【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
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サイリウムベイビー事件から一年ほど経過した。アイはワープ進化をしたため、ついに様々なCMやラジオに呼ばれるようになっていった。
元々、容姿がよいのもあったが、あの事件が彼女をより高みへと上り詰めさせた。最近撮った食洗機のCM等は特に好評だ。そしてチョイ役とはいえ、ドラマにも出させて貰っていた。
ヒカルは現場には行けなかったが、どうやらアクアがその時の監督に気に入られたらしい話を聞いて「大きい収穫だ」と感心していた。
そんな風に思い返して、リビングで動画の編集をしていると、深刻な表情のアクアがやってきたので、手を止める。
「父さん」
「どうしたんだい、アクア?」
「俺に演技を教えてくれ」
生真面目にも父親に頭を下げるアクア。
「まずは話を聞こうか」
要約するとこうだ。
アイのカットがほんの数秒しかなかったことに怒ったアクアはスマホで監督にクレームを入れに行った。ちなみにスマホは親バカのヒカルがねだられたので色々制限をかけて渡した子供用のものだ。すると監督から日本の撮影現場の現実を教えられ、「アイを出したいならバーターとして映画にお前も出ろ」と言われたということらしい。
「なるほどね。まあ、上の意向はそれだけじゃないと思うけど」
「どういうこと?」
「まあ、ルビーならともかくアクアなら現実見えてそうだし良いか。アイのあのちょっぴりの出演でも、視聴者の注意を引けるんだよ。特に今のアイは、一年前より演技も魅せかたも進化してるからね」
あの子だけだよMV感覚でドラマに出るような子は、と笑うヒカル。アクアは改めてアイの偉大さに感服した。
「あれだけのちょっぴりで、より演技をみてる業界人からすれば、やっと相手と互角なんだよ。だからあの主演女優の「可愛すぎる演技派」っていう看板が少しだけ揺らいだ。少しだけってのがミソだね」
「そうか、つまり……値下げシール?」
値下げシール……つまり、アイを使って市場価格を一時的に下げさせた、ということであった。安く使いたい配給会社、看板をおとしめたいライバル会社、などなど様々な思惑が重なっての事ではあるが。
「んーまぁ、あたり。本当に賢いねアクアは」
ヒカルに頭を優しく撫でられ、目を細めるアクア。この一年でただ甘に甘やかされた結果、アクアは甘え方というものを教えさせられていた。
「で、演技についてだっけ? んーそうだなぁ。訓練も練習もしてないわけだし、時間もなさそうだよね。基本のキだけ教えておくよ。演技するに当たっての絶対条件」
「……それは?」
そこには父親ではなく、天才役者としての風格のようなものを纏ったカミキヒカルが居た。
「そんな難しいことではないよ。演技の絶対条件、それは……」
☆
そんなこんなで、ヒカルから
「ねーおにいちゃんの役ってどんなの?」
「不気味な子供」
「普段のおにいちゃんじゃーん」
「おい、人のこと言える立場じゃないぞ……ああ、だからなのか。ありがとなルビー」
「なにが?」
「演技の役に立ちそうだってことだ」
「えへへー」
もうべったべただった。兄の頬をつついたり頬を擦り寄せたりと甘え放題だった。そこに、やや乱雑なノック音がする。
「はい、アクアです。どうぞ」
すると、バン! と音が響きそうなほど力強く開けられたドア。
「あんたが監督のコネで入ったって子?」
「そうだけど……えっと」
父の教えが脳裏に蘇る。
(少なくとも、演者の名前だけは把握しておいた方がいいよ。それだけでも心証違うから。自分のことを知らないと不機嫌になる役者って結構多いよ)
「たしか……有馬かなさん、だよね。十秒で泣ける天才子役の」
「そうよ!」
誉められたと捉えたのか、有馬かなの目に見えるように機嫌が一気によくなった。自分と大差ない年だろうに、役者やってるのは素直に感心していた。が、ルビーがとんでもない聞き間違いをしていた。
「え? 重曹を舐める天才子役?」
「十秒で泣ける天才子役!! あんた舐めてんの!?」
「うちの妹がすまん……」
申し訳なさそうに謝るアクアをみて、気に入ったのか鼻息をあらげて「いいわよ、こーぼーふで
「そういうあんたたちも、よくみたらどっかで見た気が……」
「気のせいじゃないか? 俺は今日が初演技だぞ」
アクアとしてはあのサイリウムベイビー動画は非常に恥ずかしい事件である。あれのお陰で撮影系の仕事は何個か貰えたとはいえ、じっとしてカメラマンの指示に従っていれば良いだけなのだから、実に楽なものだった。
だから話題そらしとして、有馬かなへのご機嫌取りをすることにした。
「それよりもサイン貰って良いか? 保護者が気になるって言っててな」
と色紙を取り出すアクア。
「はぁ? 保護者? まぁいいけど~? 私ほどの女優にサインして貰えるなんてありがたく思いなさいよね! ペンあるの!?」
「ある」
文句を良いながらも、鼻唄でも歌いそうなほどに上機嫌になってサインをさらさらっと慣れたように書く有馬かな。
「あんたがコネで入ったっていうから、文句の一つでもつけようと思ったけど。まあ今回は許すことにしたわ!」
ほんとはそんなのズルなんだからね! と捨て台詞をはくと、上機嫌に去っていった。
「なんなのあの子?」
「面白い子だな」
しかし本番になると、有馬かなの纏う空気というか、オーラというべきものがガラリと変わった。
「ようこそおきゃくさん、かんげいします……」
なるほど威張り散らすだけはある、今の素人でしかない自分とは雲泥の差といえる演技だ。
(大丈夫だ、父さんの教えと、ルビーの言葉を思い出せ。役者の絶対条件、それは……)
“どんな方法でも良い、まずは恥じらいを捨てるんだ。拾えるくらいの位置にね”
演技をする、といえば聞こえは良いが要するにごっこ遊びの延長線上だ。これは恥ずかしい。しかもカメラに撮られて証拠まで残る。だから、まずは恥じらいを捨てなければ演技という前提に立てない。
「この村に民宿は一つしかありません。一度、チェックインしてから村を探索すると良いでしょう」
だから今回の恥の捨てかたは“演じない”だ。
(俺は演じなくても十分気味の悪い子供だ。だから……)
この言葉に、医者時代に培った患者向けの笑みと声色を付け足してやる。そうすれば……「いかにも心配して声をかける大人のようなことを言う、気味の悪い笑みを浮かべた子供」の完成だ。
「カット! OKだ!」
五反田監督のOKがでて、ほっと一息。胸を撫で下ろす。主演の女優からすごかったね! ゾクッとしちゃった! なんて誉められてしまい、嬉しいやら恥ずかしいやらだ。だが……
(案外悪くない気分だな、役者をやるのって)
想像通りの演技が出来たことに奇妙な満足感を得ていた。
アクアは転生した理由とか仕組みを、医者として研究するつもりだった。だが、この体験がアクアに興味を持たせた。
「いまのかな、あの子より全然ダメだった……!」
声が聞こえたので視線を向ければ、ボロボロと大粒の涙を溢して撮り直しを要求している有馬かなの声だった。
凄まじいプライドだ、とアクアは思った。だから助け船を出してやることにした。
「おい」
「なによ……笑いに来たの?」
「いや……」
なんと声をかけようか。励ましや慰めは性格からして嫌うのは目に見えていた。だから……控えめに煽ることにした。
「負けたと思ってるんなら、ここじゃなくて次だ。次にまたやろう。俺も負けたと思ったからさ。リベンジさせろよ」
「……ふん、吠え面かかせてやるわ」
「望むところだ。……連絡先とか聞いて良いか?」
「いいわよ。こーえーに思いなさいよね」
「一応、名刺も渡しとく」
こういう根回しをしておけば、良い現場に行けると思ったからだ。有馬かなの演技は……参考になる。
「……受け取ってやるわ。星野アクア? ふーん、一丁前に芸名なのね? 苺プロ……あのカミキさんがいる苺プロなのあんた!? あ、もしかしてサイリウムの子!?」
「その話もしてやるから取り合えずはけるぞ、邪魔になってる」
「わかってるわよ!」
ぎゃーぎゃーと言い合いながらはけていく子供たちを、ほほえましげにスタッフたちは見ていた。今泣いたカラスがもう笑った。
それを影から見ていたルビーは、こう思った。
「女たらしが過ぎないかな、
子供だって女だ、というのはルビーの持論である。さらりと流れるように、プライドの塊のような子である有馬かなを乗りこなし、どうみても粉をかけているようにしか見えない一連のムーブを見て、ライバルが増えまくるなあ、と心配していた。
なお、保護者としてくっついてきていたミヤコは、一連の流れを青春だなぁ位の感覚で流していた。
・重曹を舐める天才子役
この後、サイリウムベイビーのいきさつを聞いて爆笑しまくってアクアを煽り散らかした。そういうとこやぞお前が干されたのは。とはいえアクアからの印象は「話しやすい子」なので好印象よりだぞがんばれ有馬かな。
・兄を舐めたいアイドル候補生
兄(せんせ)がいたので騒がなかったが重曹発言はした。
なによあの女! という気分とまあせんせはスケコマシだしなぁという気分が半々。まだ妹は、兄がものすごいモテモテになることを知らない。
・スケコマシ三太夫
流れるように慰めてご機嫌取りして連絡先ゲット(無意識)。もちろん元産科医なので、聞き上手。自分の顔面の暴力に気づいていない。有馬は話がしやすくて気楽だなぁとかしか思ってない。
・こどおじ監督
あいつさらりと口説いてたぞ。こわぁ……これがYouTubeの力なのか、と変な勘違いをしていた。
・ミヤコさん
まさかもう既に三角関係が形成されてるとは思いもよらない。
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