【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
時間は経過し、空も暗くなってきた頃、とうとうB小町の出番となった。
B小町を見にきた観客の半数はMEMやかな達の元からのファンだ。推しがアイドルやるっていうからステージを見にきた、純粋なファンだ。他方、もう半数は旧B小町のファンである。本当に三人はB小町を、アイを継ぐに足るアイドルなのか見定めにきた、B小町のファンだ。結局あの流れのままフリルと三人でメインステージに足を運ぶこととなったアクア達も、息を呑んでB小町の登場を待っていた。
「それでは“B小町”の皆さんです! どうぞ!」
華やかな衣裳に身を包んだ三人がステージ上に現れ、所定の位置に付いた、ただそれだけで。あれだけざわめいていた会場が一瞬で静寂に包まれた。アクアはこの時点で成功を確信した。
「聞いてください、『STAR☆T☆RAIN』!」
前奏が流れ、三人が動き出し、歌い出す。まず目を引くのは有馬かなだ。
(さぁ、見て……もっと私を見て! そうよ! もっと……もっと!)
その笑顔が、動きが訴える、私を見ろと。太陽のように輝く少女に目が離せない、まさに
(もっと、楽しんで! あはは……気持ちいい! これがアイドル……! あ、目が合った。応援ありがとう!)
夢を叶えた喜びを全身で表現するように、のびのびと踊るMEM。それでいて、目があったファンにウインクを飛ばしたり、ダンスのじゃまにならないように手を振ったり。一挙手一投足から、アイドルをやれている楽しさが伝わってくる。歌はちょっと下手だが、そこがまた愛嬌を感じる。楽しげに歌い踊りながら、時折、パッとファンサービスをしてくれる。ファンからすれば青天の霹靂だろう。
(ああ……ママと同じところの、スタートラインに立ったよ、やっと! せんせ……おにいちゃん! ちゃんと見ててね!)
そして、今回のセンターのルビー。その動き、歌い声、ポーズ。ゆるぎない自信に満ちた表情は、
気付けば、あっという間にどよめきは声援に、歓声にかわり、みんなサイリウムを振っていた。
「かなちゃん! かなちゃん! かなちゃぁぁぁん!!」
あかねは完全に有馬かなの名前を呼んで白いサイリウムを両手で振るだけの機械になってしまった。これが初アイドルで、しかも対象は前からの推しだ、無理もないだろう。
周囲のファン達も概ね同じ状態だ。あまりにも巨大な三つの輝きに脳を焼かれてしまい、完全にサイリウムを振って叫ぶだけのマシンだ。一部では号泣しながら振っている完全装備のファンなどもいる。古参ファンすら納得するしかない。「B小町が生まれ変わって帰ってきた」と。
フリルも無言ではあるが鉄面皮を緩ませてニヤケながら黄色いサイリウムを振っている。もちろんアクアも六本体制でサイリウムを振りながら、瞳を潤ませていた。
(やったな……
あとはもう、語るまでもないだろう。新生B小町のファーストステージ、デビューライブは伝説の名に恥じぬ、大成功で幕を閉じた。
その後、あかねもフリルも、もちろんアクアもチェキを撮って貰ったし、会場限定グッズをきちんと全種類買って帰ったのは言うまでもない。
☆
「それでは、新生B小町のステージ大成功を祝って、乾杯!」
B小町メンバーと、アクア、あかね、アイ、ヒカル、その他苺プロのB小町プロジェクトにかかわったスタッフ全員が集まって、大掛かりな打ち上げとなった。
「サイリウムを振ってたころはあんなにちっちゃかったのに……もうアイドルになってるなんて……」
「ねー。あ、いつか旧B小町のみんなでさー、新旧コラボライブやらない? 私も火が少しついちゃったかも」
「「頼むから勘弁して……」」
ヒカルとアイは並んでちびちびと酒を飲んでいた。アイがとんでもないことを言っては、向かい側に座る元B小町の中でもアイと特に仲の良かった二人が勘弁してくれと止めている。今でもアイドル体型なアイとは異なり、それなりに年嵩を重ねて全身が油断ぎみな他メンバーにとっては酷な話である。あと純粋に恥ずかしい。
「次の夢は、ドームだけじゃない。新生B小町での全国ツアーライブだな。あわよくばオリコン独占って訳よ」
「あら、ずいぶん大きな夢ね」
「夢を見るんなら、でかい方がいいだろ」
社長夫婦も、夢を語りながら盃を傾けている。特に壱護は孫のような存在であるルビーがとうとうアイドルになったのが感慨深いのか、高い酒を、数本既に空にしていた。
スタッフ達も次の展開に夢を膨らませており、新曲はどうする、旧曲でリメイクできそうなものは、グッズは新アイテムとしてこんなのはどうか、と打ち上げなのに仕事の話で盛り上がっている。
一方、未成年……もっとも、約一名は詐称未成年だが、テーブルを分けて纏められ、個室に押し込まれた未成年組はというと。
「アクア~、このお刺身美味しいわよ~。あーん」
「おにいちゃーん、今日頑張ったからよしよししてー」
「はいはい、あーん。ルビー達も良くやった、よしよし。あかね、すまんがそれとってくれ」
「私がやるよ。ついでに二人のグラスにも注いじゃうね」
「助かる」
(いや……おかしくない!?)
MEMちょは混乱の最中にあった。まあ、ルビーとかなはそれぞれ妹と幼馴染みだ、アクアとの距離が近いのは分かっていた。散々バグった距離感を見せつけられたので。むしろ彼女のはずのあかねの方が適切な距離感をとっているのではないか、と思える程には。
だが今日のこれは明らかにいつもより近い。幸い、店員が来るのが分かると示し合わせたようにパッとアクアから離れるのでギリギリ良いのだが、撫でろといわんばかりにグリグリと顔を押し付けるルビーはまあ……まだいい、ギリギリ甘えたがりな妹として理解できなくもない。だが、当たり前のように食べさせあいをするかなとアクアはなんなのか。それは親友の距離感じゃないぞ。それを慣れたようにスルーしながら甲斐甲斐しく世話を焼くあかねもあかねだ。あれとかそれで通じるのは夫婦じゃん。というかかなの態度をスルーしてるのはどういうことなのか。
だがMEMちょは
「あ、あはは……前から思ってたけど、アクたんとカナちゃん、本当に仲良しだね……?」
「ん、まぁな。かれこれ14~5年くらいの付き合いになるからな。……唐揚げも旨いな」
「ねー。ずーっと親友なの。えー、じゃあアクアとって~」
「ほれ」
良いでしょ、といわんばかりに屈託ない笑顔で自慢をするかな。そのままアクアに唐揚げをねだり、食べさせられている姿は可愛らしいのだが。
「それにしても食べさせあいっこまでするのは、流石に仲良し過ぎじゃない……?」
「そう? 親友同士ならこのくらいするもんじゃないの?」
「仲良しは良いことだろ」
アクアとかなも不思議そうにしている。どうも普段見せなかっただけでこのバカップル染みた距離はアクアとかなにとっては普通らしい。
「ん~……別にやるなとは言わないけど、人前だとカップルに間違われちゃうから避けた方がいいよ~? 一般的に異性でそういうことやるって“そういう仲”っていう認識だからさ」
MEMはかなり頑張ってオブラートに包んで、やんわりやめるように言った。
「あ、じゃあ妹の私ならオッケーってことじゃない? おにいちゃんあーん」
「……急に口に突っ込むな」
「えへへーごめんねー」
その瞬間、MEMは確かに見た。そういう仲、と言った瞬間、かなとルビーが、明らかに一瞬だけだが“メス”の顔をしたのを。
(えっ!? 見間違い……じゃないよね……?)
MEMの脳内に関係性図が描かれる。アクアとあかねは恋人同士。アクアとかなは親友だけど、明らかにかなはアクアが好き。アクアとルビーは双子だけど、明らかに兄を見る目じゃなかった。
その事実に気付いたとき、一滴も酒を飲んでないし暴食もしていないのに胃がキリキリと締め付けられるような感覚。
(ええ……!? つまり三人もアクたんの事を……? いやいや、それはありえないって! でも……それが本当なら
己の奥底に眠る本心に気付かぬまま、ごまかすように烏龍茶を飲み干した。
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