【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
B小町復活プロジェクトの報は、瞬く間にネット中を駆け巡り、一部報道番組で、ほんの少し程度だが地上波で取り上げられる程の反応を見せた。そして、その反応は様々だ。純粋にB小町の復活を喜ぶ者、本当にB小町を名乗るほどの力が新メンバーにあるのか疑念を抱く者、全く期待を持たずに否定的な者、唐突な新規プロジェクトにただただ混乱する者など、様々だ。だが、様々な意見があるからこそ、新生B小町への注目度は非常に高まっている。
その当事者である新生B小町はどうしているのかというと、アイの「全力でまずはやれるだけやってみよっか☆ 私もやるから!」の一言で二時間ぶっ続けのレッスン。その結果、レッスン室の床にへたりこんだり倒れていたりしていて、とてもではないが世間の反応を見ている余裕はあまりなかった。
「はい、一旦休憩にしよっか!」
「ひぃー、ひぃー……」
「キッツ……!」
「みずのまないと……」
肩で息をしながらへばっている三人とは裏腹に、けろっとした顔でニコニコしているのが同じように動いていたはずのアイだ。アクアが水分補給用のペットボトルを三人に渡していた。
「ほら、持ってきたぞ。ゆっくり飲めよ」
「ありがとっ……なんでっ、アイさんはあんなピンピンしてるのよっ……」
かな、ルビー、MEMは三人ともきちんと体力トレーニングもこなしてきていたし、特にかなは役者としても基礎体力は大切であることを理解して栄養バランスも考えながらきちんと鍛えていたはずだ。だが結果はこの通りで、最近は体型維持程度のトレーニングしかしていないはずの30代のアイに、10代の自分達が(一人は25だが)体力負けしている状況だった。比較的ルビーはまだ大丈夫そうだったが、MEMはもう喋るのもしんどそうにペットボトルからちびちび水を飲んでいる。
そんなかなのぼやきにアイが反応して、答える。
「特別なことはしてないよ? 最小限の消費と最大限の休憩をこまめに行うことだよっ」
なんとも完璧主義者らしい方法である。理屈はわかる。ダンスや歌をパフォーマンスが低下しないギリギリのラインまで消耗を抑え、合間合間に挟まれる僅かな空白時間を使って呼吸を整え、体力を回復していくという方法だ。星の瞳の魅了で忘れがちになるが、全てのパフォーマンスをミリ単位で把握し、調整できるアイだからこそ出来る技である。少なくとも新生B小町三人が完全コピーをすることは不可能だろう。だが、こういう合間合間の休憩をある程度でも身につければ、今の状態よりはマシになるはずだ。
「ほらほら、そろそろ休憩終わるよ! ライブツアーとか長尺のライブならこの位は皆やるからねっ☆」
パンパン、とアイが手を叩くと立ち上がる三人。
「そうですよね……よぉし、へばってられないぞぉ……!」
「あはは、MEMちょ燃えてるぅ! 私もぉ!」
アイドルに憧れていた二人は、かなよりもモチベーションが高い。かなはそんなやる気を燃やしているひよこ二人を眩しそうな目で見る。自分はそういう熱血な感じではない。しかし、かなとてアイドルをがんばる理由はある。そうであるならば、負けてはいられなかった。
「次はそんなに体力使わないレッスンだから安心して、バミリとか手の位置とかの微調整になるよ~? がんばろうねっ!」
これまた精神的に辛そうなレッスンが続いていたが、まだまだこれが初日。元最強のアイドルに直接指導してもらうというなんとも贅沢な指導環境で、新生B小町の強化訓練が始まった。
数日後、ある練習日。アイが不在ということで、代わりにやってきたのが壱護だ。三人がアイの後釜である以上、自分でも目を通さないと心配なのだろう。
「いいか、今回のレッスンはいつも通りにしておけ。その前に決めることがある。新生B小町の新機軸のシステムを考えてきた! つまり“売り方”だ」
ばん、と勢いよく壱護がホワイトボードを叩く。そこには“センターチェンジシステム”と書かれている。三人はそれをおとなしく見ているかたちだ。
「お前ら三人は誰がセンターでも問題ないレベルだと俺は思っている。だったらそれを使わない手はないよな?」
「ああ、だからセンターを決めなかったんだ」
「センターはアイドルの花形だもんねぇ、決めないのはおかしいと思ってたけど……こう来たかぁ」
MEMは即座に壱護の思惑に気づいた。
「アイドルの推し方は大きく分けて三つ! 一人のアイドルを推す“単推し”、グループそのものを推す“箱推し”、そしてメンバーの関係性を推す“カップリング推し”。推し方は千差万別だけど、でもやっぱりいちばん多いのは単推し。そして自分の推してる子が一度でもセンターになるのは嬉しいよねぇ」
「先輩はソロ曲もあるしね~」
「ピーマン体操だけはB小町では絶っっっっ対に歌わないわよ」
「さわやかサテライトとかはいいんだ」
「いいわよ、多少マシになってるもの」
三人居るのだから、3ポジション分の振り付けを覚えなければいけないのでは? という疑問は無い。何故なら、三人とも既にそれは終えた段階に居る。全部の曲の全ポジションを、全員が踊れるのだ。なので1曲3セットを練習に組み込んでいる。アイとの特訓の内容は、殆どが合わせと微調整だ。
「んで、今は有馬かなだけだが、お前らの単曲も鋭意作成中だ。今時、CDなんてものは完全な推しを応援するだけのグッズだ。電子販売にサブスクリプション、CDで音楽を聴く時代はもう終わったからな。それから旧楽曲のニューアレンジ版とオリジナル版で分けてやるのもいいな」
悲しいが事実だ。売り上げとしての方面で見るならば、CDは音楽の聞けるファングッズ……むしろ、開封しない方が主流と言えた。アイドルのならば尚更だ。ならば、CDは完全に推しを推すためのアイテム。自分がどの時期からどれほどそのアイドルを推していたか、というのはファン間では自慢になる。誰だって古参マウントはとりたいものだ。ちなみに有馬かなの単曲はピーマン体操込みで7曲ほどあるが、B小町で歌うのは1ライブにつき2曲が限界だろう。ちなみに、B小町アレンジでピーマン体操という展開も壱護の中に選択肢としては存在しており、いずれ実現することになるのだが、それは未来の話である。
「えー、私の単曲~? どんなのかなぁ」
「ついに私もアイドルになるって感じだぁ、実感が追い付いてきた……!」
単曲がある、と聞いてテンションが上がる二人。だがかなとしてはまた持ち歌が増えるのはなんだかげんなりする気持ちだ。ただでさえB小町の楽曲と合わせてもう持ち歌が二桁なのだから、これ以上覚えるのめんどくさい、というだけだが。
「おい、話は終わってないぞ。お前らのキャッチコピーの話もあるんだからな」
「キャッチコピー?」
「私の“十秒で泣ける天才子役”みたいなもんよ」
「あー」
販売戦略においてキャッチコピーは大切だ。簡単にその人物の特徴や特技を理解できるという意味でだ。
「まずはMEM、お前は“夢を叶えた少女YouTuber”MEM! あくまで主戦場はYouTubeという前提の上で、夢を叶えて輝くアイドル。そのあきらめない
「う゛っ、少女……が、頑張ります!」
「私も年齢でうだうだ言われたからその気持ちわかるわ、一緒に頑張るわよ」
「かなちゃーん!」
地味に年齢関係でダメージを受けたMEMを慰めるかな。それを無視して壱護は続ける。
「次にかな、お前は“歌って踊れる天才女優”有馬かな! 高いスペックと経験に裏打ちされた安心してみられるアイドルであり、同時に役者! このメンバーでは一番
「ふん、言われなくても。任せなさい」
「かな先輩はホント頼りになるからね」
「年上なのに面目ない……でも、歌手として芸能人としては先輩だから複雑だなぁ」
「いよっ、ピーマン役者!」
「それけなしてるわよね? ひっぱたくわよ」
どや顔で誉められて鼻を伸ばす有馬かな。だが、実際アクアの支えを受けた有馬かなは無敵だ。
「最後にルビー、お前は“二代目一番星”星野ルビー! その
「よーし、がんばるぞー!」
あくまでかなとMEMは兼業アイドル、マルチタレントなのに対して、唯一ルビーのみが職業:アイドルを名乗っている。それならば、新生B小町の“顔”はルビーになるだろう。なによりアイの娘だ、公表は決して出来ないがB小町の後継としてこれ以上無い存在だろう。
(しっかし……)
かなは楽しそうにきゃいきゃいやっている二人をみる。ルビーはともかく、なんだかMEMもアクアに落とされるのはカウントダウンされているような気がしている。
(事実上、全員アクアの女になりたがってるアイドルグループってことになるのかしら? 事実は小説より奇なりね)
今さら気にしてもどうしようもないか、とかなは開き直った。
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