【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
「暑いね……それ以上にすごい熱気」
「まあ、JIFはそれだけ大きなイベントだからな。B小町はメインステージだ、余計にそう感じるかもな」
ついに、JIF当日。あかねとアクアも早々に入場したが、B小町の出演まで時間があるので、キッチンカー等の出店を回ることにした。お祭り価格ということもあってやはり全体的に割高だが、やはりこういう場での飲食というのは楽しいし、アクアとてこういう場で金を出し渋るような男ではなかった。
「あ、これ美味しい」
「確かにな。タピオカか……何年前だ流行ったの」
「5年前くらいじゃないかな」
なんとも生産性のない会話をベンチで座りしている二人。そこへ、さも当たり前のように誰かが隣にすわってきて、何食わぬ顔で話しかけてきた。
「彼女連れでデートとは中々いいご身分だね、アクア」
「その声はフリルか……」
変装こそしているが、B小町のTシャツを身に付けたそれは不知火フリルだった。
「はじめまして。アクアの同クラの不知火フリル。よろしく、あかねさん」
「え……!? あ、はい、黒川あかねです、よろしくお願いします……? えっ、あの不知火フリルさん?」
「どの不知火フリルかはわからないけど、国民的美少女と呼ばれる方の不知火フリルだったら、その不知火フリルだよ」
「“あの”不知火フリルなんて言われるのはお前一人しかいないだろうが……何しにきたんだ?」
アクアのその問いに、
「
「そ、そうなんですか……」
天然ボケマルチタレントにあかねが完全に押されている。不知火フリルのペースに飲み込まれていた。アクアは即座に助け船を出すことにした。
「お前はMEMちょ推しか。俺は全推しというか……箱推しという形になるな。サイリウムも二本ずつ持ってきた。あかねは……まあ、言わなくてもわかるだろ」
「かなさん単推し」
「あ、当たりです……」
「アクア、6本もどうやって持つの?」
「それは……見せた方が早いな」
小指を除く四本の指の間それぞれに親指側から白、赤、黄の順にサイリウムを掴む。
「こんな感じだ」
「おお、器用だねアクア。……ゲームのキャラで刀をこんな風に持ってたのをみたことある。なんだったかな……戦国時代のやつ」
「あ、私もそれ知ってます。ちょっと昔のゲームですよね」
「伊達政宗じゃないか?」
「それだ」
なんとか自分のペースに持ち込めたとアクアは安堵し、推しの話から逸らすことにした。
「そういえば、お前は一般参加か?」
「違うよ、関係者席。鏑木Pからちょっと
「ああ、顔面至上主義だもんなあの人……」
現場で鏑木に頼まれ事をされては、何考えてるのかよくわからない真顔で「貸し1でいいよ」と鏑木に返す彼女がありありと浮かんでくる。
「つまり、そう聞くってことはアクあかも関係者席だよね。折角会えたし、SNSにあげてもいい? 三人でサイリウム構えて写真撮るの」
「許可が出たらな。というか、マメだなお前も」
「アクアと……あかねさんもだね。むしろ無頓着過ぎ。このご時世、SNSを制するものは世論を制する」
「うぐ、耳が痛いなぁ……いちおう確認するね?」
「頼む」
おそらくすぐに許可もおりるだろう。事前にあかねもアクアもJIFに行くことはSNSに投稿してある。
「アクアをサンドイッチして、アクアが
「俺はあかね側に寄ってれば良いんだろ」
「そのとおり」
「フリルちゃんとのあれそれで騒がれそうだもんね」
全員で同じポーズで、フリルの指示通りの立ち位置のスリーショットは、数時間後に“推し活中のアクあか発見”というコメントと共に投稿される。案の定、オタクカップルが推し活デートに行ったという証拠となり、ややからかい半分に盛り上がることとなる。
「よし……と。じゃあ推し活デート楽しんでね」
そういうとひらひらと手を振りながら雑踏へ消えていくフリル。今ガチのかな程ではないが、やはり台風のような少女であった。
「なんというか……不思議な人だね?」
「普段からあんなだからな……」
「……そうなんだ」
あかねは、不知火フリルを即座に要注意リストに登録した。アクアとの距離が近い割に、アクアが呆れるばかりで離れようとしていないというのは、結構珍しいことだからだ。なんだかよく分からない天然な人、という印象が強いが……だからこそ警戒をすることにした。何故なら、お嫁さん同盟の中には居ない珍しいタイプだからだ。
一方その頃、B小町はというと。
「うーっ……緊張してきたぁ……!」
ルビーが緊張のあまり震えている。無理もない。MEMに至っては手のひらに人と書いて飲むという緊張をほぐすおまじないを延々とやっている。やっぱりダメダメじゃない、とかなは呆れていた。
「ルビー、それにMEMちょも。緊張するなとは言わないけど、緊張し過ぎ……練習通りやるだけでしょー?」
「だってデビューがいきなりメインステージだよ!?」
「そうだよかなちゃん!!」
大袈裟に震える二人。一方のかなは落ち着いている。緊張していないわけではないが、程よい最適な緊張を維持している。緊張しないというのは、油断が生まれるからよくない。だが緊張しすぎは身体が強張って動きがぶれるし、やる気も削がれる。だから、程よく緊張しなければならないことを、かなはプロとして心得ている。生放送の歌番組にだって出たことがあるのだ、年上の芸能人に、じろじろとみられるあの経験に比べれば大したことはない。
「しかたないわね……」
こういう時のために、冷静にチームを落ち着かせるのがかなの役割だ。引っ張っていくのがルビー、それを支えるのがMEM、冷静に判断するのがかな、なのだから。それにもしもの時のためにアクアから秘策を用意してもらったのだ。
「はい、もしアクアが二人が緊張してたらこれを渡せって」
そういってかなが懐から出したのは二つの紙片……メモだろうか。なんともマメな男である。
ルビー宛のものには、端的に“ルビーの輝きを、みんなにも見せつけてこい”、MEMには“大丈夫だ、存分に夢を楽しんでこい”と書いてあった。ただそれだけであったが、アクアから自分宛に、というのが大事で。
「おにいちゃん……そうだね、忘れてた。この舞台に立てたことだけでも奇跡だってこと。やるよ、私」
まず、ルビーが輝きを取り戻した。その紅い瞳に、炎が宿ったかのように爛々と輝いている。全身から輝きでも放っているのかと錯覚するほどのオーラを纏う。
「楽しめ、かぁ……そうだね、今の私はお姉さんじゃなくてB小町の新人アイドルだもんね、アクたん」
MEMちょも、輝きを取り戻す。染めて、カラコンで、キャラで。いろんなもので隠した自分だけれど、アイドルになりたい気持ちだけは本物だから。その眠らせた意思を、さながら琥珀に閉じ込められた化石が発見されたかのように掘り起こした。ばちりと痺れるような真剣さと、弾けるような想いを抱く。
「よーし! そうと決まれば英気を養うためにも、お弁当食べようよ、MEMちょ!」
「おっけ~! “腹が減っては戦ができぬ”だもんね、ルビーちゃん!」
(勝ったわこれ)
アクアの一言で完全にスイッチが入った二人をみて、かなは誰かと競うわけでもないのにJIFでの完全勝利を確信した。
琥珀って擦ると帯電するそうですね。
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