【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
41.始動
JIFが終わり、飛躍するB小町たちの裏側にて、新たなプロジェクトが動いていた。
「いやあ、久々にとって来たよ! 『大型案件』!」
そう自慢げに言うのはイベント会社マジックフローの社長、雷田だ。対面には鏑木Pが座っている。雷田は興奮したように続ける
「累計5000万部突破、アニメ映画も大成功、泣く子も黙る『東京ブレイド』の舞台化企画!」
「つまり、2.5次元舞台ってわけだ」
「その通り。予算もガッツリ取ってきたからね。派手にいくよ。なにせララライにも話を付けてきたし、今回の舞台はステージアラウンドだからね」
「金田一さんをよく口説き落としたね……ああ、なるほど、だから僕も呼ばれたわけだ」
2.5次元舞台……
「紹介してもいいけど……貸しひとつだぜ?」
「いやいや、鏑木ちゃんとこの子にチャンスをあげようって話だよ~? それで貸しはないだろ」
どちらが「貸し」なのか、視線を交えた駆け引きを行うが、ほどなくしてお互いにメリットがあるのでトントン、ということになった。
「で、ララライからは誰が出るの? 流石にカミキヒカルは出せないでしょ」
「大物過ぎて、単価がどうしてもね~。あと、ヒカル君みたいなのはね、今回向かないんだよね。一人に視線を集めすぎちゃうから。ああでも、メインキャストは姫川大輝と黒川あかねは引っ張り出した」
「姫川も大したもんだ……それに、黒川あかねか。……じゃあ、アクア君とかなちゃんはどうだい?」
鏑木は愉快犯的にアクアとかなの名前をあげる。この二人ならば黒川あかねや姫川大輝に負けないだろうという目算もあったが、それ以上に舞台における星野アクアの実力を見てみたいと思ったのもあった。
あの周囲の演技や環境すら貪欲に己の演技に取り込んでいく災禍の怪物が、姫川とぶつかったらどうなるのか気になった。
もちろん理由はそれだけではない。程よい単価、今ガチやJIFで爆発した人気と知名度の割に、比較的安めに使えるというのは強い。少なくとも、ここ最近演技関連の仕事をしていないかなは間違いなく食いつく。あの子が役者としてのプライドが結構高いことを知っているからだ。だからこそ、それを説き伏せてアイドルをやる決意をさせたであろうアクアを面白いと感じるのだ。
「ははぁ、“アクかな”と“アクあか”かい? 趣味悪いねぇ鏑木ちゃん。新旧天才役者を嫉妬で争わせようって事かい?」
「うまく役がハマれば、相乗効果で化学反応がおきそうだろ?」
「確かにねぇ」
そして鏑木にとっての“ちょっとした楽しみ”に気づいた雷田。悪い大人二人がニヤリと笑う。世間にはアクかなとアクあかは、三人の絶妙な関係性と妹の存在によって誤魔化されているが、業界人からしてみればやってんなアイツ、というのは何となく分かるものだ。この二人からしてみれば、うまいことかなとあかねの二人を転がしているし、おそらくもう何人か
若者がアクシデントで悩み苦しむ姿というのもなかなかに面白い。このくらいの楽しみくらいは無ければ、こちらも気分的に楽しんで仕事に励むことが出来ない。
「で……そうだな、あと二人位は紹介しても良いかな。2.5次元の経験豊富な鴨志田と、あとは……ソニックステージの鳴嶋メルト君」
「鳴嶋……ああ、今日あまの最終話で化けた子」
「アクア君にケツひっぱたかれてようやく感情演技をやっただけだけどね。まぁでも、そのあと結構成長したみたいよ?」
「じゃあ見せ場が最低限一つくらいはあった方がいい役に置くよ、ソニックステージだし」
鏑木から見たメルトの評価はそんなものである。とはいえ、今日あまでコケるまでは順風満帆な芸能人生活をしてきたであろうメルトが傲慢になるのは、別に珍しいことではない。むしろ、あそこから奮起して演技の練習を積み重ねている粘り強い精神は評価している。
あの年で既に達観した空気を纏っているアクアやかなが異常なだけだ。特にアクアは、外から見ている限りでは大きなやらかしもポカも無いように見える。なのに時々、人生経験豊富な大人のような顔をするのだから面白い。チグハグな精神、美しいルックス、異性を無意識に口説く台詞。なにもかもが当時のアイを重ねてしまう。だから面白い。
「僕としてはアクア君の舞台演技が楽しみかな。演出家泣かせだよ、あの子は」
「鏑木ちゃん、もしかしなくてもアクア君の事、結構なお気にだね?」
「見ていて飽きないしね。それに獅子は我が子を千尋の谷に落とすって言うだろう?」
「嫌な獅子だな」
☆
当の本人たちはというと、喫茶店で三人で
「アクア君! かなちゃん! 次のお仕事見た!? ステージアラウンドだよ!」
いつもよりもテンションが高いあかね。ネットドラマも最近少しは出始めたとはいえ、やはり黒川あかねは舞台俳優なのだ。特別な舞台でやるということもあって興奮しているようだ。だが、かなはどこがすごいのかさっぱり理解できないので聞くと、アクアがすかさず答える。
「見たわよ、久々に本気で演技出来そうで楽しみね。で……ステージアラウンドって何?」
「俺も実際に見たことあるわけじゃないが、客席が回転するし、背景は周囲を取り囲む360度全てに展開されていて、より作品の世界に没入する事が出来る舞台のこと……だったかな。少なくとも俺たちの想像する幕が下りてくるタイプの舞台ではないことは確かだ」
「なるほどねぇ、体験型アトラクションみたいなもの?」
「その通り! だから気合い入れて練習しないとね! あ、それと実物も見に行かないと!」
百聞は一見に如かずとは良く言ったものだ。実際に体験してみないことには分からない。
「じゃあ、あかねの言う通り顔合わせ前に事前調査しとこうぜ」
「さんせーい。折角だしルビーも連れてく?」
「そうだな」
「じゃあ、この日とこの日なら全員空いてるから、どっちかで行こうよ!」
「ついでに終わったらお茶できそうな場所でゆっくりしましょ」
きゃいきゃいと楽しそうに予定を決める二人を眺めながら、アクアは少しだけひっかかる点があった。
(今日あまもそうだったが、実写化においてストーリーやキャラの改変と言うのは、当たり前に出てくる。何もないと良いが……)
今日あまは、作者が特に口出しせず、そもそも連載が終わって久しい漫画だという点に対して、今回の東京ブレイドは現在進行形で売れに売れているし、映画アニメまでやった作品だ。そもそも2.5次元舞台や実写化そのものが、地雷という人は少なくないだろう。これまでも大きな現場は大なり小なり何かしらトラブルがあった。そういう経験からか、アクアはなんとなく嫌な予感がしていたのだった。
(いや、何か一波乱起きそうだな……)
アクアの背筋がぞわりと震えた。
ガチ濡れ場(R18)って需要ある?
-
みたい
-
いらない
-
結果だけ見る