【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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30.今日から真剣恋(マジコイ)♡はじめます

 夏祭りイベントの後、アクアとあかねにとっては、特に大きな出来事は特に無く、つつがなくイベントをこなしていった。しかし、アクアとしては非常に貴重な体験でもあった。男友達がいたらこんなかな、とか。普通の学生はこういうイベントをやるのかな、とか。普通の学生生活らしいことが出来た経験は、演技の糧となる。日常を知るからこそ、非日常を演出できるというものだ。

 気がつけば、あかねがアクアのとなりにいることは、番組ではすっかりいつもの位置になってしまっていた。MEMちょやゆきがそこに入り込んだり、先にいたりすると、あからさまにあかねの反応が過剰になりちらちらとそこを見ているし、アクアもなんだか落ち着かない気分になって仕方なかった。だが、そんな今ガチもこれで最後だ、思うと少し寂しかった。

 アクアとしては、告白は自分からは出来ないと踏んでいた。あかね、MEMちょ、かなと三人の女性から矢印が向いていると思われている現状、あかねからの告白でなければ演出としては映えない。だからアクアは待ちの姿勢だ。更に言えば番組内で他のカップル成立がするのなら、この場面で受け入れる必要はない。下手にリスクを負うだけになる……というのがアクアの考えだ。

 

 一方、あかねも今ガチで告白をするつもりもされるつもりも、受け入れるつもりもなかった。あかね地雷原タップダンス事件(カミキ命名)の後、苺プロからネットの危険性を耳にタコが出来るほど説明されたあかねは、ネットリテラシーというものをなんとか身に付けていた。その上で、今ガチでカップルになるリスクとリターンを天秤にかけて、あかねもリスクの方が大きいという判断を下した。

 いちいち、定期的にSNSなり何なりで、デート報告をしなければならないのも、マイナスの要因だ。つまり、稽古の時間が減るとイコールでもある。もちろんそういう関係になったらデートはあかねだってしたい。しかし、それはきちんとたまの休みに約束して……きちんと恋人同士のデートとしてやりたい。いくらデートでもお仕事デートでは、流石のあかねも気分がなかなか盛り上がらないというものだ。

 

(掲示板に書き込みすると「おはあかね」とか言われるようになっちゃったから、やめちゃったし……ネットは怖いところだね、本当に特定されちゃうんだ……ヒカルさんは「これも経験」って言って笑ってたけど)

 

 もちろんこれはあかねの勘違いである。ネット上では良く見られる有名人認定は、される側もする側も嘘だと分かってやるものだ。あかねは危険性は理解しても、文化までは完全に理解していなかった。これからも粗製あかねエミュレートをされては定期的に擦られる事を、あかねはまだ知らない。

 

 ともあれ、アクアとはこの番組でおしまいさようなら、ではなく事務所で一緒になる機会もある。もちろん告白をしたいし、折角のチャンスなのは理解しているが、世間には出来ればなぁなぁで誤魔化していきたい……というのが、今のあかねの本音だ。

 

 視聴者の声はというと、相変わらずゆきユキか、あるいはケンゴとか? という、ゆきとの三角関係がメインだ。アクあかに関しては、かなが一度きりの出演ということもあり混乱こそあったが、最終回を目前にしてみれば、アクあかでほぼ決まり、という流れだ。もちろん意外性を期待してアクMEM、昔からの仲だからアクかな、と言う声が決して無いわけではないが、アクあかは決まり、というのが大多数だ。

 

 視聴者や、ディレクターたちは“アクあか”が見たい。折角の恋愛リアリティーショーでカップルがひとつも出来ないのはがっかりだ。前回キスをしたカップルがいる、というのも後押ししていた。それでもあかねは、まだ告白するつもりはなかった。

 

 だが、ゆきがノブユキの、MEMがケンゴの告白を断ってしまった。ノブユキは花束を用意していかにもな告白をした上で、断られている。なんとも不憫な姿が放送されることになるだろう。誰か一人でもカップル成立していたのなら、あかねは告白をせずに終わるつもりだったのだが、こうなってしまうとあかねとアクア、どちらかが告白しなければならない。現場は少なくともそういう空気になってしまっていた以上、基本的に自己主張の薄いあかねとしては動かざるをえない。

 もちろんアクアも演出上、受けなければ作品として成立しないと考える。

 だから、お互いに理由は違えど、仕方なく。あかねもアクアも動くことにした。

 

「あ、アクア君!」「あかね」

 

 お互いの声が被ってしまい、お互いに見合わせて笑う。お互いに同じ考えなのが通じたからだ。お互いに、今ガチ内では告白せずに、こっそりそういう仲になるつもりだったことも。

 

「あかねからでいいぞ?」

「ふふっ、そうさせてもらうね?」

 

 あかねはふわりと可憐に笑う。ごく自然に生まれた笑みに、アクアは思わず一瞬、見とれた。

 

「アクア君とは、この番組で初めて出会って、色々してもらった。最初は、憧れの人と……ってミーハーな気持ちだけだったの。でも、アクア君と話しているとね、ずっと楽しくて……それだけの気持ちじゃなくなっていったの」

「楽しかったのは、僕もだ」

「ありがと。それでね……えっと、その……この番組だけの関係で終わりじゃあ、嫌だなって思って。好きって気持ちが止まらなくて……こんな気持ちになったのは、アクア君が初めて。一番最初で。だから……」

 

 これはあかねの偽らざる本心だ。移籍の一件がなければ、あかねは間違いなく破滅していたと自認している。だから、アクアとの関係が、今ガチメンバーというだけなのは嫌だった。恥ずかしくて頬は朱に染まり、瞳は潤む。それでも、あかねは前に進むことにした。

 

「星野アクアさん。あなたのことが好きです。わたしと、付き合ってください!」

「……わかった。僕で良ければ」

 

 アクアは、あかねを抱き締める。華奢で繊細な身体から、彼女の体温が伝わってくる。そして、マイクに乗らないほどの小声で、こう囁いてくる。

 

「アクア君になら、何されてもいいよ……? キスでも……エッチでも、アクア君の好きなことをして? アクア君……本当に好き……」

 

 そんなことを言われてしまったアクアは、たまらずにあかねを見る。あかねはその獣の視線に射抜かれて、それを受け入れるようにこくりと頷く。抱き締められたまま……アクアは自重して、今は、ゆっくりとキスをするだけにとどめた。番組は拍手と共に終幕した。

 

 だからだろう、我慢した分が爆発した。それが起きたのは打ち上げの最中であった。打ち上げの食事中、偶然二人で、御手洗いに立ち寄る場面があって。そして、偶然二人きりになってしまった時、お互いに弾けたようにお互いを貪るように唇を重ね、舌を絡めた。なんだか、甘い味がした気がした。

 

「ん……トイレでキスって、なんだかムード無いな」

「我慢できなかったから、仕方ないよ」

「そうか?」

「そうだよ。ほら、早く戻らないと……皆に疑われちゃうから」

「そうだな」

 

 お互いにキスの痕跡を無くすように支度し、打ち上げへと戻る。その最中、あかねのスマホが震え、メッセージアプリに「どうだった?」と通知が入る。前を歩くアクアにばれないように、「大成功!」とだけ返信した。送信した相手の名前は、かなちゃん、とニックネームが入力されていた。

 

 つまり、そういうことだった。

 

 そこから戻ってきたアクアは、アクアと本当に付き合うのかどうかを女子二人にいじられているあかねを放置して、鏑木と二人で話していた。

 

「あかねの件、動いて下さったそうで。ありがとうございます」

「ま、約束だからね。しかし、やるねぇアクア君」

「何がですか」

 

 鏑木のからかいに、とぼけるアクア。鏑木からみれば、かなという明らかにアクアを好いている幼馴染みが居ながら、あかねと付き合っている……つまり、二股男。うまいこと二人を転がしている、と表現できた。

 

「いや、寄ってくる子も多くなりそうだなって話さ」

「なんの事だか……」

 

 鏑木は手元のグラスを揺らしながら、面白そうにアクアを見る。表現としては微妙だが、アクアはアイにそっくりな男だと鏑木は思う。色んな異性に媚を売るような仕草や行動を無意識に行うあたりが、特にアイに似ていた。そういう男だから、言い寄ってくる尻の軽い女たちは多そうだとも。アクアのこれから起きるであろう女難を、蚊帳の外から見物してやろう……という出歯亀気分であった。

 

「君を見てると退屈しなさそうでいいね。また仕事でもあったら呼ぶよ」

「それなら、苺プロの誰かもついでに呼んでくださいよ」

「かなちゃんかい?」

「別にかなだけじゃないでしょう」

「ほほう、次はMEMちょとか」

「なんでそうなるんですか」

 

 本当に目を離せない男だ、と鏑木は思った。

 

 

「あかねから通知来たわよ」

「ほんと!? どうだった?」

「番組内で告白成功したって。大成功だそうよ?」

「わお、勇気あるぅ~。これで三人目かぁー。本当に6人行っちゃいそう」





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