お待たせしました。8話目になります。
拙い駄文ですが、お楽しみいただければ幸いです。
こんばんは。ドラキュリアです。あれから1年以上経ちました。今日も
「おっ?あたいより先に来てるとは感心感心」
フッと大鎌を担いだ
いきなりだが、俺のヴァンパイアアイの動体視力はものすごい。意識を集中させれば、並大抵のものはスローモーションになって見える。
「5分前行動は基本だ。しかし、肝心のあやつはまだ来ていない」
「そうみたいですねぇ。全く、どこに行ったんだか」
頭を掻きながらぼやく
爆音のような大声が闘技場に響き渡った。
常人の10倍近い質量を誇る巨大ヴァンパイアボディが限界まで息を吸って出した大声だ。プレゼント・マイク。いや、山田先生が舌を巻くと自信を持って言える大音量で、すぐ近くにいた
「ちょっとぉ、急に大きい声出さないでくださいよぉ」
上を見ると蝙蝠の鳴き声が聞こえてきた。1匹や2匹じゃない。かなりの数だ。そして、どこからともなく何十、何百もの蝙蝠の群れが飛んできた。群れは俺たちの頭の上を飛び回ると、1つに集まり出す。そして、群れはボフッと煙を立てて1匹の巨大な蝙蝠に姿を変えた。
「キー!!」
バッサバッサと大きな音を立てて、蝙蝠は俺たちの前に下り立った。
目の色と翼の皮膜が赤いことを除けば、その姿は普通の蝙蝠と変わらない。だが、普通の蝙蝠の何十倍もデカい。翼を広げたら全幅10m以上、俺の身長の倍以上ある。体長も2mあり、余裕で人1人を攫って飛べそうだ。
ヴァンパイアの化身として恐れられる巨大な蝙蝠。
初代悪魔城ドラキュラで最初のステージに登場したボスキャラだ。ただのデカい蝙蝠だと侮ることなかれ。こいつも俺のように蝙蝠の群れに分裂できるし、口から火炎弾を撃てる。生まれて1年ちょっとしか経っていないが、俺と
「キュッキュ」
「あたいよりデカいのに甘えんぼちゃんですね」
「それにしても、召喚されてからそんなに時間が経っていないのに、ずいぶんとデカくなりましたね」
この蝙蝠は俺がここで召喚したあの小さな蝙蝠だ。あれから俺はこいつを気に入って、ペットとして育てることに決めた。初めて召喚した魔物で思い入れが強いし、何よりすごく可愛かったからだ。
大きくて円な目。犬のように前に伸びた鼻と口。フワフワな黒い毛。翼が生えた小型犬の赤ちゃんみたいですごく可愛いんだよ。プチトマトやリンゴやバナナを俺の手から食べるとこなんか、見ていて胸がキュンとする。
それがどうしてこんなに大きくなったのか。それはこの蝙蝠がいつも俺の側にいたからだと、俺は考えている。
蝙蝠はヴァンパイアの化身や使い魔とも言える存在だ。それが魔王であり、真祖のヴァンパイアであるドラキュラの魔力を1年以上浴び続けた結果、普通の魔物からボス級の魔物に変異したのかも知れない。
体の大きさに比例して、知能も成長していた。
贔屓目抜きでこの蝙蝠は、悪魔城の周辺を飛び回る他の蝙蝠と比べ物にならないくらい賢かった。大きくなる前から声をかけると鳴いて返事するし、首を振って「はい」か「いいえ」で意思疎通ができた。それからさらに成長し、俺が
そして外見に違わずこいつは強かった。
試しにスケルトンやアーマーナイトと戦わせて見た結果、余裕の圧勝だった。恐ろしいスピードのタックルをぶちかましてスケルトンを粉砕。蝙蝠の群れに分裂して鋼鉄のアーマーナイトをズタズタに引き裂き、とどめに口から吐く火炎弾でドロドロに溶かした。流石はボスを務める魔物だ。
「それにしても、ドラキュリア様が最初の眷属に人間じゃなくて、蝙蝠を選ぶとは思いませんでしたよ」
「こやつを召喚して一目見た時、最初の眷属にしようと思ったのだ。今では我が娘も同然だ」
「え?娘?こいつ、メスだったんですか?」
「キー」
「そうだよ」と返事するように
とにかく、俺はこいつが可愛かった。こいつが甘えんぼなのもあって、トイレ以外いつもいっしょに過ごすくらいだ。いっしょに食事を取り、いっしょに修行と勉強に励み、いっしょに空を飛んで追いかけっこをして遊んだ。もちろん、悪いことをした時は何がいけなかったのか丁寧に教えて叱った。まるで親になった気分だった。
そして今日、俺はこいつを眷属にする。
あれから1年修行してきた。血を飲んで
「蝙蝠よ。今日はそなたが生まれた誕生日だ。誕生祝いとして、そなたに私の血を与え、眷属にしたいと思っている。受け取ってくれるか?」
魔物にとって、魔王に血を与えられるのはとてもうれしいことだと思う。もし嫌なら、高級フルーツの盛り合わせや新しいおもちゃをプレゼントを用意するけどね。
「キー!!」
俺の問いに
「そうか、受け取ってくれるのだな」
想像以上によろこんでくれてうれしい。あと、モフモフの毛が気持ちいいです。
「血を与える前に、1度そなたの血を吸う必要があるが大丈夫か?」
すぐ血を飲ませればいいんじゃないのかって?血を吸うのも、血を飲ませるのもこいつが初めてなんだよ。だからこう、特別な感じにしたいんだ。
「キュッキュ!」
「
「あいよ!」
ぶっちゃけ、俺はヴァンパイアらしく首筋に牙を突き立てて血を吸うのは今回が初めてだ。下手な噛み方で怪我させそうで怖い。それに、可愛がっていたこいつの首を噛んで血を吸うのに抵抗感がある。やることが赤ちゃんにキスするのと訳が違うからな。うーん、どうしようか。
…………よし。黒髪ロングの色白美少女だと思い込んでいこう。脳内で擬人化すればイケるイケる。
「では、始めるぞ。痛かったらすぐに言うのだぞ」
「キー!」
ビビるな俺。前世で培ったオタクの妄想力を働かせろ。相手はデッカい蝙蝠じゃない。キス待ちの清楚な黒髪ロングの色白美少女だと思え。
(よし、よし!見える。見えるぞ!
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ドラキュリアは
恐る恐る首筋に口を近づけて牙を当てると、遂に来たとその体に力が入り強張る。首を2ヶ所同時に刺されるのだ。命の危険はないとわかっていても怖くて緊張するのは当然だ。ドラキュリアは
「案ずるな。恐れることは何もない」
耳元で優しく囁き、数分ほど頭と背中を撫でると
ドラキュリアは意を決してズブリと牙を突き立てる。ヴァンパイアの牙は
すぐに牙が抜かれて違和感が消えたのも束の間、今度は2つの何かが傷口に触れてまた痛みが襲ってくる。柔らかく、最初と比べると痛みは少ない。それが唇と気づくと甘噛みのように優しく、絞るように傷口から血を吸われた。時折傷口に舌が触れる。傷口をなぞるように舐められると、スーッと痛みが引いていくのを感じた。
痛みが消え、鼓動とリップ音だけが聞こえる。血と共に体温が抜けていく。出血と体温低下は命の危機だ。それなのに不思議と心地よく、腕の中で頭がボンヤリしてだんだんと眠くなってくる。ウトウトしかけた時、唇が傷口から離れて意識が戻った。
目を開けると、ドラキュリアは右腕を離していた。ヴァンパイアが持つ再生力の応用か、中指の爪を鋭く伸ばして自らの手首を躊躇いなく切り、ドクドク血を流す。
「さあ、飲むがいい」
ドラキュリアは血を流す手首を
時間にして数分ほど血を飲んでいると突然、異変が起きた。
「ギイィッ!!??」
全身に燃えるような激痛が走り、
「ギイイッ!!!ギュイイイィィィィッッッ!!!」
激痛のあまり暴れる
側で見守っていた
ボワッと音を立てて、
暴れる
勢いが弱まっていいく炎の中で
逞ましい大きな翼は皮膜が溶けて骨だけを残すように短く小さくなり、5本の指がある腕に変わる。ピンと立っていた大きな耳は縮んで丸くなり、犬のように突き出た鼻と口は縮んで人間の輪郭へと変わる。燃えた毛皮はボロボロと剥がれ落ち、その下から産毛もない雪のように白い肌と、絹のように柔らかくきめ細かい、毛皮と同じ黒の長い髪が露わになった。
炎が消えると、ドラキュリアの腕の中にいた
少女はゆっくりと目を開けた。瞳の色は
「ドラキュリア様」
可愛らしい声を発し、恍惚とした笑みを浮かべた唇からヴァンパイアの牙が覗いた。
魔物図鑑
・
ヴァンパイアの化身として恐れられる巨大な蝙蝠。別名、吸血蝙蝠。
「初代」、「血の輪廻」、「月下の夜想曲」に登場するボス。
ドラキュリアが初めて召喚した魔物の蝙蝠がドラキュリアの魔力を1年間浴び続けたことで変異した。名前はまだなく、成長して眷属になってから与えられる予定。
知能は人間レベルの高さで、言葉を理解して筆談でコミュニケーションを取れるほど。ドラキュリアと
・圧倒的な巨体
・蝙蝠への分裂
・火炎弾
これらドラキュラとの共通点から、この作品の
悪魔城ドラキュラの世界は蝙蝠だけじゃなく、鷲、梟、烏、犬、兎、豹のような普通の動物もドラキュラの魔力の影響で凶暴化して魔物になって襲いかかってきます。その中から、
最後まで読んでいただきありがとうございました。