【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
有馬かなは本来、恋愛リアリティーショーに出られるような立場ではない。これからアイドルをやるのに、アイドルやる前から男が出来ていたら処置なしである。アクアと隠れて既にキスまでやっているわけだが、公的には付き合っていないので問題ない。こっそり陰で付き合っている、匂わせ程度で公的には付き合っていない。その程度が限度だ。男がいるアイドルを素直に推せるファンは一握り、匂わせですら過剰反応する。悲しいがこれが現実だ。大手アイドルグループですら、恋愛禁止が言い渡されている。多様性の時代、恋愛禁止ではない事務所も増えてきているし、実際新生B小町は恋愛自由と言う規約だ。とはいえ、現実はそう簡単に変わらないものだ。よっぽどの例外で無い限りは。
「アークア! 来ちゃった♡」
「来ちゃったじゃねぇ!」
だが、有馬かなは例外であった。制服に身を包み、トレードマークの帽子を被ったかながそこに居た。アクアは思わず叫んだ。もちろん、他のメンバーも驚愕の表情に包まれていた。
☆
今ガチは後半に差し掛かり、ゆきとノブユキの“ゆきユキ”……そこにケンゴを交えた三角関係が今ガチのメインコンテンツとなっている。そこに、アクアとあかねの“アクあか”、さらに面白枠のMEMちょという構図に固まっていた。だが逆に言えば、停滞していると言っても良い。それは“恋愛リアリティーショー”として面白くない。「カミキミッション」も刺激にはなるが、演技であるという前提がついてしまうため、リアリティーショーとしては
ということでプロデューサーとディレクターは切り札である、有馬かなをサプライズ参戦させることに決めた。
なぜこんなことが可能になったのか。苺プロの判断としては、リスクをかけてまで出演はあまりさせたくないというのが本音である。だが、出演して仮に誰かと恋人同士になったとしても、それこそ“アクかな”ならばギリギリ炎上せずなんとかなる、と判断した。カミキをはじめとするネットタレントを多く抱えるネットに強い事務所である。ネットの情勢には強い。アイドルになる前にアクアとそういう仲になっていたとしても、有馬かなは“推せる”と思えるキャラクター性とカリスマを秘めている、と社長は判断した。社長曰く。
「有馬かなは可愛い、踊れる、歌が上手い。背も低く、天性の輝きもある! だが純粋に口が悪い。毒舌で正論を言うタイプだ。個性としては魅力のひとつと言えるが、アイドルに入れ込むタイプには推しにくいだろう。だからガチ恋推し・リアコ推しよりも、純粋に箱推し・ビジュアル推しの方が売れる。そのタイプなら恋愛沙汰もどきをしても大きくはならないと見た」
つまり、悪く言えば“可愛いしファンとして応援したいけど、恋愛対象としては……”という枠だ。そう説明されたかなはなんでよ! と何時も通りに叫んだ。
それに、近年は女性アイドルのファンになる女性というものも一定数存在するものだ。推し方も多様性の時代だし、推しには幸せになって貰いたいという層は一定数居る。だから未来のアイドル(メンバー不足&リーダーも同じ奴にメロメロ)がこの番組に来たとしても問題はない、という判断の上での出演だった。もちろん、出来ないに越したことはない。
「くそ、だからかなの名前を出しても問題なかったのか……」
「ま、良い前振りになったんじゃない? サプライズ大成功ね~?」
「よくもいけしゃあしゃあと」
「きゃーアクアこわーい」
アクアとしては、恋愛の練習のつもりで来た。だが本番側から番組にやってくるのは想定外も良いところである。まさに身構えていないところにやってきた死神であった。
もっとも、その死神は膝の上に乗っているのだが。かなもなんだかんだで、アクアの恋愛にフラストレーションが溜まっていた。スキンシップが間違いなく激しくなっていた。それを見ている当のあかねはというと。
「あわわ……無理……生アクかな尊い……ど、どこにお金を払えば……?」
当然のように限界オタクと化していた。
(せ、せっかくアクア君と仲良くなろうって、あわよくば愛人にって思って頑張ったけど! こんなの生で見せられたら……! 少なくとも今は無理だよぉ! なにあの距離感!? かなちゃん、膝の上にすごい自然に乗った! しかもアクア君も呆れてても動じてないってことは常日頃からこの距離感で生活してるってことだよね!? やっぱりアクかなは「ある」んだ……!! こんなの生で、しかも無料で見ていいの!? 明日死ぬの私!?)
かなはニヤリと笑いながら、今度はあかねへ、アクアの膝からぴょこんと降りて攻撃する。にーっ、という効果音が付きそうなほどの悪巧みした笑みだ。
「ふーん、アンタがあの“天才役者”の黒川あかねさん? お噂はかねがねってところね。いつ以来かしら? 本当にちーっさいころに、一回だけ会ったことあるわよね。なんかのオーディションで」
「えっ!? お、覚えて……!?」
「私の真似なんかして、しかも憧れてるなんて子、忘れやしないわよ」
推しに認知されているということは、オタクにとって非常に激情が胸を揺さぶる。推しに認知されたくない者と推しに認知されたい者とで反応は違ってくるのだが、少なくともあかねは認知されていて嬉しいと考える方だった。
「うっ……嬉しい……! あっあの! そうだ、あのこれ! サインください!!」
「なんでよりにもよって“ピーマン体操”なのよ! なんでそんなのが懐から出てくるのよ! 持ち歩くな! まあ書くけど。はい、黒川あかねちゃんへ、はあと、って書いてあげるわ」
「家宝にします……!」
「大袈裟」
実際に会ってみたかなの感想としては……本当に自分のファンガールなんか居るんだ、という変な驚き方であった。生で見るまで、もしかして単なるパフォーマンスじゃないの? という疑問は僅かにあった。有馬かなは基本的に自己評価は厳しいので。
長年芸能界で生き抜いてきたかなは、流石に生でみれば演技しているかしてないかくらいはわかる。そして今にも涙を流しそうなほど喜んで“黒川あかねちゃんへ♡”と書かれたピーマン体操のCDケース(最初期ロット版)を抱き締めているその姿は、間違いなく本物だと感じた。
(なるほどね……黒川あかね、どんな曲者かと思いきや、って感じかしら。驚くほど素直ね~?)
だが、これはあくまで自分のファンとしての顔。今ガチにサプライズ参加することを了承した最大の目的……あかねの“女の顔”を引きずり出し、自分達の味方に出来るか見定めることだ。
「で? アクアとはどこまで進んだのよ? 手とか繋いだの?」
「え? え、えっと、ま、まだです……」
「ふーん?」
急に今ガチの話を聞かれてしまい、あわてて素直に答えるあかね。するとかなは、アクアの下に行き。
「それじゃあ、アクア♡ おててつなご♡」
いかにも可愛らしく言い、有無を言わさず右手に恋人繋ぎをする。するりと自然に指を絡め、アクアの手を握る。
「何だ急に」
「恋人繋ぎってやってみたかったのよね~。アンタなら別に良いし?」
「実験台か俺は?」
「別にぃ~? 何、不満なの?」
「そうじゃない」
ぷらぷらと繋いだ手を揺らして、いかにも仲良しアピールをするかなに、あかねは思わず下唇を噛んだ。だって、ずるいと思ったから。人生で生まれてはじめての
「じ、じゃあ私もしてもらおうかな~? ほら、左手は空いてるし! ……えい!」
声は震えているし、緊張はしていた、顔も羞恥で真っ赤だが、確かにあかねは自分の意思でアクアと手を繋ぎ……かなと同じように恋人繋ぎをした。ややたどたどしく指をまさぐられたアクアはたまったものではない。
「……指、細いな」
「え、そ、そうかな……?」
そういうアクアに、右側のかなが噛み付く。
「何、私は太いって意味~?」
「そうは言ってないだろ、お前の手は……そうだな、昔より小さくなったか?」
「アンタの手がでかくなったのよ」
そんなじゃれあいを嬉しそうに、でもどこか悔しそうにしながらぎゅっと手を握って抗議するあかね。
「というかどういう状況なんだこれは……?」
「美少女サンドイッチよ? どう? 嬉しい?」
「えっと……う、嬉しい?」
「答えづらい事を聞くな」
「かなちゃんと私のじゃ嬉しくないの……?」
「嬉しくないわけじゃないだろ……どうすればいいんだよこれは」
バカップルのようなことを両脇から仕掛けられて嬉しいやら恥ずかしいやら、戸惑うやらで赤くなるアクアと、妙な反応をする“女としての”あかねを見ながら、かなは確信する。
(このままだと、アクアを持っていかれる)
自分に対抗して、内気だったはずのあかねが自分と同じように恋人繋ぎまでして行動してきた。まちがいなくアクアに惚れている。それも、取られないように対抗する程度には意識している。あの下唇を噛んで我慢するのは女優としてどうかと思うが、女としてあの反応は本気の証拠でもあったし、なによりあのあざとい反応を素でやってのけたのだ。
しかも、普段、演技以外では中々感情を揺らがせないアクアが、真っ赤になって照れている。本人に自覚はまだないだろうが、アクアもまちがいなくあかねに惹かれている。自分やルビーが十年以上かけて迫った関係に、この番組の関係だけで迫っている。このまま放置は危険だと、かなは判断した。
「あ、そうそう。『今ガチ』にはあくまでゲスト出演、今回だけのサプライズゲストだからそこんとこよろしく」
「大事なことを今言うな」
「えっ……今回だけなの……?」
「なんであかねが寂しそうにするのよ」
何だか調子が狂いそうだったが。
あかねは仲間になりたそうにこちらを見ている
ガチ濡れ場(R18)って需要ある?
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いらない
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