【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
そしてさらに月日は流れ、ついに双子達は幼稚園へと入園した。再始動した天才マルチタレント・ヒカルと、今はもう出しておけば視聴率が数パーセント取れる今流行りのアイドル・アイは非常に多忙で、流石に仕事が重なってしまった。そのため保護者代わりとして、ミヤコが二人の写真撮影係となっていた。二人の今の段階は仕事を選り好みする側である他、会社の成長に伴い、わざわざ副社長のミヤコが仕切る必要性がなくなったのも大きい。
アクアは有馬かなとのセット売りを有馬側の事務所から持ちかけられ、それを斉藤社長がゴーサインを出したため、結構な頻度で顔を会わせている。
また、最近ではチャットアプリの連絡先も交換したらしく、アクアにとってもかなにとっても、お互いが初めての幼馴染み……もっといえば近い年代の友人ともいうべき立場であり、やや舞い上がっている。そのためなのか、お互いにかなりプライベートな内容まで話している他、撮影現場でも距離が近い。演技についての議論のようなものもしており、顔を付き合わせてここはこうだあれはこうだと話し合っている。
のんきしてたルビーも流石にこの状況には危機感を感じたのか、ひっつき虫の頻度が上昇した。別に有馬かなと仲が悪いわけではない。それはそれ、これはこれである。
そんな未来の恋のライバルを牽制中なルビーは「なるならアイドルがいい!」ということで、今は撮影系の仕事を中心に留めており、演技系のものには出ていない。とはいえ、前世の経験と現世の才能が歯車のように噛み合ったため、ヒカルからは「ルビーは女優でもやっていけるね」と太鼓判を押された。まだダンスの練習はしていないが、アイも「将来は私を超えるアイドルだね! 歌さえ直せば!」とお墨付き。歌は……とりあえず音感の訓練中だ。
そんなわけで普通の幼稚園には入れるはずもなく、芸能人二世や子役、金持ちの子等が通う、セキュリティ面のしっかりした私立幼稚園へと入園することとなった。
アクアとしては、園児生活は思ったよりも苦痛ではなかった。役者になるなら体力は大切だ、という父の教えもあってインナーマッスルを中心に鍛えてはいるが、基本的にインドア派のアクア。幼稚園では基本的に本を読んでなにもしないおとなしい子という評価である。読んでいる本は京極夏彦とかの小難しいミステリとかだが、それでも何か言われたり、遊ぶのを促されたりという干渉をされにくいので助かっている。
とはいえ誘われたら付き合い程度には遊ぶ。もっとも、本を読んで! と頼まれるのは少し困った。断るのも面倒なので、せっかくならと演技の練習と思ってやっている。
前世の事を思い出として処理出来るくらい、アクアは今の生活を満喫していた。
「やだ!」
だが、妹はそうではなかったようで、さりなの頃のトラウマが原因で、幼稚園のお遊戯会の練習を嫌がっていた。
「ルビー。お兄ちゃんが手伝ってやるからさ、ダンス頑張ろう」
「……ほんと?」
「ああ。転んでも絶対支える」
「おにいちゃん好き! 結婚して!」
「それは法律上無理」
こんなやりとりを見ていたミヤコは、ほほえましいなぁとのほほんとしていた。ルビーが本気も本気であるとは知らず。
とはいえ、アクアは元医者の現役者見習いであり、ダンスは専門ではない。医者としての見解を示すことしか出来なかった。
「どう?」
「うーん。たぶん、ルビーは今、転ぶことに怖がってしまっている。一種のトラウマだろうな」
「
「ああ。でもどうしようかな……そうだ!」
ここ数年でアクアは親に頼る、ということを覚えていた。というかヒカルに覚えさせられた。ということでアイに頼った。
「何? ルビーのダンスの特訓? やろうやろう!」
ママのお手本をみててね、とダンスするアイ。贅沢な見本だなあ、とアクアはアイをぼんやり眺めていた。ルビーはガン見していたが、違和感を指摘する。
「あれ? ママ、ちょっと手の高さが違う! 武道館の時、もっと手、高かったよ!」
「そう? 7年前くらいのだよ、よく知ってるね~?」
「パパがDVD持ってたから」
今でもDVDプレイヤーが熱くなるくらい暇さえあれば見返しているものだ。見間違えるはずがない。
「ルビーはなんか、倒れる準備しながら踊ってるみたいだね」
「うっ……」
痛いところを突かれた。転びそうになるのが怖くて腰が引けているから、余計にバランスが悪くなっていた。
「もっと胸を張って立つの。怖くても胸を張らないと、逆に倒れちゃうから。大丈夫。ママを信じて!」
ギュッと握りこぶしを作りながら応援するスーパーアイドル・アイ。
「転んでも俺と母さんがいる。大丈夫だ」
「うん……やってみる!」
深呼吸をして、アイと同じダンスを小さな体で踊る。
(胸を張って。もっと……そうだ、この感じなら!)
段々と、キレがよくなっていく。目を見張るアクアと、そうそう! と嬉しそうに笑うアイ。
「もっと……もっと自由に……! ママみたいに!」
才能の華が目の前で咲き誇る瞬間を、アクアは目撃した。
(これは……やばいな。ルビーは踊りの才能があったんだ。それを、前世のトラウマが邪魔してただけで……)
アクアは想像をして思わず震えた。
両親譲りの美貌に、演技とダンスの才能。もし、弱点の歌まで克服したら……もしかしたら。
(もしかしたら、本当にさりなちゃんは……ルビーは。アイを超えるアイドルになれるのかもしれない……!)
これはうかうかしていられないな、とアクアは思った。
アクアの自己評価は低い。有馬かな、カミキヒカル、アイ、ルビー。そんな星のような演技の才能たちを見てきたからこそ、自分には演技の才能はあまりないと分かっていた。
だが、そんな程度で諦められるほど、アクアは割りきりがよくなかった。前世の諦観癖というか、流され体質が、目の前におかれたチャンスのおかげで治りつつあった。
才能が無いからなんだ。無いなら他で補うしかない。でなければ父にも有馬にも顔向けなんて出来ないではないか。
アクア本人は気づいていないが、それこそが彼の才能の開花の切っ掛けとなった。
(スタッフ、環境、他の演者、偶然、カメラ、全てを使いこなせ、演技のために、演出のためになんでも使え。父の演技を、母の嘘を、有馬の輝きを。少しでも盗んで取り込むんだ!)
アクアはなりふり構わずに、貪欲に知識と技能を集めた。五反田監督から学んだ演出、父の引き込むような演技、母の計算された嘘。有馬かなの私を見ろと輝く演技だけでなく、彼女が最近覚えた受けの演技。ルビーの得意なアドリブ。全部を全部飲み干してやると意気込んだ。五反田監督からすれば、カミキヒカルよりよっぽど怪物に見え、こいつを見出したのは間違いなかった、と歓喜に震えた。
アクアは確かに突出した才能はない。だが、総合力であれば有馬かなやカミキヒカルにも互角に渡り合えるだけの才能があった。その頭脳から弾き出される計算と、即応性、そして入念な事前準備と調査……医者も役者も、実はやることは本質的に変わらないな、と思わず苦笑した。
お遊戯会の舞台で、それらは結実した。
「白雪姫、どうか目覚めておくれ」
かっこいいから王子様役ね、と半ば押し付けられたような演目「白雪姫」での役回りだったが、保護者の視線やカメラ、照明、実は白雪姫役がおませさんなこと、王子様のマントが少し破けるというアクシデントまで全て利用してみせた。キスする五センチくらい前まで接近して、保護者達にはキスをしているように見せかけるために手で隠してみせる。きゃーっ、と保護者と園児達の黄色い声が上がった。夕暮れの日差しが偶然、舞台に差し掛かったのも神がかった演出となった。
白雪姫役は真っ赤な顔をして瞳をとろけさせながら目を開いた。
「私の王子様……」
(台詞が違う! しかたない、アドリブで合わせるか)
「あなたの王子ですよ、白雪姫」
そう言って起き上がった彼女を抱き締めて幕は閉じた。
舞台は端的に言えば大成功に終わった。白雪姫役の子にしばらくの間、妙な視線を向けられることを除いては。
もちろん、ルビーのダンスと共にきっちり録画されていて。
「きゃーっ! あなたの王子ですよだって! アクアかっこいい~!」
「いいね、カメラをきちんと意識できてる。ははぁ、相手の子まで演技に利用したね? こりゃ悪い子だ」
「おにいちゃん! 私にもちゅーしてほしいんだけど!」
べた褒めにされたアクアは、ひどく赤面した。
ルビーは頬にキスで勘弁して貰った。
・アクルビ覚醒
アクアは演技の才能がないと原作で言ってますが、絶対そんなこと無いですよね。上を見すぎだ。もしくは有馬かなに脳を焼かれすぎだ。アクアも「かなちゃんかなちゃん有馬かな」してた可能性あるってマ???
ということで、本作においては、アクアの才能は前世の賢さに由来する視野の広さと思慮深さを根幹としています。それを使った「全部を自分の演出に使う演技」、演者の癖に演出家みたいなことをしてます。
代償としてスケコマシ三太夫レベルがアップしました。しかたないね。
ルビーは本編通りですね。
・白雪姫役の子
耳年増なおませちゃん。名前は特に決めてない。今後出てくることもない、第三被害者。しばらく秋波をアクアに送っていたが、べったべたのルビーを見て断念した。おませちゃんだが、自分の戦闘力を現実をみていた。あれが妹じゃ勝てねぇ。
後に「あのままアクアにひっかかってたら多分ひどい目に遭ってた」と語る敏腕経営者となる。だがアクアのせいで男に対する偏見と基準を拗らせにこじらせた結果、最終的に百合婚した。
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