ドラキュラ?いいえ、ドラキュリアです   作:花の右人

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お待たせしました。2話目になります。
拙い駄文ですがどうぞ。


2. 1回目の復活と巨乳

 

 こんばんは。そしておはよう。ドラキュリアです。

 

 目が覚めたら知らない天井……ではなく、見覚えのある天井だ。そして自分は棺桶の中で眠っていた。身体を起こして辺りを見回すと、ここは蝋燭の灯りに照らされた何もない部屋だ。

 俺は目覚めてすぐ、慌てて頭から足まで全身を触った。火傷はない。切断されていない。穴は開いていない。どこも怪我はないことに安心した。

 

「私は、あの時死んだ」

 

 声に出して目を閉じると、串刺しにされ、切り刻まれ、そして最後は日光に灼かれた時のことを思い出す。言葉にできない激痛と身体の大部分を失う喪失感を、今もハッキリと覚えている。あれは決して夢なんかじゃない。確かな現実だ。

 オール・フォー・ワンに殺された時のことを思い出すと、頭が締めつけられるように痛くなってきた。鉛のように重い。目の前がグルグル回る。息が苦しい。肺が圧迫されるようだ。猛烈に腹が痛い。ムカムカして吐き気もする。

 

 頭を抱えて腹を摩り、フラフラになりながら部屋を出ると、そこも見覚えのある豪華絢爛な玉座の間。柱にもたれかかり、深く息を吐く。

 

「「わたしは自らの力で蘇るのではない。欲深な人間共によって蘇るのだ」……」

 

 独り言のように、何度も耳にしたドラキュラのセリフを口にする。

 

 ドラキュラは殺されても復活できる。

 ドラキュラは人間の心の闇、負の感情や邪な欲望、そして世界の破滅を願う祈りの声を糧にして復活する。

 最長で100年。最短なら祈りと生贄を捧げる儀式をしたり、戦争によって無数の魂の怨念が生まれたら2〜3年の短期間で復活する。さらに、滅びる前より強くなるというサイヤ人のようなおまけ付きだ。

 復活するまでどれほど時間が経ったのかわからないが、多分100年は経っていないと思う。10年以下かも知れない。

 俺が死んだのは超常黎明期。ヒロアカの原作開始時より100年以上前、“異能”を持つ人間が増えて社会が崩壊し、秩序が失われて間もない時代だ。多くの人間が命を落とし、血と涙が流れ、嘆きの声と怨嗟の声に満ち溢れた混沌の世界は、ドラキュラの力を持つ俺にとって復活するのに最高の環境というわけだ。

 

「つらいな……」

 

 無性に泣きたくなってきた。

 生き返るとわかっていても死ぬのはつらい。

 ドラキュラは復活する度に、今の俺のようになっていたんじゃないかな?ドラキュラでも痛みや苦しみを感じる。描写がないだけで、内心では死の恐怖を感じていたんじゃないかと思う。

 

「お?目が覚めたようですね」

 

 後ろから女の声が聞こえた。

 さっきまでだれもいなかった。人の気配すらなかった。幻聴かと疑ったが、吸血鬼の嗅覚と聴覚が後ろにだれかいると否定する。

 

 勇気を出しておそるおそる振り返ると、そこには黒いローブに身を包み、フードを深く被って口元から上を隠した怪しい女が立っていた。

 

「おはようごさいます、ドラキュリア様。今は寝起きが最悪でつらいですよね?一旦、座りましょうか」

 

 女は明るい声で俺の手を取って玉座を指差す。

 

(うわ、柔らかっ!手、柔らかい!生前は母ちゃん以外、異性の手を繋いだことがない童貞の男だった俺には刺激的すぎる!)

 

 気遣ってくれるのはうれしいけど、玉座まで上るどころか手前まで歩くのもキツい。今すぐこの場で座り込みたいくらいだ。

 

「さあ。行きましょう」

 

(ああ、ちょっと。引っ張らないで倒れるから)

 

 前のめりに倒れかけ、1歩踏み出した俺の手に弾力のある柔らかい物が触れた。

 

「これは……」

 

 俺が触れたのは玉座の真っ赤なシート。さっきまで部屋の中心にいたのに、いつの間にか玉座の目の前に立っていた。

 

「ささ、どうぞ座ってください」

 

 となりで女がほほ笑んだ。かわいい。

 改めて見ても怪しい。だけど本当にかわいい。どういう仕組みかわからないが、フードの中は影で満たされていて真っ暗で、口元しか見えない。だけど口と声がかわいかった。

 ピンク色でふっくらした健康そうな唇。アイドルや女優のように真っ白で並びがいい歯。そして、幼さが残るかわいい声。身長は俺の半分あるかどうか。

 そして巨乳。見事な巨乳。ローブの下から自己主張するほどの巨乳だ。スイカップとはよく言ったものだ。今現在生まれてすらいないが、八百万がいたらこれくらいデカいのかも知れない。

 

 なんてキモいことを考え、身体を支えてもらいながら玉座にズシッと身体を沈める。

 これはいい。硬すぎず柔らかすぎず、丁度いい弾力が心地よい玉座だ。肘掛けの高さもいいくらいの位置だ。これならリラックスできる。

 

「ドラキュリア様、お飲み物をお持ちしました」

 

 ホッと一息ついてると、いつの間にか女が赤ワインが注がれたデッカいワイングラスを両手に抱えていた。 俺には丁度いいサイズだけど、常人と変わらない彼女が持っていると、特大の優勝カップみたいだ。

 

「ありがとう」

 

 受け取ってグラスの中身を見下ろす。ん?アルコールの香りがしない?いや、これはワインじゃない。

 

「……血か?」

 

「はい。血ですけど?」

 

 女は「それがどうかしました?」とばかりに首を傾げる。

 グラス越しの血は温かい。おそらく、2lは余裕で超える量だ。確か、人間は1lほど出血すると命に関わる。となると、この血の持ち主はもう……。

 

「今さっき、首を切り落として来ましたから新鮮ですよ」

 

 疑問に思ったのを察したのか、女はさも当然のように笑いながら言った。

 

「……人を殺したのか?」

 

「はい。殺しました」

 

 前世で殺人事件のニュースを見ても、「そんなことがあったんだ」とか「怖いな」と思うだけですぐ忘れた。でも、今は殺人事件の加害者が目の前にいる。

 人が殺される瞬間を見たわけじゃない。それでも、手に持っているグラスに注がれた血の匂いとその温度が、嫌でも人の死を感じさせた。

 

「わたしが人を殺したことに驚いてるんですか?」

 

 フードの闇の中で、赤い眼光が浮かんだ。

 

「大丈夫ですよ。殺したと言っても、相手はこの城に勝手に入って盗みを働こうとしただけじゃなく、止めに入ったわたしを犯そうとしたクズなんですから、気にやむことないですよ」

 

 女は当たり前のように言うと、グラスを指差した。

 

「そんなことよりその血、早く飲んだ方がいいですよ。冷めて香味が抜けちゃいますよ?」

 

 こいつ、「そんなことより」って言いやがった。

 強盗だけでなく、女を強姦しようとした反吐が出るクズとはいえ、虫を潰すように簡単に人を殺せるこの女に恐怖を感じた。

 

 俺は肘掛けにグラスを置くと、勢いよく立ち上がって女を見下ろした。

 

「貴様はいったい何者だ?何故ここにいる?何故わたしの名前を知っている?すべて答えよ」

 

 圧を込めて質問する。柔らかい手とおっぱいで意識を逸らされたが、もう惑わされない。

 

「うっ」

 

 強いめまいと吐き気に襲われた。

 

(まずい。急に立ち上がったせいで立ちくらみだ)

 

 前のめりに倒れ、階段を転げ落ち──

 

「おっとっと」

 

 なかった。

 女は倒れる俺を両手を広げて身体で受け止めた。

 俺の体重がどれくらいあるかわからないけど、並の人間の10倍あってもおかしくないくらいデカい身体を支えている。しかも、介護のように負荷がかからない優しい支え方で痛くもない。

 

 それより、胸!当たってる!俺の胸の先にたわわな胸が当たってる!柔らかい!体格差がすごいから小さく感じるけど、人間サイズだとものすごく大きな胸が俺の胸の先に当たってる!!

 

「よいしょっと」

 

 女はそっと俺の身体を玉座に戻した。もう終わりかよ。幸せな時間って短いな。

 

「ドラキュリア様、今のあなたはオール・フォー・ワンに殺されたショックで弱っているんです。精神性ストレス?ってやつですよ」

 

 女は真剣な声音で言った。

 何故、俺がオール・フォー・ワンに殺されたことを知っているのかわからんが、この女の言う通り今の俺は歩くことも大変な状態だ。

 

「さっきの疑問に答える前に、まずはその血を飲んでください。今の状態で聞いても頭に入らないですよ」

 

 女はもう1度グラスを指差した。

 人間の生き血か。今の俺は吸血鬼だが、血を飲めと言われると抵抗感があった。

 

「ほら、ちゃんと飲んでください」

 

 おまえは俺の母ちゃんかよ。

 女に急かされ、おそるおそるグラスを口に近づける。

 

「……ん?」

 

 いい匂いだ。生臭い鉄の臭いかと想像していたが違う。フルーツジュースのように甘い香りで、「飲みたい」と思える香ばしい匂いだ。

 グラスを傾けて一口飲むと、口の中で甘味が広がった。とても濃厚だけど雑味がほとんどない。ブランドの果物を絞って贅沢にジュースにしたような高級感を感じさせる味だ。

 

「ちゃんと飲んだみたいですね」

 

 女は口元に笑顔を浮かべていた。

 気がつくと、グラスが空になっていた。一口飲むつもりが、全部飲んでしまった。

 

「これは……」

 

 激しい頭痛やめまい、胸を締め付けるような息苦しさ、腹のムカつきと吐き気が少しずつ、ゆっくりと引いていくのがわかる。

 

「少しマシになったでしょう?つらい時は美味しいものを口にするのが1番ですよ」

 

 女はクスクス笑いながら言った。

 

「…言われた通り飲んだ。もう1度聞く。貴様はいったい何者だ?」

 

 ふたたび圧を込めて問いかける。

 味と匂いで血に毒が仕込まれてないことはわかっていた。だけどそれは、信用を得て油断させるための布石かも知れない。

 俺がドラキュリアだと知る人間はこの世界でただ1人、オール・フォー・ワン以外いない。この女はもしかしたら、俺の復活をすぐ察知したオール・フォー・ワンが送って来た刺客だとしたら?そう考えたら油断できない。

 

「わたしのことをオール・フォー・ワンの手先かと疑ってるんですよね?わたしはドラキュリア様の味方ですよ」

 

 内心を見透かしたように言って、女はフードを脱いだ。

 トンボ玉のヘアゴムで結んだ、深紅色の癖のあるツインテール。同じ色の瞳。年は20代前半の若い女だ。

 

「初めまして。あなた様の永遠の僕、死神です」

 




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