪文書」

「怪文書!? 怪文書って何アクたん!?」

 

 ゆきよりも過剰反応しているMEMちょをスルーしながら、あかねが無言で読んでいる14くじの内容を確認する。

 

「あかね、内容を読み上げてくれ」

「へっ!? あ、うん! えーっと……『二重人格の少女、明るくて社交的な性格と暗くて消極的な性格。眼鏡をかけたりとったりすると変わる。そんな少女が一人の同い年の男に二人とも恋をしてしまい、取り合いになるかとおもいきや、意中の男性はどちらも受け入れる優しくて度量の広い人。ただし男性は二重人格とはいえちがう女性二人ならばそれは二股なのでは? と悩んでいる。そんな二人の日常風景を五分演じろ』」

「長い長い」

「目が滑るってよく言うけど耳が滑りそう」

 

 そもそも何故二重人格? という疑問から始まり、確かに怪文書だ、これはハズレだ、という納得の声まで。今ガチメンバーの困惑が伝わってくる中、ただ一人あかねだけは冷静に読み込んでいた。

 

「相手は……あ、アクア君だ」

「これは相手側も大変だ~」

「まあ二人とも役者っしょ? なんとかなるなる!」

 

 完全に観戦ムードとなり野次馬のようなことを言い出すメンバーをよそに、あかねは真剣にメモを持ちながら聞いてくる。

 

「たしか、打ち合わせ出来るんだよね。質問良いかな」

 

 真剣な眼差しのあかねは、おどおどした女子高生ではなく“役者”の顔をしていた。

 

 黒川あかねの『天才役者』の所以を、まざまざと視聴者とメンバーに見せつけることになる。

 




筋肉ムキムキのパンイチヒヨコ覆面が裏声でクソ真面目に寸劇をする姿は腹筋が鍛えられると話題に、さすが筋トレ系YouTuber

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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