【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
「平和ばっかりの甘々な生活って、悪くないけど平行線だよ?」
「全く酒が旨いなぁー! ガハハ!!」
「あー、森伊蔵だ」
「アイは飲んじゃダメだよ、誕生日来週でしょ」
「そうでした!」
ドーム一週間前。斉藤社長は、端的に言えば高い酒を開けて、顔を真っ赤にして酔っぱらっていた。双子にはダメな大人を見る目で見られていたが。
とはいえ、無理もない話だ。
「アイの主演ドラマも視聴率最高の14.7%! B小町は仕事もキチキチにいっぱい! 他のメンバーのアイドルの後の展開の準備もよし! 来週はドームライブだぁ! ガハハ!!」
まさに勝ち確定のような状況での前祝いということだった。
「ドームってそんなにすごいの?」
とはいえ、当人のアイはこんな感じだ。トップアイドルまで最前線最速で駆け抜けてきたというのに、いまいち実感が湧いていないようだった。
「他の箱とは意味合いが違うわよ? ただ売れてるだけじゃダメ。スタッフ、資金、審査もそう。時間と練度が必要な場所なのよ。アイドル事務所ならひとつの夢ね。社長だけじゃない、私たちみんなの夢なのよ、ドームライブって」
「ふーん」
そうなんだ、とでもいうような軽い反応をしているアイ。
(そんなすごいところなら、私の愛も見つかるのかな?)
母親に捨てられ、愛というものがわからなくなったあのときから何年たったろうか。15年だろうか。
社長の言葉を信じて、嘘を本当にするために、アイドルをずっとやってきた。何年もだ。もう来週で二十歳になるから、8年くらいだ。武道館も、大きな箱も、単独ライブも、なんでもやってきた。でも、自分の愛に気づけないでいた。
未だに白米は苦手だ。人の名前を覚えるのも。でも、ヒカルの事は好きだ。子供を作ってもいい、と思えるくらいには好きだ。
ヒカルは愛してくれている、と思う。彼はもう答えを見つけてるだろうな、とぼんやり思っていた。アクアとルビーの事も好きだ。アクアとルビーには、愛されてるって自覚がある。
なら、自分は? ヒカルを、アクアを、ルビーを愛していると自信をもって言えるだろうか。……まだ言えないだろう。
長年やってきて身に付いた嘘が、錆のように心を蝕む。ドームライブで……本当を言えるだろうか。
ドームライブは五万人を超える人がやってくるという。チケットも完売だとか。アイにはいまいちピンと来ない。B小町のメンバーは緊張したり張り切っていたりと様々な反応をしていたが、みんな口を揃えて「アイとなら大丈夫」と信頼していた。
もし、その光景を見れたら、自分は本当の愛を見つけられるかもしれない。
「頼むから不祥事なんか起こすなよ!」
「はーい」
「不安なので明日は家に泊まって、僕も朝から準備とか付き添いますね……」
「頼む」
酔いが突然覚めたように真顔になって斉藤がヒカルに頭を下げた。
「えーっ!? そんなに信頼されてない!?」
「お前が黙って勝手にヒカルとの子供こさえたの忘れてねえからな、クソアイドル!!」
「その節はどうも本当に。申し開きもありません……」
「わーっ! それは本当に私が悪かったやつだから謝らないでよヒカルー!」
そんな平和な一幕に、アクアとルビーは幸せを感じていた。
☆
さて、何時でも何処でも、思いもよらぬ情報を偶然取得してしまう者というのはいる。
男は都内に住む一般的なドルヲタの大学生だった。ややアイに入れ込みすぎているきらいはあったが、それでも一般的な大学生の範疇ではあった。
それを見かけたのは偶然。カミキヒカルとアイが、子連れでカフェなんかにいたのをみかけたのだ。大人二人は変装していたが、子供達は変装していなかった。金髪の双子。カミキヒカルそっくりの男の子に、アイそっくりの女の子。
男の頭の中では、真実に近い情報が弾き出されていた。側にいたミヤコのことなど、彼は気づきもしていなかった。
(アイは隠れてカミキヒカルと子供を作っていたんだ! 一年間ほどの休暇期間は、産休……! 俺たちファンへの愛してるなんて、全部嘘っぱちの偽物だったんだ!! 裏切られたんだ!)
それはほぼ正解だった。だが、肝心なところで間違えた。アイはファンを愛そうとしていたし、嘘だとしても彼女なりの愛を送っていた。彼の送った星の砂を気に入ったからという理由ではあるが、玄関に飾り付けていた程だ。
だが、彼の中では
ネットに書き込んだところで、誰も信じやしないことは理解していた。だから、その失意と悲しみだけが腹の底で溜まり……やがて殺意へと変わった。
(殺してやる……殺してやる! 裏切りの報いを受けさせてやる!)
男は程なくして、理不尽な復讐者になった。
だが、男は驚くほど用意周到で、そして幸運であった。
偶然、アイがマンションへ帰宅する場面を目撃して、自宅を特定した。
マンション付近には生け垣があり、身を潜めて、声まで観察することが出来た。どうやらアイは無用心で、誰かが来るとドアを開けてから確認しているようだということも理解できた。
サバイバルナイフを購入した。ちょっとしたキャンプが趣味だったから、店員にも購入を怪しまれなかった。
アイのライブの当日ならば、絶対にアイは自宅にいると当たりをつけた。花束で撹乱して、そこで一気に腹を刺せば殺せる。復讐を果たせる。
男は復讐に酔っていたが、その復讐を果たすために
真っ白なバラの花束を、前日の夜に用意した。殺したアイへの献花のつもりで買った。
マンションはややセキュリティが甘いのも確認した。
恐ろしいほどにトントン拍子で準備が進む。男は「神様が復讐を肯定してくれているんだ」と歓喜した。
それを、烏を連れた少女が見ている。杜撰な計画を完璧と称している愚か者を見つめていた。
「ふふっ、だってこのままじゃあ彼女は愛を得られない。だからね。おせっかいだ」
まるで神様気取りの少女は、くすくす笑いながら家族を見ている。
「カミキヒカル。星野アイ。君達は
少女は愛おしそうにアイと、その家族を見ている。
「信じてるよ? 君達が本物の愛を手に入れる瞬間を。その時、二つの一番星は完成する。ほら──私って、とっても親切でしょ?」
ナイフの鈍色に朝日が反射する。
運命の日は、目前に迫っていた。
「アイ、ドーム公演おめでとう。双子は元気?」
「アクアとルビーの物語には必要ないかもね。だけど……」
「ヒカルとアイには必要だよね。だって彼女の愛はまだ嘘なんだから」
「本物の愛を見つけなきゃ。ね?」
「なんでこんなことするのかだって? それはね、神様は人間を信じてるから。だから試練も与えるんだ」
「でも、英雄になれなんて無茶苦茶するわけないでしょ? そんなの現代人がなれるわけ無いし、出来るわけない」
「だからね、殺人鬼一人追い返すだけでいいなんて、優しすぎると思わない?」
「彼らはきっと乗り越えられる。だって、彼らは夢を叶える一番星だから!」
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