【完結】天に輝く二ツ星   作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル

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62.進化

 撮影二日目。撮影した映像やカメラ、あるいは実物を見ながら、アネモネは確信する。

 

(この子達、なにかあったのかな?)

 

 有馬かなは元々大丈夫だったが、ルビーとMEMは単にアイドルとしては没個性的といわざるを得なかった。素材が最高なので推せない、という程ではないにせよ「なにかする」が出来ていなかった。だが今日はそれが出来ている。ただかわいいだけじゃない。

 

 例えばルビーは、まるで世界を愛しているかのように慈愛の表情を浮かべている。世界のあらゆるもの全てが愛おしいかのような。特に瞳はまるで引き寄せられるかのように輝いている。これを生ライブでやられていたならなるほど、ファンも落ちるわけだ。

 一方でMEMちょは更に視野が広がったような感じで、些細なことに気づいている。小さな石を拾い上げて形がかわいいと言ってみたり、カメラの視線を意識しながらも自然体に表現してみたりしている。今まであった、カメラを意識しすぎて緊張気味だったために出ていた控えめさや、不自然さが消えている。

 

 撮っていて楽しい。もちろん、撮って楽しいものがイコールで面白いコンテンツになる訳ではない。だが、良い素材ほど製作意欲が刺激されるというもの。

 

「ひー! 冷たい冷たい!」

「ほれカイロ。ほんとハードだな……」

「ありがとーアクア~。うーあったかいよぉ……」

「あったかいお茶を何本か買ってあるから飲んどけよ」

「あーい」

 

 なによりアクアが便利だ。かなはさっきまで水辺での撮影をしていたために足を冷やしていたのだが、スタッフが対応する前にアクアがさっと気を利かせて世話をしている。あかねはそれを手伝っている形で、なんというかB小町専属のマネージャーのようだ。そのおかげか昨日よりもパフォーマンスが間違いなく一段上になっている。やはり同年代の異性の視線、というのは大切だ。なによりとにかく気配りの達人で、スタッフの印象もあっという間に好印象だ。映像系や演出に知見があるので、話を合わせやすいというのも大きい。

 アクアが一日目も最初から居てくれればもっと良い絵がとれたものを……と思わなくもないが、彼はあくまでカノジョと仕事の慰安ついででここに来ただけで、MVやPVの手伝いに来たわけではない。酷使するのはかわいそうだろう。アネモネはより美しく撮れる幸運ということにして、彼女らの様子を楽しそうに観察しながら、クリエイターとしての感性を刺激されていた。

 

(あーもう、はやくMVの編集したいなぁ!)

 

 ☆

 つつがなく撮影は終了し、ここからは自由時間ということになった。とはいえ既に午後であり、夕日が傾き始めている頃だ。ホテルの夕食を食べる前にと、温泉に向かうこととなった。ミヤコは……疲れはててそれどころではなさそうで自室で横になるとのことだった。旅行直前に発覚した姫川大輝の血縁発覚事件は、ミヤコのメンタルにそれだけのダメージを与えていたらしい。

 

「あ゛ぁ~あったまるぅ……」

「ここの温泉の効能は血行促進と美肌効果なんだ……」

 

 女湯では、B小町+あかねといういつものメンツである。MEMちょはなんだか、三人の十代の若々しさを眩しそうに見ていた。主に肌艶とかキューティクルとか。

 そう思いながら湯船に浸かっていると、すすす、とかなが寄ってくる。何事かとかなの顔を見ると。

 

「ところでMEMちょはアクア以外のだれかとしたことあるの?」

「ぶふぉっ」

 

 とんでもないことを聞かれて思わず吹き出してしまう。主にバレていたという事実に。たぶん情報提供主はルビーだろう。MEMちょは観念した。

 

「えーっと……あれが初夜だよ……?」

「なるほどねぇ、中々身持ちは固かったわけね」

「当たり前だよぉ! 20超えてもアイドルに憧れてたんだよ私ぃ! なった途端にさらっと食われちゃったけどぉ!」

「攻めっ気出したアクアに抵抗するなんて無理よ」

 

 訳知り顔でそういうかなに、深く同意するように頷くあかねとルビー。そこからは当然のようにアクアを中心とした猥談に発展していく。

 

「アクア君、スタミナが凄いからね……かなちゃんの時は12だっけ? 私もそれくらいかな」

「あれで次の日はケロッとしてるから、たぶん倍は余裕なのよねこっちが持たないわよ」

「ある意味女の子の夢じゃない?」

「うっわ、おにいちゃんそんな精豪なの? やっぱ私の時は2~3発で済ませてくれたのって、撮影があったからなんだ。はぁ、優しすぎる……おにいちゃんすき♡」

 

(女子高生じゃなくてキャバクラのイケメンにお持ち帰りされた子たちの会話とかだよこれぇ!! 少なくとも現役のティーンアイドルがしていい会話じゃないよぉ!)

 

 MEMちょはこの中では最も常識的な存在である。故にこの異常空間での延々と続けられる猥談に少し……少し? ダメージを負っていた。もちろん、MEMちょ自身も当事者であるため、話に巻き込まれていく。というかかなが巻き込んだ。

 

「ああ、そうだ。MEMちょも正式にアクアのメスになったわけだしお嫁さん同盟に招致しないとよね」

「え、なにその地獄みたいな名前の同盟……」

「すっごくわかりやすくいえば、有象無象を寄せ付けないようにするためにアクアを女の子から守りつつあわよくばお嫁さんになる集まりよ」

「あー……たしかにアクたんモテるもんねぇ」

「でしょ? それが一般女性と結婚とかなったら腹立つじゃない」

「……なるほどねぇ?」

 

 ルビーとあかねの様子を見るに、どうやら三人とも同意の上での同盟ということらしい。つまりこれを断ればアクアのカキタレ(死語)からはずされてしまうのだろうことは目に見えている。

 

「まあ、そうなるなら私も仲間にいれてほしいわけだけど……みんなはそれで満足なの?」

「アクア君の夜の戦力はそこらの男と比較しちゃダメだよ、MEMちょ。何人かいないともたないの」

「私がダウンしててもケロッとしてたからね、マジで精力モンスターよ」

 

 この子達はかなり独占欲が強いタイプなのだろうことは、MEMちょからみてもわかる。特にルビーとかなは一際強いタイプだろう。それなのにアクアとの関係は増えるのは仕方ないから最小限にしよう、に妥協している辺り、本当に一人では受け止めきれないのだろう。ふと、あかねが思い出したかのようにいう。

 

「ダウンでおもいだしたんだけど、アクア君もベッドシーンやキスシーンを求められることが今後あるかもだよね。それで相手役の役者さんが本気になっちゃわないかなあ……」

「そこはうまくやるでしょ。アクア本人は積極的に増やそうとしてるつもりじゃないし。それこそあかねやB小町を理由に断れば良いわけだし。女優との一夜の関係よりもアイドルのおっかけやるタイプって噂が広がれば、勘違い女は減るんじゃない?」

「さすがかな将軍、あったまいいー!」

「にゃはは、世も末だなぁ……」

 

 地獄みたいな会話と言わざるを得ない。だが、この少女たちは残念ながら正気でこの会話をしている。

 

「ところでMEMちょの役割どうしよっか? やっぱSNS大臣?」

「防諜局長でどうかな、情報流出とその対策をしてもらいたいし」

「役割?」

 

 あかねたちの要領を得ない会話に首をかしげるMEMちょに、ルビーが説明する。

 

「私達の同盟でなにか問題があったり、なにか行動を起こしたりするときに役割分担してるの。最終判断するかな将軍、作戦具申する参謀のあかねちゃん、おにいちゃんの女の子関係のステルスノイズ兼よわよわメスが寄ってこないようにする防衛隊長の私……みたいな」

「だから私が防諜局長ってこと~? なるほどねぇ」

 

 たしかに、女の子に囲われていても『実の妹』がいるだけで世間や周囲には強いバイアスがかかりやすい。かなは決断力があるし、あかねは細かいことによく気づく。つまり自分の役割は。

 

「つまりネットに放流するデータの検閲とかってことかな~? 任せて、伊達に一人で30万YouTuberになったわけじゃないよ~?」

「おお、頼もしい! さすがMEMちょだね!」

「餅は餅屋ってことね」

 

 ルビーとかながMEMの参加に喜び、あかねもそれを嬉しそうに見ていた。

 

 一方、男湯ではアクア一人で湯船に浸かっていた。

 

「はぁ……熱燗があれば最高なんだが、あと三年は我慢しないとな……」

 

 久々の一人きりということもあってぐっと身体を伸ばしている。この旅行で色々とありすぎて、さすがのアクアも疲労していたのだ。

 

「おつかれさまだね、おにーさん」

 

 いつのまにか、バスタオルを巻いたツクヨミが湯煙の向こうから現れた。

 

「ここは男湯だぞ」

「残念、私の肉体はまだ混浴してもセーフな年齢だから」

 

 何事もなかったかのようにアクアのとなりに浸かる。たしかに肉体をみると、幼いとしか言いようがない体つきだ。そもそも人間の範疇かも怪しいので、アクアは思考を放棄し、昨夜の事件について問うことにした。

 

「あの蛇は何なんだ?」

「あれ? 八雷神の使いだよ。分類としては悪霊に当たるのかな。島根に引きこもっている上司の母親の部下の部下って感じ」

「……ああ」

 

 その表現で思い当たるのはイザナミノミコトだけだ。ずいぶんと大物に目をつけられたらしい。

 

「まあ、こんなファンタジーな出来事は無い方がいいでしょ? あ、あの刀のアクセサリーはあげるよ。いらないし」

「俺もいらねぇよ……なんで小学生の欲しがるお土産みたいなのだったんだ。もう少し武器として使えそうなのじゃだめなのか」

「しょーがないでしょ、こんな身体なんだから」

 

 どうやら対策アイテムがあのオモチャになったのは、彼女の身体的理由らしい。たしかにこのちんちくりんでは下手に長物は買えないだろう。

 

「まあまあ、君たちの行く末はけっこう神々も楽しみにしてるんだよ? テレビを見る片手間程度には」

「そりゃどうも……」

「それじゃ、よい受難を♪」

 

 ツクヨミは言いたいだけ言うと湯煙の向こうに消えていった。もう気配も感じない。

 

「……考えるのやめとくか。メルヘンやファンタジーは、しばらくはこりごりだな」

 

 アクアはゆっくりと湯船に浸かって、疲れを癒すことに専念した。

 




「ちなみに、アイやその周囲の人間が妙に若々しいのは、主にウズメ様の加護のおかげだよ。影響が無い人はアイとの関わりが薄いって神々から思われているんだろうね」

ガチ濡れ場(R18)って需要ある?

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