【完結】天に輝く二ツ星 作:アクアハーレム最後の刺客不知火フリル
85.真の完璧は存在しない
誰しもが、一度や二度ミスをしたことがある。大切なのはミスをしないことではなく、ミスのリカバリーをして、次からは極力再発しないように予防することだ。
アクアはフリルからタレコミされた情報を慌ててMEMに相談、その後迅速に社長に共有した。社長室でその情報を受け取った斎藤壱護は、思わず叫んだ。
「はぁ!? アイとヒカルが撮られた!? 熱愛報道のゴシップ記事になるだと!?」
アイとヒカルの交際は非公開だし、そもそも16で子供を産んだ時点で色々と順序が間違っているが、関係者が一丸となって彼らの関係を隠してきたはずだったのだが、やはりどこかに穴があったのだろう。頭を抱える壱護だったが、昔、ヒカルが言っていた台詞を思い出して持ち直す。不安そうにミヤコが壱護に聞く。
「どうするの? これ」
「しかたねえか……先手を打ってこのゴシップ記事をなかったことにするしかない。アイとヒカルに連絡しろ。『ネットを制する者が情報戦を制する』ってな」
壱護はいつかのヒカルの台詞を覚えていた。
『これからは、ネットの波を乗りこなす人こそが、芸能界でも上に行ける』
「どこでこの情報を拾ったのかしらねえが、アクアに小遣いでもやらねぇとな。お手柄だ」
壱護はニヤリと笑った。恐らく、既に記事としては完成していて、週刊誌として印刷する直前と言ったところだろう。古い、あまりにも手法が古い。
確かにネットの情報を鵜呑みにするものは居なかった、10年前であれば。その時期はネットは怖いものだったからだ。だがこのSNS時代になった今、ネットは怖いものではなくなった。スマートフォンの普及により、誰でも気軽にインターネットにアクセスできるようになった。SNSでは、誰も彼もが好き放題にコメントをしている。陰謀論から、違法アルバイトまで様々なものが打ち捨てられている。
現代人にとって、SNSはもはや日常の一部だ。特に『公式発表』……公式アカウントの発言はそれが真実だと大多数が受け入れる。
その通りに、翌日苺プロ公式SNSにおいて、アイとヒカルの交際が発表された。表向きからみれば、同じ事務所のマルチタレントと俳優が“結婚を視野に入れた真剣な”交際をしていることを公表した、ただそれだけの話だ。二人は籍を入れている訳ではないので、嘘ではないし、いつか正式に結婚をしたいのも嘘ではないのだ。それに、二人とも30代。晩婚化が嘆かれている昨今においても、少し遅すぎるくらいの交際だ。
業界人は怪しんでいた人物も多く、別段一般人との交際でもない。単に同じ事務所所属のいい年の男女が交際していた。それだけの話としてスルーした。
ファンや一般人からも基本的には驚愕と祝福の声が届いている。旧B小町が解散して、もう6年にもなる。ショックを受けている者は少数だ。むしろ、ヒカルが交際を開始したことにショックを受けているファンの方が多いほどだ。
ごく一部のあまりにも過激な声を上げて公式アカウントに絡んでくるような者たちもいるが、彼らは苺プロの法務部がどんどん証拠を獲得して訴えて慰謝料を払わせて消えていく。しかし、トップ層ともいうべき二人が交際を発表した事は、ファンにとっても報道機関にとってもビッグイベントだったようで、キー局はこぞって速報を放送。ネットニュースにもあっという間に記事が作られていった。唯一、熱愛記事を出す予定だったとある週刊雑誌に所属する記者は、どこから情報が漏れたのか探し回ったが見つからず、骨折り損のくたびれ儲けとなった。公式アカウントの該当投稿は200万閲覧、10万リポストを突破した。
アクアはその慌てたSNSの様子を一通り観察し終えると、ため息をついてスマートフォンの画面を消し、隣に座っているMEMへ感謝の言葉を告げた。
「ありがとな。相談しておいて正解だった」
「ふふん、私はSNSのプロだからね!」
酸いも甘いも一通り経験してきました、といわんばかりに胸を張るMEM。ピノキオもかくやと言わんばかりに鼻高々としていた。
両親の熱愛報道の情報を獲得したアクアは、すぐさまMEMに相談し、そのアドバイス通りに社長に直接情報をたらい回しにした……といった形だ。
「こーいうのは初動が肝心だからねぇ~。熱愛発覚! よりも交際公表、の方が心理的なウケはいいわけよ」
「そうみたいだな。……だが他人事でもないぞ、これは」
「私達が一番ばれたら不味いもんねぇ」
アクアとMEMが二人きりという状況だが、ここはかなハウスだ。かなの家は最高の秘密基地だが、唯一アクアが撮られるのはまずいだろう。一応お互いに変装をしているのである程度は大丈夫だとは思うが、このSNS社会では少し不安が残る。
だが、すぐに対応策を思いつけはしなかった。急ぎというほどでもないので、アクアは一旦考えるのをやめることにした。
「まあ、それはおいおいだな。ありがとな、『 』」
「ひぁ……っ、なまえ、はんそくぅ……」
耳元で名前を囁くと、びくんとふるえて一気に視線が熱っぽくなり、体から力が抜ける。本名を呼ばれると、すっかりスイッチが入ってしまうようになったMEMちょをアクアは愛おしく思う。そんなかわいくていとおしい彼女を愛でることに専念することにした。
「ほら、おいで」
「うん……♡」
問題はある、考えることも。だが今この瞬間だけは、彼女の事だけを考えていた。
他人事ではないのはアクアだけじゃない
ガチ濡れ場(R18)って需要ある?
-
みたい
-
いらない
-
結果だけ見る