【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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56.それぞれの

「えっ! 撮影に高千穂まで東ブレお疲れ様慰安旅行? ええなー」

「いいでしょー」

 

 アクアもフリルも撮影で学校に不在という珍しい状態で、ルビーはみなみへ慰安旅行のことを自慢していた。

 

「お土産買ってきてなー」

「お菓子とかでいいー?」

「まかせるよー。うちも実はそのへんの時期に地方で撮影なんよ。写真集がでるんよね」

「えー、そうなの!? すごい! じゃあ、お土産交換だ!」

 

 旅行のお土産を交換、なんと甘美な響きだろうとルビーは思う。旅行自体に憧れがあるのもそうだが、旅行の感想を言い合い、お土産話に花を咲かせる。

 

「地方ってどこにいくの?」

「それが、なんか上で行く場所で迷ってるらしくて……もしかしたらうちも高千穂になるかもしれへんのよ」

「え、ほんと? もしかしたら旅行先で会うかも……!?」

 

 旅行先で偶然友達と出会う、なんと夢のあるシチュエーションだろうか。かつて出来なかったこと、思い付きもしなかったことがどんどんまわりで起きている。

 

「いいなぁ、なんかこう……ロマンチック!」

「せやなぁ。あ、そういえばアクア君も来るんやんね」

「うん、おにいちゃんも珍しくワクワクしてた」

「そうなんだ」

 

 みなみもみなみで、アクアともしかしたら……と夢想する。芸能界込みでも、アクアほどの優良物件はそうそう存在しない。晩婚化が進む昨今、みなみも結婚とかそういうのをまだ考えるほどではない。しかし、アクアとの恋愛を考えないかというとそうではなくなっていた。

 アクアは、初めから自分とは違う世界に居るような感じだったが、いつの間にかアクアは同年代の芸能人としてもかなり高みにいた。みなみが唯一持つアクアとの繋がりは、クラスメートというだけだ。不安になろうと言うもの。

 

 公式に彼女であるあかね。親友を公言するかな。同じ位置に居るフリル。まさしく強敵揃いだ。同じB小町のMEMちょだって危険な存在だ、自分にはない魅力がある。いつもそばにいるルビーだって、抜群にかわいいし現役のアイドルだ。基準も上がっているだろう。そう考えると、なんだか焦ってしまう。

 だが、自分からアクアにアプローチを仕掛けられるだろうか? とそう考えると、どうしても尻込みしてしまうというか、腰が引けてしまうというか。二の足を踏んでいるのが、みなみとアクアの関係性だ。アクアとは、連絡先も交換していない。ルビーとはしたのだが。

 そもそも恋愛感情かどうかも怪しいと考えているみなみからして、アクアの存在はせいぜい“気になる同級生”で“えっちなお兄さん”だ。それでもどこか不安に感じている辺りに、みなみの心の奥底にある本心が透けて見えるのだが、本人は自覚がない。

 

「高千穂なぁ……もし被っちゃったらお土産どうしよか?」

「うーん……まあ、その時はその時で!」

「気楽やなぁ」

 

 なんとも無計画なルビーの発言に、あははと笑ってしまう。この時はまだ、笑い話だった。だが、笑い話ではなくなってしまう。

 

 

「え、高千穂になったんですか?」

「そうなのよ」

 

 撮影を終えた日、みなみのマネージャーがそう告げてきてから風向きが変わり始めた。ロケ地は色々と悩まれていたのだが、事務所の社長の「芸能人ならば一度くらいは高千穂に行った方がいいだろう」という鶴の一声により高千穂に決まったのだとか。

 

「高千穂……」

 

 流石のみなみも、高千穂が芸能ゆかりの地であることは知っている。まさか本当に行く事になるとは思わなかったが。撮影予定日を聞くと、余裕をもって二泊三日なんだとか。奇跡的なことにぴったりとアクアたちとの日程が重なる。

 もちろん、それでも高千穂は観光地としても有名だ。

 

「なにか問題あるかしら?」

「いえいえ、問題はないです! ただ、友達がおんなじところに行くらしくて!」

 

 あわあわと顔を赤くしてあわてるみなみを怪しいぞ、と見るマネージャー。ふと、“友達”が友達じゃなさそうなことに気づいた。最近のみなみは特に良い、美しく綺麗になっている。熟れ始めた夏のトマトのように、みずみずしく艶やかだ。

 

「ふーん……なるほど?」

 

 何か気づいたようにみなみを見るマネージャー。ははーん、とでもいいたげなように納得している。

 

「そのお友達って男?」

「ん、ええと、まぁ……星野アクア君で……クラスメートで……」

「ああ、あの」

「学校でもうんとよくしてもらってて……」

 

 グラビアのマネージャーだが、流石に東京ブレイドの演劇の話くらいは認知している。それが大成功だったことも。そこから星野アクアについては知り得ていた。なるほどクラスメート、そういうわりにはモジモジしている。マネージャーは確信した。

 

「それ、恋だ」

「うっ」

 

 みなみは気にしないようにしていた事実を形にされてしまい呻き声をあげた。マネージャーは面白そうにからかってくる。グラドルに恋愛禁止とか、そういうアイドルのような不文律は存在しない。少なくともキャノンファイアにおいては、結構遊んでいる先輩はいる。

 

「あっ、でも、アクア君には彼女がいるんよ! それはあかんて」

「公式の、でしょ? 女の子侍らせてるような芸能人は少なからずいるわよ~? 恋愛は賞味期限が短いんだから、恋せよ乙女、よ!」

「うー……」

 

 そう言われてしまえばぐうの音もでない。確かにアクアはかなと仲がいい。ひとつ上の学年なのに、時おりアクアの元へ遊びに来るほどだ。当人たちは幼馴染みと言っているが、間近で見ているみなみからすると、デキている、と思えばそう見えてくる。

 

「まあでも、ほら、うちとアクア君が遭遇するとも限らんわけやし、保留ということで……」

「意気地無しめ」

「堪忍してな……」

 

 責められて、がっくりと肩を落とすみなみ。みなみがアクアとの仲を進展させるには、なにかイベントが必要だった。 

 

 ☆

 

「あ、奇遇だね」

「ああ、確かに珍しいな」

 

 一方で撮影の現場の廊下で偶然であったアクアとフリル。挨拶もそこそこに、雑談へと発展していく。

 

「東京ブレイドお疲れ様だね。最近どんどん仕事も増えてるみたいだね、B小町も調子良さそう。公式チャンネルも100万いったんだっけ?」

「まあな。もう少ししたら全国区ツアーもやる予定だ」

「そうなると、有馬さんは大変そうだね」

「二足の草鞋だからな。撮影もツアーの日程にあわせたものになる予定だ。当の本人は仕事がないより300倍マシと言ってたな」

「気に入ってるんだ、300倍」

「みたいだな」

 

 アクアにとってフリルは結構気楽な相手だ。少なくとも同年代において話しやすい相手ではある。時々変なことをするので苦手だが。そんな気安い会話をしていると、かわらぬ無表情のままアクアに詰め寄るフリル。

 

「期待してるからね」

「何をだ」

「高千穂のお土産。ルビーちゃんから聞いた」

「あいつ……」

「まあ大丈夫だと思うよ、私とみなみにしか話はしてないから」

 

 いくら同業者とはいえ、旅行の情報をベラベラ喋るのは危機感が欠如しているのではないかとアクアは思う。日時をばらしていないだけマシか、と考え直した。なお、みなみにはバッチリばらしたのだが、アクアはまだ知らない。

 

「それと、MEMちょのオフショちょうだい」

「ダメに決まってるだろ、SNSは更新するっていってたからそれで我慢しろ」

「ケチ」

「プライバシーの保護と言え」

 

 相変わらず何を考えているかわかりにくい不思議ちゃんだ。最近はMEMの限界オタクをやっているところから、少しは共感できる存在になったものだが。

 

「そういえば、アクアは地上波のレギュラー番組とか気にならない?」

「どうした急に。まあ、気にならないと言えば嘘になるな」

 

 役者としてはともかく、マルチタレントとしては確かにレギュラー番組というのは憧れのひとつなのだろう。

 

「ふーん。聞いてみただけだよ。純粋な興味」

「そうか……。そろそろ迎えが来る。じゃあな」

「ばいばい、また学校でね」

「ああ」

 

 やはりフリルは少し苦手だ、とアクアは思った。

 

「ふーん……感触は悪くなさそう。じゃああの企画、受けちゃおうかな……」 

 

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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