【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
ついに千秋楽での公演も終え、アクアたちの予定は空白となった。もちろん、完全な空白期間があるわけではないのだが、そこは学生。子役時代のように慌てて仕事を詰め込む必要もなく、しかし食いはぐれるほどでもないちょうどいい塩梅の状態に戻った。
現状、持ち番組が何かあるわけでもない。ゲストで地上波にも役者として出演することがちらほら出てきた……そんな程度だ。
だがやはり、東京ブレイドの反響は大きかった。全員が万全の状態で挑んだ初公演のものが一番人気らしく、多くのファンの声に応えてサブスクリプションで配信が決定したらしい。実際の配信は全公演終了後となる。アクアのかなへのボディタッチアドリブは一瞬だけ物議を醸したものの、元々かなとの距離感はあんな生易しいものではないので、一瞬で鎮火した。それに、美男美女の絡みというだけで喜ぶファンもいるので、やはり世の中の八割くらいは顔なのだなとアクアも感じる一幕であった。イケメン無罪。
「アクア君の冬季の仕事ってもうほとんど無いんだっけ?」
「でなきゃ、こんな風にまる一日デートなんて出来ないだろ? 父さんたちはそれでも時間を捻出してデートしてるみたいだけど」
「あはは……すごいバイタリティだね」
ゆったりと二人で紅茶を嗜みながら、年内の仕事の話をする。今日は“あかねの日”ということらしい。
もちろんアクアは家族会議によって決定した方針に基づいてあかね、かなに真の両親について伝えたのだが、かなもあかねもかなり淡白な反応をしていた。あかねに至っては「やっぱりそうなんだ」と言っていた。どうやら確証がなかっただけで、ほぼ察されていたらしい。かなはそれを聞いて「高校生探偵黒川あかね……売れそうじゃない?」とか言っていた。
MEMには……まだ伝えていない。どこかしらB小町とアクアだけとか、あるいは二人きりとか……そういう隔離された状況にならないと、中々伝えにくかった。どこに目と耳があるかわからない、というのもあるが。うまくタイミングが噛み合わないというのもあった。
「この後どうしよっか?」
「あかねの行きたいところでいいぞ」
アクアとあかねは、あかねと褥を共にすると約束した日が今日である。だが、だからあえてアクアはふわふわとした無難なデートプランを組んでいる。その上であかねに主導権を持たせているので、あかねは喜ばされっぱなしだ。
「じゃあ……アクセサリ見に行きたいなぁ」
「わかった。近くの店だと……こことここ、あとはここだな」
自然に導線を引いて、退屈させてくれない。待ち合わせすると先に来ていてあたたかい飲み物を用意しているし、支払いはさせてくれないし、当たり前のように車道側をアクアが歩くし、自然と手を繋いでくれる。疲れたなと思う暇もなく休憩が適宜挟まれる。
朝の10時頃からデートをはじめて、もう午後3時を回っている。ただ街中を散策するようなデートのようで、アクアの手によって自然にエスコートされている。ランチはお腹いっぱいになりすぎないようにしながらもお洒落で美味しい、写真映えもするバッチリなもの。そこから腹ごなしにウインドウショッピングで宝石やバッグなんか見ちゃったりして、今はカフェで一息ついている。ここの店もかつてもう一度行こうと言っていたパンケーキの店で、こういうのを覚えていてくれるとものすごく嬉しい。あかねはなんというか“オシャレでオトナ”なデートに乙女心がきゅんきゅん刺激されてしまっている。
もちろんアクアの前世は手慣れてるアラサーの医師であり、こういうデートも散々やってきて慣れているのだが、それは知る由もない。
アクセサリー店で目当てのものを購入し(もちろんアクアが支払いをした)、それ以外にも服や小物類、慰安旅行のためのキャリーバッグなど様々なものを購入。嵩張るものは全て郵送してもらうサービスを利用し、事務所へ届くことになっている。そうしてある程度身軽になった。
「そろそろ7時だね。晩御飯どうしよっか?」
「近場でいいところがある。魚でいいか?」
「お魚! いいね!」
そうしてアクアにつれてこられたのは如何にも老舗で高級という雰囲気を醸し出している寿司屋だった。あかねも知る有名な老舗店だ。買い物をしたデパートからすぐ近くの路地にあるため、ほとんど歩くことなく到着した。
「あ、ここって一見さんお断りのところだよね」
「そうだな」
あかねが腰が引けているようだが、アクアは平気な顔をして扉を開け、暖簾をくぐり入っていく。
「大将、連絡した星野です」
「あいよ、座んな」
(か、かっこいい……!)
中々良い家庭環境で育ったあかねをして、一見さんお断りなお店には中々行く機会がなかった。それに、回らない寿司屋というのも。薄暗い店内には海鮮類と、酢飯の良い香りが充満している。
「大将、おまかせで二人前」
「予算は?」
「適当に一人5万ぐらいで。多少なら超えても良いです」
流れるように注文し、あかねになにもさせない。世話焼きのあかね相手だからこそ、こういう二人きりのデートくらいはアクアが世話を焼いてやりたかった。
出てくる新鮮な高級寿司に舌鼓を打ち、お吸い物まで堪能した二人は、アクアがいつのまにか手配したタクシーに乗り込む。アクアが「歌舞伎町まで」といい、そのままネオン街へと進んでいく。
「なんか……すごいドキドキしちゃった……」
「楽しかったならよかった」
「うん、楽しかったよ」
タクシーの中でもきゅっとアクアの手を握るあかね。アクアに世話を焼かれ、ドキドキさせられて、気分を高めてもらった。今のあかねの中は、興奮とエッチな気持ちでいっぱいになっていた。長期間の禁欲生活をしていたために、溜まりに溜まっていたあかねの情欲は、アクアとのデートで丁寧に温められ、今や沸騰寸前だ。
タクシーを降りて、そのままチェックインする。対面受付のないそのホテルの部屋は天蓋つきのベッドがあり、全体的にピンク色だ。
「えへへ……アクア君……つけて?」
「わかってる」
アクアはアクセサリー店で購入した、黒いシンプルなチョーカーをあかねにつけてあげた。金具をぱちりと留めれば、それはもうあかねにとって最高の
「ふー……あは、似合ってる?」
「もちろん。それとさ、もうひとつあるんだ」
アクアはそういうと、チョーカーの金具の部分に金属製の板を取り付けた。ブルーステンレスで作られたそれには、“K.A.”とイニシャルが刻印されている。
「これ……」
「首輪には必要だろ、ドッグタグ」
ドッグタグにはあかねのイニシャルしか刻まれていない。つまりこれは、識別札としても、迷子札としても何の役にもたたない。そのかわり、アクアのものということだけを示しているようで。
「お前は俺のものだ」
「……はい♡」
あかねは喜びの最高のツボを押され、決壊寸前だった理性が丁寧に砕かれた。飛び付くようにアクアの唇を貪り、アクアに所有物としての証を刻んでもらうべく、着ている服を脱ぎ捨てた。頑張ってデートのために見繕った服だけれど、今はそれが邪魔でしかたがなかったから。
後はもう、語るまでもないだろう。夜はまだ、始まったばかりだ。
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