【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
アクアの微笑み回から数回を重ね、アクア、ルビー、フリルの三人も中々こなれてきた。既に放送開始から二ヶ月ほど経過し、無茶振りにも慣れ、フリルの腕前はメキメキと上昇している。フリルはわずかな時間を見つけては番組を見返したり、習った料理を実際に自宅で作ってSNSにアップしてみたりと本当に練習しているらしく、時折予習してきたのかと思わせるような動きも見て取れ、双子を驚かせていた。それに、視聴率も安定して8~9%を維持しているらしく、微笑みの回に至っては瞬間最高視聴率11%を突破。タイムシフト配信視聴も平均視聴回数が30万再生超え。これは間違いなく大人気の証拠である。そのため、番組はしばらく……予定では向こう半年は続いていくことが決定した。
そんなある収録日のこと。
「アクア君、少し良いかい?」
今日も収録が終わって、アクアもさあ帰ろうとした時、舘山寺Dに呼び止められる。相変わらず柔和な雰囲気を宿しているが、この鬼畜が人間の形になった眼鏡置き(極めて穏当な表現)が呼び止める場合、大体ろくなことがない。だが、これを無視すると余計にひどいことになりそうなので仕方なく対応する。
「何ですか?」
「フルコースって作れる?」
言葉足らずどころではない、端的に自分が疑問に思っている部分だけ抜き出したという、短縮にもほどがある言葉だ。だがアクアはここまでの関係で、彼が不必要なことを聞いてくる男ではないということは理解していた。
この男は、本当に必要性がないと最低限の挨拶程度しかしないのだ。こちらから話しかければ応じるだけ、まだマシだが……しかも、何を以て不必要としているかは不明だが、とにかく彼は思っている以上に言葉数が少ない男だった。
(つまりどこかでフルコースを作るような状況ってことか……? 三十分枠の番組だぞ、何をやらせようとしてるんだこのメガネ……)
三十分番組といっても、実際にはコマーシャルや雑談、オープニングトークとエンディングトーク、実食時間が挟まるため、実際の調理風景は20分程度だろう。それをフルコース等にしたら、それこそ食事と調理と雑談を同じ画面に撮影しなければならない。実際にそれをやっていた番組は過去にあったが、それだって1~2品だ。フルコースともなれば
疑問は多々あったが、フルコースを求められていること自体は確かだ。オンエア(アイの予約したもの)を確認してディレクターとしての腕前も確かである、無茶苦茶はやっても無理なことはしないだろうと踏んだ。
「……まあ、素人レベルで良いなら出来ますよ。作ったことあるので……無茶苦茶やりますね」
「わかった。まあ、例の話も考えておくから頼むよ。ひき止めてすまないね。ああ、翌週は伝えていた通りゲスト回だからよろしく」
アクアがそういうと、用事は済んだとばかりに軽く謝罪をしてからスタスタと退室する舘山寺D。
(何が分かったんだよ怖ぇよ……何やらせるつもりだよ……)
「アクア、何聞かれてたの?」
そんな風に内心恐怖で震えていると舘山寺Dが離れたためか、フリルとルビーが寄ってきた。司会進行を務めるルビーも順調(?)に舘山寺Dのことが苦手になりつつあるらしく、割と人懐っこいルビーが、舘山寺Dには呼ばれない限りは近寄りもしないようになっていた。
「フルコースは出来るのか、だとさ」
「出来るの?」
「おにいちゃん凝り性だから……」
「素人レベルだけどな」
アクアはそう謙遜するが、ルビーもフリルも理解している。アクアの言う“一応”とか“素人レベル”は、大抵が“かなり高水準”という意味である。確かにプロには及ばないかもしれないが、一般家庭で手料理として出されるレベルとしてはかなり高レベルだ。
「……ゲストって誰だろうね?」
「そこが怖いんだよな……」
流石のフリルも、ゲストについて知らされていない為か、不安そうにしている。プロデューサーやディレクター、スタッフ達は把握しているようなのだが、箝口令でも敷かれているかの如く誰も漏らさない。大手だからこそ情報対策に関する教育を徹底している……と言えば聞こえは良いが、つまりこれはスタッフが一丸となってタレントを騙そうとしているのだ。団結力は素晴らしいが。
「超大御所の大物タレントとか来たらどうしよう!? 恐怖の部屋に呼び込まれたりしない!?」
「何だ恐怖の部屋って……」
「ほら、あの……あれだよ、あれ!」
ルビーもルビーでありもしない妄想をして震えてビビっている。アクアも正直に言えば腰が引けている。
あまり、よくない状況だ。初回さえ乗りきってしまえば、成功体験から大丈夫と言えるようになるのかもしれないが……。
(念のため、フリル用の料理メモ……いや、料理手帳でも用意しておくか……フルコースも加味して20パターンもあればなんとかなるか……?)
だが、不安があるならば備えれば良い。アクアは腹をくくった。
☆
「よっ、相変わらず暴れてるみたいだね舘山寺」
「鏑木先輩、お疲れ様です」
「隣良い?」
「是非」
一方、悪巧みしている悪い大人二人は、喫煙室でゆっくりと煙草の煙を吹かしていた。
「ふー……どう? あの双子」
「良いですね、先輩の推しの子なだけはある。叩けば叩くほど鍛えれば鍛えるほど強くしなやかに伸びる、まるで玉鋼。鍛え甲斐のあるタレントですね。特にアクア君は引き出しが多いから、余計にですね」
「わかるよ」
別に舘山寺は意地悪をしているつもりはない。彼に求められている仕事は最短最速でタレントを鍛え上げることであり、そのために無茶無謀に挑戦させているのだ。失敗した上で転がり落ちるような男なら芸能界ではそこまでしか通用しないと割りきってしまう。だからこそ舘山寺は親心でアクア達を千尋の谷に蹴落としている、というわけだ。
若い内に失敗も成功もどちらでも、山程積み重ねて行けば行くほど良い。
「それでも舘山寺、初手のゲストに呼ぶような相手じゃねえよ、彼女は」
「分かっててやってますよ。必要だから呼んだ、それまでです。流石にゲストに料理を振る舞うにしても段階が必要。乗りにのって売れに売れているタレントや大御所にいきなりは無理でしょうし」
「それはそうかもだが……うーん……」
どうやら舘山寺が呼ぼうとしているのは“決して大御所でもなく乗りに乗っている程でもない、しかし決して知名度が無いわけでもない”存在らしい。少なくとも料理番組の初手ゲストで呼ぶ相手ではなかった。鏑木は責任はコイツがとるからいいや、と投げた。そもそも外部プロデューサーの自分にこういうねじ込みキャスティングをどうこうすることは、流石にキー局相手には出来ない。
「上からも番宣の良い機会だからって言われましてね、前々から枠自体はとってあったんですよ。メインキャスト達も調子良さそうですし、いけるかなと思いまして」
「確かにそうだけどさぁ……君のいけそうは怖いんだよね……まあいっか、僕の責任じゃないし」
「鏑木先輩そういうのやめた方がいいと思いますよ。……ああ、そういえば。寿みなみさんっていうグラドル知ってますか? グラビアは正直畑違いでして」
グラビアは畑違い等ととぼけてみせる舘山寺に、鏑木は呆れたように紫煙を吐く。
「はぁ……グラドルを水落させてバラドルの才能開花させた君が言うかいそれ? んまぁ、知ってるよ。写真集の売り上げも良さげだし、性格も良いって聞くよ。僕の感触としては
「そういうことです。こちらの隙とやる気を突くのが上手いですね、彼は。本当に公称17ですか?」
「そういうところが面白いんだよ、あの悪ガキは」
「まあ、そうですけどね。ああいうホンモノが現れるから芸能界は面白い」
「だな」
悪い大人が二人で嗤い、煙を吸っては吐く。結局のところ、同じ穴の狢なのだ。
番組によっては(理由はあれど)一ヶ月で打ち切りということもありえますからね。まあこの舘山寺Dとかいうクソメガネは演者に冒険させるタイプのDなのですが、その分やらせとかはないです。
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