【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
それはそうとJIFどうしよっかな……
打ち上げもつつがなく終了し、これにて「今ガチ」は本当の終わりを迎える。
「じゃあ、アクア君……またねっ」
「ああ、またな」
すっかり日も暮れて、街灯が夜道を照らす。アクアとMEMちょはここから徒歩で帰ることができるが、あかねはそうではない。交通費節約のためのもと、今ガチメンバーはMEMとアクアの徒歩組と、それ以外のメンバーに別れることとなった。アクアは、最後にあかねと軽く挨拶を交わして、四人はタクシーで去っていった。
「MEMちょも同じ方向か? 途中まで送っていくよ」
「えー、悪いって」
「近所だからって、女の子一人を歩かせるのも俺が不安だろ。俺のためと思って、頼む」
「しょーがないなぁ……」
MEMからみて、アクアは不思議な男の子だ。8つは下の年下の男の子の癖に、なんだか同年代か……年上のような雰囲気を纏っている。皆が楽しそうにしてるのを優しい顔で見ていたり、ゆきや自分のからかいに仕方ないなぁ、みたいな顔をして付き合ってくれたり、こっちの気持ちを察して先回って動いてくれたり……そんな、大人の男の人みたいな。
そうかと思えば、年相応にふにゃりとかわいらしく笑ったり、バカみたいなことをしてからかったりしてくるし、ちゃんと高校生の男の子してる時もある。
それでいて仕事の話になると、鋭い目付きで真剣な表情のカッコいい感じ。ころころと表情が変わっていく。
金髪も相まって、なんだか妖精のよう……というのはやや大袈裟だが、アンバランスさから来る、不思議な魅力があった。
「あーあ、これでおしまいかぁ……」
「そうだな……これで終わりか。楽しかったけど、なんだか寂しいな」
ほら、また。こうやってこっちの気持ちを汲んで、言いたいことを先に言ってくれる。こんな軽妙なやり取りも、これで最後だと思うと。
この現場は、とても楽しかったけど。やっぱり別れは寂しかった。
「でもアクたんはいいでしょー? あかねと彼氏彼女だもんねー?」
「まあな」
本当は移籍もするのだが、そこはまだ社外秘だ。
それを知らないMEMは、最後ならばと、ずっと気になっている事を聞いてみた。
「……ところでさぁアクたん。番組中に言ってたアレ、どこまで本気なの?」
「アレ?」
「ほら……私がアイドルになったら、ってヤツ」
「ああ」
そんなことか、というような反応をするアクアにMEMはやっぱりお世辞かなと思って。だから。
「本気だ。あんなこと、おべっかやお世辞で言わねえよ」
真剣な表情で告げるアクアの言葉に、立ち止まる。優しく夜風が顔を撫でる。
「そ……そうなんだ……」
冷静に答えたつもりだったが、声が震えていた。なにか、変わる予感がして。
「……そういうMEMちょは、どうなんだ? もし、アイドルを今からやれるなら、やるか?」
アクアのそんな言葉に、突いたように言葉が出る。
「そりゃあ……ね。アクたんが推してくれるって言うし……やれるなら、やりたいかな……でも、もうそんな
家庭の問題はもう大丈夫、やろうと思えば出来る環境ではある。やりたいという本音。でも、年齢という壁がある。彼女が諦めた最大の理由。それをアクアは、なんでもないように叩き壊してくれる。それはまるでシンデレラの魔法使いが、魔法をかけるように、いとも簡単に、容易く。
「歳とか関係ない。やりたいんなら、後悔する前に……やるべきだろ。そのためのチケットもある。『B小町』復活に向けて、現在苺プロはメンバーを秘密裏に募集中だ」
「お前を新生B小町のメンバーとして推薦したい。もしその気があるなら、今から事務所……来るか?」
「……行く!」
硝子の靴は、もう割れたりしない。
☆
「そろそろ晩酌させて寝させてくれよ……ったく、二匹目の泥鰌まで取ってくるとはな。スカウトマンにでもなるか? ばっちりやっていけるぜ?」
「俺は、あくまで役者だぞ社長」
「冗談だ、冗談」
(カタギじゃなさそうな雰囲気の人出てきたんですけどー!? 本当に苺プロの社長なのこの人!? っていうか社長夫人さんもめっちゃ若々しい! 芸能人じゃないの!? もしやアクたんに騙され……いや、アクたんはそんなことはしない。うん。落ち着け私~!)
アクアに連れられて事務所にやってきたMEMは、強面な社長の壱護と、美人な副社長のミヤコにいきなり面通しされてびびるあまり、内心でド失礼な事を考えていた。
「ミヤコ、どう見る? 俺はいけると思う」
「それ直感?」
「直感と、あとは実績だな」
「そうね……大丈夫だと思うわ」
アイを見いだした人を見る目のある社長に、ネットに強い副社長の二人が、びびって冷や汗をかいているMEMは新メンバーとして二人に負けない。いける、と判断した。
「契約形態は、事務所FARMとの業務提携で報酬は折半。そのかわり自分で契約を取ってきて良い……つまり、苺プロからのアイドル業務の依頼という形になるな」
「はっ、はい!」
「うちはネットタレントもメイン業務だ、その辺の契約関係は問題ないな。だが……」
びびって声が上ずりながら返事をしている彼女を、じっと斉藤社長が観る。ひとしきり確認して、なるほど、と納得して。
「君、実は25歳位だろ」
「ぴぃっ!?」
壱護にばっちり年齢を見抜かれ、変な鳴き声が出た。だがそれ以上に、えっマジで? という顔でみるアクアの視線が痛かった。MEMは肩を落とし、観念して年齢を三人に明かした。
「はい、ピッタリ25です……」
「ま、サバ読みなんぞ誰でもやってる、別に悪いことじゃねぇよ。骨格は幼く見えるし童顔、声も若い、10代でも通用するさ。だが、さすがに俺の目は誤魔化せなかったってだけな」
「がっつり盛ってるわねー。公称18だから……えーと……うわぁ。まあ、うちのアイは未だに16で通用するし、確かにサバ読み位問題ないけど……」
「指折りで数えないで下さいよぉ!」
思わずへたりこむMEM。そこで、ようやく合点がいったという風に納得したアクア。
「ああ、だからB小町にも詳しかったのか。直撃世代だから……25で学生やって恋愛リアリティーショー出てるのすげぇわ。尊敬する」
「これには事情があってぇ!」
要約すると、MEMはアイドルを目指していたが、高校生の時に母親の無理が祟り病に倒れた。片親であったために、弟たちと家庭を支えなければならず、高校を休学してバイトを重ねて家計を支えた。母が復調する頃にはとっくに二十歳を超えており、アイドルは諦めてYouTuberを始めることにした。その時に現役JK(笑)と冗談めかして言った言葉がウケ、あれよあれよという間に引っ込みがつかなくなり、今に至るという。
「なるほどな」
「やっぱり25歳がアイドルなんて……」
自分で事情を話して、やはり尻込みするMEMちょ。しかしそこに現れた二人がいた。ルビーとかなである。
「そんなことないよ!」
「話は聞かせてもらったわ!」
ばばーん、と効果音がつきそうな勢いで現れる二人。ルビーはミーハーなファン心理が抜けないのか「生MEMちょだー! かわいいー!」といって彼女に抱きついている。MEMは抱きつかれて混乱しているが、流石にこの二人が誰かは分かる。
「えっ、え? かなちゃんと……ルビーちゃん?」
「そうよ。ルビーがアイドルやるって言うから、アンタと同じで、私もアクアに誘われたクチよ。全くこのスケコマシ三太夫め、あかねひっかけた後にMEMちょもひっかけてくるなんて隅に置けないわね~」
「そんなつもりはない」
このこの、と肘でアクアを突っつくかな。かなには、どうやら自分
(そりゃ、あんな殺し文句言われてときめいたのは事実だけど……あれ? ……“も”……?)
なにか違和感を感じる。だが、その違和感を吹き飛ばすように、かなが胸を張りながら言葉を告げる。
「年齢で一々突っかかっててもしょうがないでしょー? アンタ、生のアイさんを見たらそんなの言い訳ってすぐ分かるわよ」
「そりゃ、そうだけどぉ……」
もちろん知っている。未だに時々歌番組に呼ばれては、20年前のデビュー当時の衣装や12年前のドームライブ衣装の現物を、問題なく着こなして踊って、アイドルをやってるのだから。あの伝説上の生き物が身近になる以上、確かに年齢を言い訳に出来なかった。なんというか、アイなら出来たぞ? という圧を感じる。
彼女の逃げ場はかなに丁寧に埋め立てられて潰されてしまった。ならば、もう前に進むしかないのだ。
「じゃあ、えっとぉ……よろしくおねがいします……」
「やったぁ! よろしくねMEMちょ! これで、新生B小町は本格始動だねっ!」
「ようやくね……長かったわね」
一仕事終えた心地で、アクアはほっと息を吐いた。
「コイツはマルチタレントのアイ、伝説上の生き物さ」
「伝説って?」
「ああ!」
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