【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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※オリジナルエピソード注意。双子たちが満2歳ぐらいのイベントです。少々短いですがご容赦ください


幕間1.黒い輝き

「結局、アイがあの映画は全部持ってっちゃったなあ」

 さらに1年後。結局、映画「それが始まり」は低予算ながらも高クオリティだったが、それ以上にアイの演技が話題となった。

「ふーん。まあそんなものか」

 スマホに表示されている情報サイト。最後の一文を“いかがでしたでしょうか”と締め括っているが、内容は大して掲載されていない中身も何もないアクセス目当てのサイトだ。

 だからこそ、世間での認識と言うものが見えると言うもの。記事のタイトルには、『天才役者カミキヒカルの隠し子!? 星野兄妹について!』と書かれているが、結局自分が発信した程度の情報しか掲載されていなかったことを、改めて確認した。

 どの大手SNSでも、大仰な反応をしたり、全てを疑って逆のことを言ったりする、一部の声の大きい者を除けば、概ね自分の発信した内容程度の認知しかしていない。

 だが、本日から、カミキヒカルは役者・俳優として復活する。休養期間を理由に懐疑的に見る者、単純にファンだから期待する者。様々な声があるだろうが……彼は余裕の表情だった。

「何がそんなものなのよ」

「世間の反応とかですよ。それよりミヤコさん。そろそろハイヤーをやってる会社と契約とかしません? 毎回送迎じゃあ大変でしょ」

「そうねぇ……それから、二人はアイをママとかうっかり呼ばないように。いいですね?」

「はーい」

「わかった」

「えー?」

「なんでアイが一番聞き分けが悪いんだい……?」

 珍しく四人家族+ミヤコさんというフルメンバーで、撮影現場へと向かっていた。

 

 ☆

 

「カミキヒカルです。久々の現場ですが、みなさんよろしくお願します」

 

 撮影現場はドラマの撮影であった。アイがメインキャラの一人として登場する刑事ドラマに、天才役者カミキヒカルが犯人役として出演する、いわゆるゲスト出演の撮影である。

 

 カミキヒカルと顔見知りらしい、演出家が話しかけてくる。

「もう行けるのか?」

「もう済ませました。いつでも行けますよ」

「流石と言えば流石だな……あと、双子達は静かにさせとけよ」

「大丈夫ですよ監督。あの子達は賢いですから、静かにすべき場所はわかってます」

「その言葉、信じるぞ」

 

 そんなやりとりを端っこで見ていた双子。なんだか父親が本当にプロって感じがして、中々どうしてかっこよく見えたものだ。

 

「シーン3、カット20、アクション!」

 

 カチンコが切られ、撮影が開始される。

 犯人の顔見せシーンだ。今回の役回りはいわゆるサイコパス殺人鬼。だが、特別台詞があるわけではなく、暗がりからやって来た男の、フードの向こうから瞳が見えるだけのシーンだ。演出としては、遺体を見つめている殺人鬼の視線を、視聴者に見せるシーンだ。

 

 所定位置からヒカルが動いた瞬間、現場の空気が一気に冷徹なものになった。ルビーは慌てて自分の口を押さえたほどだ。

 コツ、コツ、と足早でやや不安定な足音を響かせながら、倉庫の中で、爛々と輝くような妖しい、黒い星の宿る瞳で見つめている。

 

「……」

 

 にいっ、とそのフードの向こうの瞳が嗤った。それだけで、周囲のスタッフまで背筋が凍りついた。そこには柔和な天才役者カミキヒカルではなく、間違いなく殺人鬼がいた。少なくとも、そう錯覚させるほどの演技だった。

 

「……カット! OKだ!」

 

 カットが入ったら、その雰囲気も一瞬で霧散する。アクアは思わず息を吐き、それでようやく息を止めていたことに気づいた。

 

「いやー流石の演技()だったねヒカル!」

「まあ、演技派を名乗ってる以上、このくらいはやらないとね」

「うんうん」

 

 圧倒される周囲をよそに、お気楽なのはヒカルとアイくらいなものだ。

 

(これが、父さんの演技……!)

 

 思わず圧倒された。(アイ)とは全く別種の、なのに呑まれるような演技。有馬かなを太陽、星野アイを星だとすれば、この時のカミキヒカルの演技はさながらブラックホールかのよう。目を逸らしたいのに、目を逸らすなと言われているかのように注目せざるを得ない……これは、のめり込むファンもわかるというものだ。

 

 だというのに次のシーンでは、白い星を輝かせて「いかにも爽やかな好青年」を演じて見せるのだから、ギャップがすごい。何よりすごいのはアイに全く引けを取らないという点だろう。それらも相俟って、ゲスト出演なので視聴者も彼が犯人だとわかりそうなものだが……勘違いさせてしまいそうなほどの変わりようだった。

 

「すごいね……」

「ああ」

 

 思わずルビーと小声で言い合う。もちろん撮影していないところでだが。

 

「あの強引に引き寄せられるような演技、どうやってやるんだろうな」

お姉ちゃん(ママ)とは全然違う感じというか……魅せるというより、引き込むっていうか……」

 

 そして、何よりもすごいのはNGを一切出していない点だ。想定以上に撮影をサクサクとこなしていく。周囲のスタッフもその熱に浮かされたように、手際よく作業をこなしていく。

 

「やっぱり彼もあっち側なのね。私も、生の演技は初めて見たけど」

「あっち側?」

 ため息をつくミヤコに、ルビーが質問をぶつけた。答えはすぐに帰ってきた。

「アイとかヒカル君みたいな、一部の……オーラのある、とでもいえばいいかしら。そういう演者ってのはね。周囲の演者まで巻き込んで作品の質を上げてしまうのよ。だからNGも滅多に出ない。周囲もそれにのって、集中した状態になるから、クオリティの高い作品が予定よりも短時間で出来上がる。結果、スケジュールは巻きになるのよ」

 アイは撮影の時によくわざと巻かせてたりするけど、あの子もなのね。と呆れ返っていた。

 結局、撮影は一時間もの巻きが入り、ヒカルとアイは双子二人とミヤコさんの五人でおでかけデート……デート? を楽しんで帰宅した。ルビーとアイは気になっていた新作アイスを、アクアは欲しかった難読本を買って貰えてうきうきだったのでよいだろう。

 

「いやー、もうちょっと上手くできたかな」

「えっ。パパこれ以上があるの!?」

「あるある。そうだ、二人にも教えてあげよっか? この引き込む演技」

「何かコツでもあるのか?」

「あるある。チェーホフテクニックの一種だからね。こうすれば、こう見える。それを繰り返せばいいだけだから……まあつまり、勉強かな!」

「勉強かあ……」

「そうそう、勉強。積み重ねた経験と知識が、演技に重みを感じさせるんだよ」

 演技の重みかぁ、とアクアはぼやいた。仲良くなった五反田監督や、父から教えを受けてはいるものの、まだまだ勉強は大切だと実感した。

「んー、おいしー! おかわりしちゃおうかな」

「アイ、そのアイスはカロリーすごいんだから一日一個にしなさい」

「えー? ミヤコさん、言ってもアイスでしょ?」

「それ一個で豚カツ一枚くらいあるけど?」

「わーい、やめまーす」

「よろしい」

 とはいえ、久々の家族団欒。微笑ましい会話をしているミヤコとアイをよそに、アクアも演技の事は一度脇におき、やたら高カロリーそうなサンデーに舌鼓を打った。

 

「おにいちゃん一口ちょうだい」

「いいけど、ルビーのも分けろよ」

 

 なお、後日放送されたその回は、視聴率が作品内最高となり、カミキヒカル完全復活、陰りなし! と宣伝されたこともあってSNSでも一時話題となるほどであった。




・人を騙す瞳(黒)
本作においては、白い星が「魅せる」演技ならば、黒い星は「引き込む」演技。ヒカルもアイもどっちも使いこなせるが、ヒカルは黒がメイン。別に物理的に星が見えてるわけありませんよメルヘンやファンタジーじゃないんですから(ジャンル:転生なのに?)
有馬かなの、私を見ろ、と主張して輝く「目が眩むような」太陽の演技は彼女だけの唯一無二だったりする。伊達に天才ではない。

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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