【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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46.成長

 ついに始まった本読み。いうなればカンペありの通しの寸劇。その場において、鴨志田から見て一番レベルが低いのはやはりメルトだ。

 

(顔だけで仕事取ってきた奴かと思ったけど)

 

 しかし、鴨志田からメルトへの……もとい、ほとんどのメンバーからの評価は『思ったよりはやるじゃん』という評価だった。

 

「『俺は負けねぇぇぇ!!』……このくらいか? アクアさん、どうです?」

「もっと感情込めて良いと思うぞ」

「もっとかぁ……うし、頑張ってみるか」

 

 本読みが始まる前までは、明らかに顔だけで捩じ込まれた奴、と思っていた。念のため確認した出演作品は今日あまのみ、それもひどい演技だった。それだけに、その時よりは確実に成長しているのが見て取れる。もう下手な演技とはいえない。なによりも、基礎が出来ている。周囲のレベルを考えれば相対的にヘタクソだが、しっかりと土台を作って稽古を真面目にして自主練習も重ねてきた、そういう演技だった。だからなんとか足を引っ張らない程度に、ギリギリだが演技について来れている。

 

(こいつ……メルトだったか。ケツをひっぱたいてやれば化けるかもな)

 

 なによりも可能性や将来性を感じた。なにか切っ掛けがひとつあれば、固めた地盤を糧にぐんと成長できると鴨志田の役者としての嗅覚が訴えていた。鴨志田はそういう上昇志向のある男は決して嫌いではなかった。

 

 逆に、一番レベルが高いのはやはりララライのメンバー、特に姫川大輝と黒川あかねの二大巨頭と、有馬かなの三人の天才だ。

 

「ふー……流石ララライの看板役者ね。演技がやりやすくて助かるわ~」

「ヒカル先輩には負けるけどな」

「あはは……でも、姫川くんもすごいと思うよ?」

 

 黒川あかねの演技はまさに没入型の理想系、ひとたび演技を始めればそこにいるのは黒川あかねではなく、鞘姫になる。初めは鞘姫役の黒川あかねだったのだが、演技を重ねる内にどんどん黒川あかねの要素が消えていく。一週間もすれば完全にものにするだろう。

 有馬かなはその真逆、唯一無二の存在感がある。強いて言うなら蹂躙型、主張型とでも言うべきものだ。それゆえに目を引く、目立つ、目を離せない。役者としてアレと共演する以上、負けていられない気持ちになる。それでいて自分が目立つべきではない場面ではしれっとその主張をやめて、その場面の主役に合わせた見事な受けの演技をするのだから、ますます対抗心を刺激されてしまう。

 姫川大輝はもはや語るまでもない万能型だ。有馬かなの演技を受け流して適応しつつ自分も負けぬと存在感を出す。黒川あかねの演技を引き立たせて、より役に没入していく。大袈裟ながらもセンスのある身振り手振りで感情を伝えてくるために、情報量が多い。ありとあらゆる演技の手法を叩き込まれ、ひとつにまとめあげたその演技はさながら様々な金属を混ぜて鍛え上げられた一本の剣のようだ。

 

 そして、一番意味不明なのがアクアの演技だ。

 

(たぶん、星野アクアはこの中では()()()()()()()。才能って意味ならメルト以下。いや、このハイアベレージな演技集団の中に入り込めてるだけ上澄みなんだろうけどな)

 

「姫川さん、ここのシーンなんですけどブレイドは戦闘を楽しんでるんですよね。それで、刀鬼としては戦闘を楽しんでないわけで」

「ああ。さっきよりもより流麗というか、静かな感じでたのむ。しかし、剣道か何かやってたのか? かなり動けてたように見えるが」

「ブレイドの剣技はどうしても大振りなので、大分やりやすいだけですよ」

「ああ、剛剣だからか……アクア、お前合わせるの上手いな」

「アクかな時代から、わがままの化身みたいな奴とあわせてたんで」

「聴こえてるわよアクア!」

「そういやそうだな。道理で演技が楽なわけだ。おっと、地獄耳のお姫様に聞こえちまう」

「あんたらねぇ……!」

 

 本読みをしながら、姫川やララライのメンバー、金田一にまで意見を求め積極的にディスカッションしているアクアを見る鴨志田。

 ゲームのようなパラメーターで例えるなら、特定のステータスが飛び抜けているのがあかねとかな、どれが優れているわけでもないが全てが高水準に纏まっているのが大輝だ。ちなみに自己認識としては鴨志田は自分はまだ伸び代もあるがこのメンツにも負けていない能力はあると自負している。

 だがアクアは、そういう表現で言うならば、かなりまばらなステータスをしている。一見するとどれかひとつが飛び抜けているわけでもなく、かといって高水準でまとめあげられているわけでもない。もちろん現状のメルトと比較すれば、当然だが雲泥の差があるし、並の役者ではまず太刀打ちできないだろう。受けの演技はかなり練り上げられているようだが、それでもやはり武器というには、このメンツの中では頼りない。

 だが一度演技を始めると、有馬かなや黒川あかねに決して劣らない演技に見えてくる。

 

 その秘密は、なりふり構わず、他の演者の演技力だけでなく環境や偶然、演出すらも利用し、踏み台にして自身の演技を高めているから。鴨志田からしても異質と言わざるを得ない演技。強いて言うなら適合型。相手の演技を受けて適応していく演技ではなく、相手の演技に合わせて、様々な技法を駆使してピッタリと適合させる演技は変幻自在。そのわかりにくい実力は、鴨志田からみればまるで深海を覗かされているようだ。実際に演技をして見ないことには、なにが飛び出てくるか分かったものではない。

 端的にいえば()()()()役者、というのがアクアの印象だった。

 

(でもこれ、本番の舞台ならもっとやべー奴だな。いいじゃん、面白くなってきた)

 

 だが、だからこそ役者(負けず嫌い)故に対抗心も燃えてくる。負けていられない。このメンツ相手に油断していたら食われる。鴨志田は気合いを入れ直した。

 

 一方で、アクアに全く違う印象を抱いた者が居る。劇団ララライの代表の金田一だ。

 

「いやー、今回は下手な子いないねぇ」

「そうだな」

 

(アクアと大輝の演技は()()()()

 

 彼らの演技の根幹、複数の技法を使い分けるところが、特に似通っている。なるほど鏑木が入れ込むわけだ。かつて自分が姫川大輝の才能を見込んで演技を叩き込んだように、鏑木もアクアが成長したらどうなるのかを見てみたいのだ。だが妙に似すぎている気もしていた。

 

「あの台本が来たときはどうなるかと思ったけど……これは他の子達も期待してよさそうかな?」

「だろうな。鏑木はそこら辺のバランス感覚が優れている。だが、まあ確かにひと安心だな」

 

 雷田としては、この無茶振り台本に全員が付いていけそうでほっとしていた。売れっ子脚本家のGOAがまさかあんな暴投じみた脚本を持ってくるとは思わなかったが、クリエイターは現場の事を忘れ去って盛り上がってしまうことは多々あると雷田は飲み込んだ。そして、一番の心配事がなくなれば、気になるのはやはり新旧天才女優対決だ。

 もちろんかなもあかねも甲乙付け難く、比べるようなものではないと分かっている。役者に強い弱いという話などナンセンスだと。だがこの二人が舞台上でぶつかりあった時、どうなるのか気になってしかたがない。

 

「いいね、本番が今から楽しみだよ」

 

 楽しそうに腕組みする雷田。その表情は、成功を確信していた。




なにも成長が必要なのはメルトだけではない

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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