【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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2.5次元編、長いですね


48.軟派

 あかね、アクア、メルト、そして鴨志田の四名は、メルトに付き合って演技の追加練習を行っていた。

 

「やっぱお前……ヘタクソな」

「うっ……だからこうして頭下げてわざわざ特訓してもらってるんでしょ……」

「わかってるわかってる。とりあえず、今のとこはもっと大袈裟に大振りにな。いまのままじゃキザミのキャラには合わねぇぞ」

「うぃっす……」

 

 鴨志田にしては珍しく、本当に珍しいことだがメルトという男を気に入っていた。元々、彼は演技で苦労した経験がある。顔だけで席を一つ奪い、その空いていたはずの席が埋まったせいで自分や同僚の実力派が落とされる……なんてのは日常茶飯事。だから、失敗を糧に最低限の実力を身に付けてやってきて、この現場でも成長しようともがくメルトは、結構好ましく思っていた。初対面時の印象の影響で、メルトの演技力に対するハードルが多少下がっていたのは確かだったが。

 そこで、あかねがすかさず良い点を誉める。

 

「でも感情演技は良い感じになってると思うな。あと、刀投げてキャッチする原作再現は良いと思うよ?」

「うす、がんばります!」

 

 そういうと、一番の見せ所であるキザミと匁の殺陣をもう一度繰り返す。そうして鴨志田が容赦なくダメ出しをして、主にあかねが良い点、改善点を指摘する。アメとムチを交互に受けている状態であった。

 

「ふぅ……キッツいわ、ちょっと休憩な!」

「はぁ、はぁ、はぁ……はい……」

「あー、そういえば、アクアは何でまだ居るんだ? いつもならあかねちゃんと、そろそろ上がるだろ」

 

 純粋な疑問をぶつける鴨志田。アクアは基本的にあかねと遊んでから帰るか、かなとあかねを引き連れて姫川と遊びに行く。そろそろ良い時間であり、現にかなはもう帰り支度を始めて、外でアクア待ちをしている。

 こういう指導に彼女が参加しない理由はとても簡単で、かなの性格上、あの容赦という二文字の存在しない口の悪さでダメ出しを一気に浴びせかけるだろうことは、付き合いの短い鴨志田やメルトでも理解できることだからだ。あれを食らうとメンタル的にきついものがある。具体的に言うと、ポキッと折れそうになる。そこはかなも自覚しているので、最初から他の人物が教えるならパス、ということになっていた。無論、少しむくれていたが、アクアが()()()()()()()()をしたので、一転してご機嫌になった。

 むしろあれを真正面から受け止めて軽妙に悪口を叩き返しているようなアクアか、推しからの罵倒を嬉々として受け入れるあかね位にしか耐えられない。メルト的には、鴨志田くらいが丁度よくてわかりやすかった。そういう意味でも鴨志田とメルトは結構相性の良いコンビである。

 

「いや、妹が遊びに来るって言うから待ってる」

「妹……って、星野ルビーか! 成る程なぁ」

 

 鴨志田としても記憶に新しい、純粋そうな最新のアイドルだ。伝説のB小町の名を受け継ぐに相応しい。そういえばかなもアイドル兼業だったなと思い出す。本人にそれを言うと頑なに本業は役者! と叫ぶように言うのだが、その度にアクアに誉められて宥め賺されて調子に乗るのがいつものパターンだった。

 

(星野ルビーか……良いな)

 

 鴨志田は女遊びがかなり激しいタイプだ。2.5次元ともなれば、顔の良い女はいくらでもやってくる。一応の一線として一般人に手を出す程ではないが、関係者くらいなら平気で手を出すタイプだ。なお、メンバーの中で見てくれは一番で、年齢も近い有馬かなは、鴨志田のタイプではない。主に後腐れしそうな上に、噛みついてきそうなので。むしろ、()()を抱え込んだ上で、相当の上玉であるあかねとの彼氏彼女を崩していないアクアに対して、男として尊敬する。なんなら、少し嫉妬する程だ。別に二股くらいでどうこう言うほど鴨志田は狭量ではない。単に他人のことを言えないだけかもしれないが。

 ともあれ、星野ルビーは鴨志田からしてちょろそうで手を出しやすそう……という印象がある。

 

「確かアイドルだったよな……」

 

 少し口元が緩む。それを見逃さないアクアは、壁にもたれ掛かった姿勢のまま鴨志田に鋭い視線を飛ばし、口を開く。

 

「おい、考えるのは自由だがな。ルビーに手を出してみろ。八つ裂きにしてから奈落*1にバラバラにばらまいてやるからな」

 

 アクアに凄まれ釘を刺されて、じわりと脂汗がにじみ出る。普段は慇懃な態度なだけに、落差がすごい。アクアの目は養豚場の豚を見るよりも冷たかった。本当に手を出したら、少なくとも痛い目にあいそうなのは確実だった。このシスコンめ、と思わなくもないが、あんな純粋な妹がいたら、そりゃ絶対過保護になるだろうことは想像に難くない。

 それよりも、あかねからのうわーそういうつもりだったんだ、みたいなドン引きした視線が痛い。

 

「指導受けてる身だし、顔で食ってるからこういうことを言うのもあれだけどさ。相手からならまだしも、男から関係者に手ぇ出したら流石にギスりそう。それは……だめじゃね?」

「うっ……あー、少し外の空気でも吸ってくるわ! 上がるなら好きに上がっといてくれな!」

 

 しかもまさかメルトに正論をぶつけられるとは思わなかったので、あまりにもいたたまれない気持ちになる。耐えきれずに適当なことを言って、鴨志田は逃げ出した。

 

「あー……行っちゃった。ところで、アクアさん。実際、演者が他の演者の関係者にマジで手ぇ出す人っているんすかね?」

「俺の経験で言うなら、まあ、居ない訳じゃないな。ただ、あいつはまだ弁えてる方だ。演技にだけは本気だからな。でなきゃお前の面倒なんか見ねえよ。だから釘刺しときゃ大丈夫だ」

「芸能界、魔窟ですね……」

 

 しかし、女癖という意味では、メルト視点でも鴨志田視点でも、あかねとかなという中々に癖のある少女二人を平気で転がしているアクアが一番ヤバいのだが、アクアは自分から粉をかけるタイプではないので、手を出すという点においては安全な存在だった。逆に手を出されるタイプなので。

 

 

*1
ホールや劇場の演出機構の一つ。舞台の下や花道の下にある地下空間のこと

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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