【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
駆け込み乗車するにもチケットは必要
どうしよう。
これが今のみなみの、正直な想いだった。
アクアはあれから、進級して更に有名になりつつある。ルビーもだ。自分だって成功している確信はある。写真集だって大成功して、ちょっと目が回るくらいの金額という形で自分に示されたから。
だが、グラビアモデルとマルチタレントでは知名度の差が大きすぎる事を自覚してしまっている。発信源がSNSと雑誌だけのみなみと、動画配信から演劇までなんでもやるアクアとでは流石に触れる人の目の数が違いすぎる。
このまま卒業したら? ルビーともアクアとも、あるいはフリルとも。『学生時代のおともだちその1』になってしまうのではないか……そういう、漠然とした不安。進級という、残り時間が減ったことでみなみはその自覚をした。
(あかんなぁこれ……あかんやつ)
いけない考え方だ。彼らの特別な自分でいたいという甘い誘惑。だが事実として、今のままでいれば高校卒業と共に疎遠になってさようなら、という風になるようにしか思えなかった。
だから、みなみはチャンスに飢えていた。アクアとの繋がりを得るチャンスだ。ルビーもフリルも、自分自身も。理由は
あるいは逆かもしれない。フリル達との繋がりをいいわけに、アクアと深い仲になりたいだけなのかも……そんな自分が汚い気がして仕方なかった。
だけど、あの不思議な体験をした夜から、みなみは毎日アクアの事で頭がいっぱいになってしまっている。気がつけばアクアとのデートやエッチの妄想をしてはにやけている自分を自覚する。今ならハッキリと断言できるだろう、アクアの事を好いている。
流石に仕事に影響を出すようなことはしていないつもりだが、カメラマンから更に表情が良くなったと言われた。だが、授業は半分上の空だ。
だからだろう。昼休みでも何も手に付かず、ボーッとしてしまっていた時に、フリルに隙を突かれるように言われたそれに、間違いなく大きな衝撃を受けてしまったのは。
「みなみ」
「……あぁ、フリルちゃん。なんです?」
「私アクアと共演することになった、地上波で」
「へぇ地上波で……地上波で!?」
不知火フリルが主体であれば、地上波というのは当たり前といえば当たり前だ。彼女は国民的美少女というレッテルがある。それにアクアとルビーが付いてくるだけという話なのだ、本来は。だが、みなみは“アクアと共演”という部分を強く受け取ってしまった。もちろん、フリルもそのつもりで言ったのだが。
「みなみ。遠慮する時間はおわりだよ。私は
「でも……でも……」
「彼女が居るから迷う?」
「うん……」
アクアには彼女が居る。それを自覚してしまうと、おもわず俯いてしまう。
フリルはうつむいて垂れ下がったみなみのGカップの左側を真顔で揉んだ。
「ひゃぁ!? なにしとん!?」
「みなみの『武器』を確認してるだけだよ。うん……強いね。これが
「ライバル……」
「いい、みなみ。恋愛リアリティーショーで成立したカップルが別れるなんてことはありふれたこと」
「ありふれ……いやいつまで揉んどん?」
「バレた」
少し元気を取り戻したみなみをみて、少し舌を出してイタズラがバレた子供のように少し笑うフリル。そんな仕草すら様になるのだから、なるほど国民的美少女と言われるだけはある。
「あと、ちょっと耳を貸してね」
「え? 何々、秘密の話なん?」
「ちょっとね」
フリルは真剣な表情で、みなみの耳元にそっと口を近づけて。
「ふー」
「ひゃぁぁん!?」
「ごめん、冗談」
「フリルちゃん、真剣な
「思ってる。じゃなくて、次は本当に大事な話だから」
みなみは全く気づいていなかったが、このセクハラはフリルなりの処世術であった。フリルがまたみなみにセクハラしてるな、とか、アクアにイタズラしてるな、というバイアスを抱かれれば、周囲の人間はそれに中々注目しなくなる。あるいは、セクハラそのものに注意が向いて、他の事に目を向けられにくくする。一種の
「アクアはあかねさんだけじゃなくて、かなさんとも付き合ってる噂がある」
「!」
「しー。静かに。あくまで噂だけど、
言われてみれば確かにそんな気がしてきた。元々『アクかな』匂わせは散々していたし、あかねという、みなみからしてもめちゃめちゃ美人な彼女が出来てもかなとの付き合いが減るどころか増えている気もする。
「つまり私が言いたいのは、彼は
「……!」
「たぶん生まれついてのハーレム王だよ、アクアは」
フリルは、入学早々から、ルビーが時折周囲を警戒するように観察してはチャットアプリで誰かとやりとりして、その後アクアに張り付いている……という場面を何度か目撃していた。
それを見れば、おそらく彼女……どちらかはフリルにはわからないが……彼女と相談して、アクアに近づいてほしくない女を選別していることくらいは推測できる。
実の妹なのだ、彼女が増えるのは諦めて自分と相性の良さそうな子を選んで近づくのを許している……と、アクア二股疑惑の噂を聞いてからは、フリルにはそういう風に見えていた。
その推測は半分ほど当たっているが、流石に
仮定になるが、もしフリルが黒川あかねレベルならば、完全に見抜けたのかもしれない。身内で名探偵あかねと揶揄されるだけはあるのである。たまにCIAあかねとか言われている。
「チケットは手に有る。私は追いかけにいくよ。みなみはどうする? 列車に乗って追いかける? それともふてくされて、遠くに行ってしまうのを眺めてる?」
敢えて詩的な表現をして、直接的な言い方を避ける。芸能界という深海を生き抜いてきたフリルのなせる業だ。みなみは自分の胸を見た。誰かと争うのは嫌いだし、奪うのだって趣味じゃない。
(やけど、アクア君を
対外的には自分はシングルマザーになるであろう可能性を、心の中で母親に謝る。みなみはもう俯いてはいなかった。
「例えがようわからんけど……
「いいね」
その瞳には確かに、決意の色が宿っている。アクアを追いかけていく覚悟。フリルはそれをみて、満足げに頷いた。
(みなみがアレじゃあ、張り合いがなかったからね。涙の乗車券なんてらしくない。折角の恋愛なんだから、存分に楽しまないと。さて、アクアは何人までなら耐えられるかな? ……6? 悪魔の数字か、いいんじゃない?)
不知火フリルのための、恋愛戦争が始まる。
フリルは笑う。
元は“俺を狂わせたアイツは俺のことなんか気にせず列車に乗ってどっか遠くにいっちまうのさ”(意訳)って曲ですが
みなみはなんとか乗り遅れずに済んだようで
邦訳の“涙の乗車券”よりはこちらかなと。
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