【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
とうとう、役者達の顔合わせの日。鳴嶋メルトは気合を入れていた。鏑木からのネジ込みに近い仕事とはいえ、それでも仕事の機会ではあるのだ。自分の未熟ゆえの評価である大根役者の汚名を雪ぎ、名誉挽回のチャンスだ。なによりあの時のように、自分のせいで作品が台無しになることだけはならないようにしてきた。
そう決意しながら廊下を歩いていると、見知った顔二人と、最近よくみるようになった顔……あかね、アクア、かなの三人が並んで歩いていた。
(アクアさんやべぇ……)
その光景はまさに男の夢、白昼堂々と美少女二人を侍らせている。そんなことはイケメンで苦労せずここまで来たメルトとしても全く経験したことのない未知の領域。女性側から言い寄られることは良くあったが、こんな風に女の子二人が付き添ってくる、なんてことはない。
メルトの認識としては、元々アクかなが付き合ってると思っていた。そこに、今ガチのアクあか成立という、アクアの本命がどちらか全くわからない状態に遷移していた。だが、今三人の様子をみてメルトの認識が更新され、かなとあかねの二人ともが本命ということになった。つまり彼女公認で二股してる男という認識である。
「あ、お久しぶりっす二人とも」
「確かに久しぶりだな」
「あー…………………………よろしく」
かなに妙な間があった。まあ、理由は何となく理解できる。今日あまの悪夢再びとか思っているのだろう、顔には出していないが。口に出していないだけ、普段から口の悪いかななりの優しさがあったが、メルトにはその雑な優しさがキツかった。
そうしていると、あかねも挨拶をメルトにする。
「えっと、鳴嶋メルト君だよね。はじめまして、苺プロ所属、ララライの黒川あかねです。よろしくね」
「う、うっす、ソニックステージ所属の鳴嶋メルトです! よろしくおねがいします!」
あかねはメルトの周囲にはあまりいないタイプのキレイ系……いわゆる清楚系という印象がメルトにはあり、なんだか擦れていないイメージがある。黒髪のロングヘアーに、落ち着いた口調、内気そうな雰囲気がそうさせるのだろう。反対側に活発でショートのかながいるので、余計にそう見える。実は爆発すると一番火力がヤバイ女なのだが、世間にはオタク部分しか露呈していないため、メルトにわかるはずもない。
そのため、少し緊張してしまう。役者としてもゴリゴリの実力者だし、ある意味ではアクアとかなよりも意識してしまう相手であった。
「うっわ、声うわずってるわよ。そんなんで大丈夫~?」
「言ってやるな、可哀想だぞ」
「うっ……行動で見返すことにするから、見ててくださいよ」
メルトの見返す発言に、へぇ? と楽しそうなかな。こういう実力で文句を黙らせるというスタンスはかな好みだ。
「言うじゃないの。ぶりぶりのぶり大根からどこまで成長したか見てあげるわ? せいぜいシャキシャキの千切り大根になってるといいわね~」
「結局大根じゃん……」
がっくりとうなだれるメルトに、ビシッと指差しするかな。
「あのね、あんたみたいなぶり大根が1年足らずで役者としてそんなに素早く成長できてるのなら、私はとっくにトップスタアよ、ス・タ・ア」
「あはは、かなちゃんがトップスターなら……私は看板女優かな?」
「言うようになったわね、あかね」
メルトからしてみれば、かなは元々子役として頂点を取った人物であり、実力も十分。それがまだ“スターとはほど遠い”と言うのだから芸能界は魔境だ。表現はいまいちよくわからなかったが。
そうして話しながら、集合場所のスタジオに到着。すぐさまメルトが大きな声でスタッフ達に挨拶をし、アクア達もそれに続くように挨拶をした。
(へえ、確かに変わったわね)
その態度に感心するかな。元々かなも我が儘放題の天狗だっただけに、メルトの立場というものがどういうモノか理解している。アクアとの初対面の頃を思い返せば、荷物をスタッフに持たせたり、大声でわめいたり、演技が納得いかなくて大泣きしたりと、大物気取りでひどい状態だった。もっとも、そのころのかなはまだ二歳か三歳であり、仕方ない面もある。きちんとアクアに矯正をされたので改善したこともあり、今では普通だ。そういうわけでメルトに親近感のあるかなとしては、今日あまの頃と比較して、確かに殊勝な態度になっているので少しだけ期待していた。
「せっかくメインキャストが集まったし、本読みも先にするぞ」
演出担当の金田一のその一言で始まった本読み。だが、読み進めていくうちに役者達から冷や汗が出始めている。
「なによこの台本……役者の演技に丸投げの台本じゃない……!」
冷や汗をかきながらもにやりとかなが笑う。アクアも同様に、口の端がつり上がっている。あかねも楽しそうに燃えていた。役者として“やれるもんならやってみろ”といわんばかりの台本に、やってやるさと火が着いたようだった。
台本が完全に役者丸投げになったのは、理由があった。主に原作者アビ子と脚本のGOAが原因となっていた。
初稿の時点では、鞘姫をはじめとするいくつかのキャラクター性を損ないながらも、舞台台本としては100点のものが完成していたのだ。そこは売れっ子の脚本担当・GOAのおかげである。しかし、原作者としてはそれに反発する。
「なんなんですかこの台本!」
思い付く限りの罵詈雑言を、初稿台本を持ってきた編集に浴びせかけるアビ子。しかし、しかしだ。アビ子とて自分が舞台のプロでないことは理解している。舞台台本にする上で、キャラの性格が変えられたのには必ず理由があるはずだとは思う。
だが、こうもキャラ変されては口出しをしたくてたまらない。だったら、まずなぜこうなったのか、聞かなければ腹の虫が治まらないというもの。
「あの。この脚本の人と連絡とれますか。とれないならこの台本のままなら、舞台化なんか取り下げますけど」
そうしてほぼ脅した形でGOAへの直通連絡先をゲットしたアビ子は、なぜなに期の子供のように質問とダメ出しの雨を降らせ、GOAはそれに律儀に答え、どうすればいいのかヒアリングしていく。そうしている内に、二人してあっという間に意気投合してしまい。数時間も延々と東京ブレイドの脚本について話し込み。お互いにくっきりと隈まで作りながら、ビデオ通話でアビ子の展開に合わせたラフ画まで描くほど入れ込んで。日が昇るまで延々と話し合いをした。
「アビ子さん! これで……どうですか!」
「……すごい! すごいです! これなら私も納得できる出来です!」
「よっしゃ……!」
結果として、役者次第で20点にも120点にもなるバカの台本が出来上がってしまった。雷田は、ララライならば“やれる”と判断し、金田一も“出来る”と判断したので、多少の修正は入ったもののそのまま現場に問題児台本がやってきてしまったのだった。
一方で、台本を必死に読み込んで、あかねとかなに挟まれながらも相談を続けるアクアを、じっと見つめている男がいる。姫川大輝だ。もう自分の役の部分は読み終え、おおよそどういう風にすれば良いのかは掴めたので、観察をしていた。その理由は、アクアから感じる奇妙な感覚だった。
(……なんだ、この感覚は?)
アクアと会ったことはない。同じ劇団所属のカミキヒカルに確かに雰囲気は似ているが、そこではない。大輝は確かに、
姫川大輝の両親は、彼が五歳のときにコテージで無理心中をして他界している。父親の清十郎のことはクズだと思っていたし、母親を殺した張本人。父親とも思いたくなかったのだが……彼が中学生の時、清十郎を父親と思いたくないあまり、DNA鑑定を行ったことがあった。その結果、姫川清十郎は本当に父親ではない赤の他人ということが判明したのだ。
母親・姫川愛梨は芸能界のどこかで自分を宿した。そう考えた大輝にとって役者をする片手間に、もうひとつの目的である真の父親探しが増えた瞬間だった。しかし長年母親と深く男女関係にあったと思われる人物のDNAを何人も検査しても、一向に見つからなかった。中々若い頃は遊んでいたようなのだが、誰も彼もが違っていた。
だが目の前に現れた親近感を感じる男、星野アクア。女にモテる、役者をしている、自分と大差ない年齢……役者への熱意。なぜかどこを切り取っても自分と似ていると思えてしかたがない。
(俺の真の父親のヒントになるかもしれねえ)
異母兄弟という僅かな可能性に、大輝は賭けた。
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