おそらくこれが、2025年最後の投稿になるか知れないから前もって言っときます。メリークリスマス、あけましておめでとうございます。
お待たせしました23話目になります。
拙い駄文ですが、お楽しみいただければ幸いです。
こんばんは、ドラキュリアです。
駆藤と眠る妊婦を見ています。
遡ること今から1時間ほど前。
女になったことにビックリしてる駆藤を落ち着かせて、全身の血をキレイに洗い落とし、新しい服を着せたところから始まる。
「気分はどうだ?」
「・・・・・・・・・良くない」
近くのオフィスのソファーで休憩中の駆藤。膝の上で指を組んだ姿勢でうなだれてる。返事するだけマシか。
ちなみに俺はスケルトンの大群を召喚して火事の消火、車両に積まれた物資とまだ使える車両、ヴィランの武器と死体回収の戦後処理の指示出しの真っ最中である。
車両と物資と武器はヴィジランテたちへの手土産。そして死体は、新鮮なうちに悪魔城へ持ち帰って解体して食料にし、食い切れない分は冷凍保存する。
余ったもの、比較的綺麗なパーツは繋ぎ合わせて魔術を施してゾンビにしたり、皮膚を引っ剥がしてなめして加工してスケルトンの装備品にしたり、燃やして骨をパスルのように組み立てて魔術を施してスケルトンにしたり、皮も骨も使い物にならないくらい損傷が酷い遺体は魔獣のエサにする。捨てるところは全くない、これこそSDGs。
閑話休題。
「女の体か?」
「・・・・・・ああ」
駆藤は自分の胸を触ってため息をつく。どーよ?デッカくて柔らかいだろ?
「なんで、女の体になるんだ・・・・・・?」
「私の血は『ヴァンパイア』を付与する以外にも、飲んだ者の姿形を自由に変えることも可能だ。眷属化の儀式でグラスに注いだ我が血に、女になったそなたの姿のイメージを乗せた。それにより、そなたは今の姿になったのだ」
「ふざけるな!!」
勢いよく立ち上がって掴みかかってきた。おい、ドレスの裾を掴むな。爪を立てんな。穴開くだろやめろ。
「何故、俺を女にした!?性別を変えずとも、ヴァンパイアにできたはずだ!!」
「できた。だが、やらん」
何故って?単純に男が嫌いだから。以上。
「おまえぇぇッッッ!!!」
うわぁ、顔怖っ。キレた爆豪みたいな顔してら。
「放せ」
暗黒魔力を滲ませながら言うと駆藤はビクッと一瞬だけ体を強張らせた。悔しそうに渋々と、ゆっくり手を放して後ずさり、ソファーに腰を下ろした。
駆藤の体内に流れる俺の血が、眷属の本能が「従え」と命じたのだ。やろうと思えばどんなに嫌な命令だろうと、最終的には強制させることができるのである。
剣を持たせてアウラのように「自害しろ」と命じれば、本当に自害するほどの支配力を持つ。モルモットヴィランで実験してみてわかったことだ。
正式な眷属でやるのはこいつが初めてだ。試しにやってみたけどなんか申し訳ない気分だし、やってることは毒親みたいで嫌だ。必要な時以外にはできたら使いたくないなこれ。
モルモットヴィランで実験した時は、大して何も感じなかったのにな。
「見た目や“異能”だけじゃないのか・・・・・・」
「当然だ。強大な力であるが故にそれ相応の制約を設けてある。改めて言うが、そなたは元の人間に戻れぬぞ」
「「悪魔の契約」・・・・・・理解していたつもりだが、覚悟と考えが甘すぎたか」
ソファーに背中を沈めて天井を仰ぐ駆藤。その魂にほんの微かな後悔の色が見えた。しかし、これはまだ序の口。問題は屋敷へ戻ってきてからだ。
「帰ったぞ」
「おかえりなさーい」
「・・・・・・・・・ああ」
待っていたのは普段通りの
屋敷の中にいるヴィジランテたちは1步引いてこっちを見てる。駆藤に向けられた視線には、恐怖や嫌悪や拒絶といった負の感情が込められていた。
駆藤の仲間たちで何人かが一応、「お、おかえりなさいリーダー」と声をかけてきたが、見るからに怯えている。頭で理解していても、あの暴れっぷりを見たら仕方ないか。
駆藤本人も今までと変わった仲間たちの態度に困惑したが 、すぐに察して悲しそうな目をして黙り込んだ。
「四ノ森よ。土産だ。受け取れ」
気まずい空気をなんとかしようと、武器や物資を大量に積んだ車両を神輿のように担いだスケルトン軍団を前に出す。
「おお・・・・・・これは」
門の前にズラリと並んでいく土産に思わず圧倒され、声を失う四ノ森。いいリアクションだ。
「故障品も混ざってあるが、それらの修理はそちらに任せる」
傷ついたり返り血がベットリ付いた物もあるけど、後の点検と修理は自分たちでやれよ。そこまで面倒は見ない。さて、それよりも────
「そなたらに問おう。『ヴァンパイア』の力を見て、どう思った?」
1線を引くように門の向こうでこっちを見るヴィジランテたちに声をかける。何人かはビクッとした。
「恐ろしいと思ったか?・・・・・・それとも、素晴らしい力だと思ったか?」
ヴィジランテたちの間に動揺が走る。魂の色を見ると、前者はざっと9割近く。だけど、残り1割ちょっとはそうでもない。迷っている者、極少数の心から欲しいと思っている者たちだ。
「駆藤を見てわかったであろう。『ヴァンパイア』を得れば強大な力を得られる。ただし、男は女となり、姿形は別人へと変貌し、2度と元には戻れぬ。私の血を飲み眷属になるか、今1度よく考えてから決めることだ」
無理やり血を飲まされると思ってたみたいで、酷く動揺するヴィジランテたち。
俺は強制しない。自分の頭で考え、自分の意思で決めさせる。
「では、四ノ森よ。我々は帰らせてもらう。明日は今回と同じ時間帯に来る。その時に今後の予定について話そうではないか」
「明日も来るのか・・・・・・」
おい、露骨に嫌そうな顔すんな。お土産やんねーぞ。
「また会おう!」
与一と駆藤の肩を抱き寄せる。
さて、アフターケアとフォローしないとな。
────────────────────────
光が消えると、見覚えのある部屋が広がった。悪魔城の客室に立っていた。
「おかえりなさいませ」
振り返るとドアの前にアイリがいた。俺たちに向かって恭しくお辞儀をした。まさか、俺たちが来るとわかっててスタンバイしていたのか?
「留守中に何か変わったことは?」
「特にございません。望月先生とおなかの赤ちゃんたちの容体も変わりなく、安定しております 」
アイリは質問に笑顔で返した。
ドラキュリアは顎に手を当てて考え込むような仕草を見せると、俺に顔を向けた。
「駆藤、私と来い」
「は?」
理由を聞く前に首根っこを掴まれた。
「なっ!?」
「では、アイリよ。残る2人を浴場へ連れて行け。湯浴みが済んだら食事を用意するように」
「かしこまりました」
俺を無視して勝手に話を進めると、ドラキュリアは俺を引っ張る。
「おい、放せェっ!!」
首根っこを掴む手を殴るも、鋼鉄のように硬い感触で拳が痛い。指を引き剥がそうとしても、万力のように固定されていてビクともしない。
「マイヒーロー!!」
「リーダー!!」
与一とブルースが俺に手を伸ばした。思わず2人の手を取ろうとする。
「お2人はこちらでございます」
アイリに首根っこを引っ張られ、2人の手が空を切った。
「案ずるな。何も悪いようにはしない。アイリ、連れて行け」
「はい、ドラキュリア様」
藻掻く2人を尻目に、ドラキュリアは俺を引き摺って客室を出た。程なくして、与一とブルースがアイリの怪力に引き摺られて出てくる。俺とは逆方向へ遠ざかり、廊下の角の向こうに消えるまでずっと俺を見ていた目は、どこか複雑そうに見えた。
「どこに連れて行く気だ?」
「そなたの姉たちの元へだ」
姉たち?こいつは何を言ってるんだ?俺に身内はもういない、天涯孤独の身だ。
ドラキュリアはドアを開けて部屋に入る。とても豪華な部屋だ。俺たちが使っていた部屋は高級ホテルのように豪華だったが、この部屋はより広く家具や内装もワンランク上だ。まるでヨーロッパの王族が使うような部屋で、一際豪華な天蓋付きのキングサイズベッドと、そこに眠る女性の姿が目に入った。
「さあ、そなたの姉たちだ。挨拶しろ」
ドラキュリアは首根っこから手を放し、俺の背を押してきた。たたらを踏みながら前に出て女性を見下ろす。
ゆったりとした白いワンピースパジャマに身を包んだ、白い肌と尖った耳が特徴的な女性だ。年齢は30代になるかどうか。今の俺とドラキュリアより若く見える。そして目につくのはポッコリ膨らんだ腹。毛布の上から自己主張するその大きさはおそらく、臨月かそれに近いサイズだった。
「例の妊婦か」
「如何にも」
ドラキュリアは女性の脇に立つと、そっと指先で妊婦の腹に触れて優しく撫でる。縦横、中心といろんな箇所から触れていく。触診か?
「ふむ、確かに問題はないようだな」
ドラキュリアの顔は相変わらず能面のようにピクリともしないが、どこかホッとしてるように見える気がした。
「私の眷属は5人いる」
ドラキュリアは徐ろに語り出した。
「最初は令裡。次にこの女、望月桐。その赤子たち。そして駆藤、そなただ」
妊婦、腹、そして俺を指差す。
「・・・・・・お前からすれば、順番的に俺が新参。末妹になると言うことか」
「そうだ」
つまり、俺はドラキュリアを母と、あの黒い少女とこの妊婦とその腹にいる赤ん坊たちを姉と呼ばなければならないのか。頭が痛くなりそうだ。
「血の繋がりはなくとも、そなたたちには私の血が流れている。その証拠に、この妊婦から何かを感じぬか?」
言われて妊婦に意識を集中すると、ぼんやりと「何か」を感じる。嫌な感覚じゃない。むしろ、穏やかで落ち着くような不思議な感覚だった。
「・・・・・・よくわからん」
「そうか。なら、触ってみよ」
ドラキュリアは俺の腕を掴んで妊婦の腹を触らせた。毛布越しにコポコポと泡立つような水音が手に伝わる。
「ん!?動いた?」
グッと内側から押されるように腹が動いた。
鏡合わせのように向き合って羊水に浮かぶ、玉のような胎児たちのイメージが頭に流れる。
「赤ん坊たちはもうすぐこの地獄の世界に生まれてくる」
ドラキュリアはどこか張り詰めたような、真剣な声音で語り出した。
「認めたくはないが、あの男が生きている以上この悪魔城も絶対に安全とは言えぬ。近い将来、やつは軍団を率いてこの城に攻めてくる。ここが最も危険な場所になるであろう」
確信を持っているかのように言うドラキュリアは、妊婦の腹に手を置きながら話を続ける。
「眷属にして救った以上、私も全力でこの者らを守るが、万が一の時はそなたが守れ」
「・・・・・・俺が何もせず見殺しにするように見えるか?」
いろいろと勝手なことを言いやがる。俺は悪魔にこの身を売り渡したが、か弱い母子を見捨てるほど落ちぶれていない。
「お前が死んでもこの親子は守る。そして「魔王」は殺す。言われるまでもない」
「・・・・・・それを聞いて安心した」
見くびるなよドラキュリア。例え「鬼」になろうとも、俺の根本的な部分は変わらない。
四ノ森さん。善良な貴方はこの悪鬼とそれに身を捧げた俺とはこの先も相容れないだろう。だけど貴方は奥さんと息子のために、ドラキュリアはこの母子のために「魔王」を殺して今より良い世の中にしようと戦っている。目指す場所に向けて最善を尽くす点は同じだ。そして俺も、最後まで諦めずに最善を尽くそう。
だから、俺を見ていてくれ。
「・・・・・・う、うーん」
唸り声が聞こえた。ドラキュリアは瞬時に妊婦を見下ろす。つられてベッドを見ると、妊婦が眉間にしわを寄せてうっすらと目を開けながら右手を空中に伸ばしていた。
「目覚めたか」
淡々とそう呟くドラキュリアの声は、どこかうれしそうに聞こえた。
────────────────────────
弧里板区・郊外、死柄木与一捜索隊キャンプ地。
厚手の黒いカーテンがかけられた大型バンの車内にて、捜索隊の指揮官を務めるヴィランが無線をかけていた。
『・・・・・・何もなかった?』
「はい、孤里板区にはこれと言った痕跡は何もありませんでした」
無線の向こうから困惑したようなうなり声が聞こえる。
『そこにはヴィジランテがいると情報があったはずだよ?』
「はい。ですが、拠点の守りを固めて引きこもる準備に忙しいようです」
『逃げた連中を匿ってる可能性は?』
「ないと思われます。そちらに送った映像通り、戦えない女子供を数多く抱え、自分たちの身を守ることで精一杯の様子。貴方の怒りを買うリスクを背負ってまで、よそ者を匿う余裕はなさそうです。無視しても問題ないかと」
指揮官は淡々と答えると、無線の向こうに数秒の沈黙が流れる。
『・・・・・・・・・僕も今いる場所の捜索を終えたら近畿に入る。君たちは他の捜索隊と合流して京都から撤収し、奈良県へ南下しろ』
「承知しました。オール・フォー・ワン」
指揮官は無線を切り、分厚いカーテンがかけられた後部席に目を向けた。
「これでよかったですか?ご主人様」
「ええ。いいわよ」
可憐な少女の声が返ってカーテンが開いた。カーテンで光を遮った後部席から、長い黒髪と黒いセーラー服、それを際立たせるほど白い肌が特徴的な美少女が姿を見せた。魔王の第一の眷属、嘉村令裡である。
ギラリと令裡の目が赤く光る。その目を見た指揮官の目から光が消え、表情が抜け落ちた。
「命令よ。京都の全捜索隊に連絡を取り、オール・フォー・ワンの命令としてここに集まるように言いなさい」
「・・・・・・はい。ご主人様」
指揮官はボンヤリとした表情から一変、夢見心地のような恍惚とした笑みを浮かべて無線機に手を伸ばした。
その様子を片目にカーテンを閉め、令裡は一息つく。
「これで時間は稼げたはず・・・・・・」
令裡はイスに体を沈めて目を閉じ、主人との会話を思い返した。
『魅了・・・・・・ですか?』
『ああ。そなたには、あの男の部下共を魅了し、誘導してもらいたい』
作戦は具体的にこうだ。
1つ、京都に侵入したオール・フォー・ワンの捜索隊に接触し、指揮官クラスのヴィランたちを魅了して操る。
2つ、魅了した指揮官たちにオール・フォー・ワンへ、「京都に与一に関する手がかりはなかった」と虚偽報告させる。
3つ、オール・フォー・ワンの命令という大義名分の下、捜索隊を京都の外に出す。
捜索隊を京都から遠ざけ、オール・フォー・ワンを誘導するのが目的だ。
『京都にいる捜索隊の現在地はすべて把握済みだ。無論、指揮官たちもだ』
ドラキュリアが指をパチンと鳴らして腕を横に伸ばすと、開いた窓から10数匹のコウモリが部屋に入ってきた。
『このコウモリたちが案内だ。さらに、指揮官たちの周辺にもコウモリたちがいる。すぐに見つかるだろう』
ドラキュリアの腕に止まったコウモリたちは「キー」と鳴く。
『そなたはすでに魔眼を使いこなせている。並のヴィランの10人や20人、操ることも容易であろう』
『・・・・・・ええ。できますわ』
令裡はこれまで、食料兼実験用のモルモットとして捕らえたヴィランをサンドバッグに、何度も『ヴァンパイア』の力を試してきた。その1つが魔眼。自身の目を見た対象を魅了し、思うがままに操る。令裡の魔眼は、命令すればすぐにでも自害させることすら可能なレベルであった。
『わたしはヴィジランテから新たな眷属を見定め、戦力になるべく鍛え上げたい。その間にあの男の目を逸らし、時を稼ぐ必要があるのだ』
『どれほどお時間が必要ですか?』
『最低でも2ヶ月。あわよくば、1年以上。魔物の召喚、そしてわたし自身の修行も含め、いくらあっても足りぬのだ』
2ヶ月。原作知識によると、死柄木与一が救出された後にオール・フォー・ワンに殺されるまでの期間だ。
令裡は思う。死柄木与一が死ぬのは別にどうでもいい。あの男と駆藤とブルースは悪魔城での平穏な暮らしに突然転がり込んできた不快な異物。むしろ早く消えて欲しいくらいだ。
しかし、ドラキュリアはそう思ってない。手厚く汚れた体を拭いて看病した。上等な回復薬と清潔な衣服、豪華な食事と温かい寝床まで与えて世話をした。さらに、何の力もないくせに実現不可能で身の丈に合わない理想を一丁前に口にする度し難いほど愚かな男に、わざわざ丁寧に現実を教えた上で選択肢まで与えた。
今でも胸の中で招かれざる客への怒りと嫉妬の炎が熱く燃え上がっている。けれど、ドラキュリアの死柄木与一への行動は前世の生い立ちや経験によるシンパシーからくる同情で、優しくしてあげているのだと冷静な頭で理解している。なんなら、尊重したいとすら考えている。
二律背反な思いは一旦置いといて、今の問題を考える。原作通りに進むということは、憎きオール・フォー・ワンが愛する主を差し置いて、世を支配することを意味する。弟も許せないが、兄はもっと許せないし我慢ならない。
『そなたにしか頼めぬ。やってくれるか?』
ドラキュリアの真っ赤な瞳が令裡を映す。反射して見えた自身の表情は落ち着いているが、その瞳の奥には様々な感情が渦巻いているのが見えた。
答えはとっくに決まっている。
『ドラキュリア様。この大役、謹んでお受けします。必ずやご期待にお応えしましょう』
令裡はその場で跪いて答える。
今は自分の感情なんて二の次、三の次もいいところだ。主の命令は絶対。主の願いは何としても叶える。眷属として生まれ育った以上それが第一だ。
それに、死柄木与一は病弱な人間だ。長く生きられないし、眷属になって生き永らえようとしても『ヴァンパイア』への変異に肉体が耐え切れずに死ぬはず。そうすれば駆藤とブルースもこの悪魔城からいなくなるはず。永い夜を生きるヴァンパイアたる自分にとって、ほんの短い時間。それまでの辛抱だ。
『では早速、行って参ります』
主にカーテシーをする。ヴァンパイアらしく、淑女らしく優雅な動きだと自負する所作だ。
頭を上げて主の尊顔を見上げる。相変わらず能面のように無表情な美しい顔だが、身に纏う気配はどこか期待に満ちている。
ほんの数秒ほど、主に微笑んでコウモリたちと共に窓から飛び出す。夜空には、眩い満月が浮かんでいた。風を切り裂く音、高速で変わり行く景色、主に大役を任された喜びと合わさって気分が高揚する。
月明かりに照らされながら空を舞い、弧里板区の郊外へ。ヴァンパイアの魔眼で遥か上空からコウモリが集まって飛び回る場所を見つけた。そこはテントと車両の集合地で、邪な気配がいくつも動き回っている。捜索隊だ。
『・・・・・・・・・フフ』
見つけた。思わず笑みが溢れる。
キャンプ場へと急降下。コウモリが飛び回っているテントの前に音もなくフワリと舞い降りる。群れの中から1匹のコウモリが目の前に飛んでくると、「キー」と鳴いてテントの方を向く。
『捜索隊の隊長はあのテントかしら?』
コウモリはまた「キー」と鳴いてテントの屋根に止まる。
『わかったわ』
令裡の全身が白く変色し、濃霧になる。テントの僅かな隙間から潜り込んでいき────
「令裡様、令裡様・・・・・・」
男の声が聞こえた。目を開けると、指揮官のヴィランがカーテンの向こうから声をかけてきた。
「京都に散らばった各班の班長たちを集めました」
チラリと横の窓を見ると、カーテンの隙間から日の光は差していない。いい時間だ。
「今、出るわ」
ドアを開けるとヴィランが10人、バンの前でズラリと並んでいた。
「数が多いわね。今の京都にいる捜索隊は、あなたの隊を含めて3組じゃなかったかしら?」
主と腹心と自分の3人で1つ潰し、伝令のコウモリによると、新しい眷属に1つ潰され、京都に残る捜索隊は3つだったはず。令裡の問いに指揮官は首を横に振る。
「いえ、今日来たばかりの隊を含めて11です」
予想以上に多く、そして入ってくるのが速い。下手すると、総数は千人を超えるだろう。オール・フォー・ワンは京都が怪しいと睨んでいる可能性に、令裡は思わず眉間にしわを寄せた。
「おい!何を話を進めてるんだ!!」
指揮官のうち1人が声を上げた。
「こっちはクタクタの状態で京都まで来たんだぞ!?それに、その女は一体だれだ!?」
令裡は自分の方を向く指揮官たちの顔を見る。寝不足で隈ができた目で訝しそうに見たり、その美貌にぼんやりと見惚れてる。
「これで全員?」
「ええ。このまま全隊、奈良へと南下する予定です」
指揮官の答えに「そう」と短く返し、ニッコリと笑顔を見せて指揮官たちの前に1歩出た。
「ご機嫌よう、捜索隊指揮官の皆々様。私は今夜からあなた達と行動を共にすることになりました」
「は!?何を言ってやがる!?」
「答えろ!お前は一体だれだ!? 」
苛立ちを隠さない指揮官たちは怒鳴り声を上げるが、令裡は臆さず涼しい顔のまま。
「私は、そうね・・・・・・」
令裡は目を伏せて顎に手を当てながら数秒ほど考え込むと、ゆっくりと顔を上げた。
「・・・・・・ゼロ。ゼロと呼びなさい」
令裡の目が赤く光った。
・令裡
眷属No.1。後世に生まれてくる根津校長と同じ、『個性』を持つ動物の(令裡の場合は後天的)ヴァンパイア。
ドラキュリアの命令により捜索隊を掌握中。ぶっちゃけ、時間が押していなければ魔眼で魅了しなくても、持ち前の美貌と甘い声で捜索隊を落とすことができる魔性の女。
イメージCVは豊崎愛生。
・望月桐
眷属No.2。ドカ食いはしない。
遂に目覚めたアラフォー妊婦。ブルースに次ぐ研究職で、無理しない程度にブルースと共同でドラキュリアの『個性』について調べてもらう予定である。
出産まで後、〇〇日。
イメージCVは久川綾。
・望月の双子ちゃんズ
眷属No.3とNo.4。ドカ食いはしない(できない)。
後、〇〇日で生まれてくる双子の女の子たち。
彼女たちの今は亡き父親は氷叢家の人間で、轟くんの高祖叔父(ひいひいお爺ちゃんの弟)に当たり、彼女たちは母方の従曾祖伯叔母(ひいお爺ちゃん・お婆ちゃんのいとこ)になる。
イメージCVは未定。
・駆藤
眷属その4。後の世に生まれてくる爆豪光己にそっくりなTSヴァンパイア。
無自覚のうちに初めて会う望月母娘に親愛や庇護欲を感じ出している。
イメージCVは山崎和佳奈。
全然話が進まねえ・・・・・・
今年も残すところ後わずか。皆さんも、悔いを残さないよう過ごしてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
誤字報告や感想をいただけると大変励みになります。
それではまたお会いしましょう。