【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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たとえどれだけ誇張されたとしてもそれは一部分は真実で
逆にどれだけ真に迫るものをしたとしてもそれは嘘である


23.理想と現実

 アクアは、突然“今ガチをやめたい”と言い出したゆきを、同情するでも反対するでもなく、冷静に受け止めていた。アクアにとってはこれは“使いなれた演出手法”である。己の感情を抑えず、敢えてそのまま嘘もつかない、だが部分部分を“盛る”。当然だが余程の事がなければ、契約がある以上気軽に止めること等出来ない。アクアはその場では「ゆきが次までにどうするか決めるんだろ? なら、俺はゆきを信じて、ここで待つことにするよ」とさらりと流した。そして、その後。案の定喜んでいるゆきの姿があった。

 

「見て見て! 記事になってる~!」

「上手くやったなゆき」

 

 いえーい、とハイタッチを求めてくるので応じるアクア。案の定だ、強かな女である。

 逆に混乱したのはあかねだ。演技をしていない時はなんとも素朴で実直、純粋な少女である。アクアとしては、かなり危なっかしく感じていた。

 

「え……? どういうこと?」

「あれは演技じゃなくて演出だ。辛いと思ったりいじられたり、やめたいと思ったのも本当。だが辞める程じゃなかったが、それを膨らませて大袈裟に話しただけだ」

「そゆこと~」

 その話に反応したのがMEMだ。

「なるほどぉ、つまり誇張ってことね? ゆきちゃんやるねぇ」

 そういいながら、今ガチの話題について検索でもしているのかスマホをいじるMEM。

「俺もよくやる手法だ。俺の演技は未熟だからな、こういうので外付け武装してないと本職の天才には食いついていけないわけだ」

「なるほど……そっか、そういうことだったんだね。良かったぁ」

 本当に辞めると思っていたらしく、ほっと安堵の息を吐くあかね。その仕草は、演技をしていた時の底知れなさとはかけはなれていた。なお、未熟発言に嘘でしょ……という顔をゆきがしていたがアクアは気づかなかった。

 

 そして、辞める宣言の次週、予定調和のようにゆきが復帰、継続宣言。視聴者は胸を撫で下ろしたことだろう。

 そしてそれ以降、あかねは何をするにしてもアクアに引っ付いて行動するようになる。抱きついたり腕を組んだりするわけではなく、ただカルガモの子のようにアクアの後を追いかけていくのだ。

 その純粋すぎる行動が視聴者には受けた。恋のことを良くわかってない天才が、初めて出会った同格の存在に幼い恋心を抱いた。まるで漫画のような展開に興奮した。頭が良くて、演技は天才なのに、恋に関してはどうすれば良いのか全くわかってない感じが“推せる”ということだった。

 無論、かなやルビーに言わせれば「こんなのは私がとっくの十年前に通った道よ」「私は産道を通る前にそれは終わらせたもん」といったところだろうか。恋愛初心者にマウントを取ろうとしているあたり、結構二人ともアクアが靡きそうでハラハラしている。

 そこに付け加えられるのが、アクアがどうも「女慣れ」しているような言動である。無論、それが全てではないが。例えばMEMちょとの場合。

 

「アクたーん、ツーショ撮ろうぜ!」

「良いぞ、背景はどうする?」

「お、やっぱ語れる口ですかぁ~?」

 

 SNS投稿用のツーショットに対して乗り気に応じて、インフルエンサーに理解のあるやり取りをして見せたり。ゆきとの場合。

 

「この間、表紙飾ってたよな? アクセがワンポイント効いていたな」

「良く見てるね。実は、この制服に合うブレスレットの色を最後まで迷っててさ」

「服のカラーからして寒色系だから……そうだな、ワンポイントで暖色系なのはいいんじゃないか? ああ、ゆきの名前からして白とかもいいかも」

「そうそう、だからオレンジと迷ってて」

 

 ファッションへの知識の深さを見せ、ファッションモデルと軽妙に衣装への言及をしてみせる。しかも、二人とも中々距離が近いのにアクアは照れもせず、優しそうな微笑みを浮かべているだけだ。ちなみにこの優しそうな微笑みは医者時代に培ったデフォルト表情その1である。その2は真顔。ゆきやMEMに対しては、今のところ思うところはない。アクア的には、当然の対応である。

 しかし視聴者からは、アクアが女性経験のある大人びた男性と見えてしまい、あたかも純粋なあかねが騙されているような構図にも見えた。しかしアクアは決して誑かしているようにも見えないため、「絶対騙されてるって、気づいて!」という意見と「アクアはあかねにも優しいから大丈夫だって!」という意見で割れていた。もちろん「今の内気なあかねも演技ではないか」と勘繰る者も居ないわけではなかったが、少数意見であり、なにより共感できない内容のためか、見当違いの意見として扱われている。

 

 そうして、小悪魔なゆきに翻弄される明るいノブユキの“ゆきユキ”と、優しくて気の利く大人なアクアにくっついて回る初々しいあかねの“アクあか”をメインに、ケンゴがゆきやアクアの無茶振りに振り回される苦労枠、MEMちょがからかったりイベントを楽しんだりという面白枠として面子が固まり始めた頃には、今ガチメンバーは全員揃って焼き肉に行こうという話が出る程に仲良くなっていた。別に本気の恋愛ではあっても恋愛大戦争をしているわけではない、仲良くなるのは当然の帰結であった。

 

「アッくん、上がったらメシいこうぜ!」

「そういうのは先に言えよ。ったく、妹と保護者に連絡だけ入れさせろ」

 チャットアプリで連絡を入れているアクアにちょっかいを出してくる男子二人。

「マメだねー、さてはシスコンか~?」

「シスコンなんですか~?」

 なんだかんだケンゴはオフならばノリが良い。ノブユキは特に表裏とかはないので、普段からこんな感じだ。アクアは二人の弄りに真顔で返す。

「そうだが。シスコンでなにが悪い」

 アクアの「すまん、今ガチメンバー全員でメシに誘われた」に対して妹は「おっけー、今日はかな先輩んちでピザパーティーにしちゃう!」とのこと。にわかに糖質やら脂質やらが気になったが、まあその分だけ動けばいいだろうと思ったので指摘するのは止めた。両親は仕事で遅くなるので構わないとの連絡が入った。

「あー、まあアクたんはシスコンになるよねぇ」

 MEMちょはアクアの経歴でも調べたのか納得顔だ。表向きに言えば、世界で一人の血を分けた妹だ、シスコンにならないわけがないだろう。実際は両親は健在で今も仕事をしているのだが、それは世間にも芸能界にも秘密である。

「連絡は入れた、いけそうだ。で、何処に行くんだ? 自慢じゃないが、俺はそこそこ顔が割れてるぞ」

「焼き肉! MEっさんの奢りで!」

 アクアは焼き肉は確かに最近食ってないな、と思い返したが、MEMちょからすればたまったものではない。

「ちょっと!? 聞いてないんだけど!?」

 そういって慌てるMEMにケンゴとノブユキが「でも儲かってるんでしょ~?」「事務所と5:5なんでしょー?」と煽る。それを聞いて、あかねが「私、8:2だから羨ましい」と返す。アクアはその喧騒をよそに考え込んでしまう。あかねほどの役者を8:2? 中学のネットメインのちょい役時代の一番落ち込んでいた時期の自分ですら7:3だったというのに、あかねが? という疑問だった。アクアはあかねよりも、あかねの事務所への疑念が強まっていった。

 ちなみに今のアクアはかなと同じで経費諸々込みで6:4だ。ヒカルやアイクラスともなれば、事務所との折半、5:5である。

 結局押し切られそうなMEMちょに「折半……いや、もう少しは出すからワンランク上のところ行かね? 俺の行きつけがあってさ」とアクアが提案し、MEMちょは折れた。

 

「さあ、コース料理だし遠慮せずどんどん食べてくれ」

「いや……アクたん、ここ大丈夫なの?」

「ああ、優待で最大二人分まで無料になるからな。たまに事務所の知り合いとも来るし。お得だろ」

「アクたーん、さては初めから私に奢らせる気ゼロだったな?」

「いくら5:5でも、個人は色々と入り用だろ」

「アクたんの心遣いが苦しいっ」

 

 アクアがしれっと会員証を見せて入店したそこは、会員制の個室焼肉であった。いかにも芸能人御用達といった雰囲気の場所であった。初めは恐る恐るといった感じのメンバーだったが、肉さえ来てしまえばそこは現役高校生である。高級な肉にテンションが上がりっぱなしだ。

 MEMちょだけは値段を見て軽く青ざめていたが、アクアがプラチナカードをこっそり彼女に見せて黙らせていた。アクアもかな程ではないが、腐るほど稼いだ貯金があるし、今もそこそこ稼いでいる。懐は少しも痛まないとアピールした。実際アクアは出費がそう多い方ではないので。

 

「うっわ、見てこの肌理細やかな霜降り肉。アッくん、これ何処産?」

「良く知らんが旨くて気に入ってる。カルビ焼けたぞ」

「うわ、金持ちの台詞だ……タレも上品で旨いなぁ……」

 

 そんな呆れたような感心したような台詞を言うノブユキを尻目に、アクアも焼肉に舌鼓を打つ。こういう時に限って、元アラサーの心が甦ってくる。

 

(胃もたれしない身体で脂の乗りまくった焼肉。10代サイコーだな……あーでも、こういう時にキンキンに冷えたビール飲みてぇな……)

 

「アクアくんミノ焼けたよっ」

「ありがとう。でもお前も食べろよ、ほら」

 

 そうして想いを馳せていると、あかねがちっとも箸をつけずに人の肉ばかり世話してくる。なので、焼きたての脂の滴ったハラミを、タレに付けて口の中に放り込んでやる。顔を赤らめながらあわててもきゅもきゅと食べるその姿に、アクアはなんだか心配になってきていた。

 

「あかね、後で少し話を聞いていいか?」

「え? うん、いいよ」




MEMちょ「しれっとあんなことやるのアクたん……?」

黒川あかねはネット弁慶なのでネットでは警戒するくせに現実の人間関係では警戒心がほぼないので実質犬です。餌付けされなくとも懐くし餌付けされてさらに懐きました。

まあ本編でも優秀な忠犬のあまりラスボス割り出して噛み殺しにいこうとしてましたが。名探偵あかね強すぎる。

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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