【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
基本無表情なアクアの見せる、演技の絡まない微笑みはそのギャップもあって爆弾のごとき威力を誇り、アクアのファンを増加させ……そして全国の一部の女性たちに初恋と失恋を同時に味わわせた。ちなみにフリルがアクアに気取られていた場面は少しカットされた。ディレクターは、アクアとの匂わせとして使うにはまだ早いと判断したようだった。あとから実はこの頃から……と出すつもり満々だ。一瞬に見えたのは編集によるものであり、実は数秒ほどみとれていた。ギリ表情には出なかったが。
いつもは少し憂鬱な月曜日の登校日だが、アクアの
それはそうだろう、失恋した彼女たちはアクアを見つめることしか出来ないが、自分達は彼と触れ合い、いつでもあの笑みを……それ以外にもまだ世間の知らない彼を知り得ているのだ。優越感で全身が満たされていくような感覚を味わっていた。
この魔性っぷりは、まさしくアクアが星野アイの息子である証というべきだろう。問題なのは、あくまで計算してやっていたアイとは異なりアクアのそれは無意識という点だが。SNSの一部では失恋製造機とまで呼ばれている始末である。アクアとしては注目されて視線が煩わしいが、これも芸能人として少しはステップアップした証拠だと飲み込んでいた。もちろん、実際にはステップアップどころかロケットで打ち上げられた状態なのだが。
そうして教室に到着するとみなみが席でこっちこっち、と手招きするので近づいていく。
「おはよう、みなみ」
「おはようみなみちゃん!」
「アクア君、ルビーちゃんもおはよー。凄いねぇ昨日の番組の反響。SNSでもすごい話が流れてるよ!」
「やっぱり!? いやーおにいちゃんも一躍時の人だね!」
みなみは学校では、あえて“アクア君”と呼んでいる。かなが人の目のあるところではアクアと呼ぶのと同じだ……というか、そういう教えを与えられた。アクアの存在がばれてはまずい時に使うのが“あーくん”であり“マリン君”であった。あかねは特に隠す必要がないので良いが、困ったのはMEMちょだ。元々アクたんとあだ名で呼んでいたので余計に困っている。候補がいくつかあるらしいが“くーたん”“マー君”“クピたん”と迷走しているようだった。だんだん原型がなくなってきている。
ちなみにルビーはそういうときゴローとさりなの名前を便利に使っている。前世気分でデートできるのが最高とのことだ。閑話休題。
「あれ、フリルちゃんは?」
「フリルなら朝番組での番宣で遅れるそうだ」
「フリルちゃんも引っ張りだこやねぇ」
「国民的美少女だからね!」
何故かルビーが我が事のように喜んでいるが、みなみにはそれよりも気になる点があった。明らかにアクアとフリルは何かしらの連絡をやり取りしている事を今の会話でなんとなく察したからだ。仮に連絡先をしらないにしても、番組で遅れることをわざわざアクアに伝えていやがられていない程度には距離を詰めているのは分かった。
(フリルちゃん、距離を詰めるんが上手いね……)
するりと自然と懐に入り込むフリルのコミュニケーション能力はみなみにはない。みなみのコミュ力は普通だ。だからこそその面で無理はしない。あの錚々たるアクアハーレムにも無い自分だけの武器を理解しているから。フリルとみなみの恋愛戦争は半分は遊びみたいなものだ。どちらから言い出したわけでもないが、暗黙のルールとして“どちらが先にアクアを落とせるか”というのが恋愛戦争のたったひとつのルールだ。
現状はみなみがリードしているが、うかうかしていれば自分は
(まさに油断大敵……やね)
セーフティリードはこの
「ルビーちゃんもアクア君も、最近引っ張りだこだねぇ……ちゃんと休めてるん?」
「睡眠時間は確保できている、問題ない」
「あはは、私はまだまだ大丈夫だよ! ドラマとかもまだ出てないし!」
ルビーは本当に大丈夫のようにみえるが、アクアはそうは見えない。アクアの昔話やかなの話のように、移動時間に睡眠をとらなければならないほどの子役時代ほど、忙しくないのは確かだろうが……少し疲れているようにみなみは思った。ちらりと教室を見渡す。……まだ自分達三人以外、誰も居ない。芸能科が仮令芸能人候補生の集まりだとしても、彼らも二年生にもなれば、おおよそが芸能人デビューしていく。そうなると自然と芸能界の仕事を優先し始めるため、撮影で午前中は遅れるとか、ステージがあるから全休とか、時間が噛み合わないことは多々ある。みなみだって平日に撮影の日程をねじ込まれることは少なくない。月曜日ともなれば仕事始まりとして結構な人数が仕事による遅刻や欠席をしている場合が多く、結果として自分達以外が居ない教室が出来上がることも、早朝であればあり得る話であった。
「でも、アクア君少し気疲れはしてるやろ? アドリブで大変そうやし……打ち合わせもしてるんよね」
「まあ……少しはな」
「じゃあうちが癒したげる。ほら、ハグをするとストレスが下がるっていうやん」
「……まあ確かにオキシトシンが分泌されるとは言うが……」
やや躊躇うアクアに、みなみは有無を言わさずぶつかるように抱きついてみせた。顔は真っ赤だったが、これからアクアの恋人になったらあーんなことやこーんなことをやるのだ、ハグくらいは! という気持ちもあった。
「ど、どう? 安らぐ?」
「……まぁ確かに安らぐ……か?」
顔を真っ赤にしながらもそう聞いて見つめてくるみなみに、やや疑問形だったが、アクアはそう答えた。流石にランジェリー見せつけのインパクトと比較すれば、制服越しのハグなんて可愛いものだ。全く可愛くない凶悪なものが自分の胸板に押し付けられてつぶれていること以外は。
(人の目が無いからいいが……!)
ただでさえなんだかジリジリと距離を詰めてくるフリルをどうすればいいのか悩んでいるのに、みなみまでここ最近はどんどん距離を縮めてくる。本来、アクアは有馬かなのせいで距離感が馬鹿になっているので、友人とのハグくらいなら何でもない筈なのだ。だが、友人以上を一度でも意識してしまうとさしものアクアとてハグで緊張くらいはする。
「ずるーい! 私もおにいちゃんとぎゅーする! ぎゅー♡」
「じゃあ……ルビーちゃんもぎゅー」
「おおっやわこい……!」
ついに我慢が出来なくなったルビーもアクアとみなみに抱きつき、みなみはそれを受け入れる。アクアを完全にサンドイッチの具にしてしまう。ルビーの反応がどこかおっさん臭いお陰で、少しアクアの緊張はほぐれた。抱き締められるだけではどうかと思い、二人を抱き締め返す。二人の瞳がとろりと溶けたような気がした。
「やっ……♡」
「んぅ、おにいちゃん……♡」
二人からうんと甘い匂いがしてくる。ある意味で嗅ぎ慣れた、女の匂い。二人の耳元で、低い声で囁くように
「……そろそろ離れような?」
「ん、わかったで♡」
「はぁい、おにいちゃん♡」
二人は言われた通りに離れるが、もじもじとしながら熱に浮かされ溶けた瞳でアクアを見つめていた。
(あぁ……これは、仕方ない。ルビーちゃんも堕ちるわけやね……耐えられるわけない。……マリン君。やっぱ……好き♡)
たまらない、自分の内側にいる“女”を叩き起こされるような、あるいは気持ちいいツボをぐりっと一撃で押されるような、あるいは心が爆発するスイッチを押されるような、不思議なこの感覚。こんなものを至近距離で彼女達は浴びせかけられていたのだ。仮にアクアが自分の
(せやから、もっと関係を進めんとね……フリルちゃんに追い付かれてまう)
おっとりエセ関西弁って……かなり難しくないですか……?
追記:矛盾点を修正しました
ガチ濡れ場(R18)って需要ある?
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