【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
「アクたんどったの?」
「いや、今度ステージアラウンドをみんなで見に行くんだが、MEMちょもどうだ?」
「あはは、まだちょーっと忙しくて……本当は行きたいんだけどね!」
「そうか……」
ステージアラウンドというのが何かは良く分からないが、そういってMEMはアクアの誘いをつい断ってしまう。アクアが残念そうに少し肩を落とすのを見て、心がチクリとする。
(なにやってるんだ私ー! 折角誘ってくれたんだから行くべきだよね~!? 実際は別に仕事あるわけじゃないし! というかアクたんは私を遊びに誘ってどうしたいの~!?)
内心、頭を思わず抱える。あれから数ヶ月、仕事の整理は付いたが、結局MEMは自分の気持ちに整理がつかなかった。彼女持ちに惹かれている、しかもその彼女は抜群の美少女で性格も良い。あんなの私が男でも手放す筈がない、と確信できるほどに良い子だ。そんな状態で気持ちが纏まる筈もなく、しかしこの心を捨てることも出来ず……ずるずると今に至ってしまう。
(……いや! ここで行動しなければダメでしょ!)
だが、いつかのアクアの“やりたいんなら、後悔する前にやるべきだ”という言葉を思い出した。前に進まなければ、恋も進まない。ダメで元々、当たって砕けろだ。
「待ってアクたん! 一応予定確認する!」
あわてて手元のスケジュール表を確認する。やはり誘われた日に仕事の予定はない。動画投稿のスパン的にも問題ない……ならば行くべきだ。
「やっぱり、行けそうかも」
「わかった。あかね達にも来るって言っとく」
「はえ? あ、ああ……うん! わかった!」
どうやら“みんなで”遊びに行くということらしいことを聞き逃していたようだ。腑に落ちたと同時に少しがっかりしている自分に気づく。中々に図々しい自分の恋心に呆れながらも、こりゃあどうしようもないなあ、と諦めた。
そして、予定日。
「よし……全員揃ったな、行くか」
ものすごい目立つ集団が完成していた。美少女四人にイケメン一人という構図は、中々に……アレだ。確かに皆それなりに変装をしているので、アクア達だとばれる心配は少ないだろうが……。それよりもMEMとしては気になる部分がある。
「いやぁ……あかねちゃん。アレいいの……?」
「いつもあんな感じだよ?」
いつもかぁ、と両手に花となったアクアを見る、あかねのとなりを歩くMEM。ルビーとかなに挟まれた……挟まれたというには距離が近いが、アクアも平気そうにしているので、本当にいつも通りなのだろう。
「あーくん、ここから近いんでしょうね?」
「そこらへんおにいちゃん達なら大丈夫だと思うけど」
「問題ない。車で行ける距離だ」
特に、アクアのことをあーくんと呼ぶ、明らかにいままでよりも距離が更に縮まったかな。MEMからすると、あかねからアクアを寝取っているかな、という構図に見える。競争相手が有馬かなとは。強すぎないか? と思わなくもない。
MEMはこのメンバーの中で、一番まともである。感性や倫理観が一般人に近いと言っても良い。だからまさか妹を含む三人が囲う側であるとは思わない。だから、かなが“彼女のあかねを気にせずアタックできるメンタルが強い”ように見えるし、あかねも“揺るぎない自信と信頼をアクアに向けている”ように見える。
「そろそろ行くぞ」
「あ、うん! 行く行く! あかねちゃん行こっか!」
「うん」
アクアに寄り添う三人を見て、思わずいいなぁ、と漏らした。
「……ふーん?」
それを聞いている者がいるとも知らずに。
☆
ステージアラウンド舞台。幕がすべてスクリーンとなり、さらに観客席が回転するために“幕間”が存在しない作りになっている。あかね曰く“幕が下りるとはもう古い言葉”とのこと。その舞台は圧巻の一言であった。近場にあるカフェで、全員で座って感想の言い合いとなっていた。
「いやー……すごかったわね。正直舐めてたわ。想像の300倍はすごかった」
「盛り過ぎじゃないか? でもすごかったのは確かだ」
「でしょ! 特にここのヒロインの慟哭するシーンが!」
「あれよかったわね、どこの舞台役者かは知らなかったけど」
あかねとかな、アクアは役者としてどれだけ“すごい”のか理解して、専門的な会話をしているようだが、いまいち理解しきれていないのはルビーとMEMだ。
「んー……確かにすごかったはすごかった。けど、どうすごいのかはいまいちわかんない」
「まー、私達演技に関しては素人だもんね」
ルビー達の疑問に答えるのは、この中では一番演出と演技どちらにも知識のあるアクアだ。
「ああ、つまりステアラは通常の演劇よりも切り替えが短いんだ。あらかじめ切り替える場面を用意しておけるし、スクリーン背景だから大道具やステージギミックの必要ない部分の背景の移り変わりも容易だ。そうだな……2.5次元舞台で表現するならば、さながら漫画やアニメのように場面の移り変わりを表現できるわけだ。より臨場感と没入感が強い」
もちろん、決してかつての劇場が悪いというわけではない。あれはあれで味のあるものだし、専用の舞台ギミック、メイクと大道具、とこだわりにこだわり抜いたものはステージアラウンドとはまた別の魅力がある。演技と演出による磨き抜かれた技巧のある舞台は、ステージアラウンドのような仕組みがなくとも人々の心を世界に引き込んでしまう。
だが、ステージアラウンド舞台というのはそういった専門の舞台を用意するのと同等に特別な舞台であることは確かであった。
「あかねが気合いを入れる理由がわかるほどに特別な舞台ってことだな」
「なるほど。じゃあ制作側も相当力をいれてるって感じだね~。『東京ブレイド』だしね?」
「アニメ化もしてるからな。俺が刀鬼っていう渋谷クラスタのメインキャラで……」
「私が同じクラスタの“ヒロイン”の鞘姫だね」
「婚約者ね、婚約者。で、私が今の相棒のつるぎ」
「みんな結構な主役級だね! うわー、見に行っちゃおうかな」
東京ブレイドは流石のルビーでも知っている超人気作品。どうせかなが公演中はアイドルとしての仕事は殆ど出来ないであろうと踏んで、ルビーは公演日を楽しみにすることにした。
「しっかし良かったわね~。ステアラ、吉祥寺先生にも教えてあげようかしら」
と、かなが思い付いたように言う。かなとアクアは今日あまの繋がりから、ちゃっかり連絡先を交換し、実は何度か遊びに行ったこともあったのだ。
「良いんじゃないか? 今は連載も抱えてなくて暇そうだったし、刺激にはなるだろ」
「でしょー? これきっかけで新作がヒットしたら私のお陰よね~。それで主演に抜擢してくれないかしら~?」
「捕らぬ狸の皮算用か?」
恩を売る気満々で皮算用を始めたかなは、早速吉祥寺先生へ連絡を飛ばした。なんと、偶然すぐさま彼女がその通知を確認し。
「へえ……ステージアラウンド? 有馬さんがおすすめするって中々無いし……確か東京ブレイドがステージアラウンドだったはず。折角だし、あの引きこもりを外に連れ出すつもりで誘おうかな。今週のネームはもう上がったって言ってたし」
有馬かなは普段から基本的に否定から入る人物だ。そのため、それをはじめから肯定的に表現されたステージアラウンドに興味を持った。弟子がそれで2.5次元舞台をやる事も把握していた吉祥寺は、予習とか事前調査とか色々言い含めて、外に連れ出す事にした。その理由は単純、弟子には実写化で自分のように失敗してほしくないからだった。
かなに「面白そうなので、一度行ってみます!」とだけ返信すると、弟子のアビ子へと電話をかけるのだった。
「もしもし? うん、私。実は有馬さんからおすすめされた場所があって……そう、あの有馬かなさん。それが、2.5次元舞台とおんなじステージらしくて。事前調査をかねて、行ってみない? ほら、何も知らないと台本に口出しとか出来ないしさ。気晴らしにどうかな? ステージアラウンドっていうらしくて。週末とかどうかな……うん。それじゃあね。身体に気をつけて」
「これで、私の時みたいにならないと良いんだけど……」
弟子を案じる師匠の親心。それが、東京ブレイドの成功に通じると信じて。
レベルの合計の300倍だぁ!
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