【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
53.衝撃の真実
「つっかれた……」
ぐでーという効果音が付きそうなほどかなが疲れきった顔をしている。一公演ごとに一発勝負、しかも全力で演技をしたともなればさしものかなも精神的に疲れるというものだ。アクアも顔には出していないが、緊張の連続と感情の使いすぎで疲労しているのは確かであった。
一方、ドラマ二本を抱えながらも練習に参加していたタフネスの塊であるみたのりおは「飲みに行くか!」と言う。最初は嫌がっていたかなだが、アクアが参加すると決断すると手の平を返して参加することにした。
「えーそれじゃあ今日もお疲れさまでした。乾杯」
姫川の音頭を受けて、全員がグラスをぶつけあう。もちろんアクアを含む未成年組はソフトドリンクだ。
場酔いでもしたのか、有馬は他の演者に自分の役者論を語ってはジンジャーエールを呷っている。そういう役者としての論議は、アクアとしては特別こだわりがない部分なので、うまく話に入りにくい。なんでも使うが故に、演者もクリエイターであるべきとか、新しい演技スタイルとかそういう演技思想は無い。最終的に役にぴったりと嵌まった演技をすれば良いと思っている。作品を自分の力でより良くしよう、というよりは作品の足を引っ張らないようにしよう、というのがアクアの基準だからだ。故にアクアは周囲の役者のレベルにあわせた演技になりがちだ。あかねが一生懸命肉を焼いてみんなの世話をしているのを大変だなと思いながら、酸味の効いたオレンジジュースを飲む。
「よう、隣良いか?」
「姫川さん……と、金田一さん。どうぞ」
「悪いな。飲んでるか?」
「ジュースですけどね」
話しかけてきたのは姫川だった。姫川は少し前に二十歳になったばかりだと言うが、焼酎の入ったグラスを片手にアクアのとなりに座る姫川は堂に入っているようにみえる。なんとなく姫川が大人たちの付き合いで未成年時から隠れて飲酒してたのだろうことは想像に難くない。もう18なんだからいいだろ、と押しきられる姿が簡単に想像できた。もう既に赤くなっている、姫川の隣の金田一をみれば余計にそう思える。
「アクアはまた成長しているな。キツいと思うが千秋楽まで踏ん張れ」
「ありがとうございます」
金田一はまじまじとアクアの顔を改めてみる。やはりヒカルに似ている。親戚筋とはいえ、育ての親に似るのは当然なのかもしれないが……それにしても昔のヒカルのような感覚だ。教えれば教えただけ力にするし、教えなくても勝手に周囲の役者の技法を盗んで成長していく。
一方で、やはり姫川は“得られた結果”を伝えなければならないと思っていた。だがこの焼肉屋でおおっぴらにするものではない。予定通り、アクアと他のメンバーを分断することにした。
「金田一さん、アクア。ヤサ変えて飲みません?」
☆
「かんぱーい!」
それでアクアが連れてこられたのが、会員制のバーであった。しかも右をみても左をみてもかわいい女の子が多い。
「ここってどういうお店なんです?」
「端的に言うと、顔は良くても売れない芸能人が事務所に黙って働くとこ」
「身も蓋もない……。なんというか、手慣れてますね」
「俺可愛い子好きだから。遊ぶにはもってこいだろ。会員制だからバレも少ない。俺たちはそういうのに気を付けないとだろ」
「まあ、そうですが」
遊びは遊びでもそれは火遊びだろ、とアクアは思わないでもない。そう思いつつも、しれっとした顔でジュースを注がれているアクアも中々様になっているというか、手慣れている感じがあった。お酌(ジュース)をした女の子の手を軽く握ってありがとうなんてはにかんでやると、その従業員は嬉しそうに頬を緩ませて仕事に戻っていく。女たらしとかホストのような動きを自然とするのだから、アクアは間違いなく女を狂わせるタイプの男であると姫川は確信した。
「そういうお前も、手慣れてるように見えるけどな。まだ17だろ」
「あかねがお節介焼きなもんで、こういうのを受けるのには慣れました」
「ああ……」
二人の共通認識として、黒川あかねは率先して世話を焼くタイプというものがあった。食事の場でもそうでなくても自分から率先して下っ端みたいなことをしている。アクアもあかねレベルの役者がそういうのをするのはスタッフも困るからあんまりしない方がいい、と何度かやんわりと注意しているのだが、治る気配はない。生粋の世話焼き好きなのだ。
「それで? わざわざこんなところに俺と金田一さんだけ隔離した理由はなんです? 俺もう少し肉を食いたかったんですけど」
なにか理由がないのならこんなところにアクアだけを呼ぶことはないだろう。事実、あかねとかながアクアの途中抜けに少し不満げだったため、アクアはこの後妹も含めてご機嫌取りをしなければならないなと考えていた。
「理由は……これだ」
「……私的DNA鑑定書……?」
姫川が取り出した一枚の紙には、アクアと姫川がほぼ確実に異母兄弟である、と言う鑑定結果が記されていた。
「俺とお前、父親がおなじなんだよ。教えてくれるか? お前の父親のことを」
姫川の瞳がギラリと光る。嘘は許さないと言わんばかりだ。アクアは深く深く、ため息を吐いた。いつかの痴話喧嘩を思い出して、もう一波乱起きるということが確定したようなものだからだ。
「……まあ、正直にいえば、かなり驚いています。ただ……少しだけ心当たりもありますよ」
「本当か?」
ぬっ、と横から出てきた金田一。話を聞いていたらしい。
「先に聞いてもいいですか? 金田一さんとはどういう関係で?」
「俺と姫川? まあ育ての親みたいなもんだ。役者として1から10まで全部叩き込んでやった」
特に否定もせずされるがままに頭をグリグリされている姫川をみて、アクアは“産みの親より育ての親”という言葉を思い出した。
「……こんなところでする話でもありませんね」
「じゃあ俺んちでいい? 男二人でお前の家に押しかけるのは妹が可愛そうだろうし」
「お気遣いどうも……」
姫川の言葉に従い、姫川の住むマンションへ向かう。電子キーを使用しないと起動しないエレベーターに乗り込み、姫川の自宅へ。アクアの対面に座り込む金田一と姫川。親子というよりは師匠と弟子というべき関係なのだろう。アクアから先に切り出した。
「DNA鑑定をしたってことは、大体の目星をつけたということですかね」
「元々、俺は芸能界にいるであろう、父親探しをしてたんだよ。共演する人物を片っ端からDNA鑑定してた」
「ローラー作戦で良く俺にあたりつきましたね……」
「幸運だったよ、もっと時間がかかると思ってたからな。それで、お前の両親は誰なんだ」
姫川の視線を受け、アクアも覚悟を決めた。
「はぁ……わかりました。聞いても後悔しないでくださいよ」
「……お前の両親、まさか……」
金田一はピンと来てしまった。様々な自分の記憶に残っていた違和感や謎がピタリと答え合わせ出来てしまった……気づきたくもない真実に気づいてしまった。なまじワークショップでアイとの面識があり、ララライで面倒を見ていたヒカルのことも。
「金田一さんは察したみたいですね。ええ、俺の父親は天才役者カミキヒカルですよ」
「カミキヒカル……おい、待てよ。それってつまり……いや、ヒカルさんは俺が生まれた年はまだギリギリ小学生だぞ? つまり俺の母親は……」
「そういうことになりますね。ああ、せっかくなので言っておきますが俺の実の母親は“星野アイ”です。元B小町センターの」
姫川はあまりの爆弾情報に絶句した。脳内で情報が完結しないのか、頭を思わず抱えている。金田一はなんとか冷静のようで、アクアにおかしい点を聞く。
「星野、お前がカミキとアイの子なのは……まあ、言われてみれば顔がそっくりだから、年齢が中学生でつくっちまったっていう背景も含めて理解できる。だがカミキが父親だとすると……あいつ11か10の頃だぞ!? 確かに姫川愛梨と一度だけドラマで共演をしたがそれきりで……」
「父さん直々に、その頃に、姫川さんという女優に半分騙されるような形で一夜を共にしたと言ってましたよ」
あまりにも衝撃的な真実。だが、なんとか金田一はそれを聞かなかったことにしたかった。
「い、いや……一夜の過ちにしたって……そうだ! あの頃には 一応、カミキにはそういうのを防ぐためにゴムを持たせてたはずだが……」
「金田一さん。コンドームを装着した状態で妊娠する確率は15%ほどだと言われています。低量ピルでも約8%。完全な避妊は出来ないんですよ」
「う、ぐ……つまり……不可能ではないと……」
「はい。ああもちろん、他言無用でおねがいしますよ」
「そんなことは分かってる……」
金田一はがっくりと肩を落とし、むしろ下手な爆弾を背負わされる羽目になってしまったことに意気消沈した。下手にバレたらララライごと吹き飛ばされる爆弾だ。仮にどこぞの雑誌やメディアが公開した場合、そのメディアごと爆破解体されるのは目に見えていた。少なくともヒカルはそういうとき必ず報復する性格なのを知っている。メディアと芸能界の闇が、別の雑誌やメディアSNS様々なところでリークされるだろう。
「とはいえ、金田一さんたちからばらしたり、わざわざ俺と父さんと母さんのDNAを採取して検査するような無茶苦茶をしなければ基本的に外に出ることはないですよ?」
「言えるかこんなこと……」
もうどうにでもなれ、と金田一は考えるのをやめて勝手に冷蔵庫を漁ると缶ビールを一気に半分も飲み干した。その光景をぼんやりと姫川が眺めていて、ようやく再起動したようだ。
「……つまり女好きは遺伝くさいな。嫌だねえ」
「父さんはあれで一途な人ですよ、女の人側から寄ってくるだけなんで……」
「でも。有馬と黒川転がして誑かしてるお前を見てると絶望しかねえよ」
「それは……なにも言えねぇわ。はぁ……飲み直すか」
ため息を吐いてチューハイ缶のプルタブを開ける姫川。半分目が死んでいたが、その中に現状を楽しんでいるような色も見えた。
「しかし、いきなり現れた半分血を分けた弟がいて、それが役者やってるとか……笑える」
アクアは少し魔が差した。そういえば血縁上は兄になるのかこの人、という気づきだった。
「それじゃ、これから改めてよろしくな? 兄さん」
「全身鳥肌立ったわ。やめろきしょい。変な猫なで声を出すな」
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