ドラキュラ?いいえ、ドラキュリアです   作:花の右人

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本編が全然進まないので、ちょっとした息抜きってことで。

大変長らくお待たせしました。???話目になります。
拙い駄文ですが、お楽しみいただければ幸いです。


???. その女、悪にして英雄

 こんにちは!僕の名前は緑谷出久。雄英高校ヒーロー科、1年A組の生徒だ。

 

「時間だよ、あんたたち!今日も張り切って行くよー!」

 

 教室のドアが開いて、女の人の明るい声が響いた。特別講師としてやってきた先生だ。

 僕たちより少し後に雄英にやって来た先生で、オールマイトの後輩に当たる人だ。フランクな性格で明るい笑顔を絶やさない、綺麗な先生だ。

 

「起立!礼!」

 

 飯田くんの号令で授業がスタートした。

 

「うんうん、今日も元気があっていいねぇ!それじゃあ、今日の授業は「超常黎明期のヴィジランテとヴィラン」についてだよ!」

 

 先生は黒板に大きくテーマを書いた。「ドラキュリア」と。

 

「あんたたちは、ドラキュリアについてどこまで知ってる?」

 

 ドラキュリア。

 超常黎明期に、西日本を中心に巨大勢力を築き上げたと言い伝えられるヴィラン、あるいはヴィジランテ。

 

「私は爺ちゃんから聞いたことあるよ。爺ちゃんが子供の頃、ものすごいヴィランが関西にいたって」

 

「・・・・・・俺は祖母から聞いたことがある。九州にドラキュリアというヴィジランテがいたと」

 

 麗日さんと障子くんが思い出すようにその名前を口にした。

 

「麗日が三重県で、障子は福岡県の出身だったね?それなら話は早い。ドラキュリアについて、他に知っているかい?まずは麗日から」

 

「うーん、人の生き血を啜る鬼のようなヴィランってことくらいしか知らないです」

 

「麗日はそう聞いたのか?俺は迫害を受ける弱者を救ける英雄だと聞いたんだが」

 

 先生の質問に首を傾げながら答える。2人とも真逆に別れた答えだ。

 

「2人共、正解だよ。ドラキュリアはヴィランともヴィジランテとも言われた女なのさ」

 

 先生がリモコンを操作すると、天井からスクリーンとプロジェクターが下りてきた。スクリーンに映し出されたのは、同じ人間とは思えないくらい綺麗な白い女の人の正面と横顔を写した2枚の写真だ。

 

「・・・・・・おお」

 

「綺麗・・・・・・」

 

 女の子好きな峰田くんはともかく、同性の耳郎さんまで顔と耳をほんのり赤くして見惚れてしまうくらい綺麗な女の人だ。

 

 クラスのみんなも見惚れてたり、不思議そうに見つめていた。僕の前の席で背中しか見えないかっちゃんは多分、睨んでいると思うけど。

 こう語る僕も、女の人に目が釘付けになった。

 どこかで見たことがあるような気がするのはなんでだろう?

 

「ドラキュリア。超常黎明期の中盤にどこからともなく姿を現した、伝説のヴィランにしてヴィジランテ」

 

 先生もドラキュリアを見つめながら真剣な声で語った。

 

「ドラキュリアほど個性の歴史上、2つ名が多い人物はいないと言われている。まずは「魔王」。これは個性の歴史の中で1番魔王らしいことに由来するそうだよ」

 

 魔王。RPGでよく聞くワードだ。

 

「さらに詳しく知っているなら、悪鬼の女王、紅月天女、夜の支配者、女死神、鬼子母神の再来・・・・・・になるかな?時代や国や地域によっては今挙げたものの他にも、いろんな名前があるよ」

 

 2つ名を持つヴィランは超常黎明期に何人もいたと言われてるけど、たくさんあるヴィランは聞いたことがない。

 

「・・・・・・ハッ!?先生!質問よろしいでしょうか!?」

 

「いいよ、飯田」

 

 我に返った飯田くんが真っ直ぐ挙手して質問した。

 

「このドラキュリアという女性は、何故ヴィランであり、ヒーローの原点(ルーツ)とされるヴィジランテとも呼ばれているのでしょうか!?」

 

 ヴィランとヴィジランテ。今回のテーマだ。

 

 みんな知っての通り、“個性”を犯罪に使うのがヴィラン。そしてヴィジランテは、法に依らず自発的に治安活動を行う者。超常黎明期におけるヒーローの前身で、現代ではほとんど見られなくなった非合法ヒーローで、ヴィランの変種とも呼ばれる。

 

「それはねぇ、ドラキュリアが人によって大きく評価が分かれるからさ」

 

 先生は飯田くんからドラキュリアに視線を向けて続ける。

 

「まず、ヴィランとして。ドラキュリアは食人嗜好・・・・・・人を食うのが好きなヴィランとして知られていた」

 

「人食いってマジかよ!?」

 

 上鳴くんがウットリした顔から一変、ギョッとした顔でスクリーンのドラキュリアを見た。

 

「綺麗な顔してるけど、お茶子が言ったように人の生き血を啜る鬼そのもの。こいつに捕まった人間は、生きたまま解剖されるような拷問を受けた末に、料理されて食われたって話さ」

 

 先生がリモコンを操作するとスクリーンの映像が変わる。

 

「・・・・・・ヒッ!」

 

 だれかの小さな悲鳴が上がった。

 

 映し出されたのは、赤く染まった背景と床に転がる人間らしき残骸。そして、黒いマントに身を包んだ常人の2倍以上の身長がある巨人。

 口元を赤く染めたドラキュリアが片手に血が滴る人間の腕を、もう片方の手にヴィランらしき男の体を片手で持ち上げている写真だった。捕まった男は顔を恐怖で歪めて、必死に藻掻いている。その様子を、ドラキュリアは能面のような無表情で見つめている。

 捕食者と被捕食者。対照的な2人が恐怖を引き立たせる恐ろしい惨劇だっだ。

 

「超常黎明期は秩序が崩壊した狂気と混沌の時代だった。当時は現代と比べ物にならないほど、ヴィランが跋扈した地獄だった。ドラキュリアはその中でもずば抜けて、残酷で冷酷なヴィランとして恐れられた女なんだ」

 

 先生はいつもの陽気な雰囲気から変わって、とても真剣な表情で写真を見つめながらそう語った。その顔は、ヴィランを前にしたヒーローの顔だ。

 

「ケロ、先生。どうしてドラキュリアは人間を食べるのかしら?」

 

 蛙吹さんが挙手して質問した。表情はいつもと変わらないけど、微かに声が震えているような気がした。

 

「そうしないと生きられないからさ」

 

 生きられない?

 

「“個性”『魔王ドラキュラ』。魔王っぽいことと、吸血鬼ドラキュラっぽいことができる。それがドラキュリアの“個性”であり、名前の由来の1つなのさ」

 

 

 

 ────────────────────────

 

 

 

「“魔王ドラキュラ”・・・・・・?」

 

「魔王」の次は「吸血鬼ドラキュラ」。ゴシック・ホラー作品でよく聞くワードだ。

 

「ドラキュリアはRPGに出てくる魔王のように魔術を操り、バケモノを呼び出して従え、ゴシック・ホラーに出てくる吸血鬼ドラキュラのように人の生き血を啜って寿命を延ばしたり、目を見た相手を操ったり、強大な力で西日本を瞬く間に支配したんだ」

 

 先生がリモコンを操作すると、青い日本地図が現れる。関西から中国、四国、九州が、西日本が赤く染まっていった。

 

「とんでもねぇチートだな」

 

 額に汗を滲ませながら瀬呂くんが呟いた。

 

「そうさ。チートだよ。さらに、他人に“個性”を与えることもできるんだからね」

 

 “個性”を与える!?『ワン・フォー・オール』と同じ!?

 

「ええっ!?そんなことができたんですか!?」

 

「ああ。ドラキュリアはこの力を「眷属化」、そして与える“個性”を『ヴァンパイア』と呼んでいたらしいよ」

 

 顔は見えないけど、驚いた声と仕草を見せる葉隠さんに答えながらまたリモコンを操作する先生。西日本が真っ赤に染まった地図の上に、不満げな顔の女性の正面と横顔を写した2枚の写真が表示された。

 

 おでこを出した茶色のショートボブと吊り目、ドラキュリアと同じくらいの年齢に赤い瞳と白い肌と尖った耳が特徴的な女の人だ。ドラキュリアほどじゃないけど、充分に綺麗な美人と言える。

 この女の人も、初めて見るのにどこかで会ったことがあるような・・・・・・?

 

「“個性”『ヴァンパイア』。ヴァンパイアらしいことが何でもできる“個性”。ドラキュリアはこれを与えることで、強力な部下を何人も作り出して西日本を支配したのさ。ちなみに、この写真の女はドラキュリア専属の医者だったらしいよ」

 

 先生は蛙吹さんに顔を向ける。

 

「蛙吹の質問に戻るけど、ドラキュリアは人間の生き血を飲まないと生きていけない体質でね、人間を捕まえて血を搾り取って食っていた。もちろん、部下のヴァンパイアたちも同じさね」

 

「・・・・・・ケロ、決して許されることではないけど、何とも言えない話ね」

 

 ドラキュリアと部下の女性の写真を見る蛙吹さんの目は、悲しそうだった。

 

「ドラキュリアたちは主に、悪人をターゲットにしていた」

 

 スクリーンに新しい写真がいくつも映し出された。

 

「うっ・・・・・・!」

 

「え・・・・・・?」

 

「ヒィッ!」

 

 切島くんが顔色を青くしてうめいた。八百万さんがポカンと口を開いた。峰田くんが弱々しい悲鳴を上げた。他のみんなも同じような反応で、僕も思わず目を見開いた。

 

 スクリーンに映し出されたのは、惨劇だった。

 ズラリと並ぶ串刺しにされたヴィランらしき死体、山のように積まれた生首、夥しい死体が浮かんだ血の海、燃え盛る街をバックに赤い目を光らせて恐ろしい笑みを浮かべた、全身血塗れのヴァンパイアたちの集合写真。どれも、地獄のような光景だ。

 

「ドラキュリアは部下を率いて暴れるヴィランと戦った。ドラキュリアたちは情けも容赦もなく、向かってくるやつは殺して料理して食った。この写真に映っている死体は「余り物」、ヴィランへの見せしめなのさ」

 

 先生は真顔で淡々とそう語った。

 

「せ、先生!このような、このような悪行を働いた者が、ヒーローの原点(ルーツ)であるヴィジランテなど信じられません・・・・・・!」

 

 八百万さんが顔を真っ青にしながら、吐きそうになるのを我慢しながら声を上げた。僕も同意見だ。こんな酷いことをするようなやつがヒーローのルーツだなんて信じられないし、あっていい話じゃない。

 

「「あんたたち」なら、そう思うよね?でもね、この国の西半分はドラキュリアのおかげでとても治安が良かったのは、紛れもない事実なのさ」

 

 スクリーンに8本の棒グラフが表示された。左側4本は低く、右側4本は何倍も高い。

 

「こいつは、超常黎明期の中期におけるヴィラン発生率を現した数値だよ。東日本は低くても40%台、中部と関東は50%を超えてる。対して西日本は20%以下、関西は最低4%と、現代と比較してもかなりの数値さ」

 

 ヴィラン発生率が4%!?その時代は今より個性人口が少ないし、影響力は1部の地方だけだとしても、数字だけ見れば現代より2%も低い!オールマイトのように、ドラキュリアは存在そのものが抑止力だったことになる!

 

「皮肉な話だと思うけど、ドラキュリアの見せしめはヴィランへの大きな抑止力になった。そして一般市民から恐れられながらも支持された」

 

 地獄の光景から一変、今度は平和な日常風景が映し出された。診察を受ける妊婦さん、授業を受ける幼い子供たち、大勢の人が集まる炊き出しなど、様々だ。

 

「ドラキュリアは秩序を築いて、ヴィラン発生率を抑える以外にも、縄張りにした地域でボランティア活動もしていたそうだよ。無償の医療提供、児童養護施設の創設、炊き出しや食品提供と、インフラ不足で苦しむ人々に手を差し伸べた。ほら、みんな笑ってる」

 

「・・・・・・本当だ。みんな、喜んでる」

 

 ポツリと呟く麗日さんの言う通り、どの写真も人の喜ぶ顔に溢れている。

 

「多くの悪を殺して、多くの善を助ける。それを実践してみせたドラキュリアは恐れられると同時に深く愛されて、「悪にして英雄」と謳われたのさ」

 

「ケッ、英雄だ?ヴィランで間違いねェだろーが!!」

 

 今まで静かだったかっちゃんが不満そうに声を上げた。

 確かに、多くの人を救けているけど、多くの命を奪っているからヒーローと呼べないし、呼んではいけない。僕と同じことを思っているのか、飯田くんや蛙吹さんや八百万さんもかっちゃんの言葉にうなずいている。

 

「・・・・・・ああ。そうだね。「あんたたち」はそう思うよね。でも、こいつらはそうじゃなかったよ」

 

 最後に映し出されたのは、幼い子供たちに囲まれるドラキュリアの写真だ。中央に立つドラキュリアは能面のように無表情だけど、その足元に集まって腕に抱かれたり両肩に乗っている子供たちはみんな笑顔だ。

 

「ドラキュリアが保護した、身寄りのない孤児たちだよ。事故やヴィランが原因で親を亡くしたり、親に捨てられて生きる居場所もない哀れな子供たち」

 

 先生の説明と共に次々と写真が出てくる。汚れてボロボロの服を着た子供、体に痣がある子供、みんな目に光がない。そこから、ドラキュリアや部下のヴァンパイアが子供たちに食事を与え、綺麗な服を着せてあげたり、勉強を教えてあげたり、いっしょに遊ぶ風景を撮った写真が流れていった。

 

「ドラキュリアは子供を保護して、自立できるようになるまでいろんなことを教えたらしいよ」

 

「どうせ恩を売って、てめェの兵隊に育てようって魂胆だろ」

 

「そうだね。実際、兵隊にしたいって思惑はあったみたいだよ」

 

 先生がかっちゃんの言葉を肯定すると、今度は銃を持った子供たちの写真が出てきた。ナイフを使った格闘、ピストルやライフルの射撃と、小学生くらいの子供たちがまるで軍隊のように訓練している光景だ。物騒すぎてヒヤヒヤする。

 

「当時は“個性”がある人間よりも、“無個性”の人間の方が多かった。ドラキュリアはあわよくば、子供たちを自分の部下として育て上げようって打算の他にも、自分がそばにいない時は自分の身は自分で守れるようにと、子供たちに訓練を施したそうだよ」

 

「し、しかし、こんなに幼い子供に銃やナイフを持たせるなど────」

 

「そういう「時代」だったんだよ」

 

 飯田くんの声を遮るように、先生は強く語り出す。

 

「ヒーロー公認制度がなくて、ヒーローはいない。警察やヴィジランテに対して、ヴィランがあまりに多すぎて手が回らない。そんな、毎日人が死ぬのが当たり前だった時代で、“個性”を持たない子供に身を守る術を教えなかったらどうなる?」

 

「ヴィランに襲われたら・・・・・・」

 

「一巻の終わりだよ」

 

 思わず漏れた僕の声に先生は悲しそうに答えを言う。

 僕はヘドロヴィランに襲われた時のことを思い出した。あの時はろくに抵抗もできず、オールマイトが来てくれなかったらと思うとゾッとする。僕はここにいなかったかも知れない。

 

「ただ守るだけじゃダメ。いざという時に自分の身は自分で守れるように体を鍛え、正しい知識を教えないのは虐待と変わらない。超常黎明期はそんな価値観が生まれるほど過酷な時代だったのさ」

 

 先生はまるでその目で見てきたかのような真剣な声音で言うと、飯田くんはその気迫に思わず声を失った。そして写真の子供たちを見る先生の横顔は、慈しむような悲しむようないろんな感情が混ざった何とも言えない表情だった。

 

「結果的にドラキュリアは子供たちの意思を尊重して、部下になりたいやつを引き取って、平穏な暮らしを望むやつは希望に合わせて養子に出したり、自立できるようになるまでサポートしたそうだよ」

 

 ドラキュリアと対面する、僕たちと同じかそれ以上の年に成長した子供たち。ドラキュリアを見上げる顔は穏やかな笑顔だったり、自信に満ちている。うれしくて泣き出しそうになっている子もいる。

 

「こうして保護、育成、輩出を繰り返して、一般市民からの評価は鰻登り。ドラキュリアは下手な政治家より頼りになる存在になった。中には、神様のように崇拝する人間も少なくなかったそうだよ」

 

 ファンタジー系の洋画に出てきそうな豪華な玉座に頬杖をつくドラキュリアと、彼女に跪く人々が映し出された。

 

「悪行と善行を両方やっていたのはわかったが、結局のところドラキュリアは何が目的だったんだろうか?」

 

 常闇くんが疑問を口にする。

 

「さっきも言った通り、ドラキュリアと部下のヴァンパイアたちは人間の生き血を必要とする体質。ヴィランを狩るにしても、毎度毎度同じ成果を上げることはできない。だから、安定した供給を求めていたのさ」

 

 何10台もの献血バスとそれに並ぶ長蛇の列の写真。

 

「ドラキュリアは支配地域で年に4回の献血と2回の健康診断を義務化した。飲むならおいしい血がいいから、一般市民に健康であれと管理したそうだよ」

 

「まるで家畜だ・・・・・・」

 

 どこか嫌そうな顔をしながら、轟くんがボソリとつぶやいた。

 

「間違っちゃいないよ。ドラキュリアとヴァンパイアたちからしたら、自分たち以外はミルクを出す牛や卵を産む鶏のようなものだったんだろうね」

 

 赤い液体が注がれたグラスを掲げるドラキュリアとヴァンパイアたちの写真。一見、明るい雰囲気のパーティーに見えるけど、グラスの中身が人間の生き血だとわかるから悍ましく感じた。

 

「まあ、そのおかげで支配地域では病人が大きく減ったり、平均寿命が延びたりと、決して悪いことばかりじゃなかった。それでさらに一般市民から支持を集めて、ドラキュリアの支配体制はより強固なものになった」

 

 次に映し出されたのは、銃や剣や槍や斧で武装したヴァンパイアたち。そしてその先頭に立つドラキュリアの姿。自分の身長より長い、死神を彷彿とさせる大鎌を肩に担いでいる。

 

「そして、ドラキュリアは支配地域で建国宣言をした」

 

 みんな驚いてクラスが一気にザワつき出した。

 建国宣言!?ヴィランが!?

 

「国名は────」

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 チャイムが鳴った。時計を見ると、もう終わりの時間だ。

 

「ありゃ?時間が経つのが速いね。委員長、号令を」

 

「起立!礼!ありがとうございました!」

 

 

 

 小野塚先生!!

 

 

 

 先生は────小野塚先生はニッコリ笑った。

 

「続きはまた今度だね。次はオールマイト先輩の戦闘訓練だよ。ケガしない程度に頑張りなよ、あんたたち!」

 

 小野塚先生は手をパタパタと振って、そそくさと教室を出て行った。

 

「それにしても、ドラキュリアかァ」

 

 授業が終わり、切島くんがイスに背中を預けて考え込む。

 

「人を殺して食うとんでもねェヴィランだけど、大勢の人を救けるヒーローでもある・・・・・・よくわからねェよ」

 

「ねー、良いことも悪いこともして、ちぐはくって感じ!」

 

「ケロ。矛盾してるわね」

 

 ちぐはぐで矛盾。芦戸さんと蛙吹さんの言う通り、ドラキュリアの行動はヒーローらしくヴィランらしい。でも、ヒーローとヴィランは光と闇のように対極の存在。両立するとは思えなかった。

 

「飯田くんはどう思う?」

 

 飯田くんを見ると、うつむきながら腕を組んで考え込んでいた。

 

「・・・・・・確かに、芦戸君と梅雨ちゃん君の言う通りだと俺も思う。ヒーローを志す者として、ドラキュリアが善行を働こうとも悪行を帳消しなんてことは到底認められない」

 

「だけど」と区切り、飯田くんは顔を上げた。

 

「ドラキュリアの側にいた子供たちは皆、ヒーローを前にしたかのような笑顔だった。喜びや安堵に満ちたあの笑顔を嘘偽りだと否定することは、俺にはできない」

 

 ヒーローとして悔しい。だけど、個人的に否定できない。もどかしいような、なんとも言えない顔をしていた。

 

「おそらく小野塚先生は、正義は時代によって異なると俺たちに教えたかったのだと思う。現代を生きるヒーローから見れば恐ろしく凶悪なヴィランであっても、当時の子供たちにとってドラキュリアは最高のヒーローだったのかも知れない」

 

 飯田くんはどこか遠くを見るように語ると、静かに目を閉じて首を横に振る。

 

「とはいえ、過去は過去!ヒーローを志す者として、その悪行は到底認められない!俺たちは俺たちで、しっかりとヒーローを目指すべきだ!!」

 

 スッと立ち上がり、飯田くんは軽く伸びをした。

 

「次は戦闘訓練だ!皆も遅れないように!」

 

 そう言って飯田くんは教室を出た。トイレかな?

 

 次はオールマイトの授業でワクワクするけど、何か引っかかるような、胸がモヤモヤする。

 ・・・・・・・・・ドラキュリアを見た時も思ったけど、小野塚先生もどこかで見たことがある気がする。雄英にやってきて初めて出会ったのに、何だか不思議な気分だ。

 




・緑谷出久

遂に登場した原作主人公。
ドラキュリアという、ヒーローでありヴィランとも言える異質な存在に動揺と困惑を隠せない様子。
それに、ドラキュリアやその部下のヴァンパイア、そして小野塚先生の顔を見て何かデジャブを感じてる・・・・・?


・飯田天哉

A組のクラス委員長。
ドラキュリアを残虐非道なヴィランとして見てるが、泣いている迷子の手を引いて導くその姿に、尊敬するヒーローにして兄・インゲニウムの姿が重なって、内心では激しく戸惑っている。


・小野塚小町

とある機関に所属し、オールマイトの次に雄英高校へ招かれた特別講師。担当は日本史。
明るくて親しみやすく、1部がミッドナイトより大きくて男子生徒から密かに人気を集めるお姉さん先生。
長年に渡りドラキュリアについて調査してきた歴史研究家で、その意思を継ぐ者たちが現れて大きな戦いが起きた時に備え、詳しい歴史と脅威をヒーロー科の生徒たちに教えてくれるアドバイザー。
20代前半に見えるほど若々しい外見をしてるが、娘さんがいるシングルマザー。娘さんは雄英高校の普通科に在籍している。


・ドラキュリア

超常黎明期に突如現れたと言い伝えられる悪にして英雄。故人。
人外の美貌と悪魔のようなカリスマ、そして圧倒的な力を誇る個性により、大規模な組織を結成。西日本を統一したとされ、その影響力は120年以上経った現在も残っている。
現在は子孫や崇拝者たちが闇に潜み、ドラキュリアの意思を継いで再起を企んでいると噂される。


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