ドラキュラ?いいえ、ドラキュリアです   作:花の右人

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今回も難産でした。モチベーション上げなきゃ。
お待たせしました。8話目になります。
拙い駄文ですが、お楽しみいただければ幸いです。


8. 最初の眷属

 こんばんは。ドラキュリアです。あれから1年以上経ちました。今日も死神(デス)と闘技場で修行──ではなく、今日は新人を呼んで3人である儀式をします、

 

「おっ?あたいより先に来てるとは感心感心」

 

 フッと大鎌を担いだ死神(デス)が瞬間移動で音もなく、観客席に姿を現した。一息にジャンプして闘技場の中心に立っている俺の前に飛び下りる。

 いきなりだが、俺のヴァンパイアアイの動体視力はものすごい。意識を集中させれば、並大抵のものはスローモーションになって見える。死神(デス)の大きなお胸がジャンプ中に空気抵抗を受けてプルプル揺れ、着地する瞬間にタプンとバウンドするところまで、ハッキリ目に焼き付けられた。ああ、眼福眼福。

 

「5分前行動は基本だ。しかし、肝心のあやつはまだ来ていない」

 

「そうみたいですねぇ。全く、どこに行ったんだか」

 

 頭を掻きながらぼやく死神(デス)を尻目に空を見上げ、大きく息を吸った。元から大きい胸をさらに大きくするほど空気を吸い込み、そして────

 

 

 

「来い!!我が眷属よ!!」

 

 

 

 爆音のような大声が闘技場に響き渡った。

 常人の10倍近い質量を誇る巨大ヴァンパイアボディが限界まで息を吸って出した大声だ。プレゼント・マイク。いや、山田先生が舌を巻くと自信を持って言える大音量で、すぐ近くにいた死神(デス)がビクッと体を硬直させた。

 

「ちょっとぉ、急に大きい声出さないでくださいよぉ」

 

 死神(デス)はちょっと驚いただけで、頭を軽く振ってすぐに気を取り直す。常人なら吹っ飛んだり鼓膜が破れるレベルの大音量でも大したことないのは流石だ。

 

 上を見ると蝙蝠の鳴き声が聞こえてきた。1匹や2匹じゃない。かなりの数だ。そして、どこからともなく何十、何百もの蝙蝠の群れが飛んできた。群れは俺たちの頭の上を飛び回ると、1つに集まり出す。そして、群れはボフッと煙を立てて1匹の巨大な蝙蝠に姿を変えた。

 

「キー!!」

 

 バッサバッサと大きな音を立てて、蝙蝠は俺たちの前に下り立った。

 

 目の色と翼の皮膜が赤いことを除けば、その姿は普通の蝙蝠と変わらない。だが、普通の蝙蝠の何十倍もデカい。翼を広げたら全幅10m以上、俺の身長の倍以上ある。体長も2mあり、余裕で人1人を攫って飛べそうだ。

 

 大蝙蝠(ジャイアントバット)

 ヴァンパイアの化身として恐れられる巨大な蝙蝠。

 

 初代悪魔城ドラキュラで最初のステージに登場したボスキャラだ。ただのデカい蝙蝠だと侮ることなかれ。こいつも俺のように蝙蝠の群れに分裂できるし、口から火炎弾を撃てる。生まれて1年ちょっとしか経っていないが、俺と死神(デス)を除けば悪魔城で敵なしの強さを誇る魔物だ。

 

「キュッキュ」

 

 大蝙蝠(ジャイアントバット)はデカい見た目とは裏腹に可愛い鳴き声を発しながら近づいてくると、俺の足に頭をスリスリしてくる。

 

「あたいよりデカいのに甘えんぼちゃんですね」

 

 死神(デス)は微笑みながら言った。

 

「それにしても、召喚されてからそんなに時間が経っていないのに、ずいぶんとデカくなりましたね」

 

 この蝙蝠は俺がここで召喚したあの小さな蝙蝠だ。あれから俺はこいつを気に入って、ペットとして育てることに決めた。初めて召喚した魔物で思い入れが強いし、何よりすごく可愛かったからだ。

 大きくて円な目。犬のように前に伸びた鼻と口。フワフワな黒い毛。翼が生えた小型犬の赤ちゃんみたいですごく可愛いんだよ。プチトマトやリンゴやバナナを俺の手から食べるとこなんか、見ていて胸がキュンとする。

 

 それがどうしてこんなに大きくなったのか。それはこの蝙蝠がいつも俺の側にいたからだと、俺は考えている。

 蝙蝠はヴァンパイアの化身や使い魔とも言える存在だ。それが魔王であり、真祖のヴァンパイアであるドラキュラの魔力を1年以上浴び続けた結果、普通の魔物からボス級の魔物に変異したのかも知れない。

 

 体の大きさに比例して、知能も成長していた。

 贔屓目抜きでこの蝙蝠は、悪魔城の周辺を飛び回る他の蝙蝠と比べ物にならないくらい賢かった。大きくなる前から声をかけると鳴いて返事するし、首を振って「はい」か「いいえ」で意思疎通ができた。それからさらに成長し、俺が死神(デス)と図書館で魔術の勉強をしている時に、紙を口に咥え、羽ペンとインク瓶を親指と皮膜でつまんで持ってくると、器用に瓶の蓋を開けてペン先を濡らし、口に咥えたペンで綺麗に「ドラキュリア様」と書いたのを見た時は、死神(デス)といっしょに目を丸くして驚いたよ。

 

 そして外見に違わずこいつは強かった。

 試しにスケルトンやアーマーナイトと戦わせて見た結果、余裕の圧勝だった。恐ろしいスピードのタックルをぶちかましてスケルトンを粉砕。蝙蝠の群れに分裂して鋼鉄のアーマーナイトをズタズタに引き裂き、とどめに口から吐く火炎弾でドロドロに溶かした。流石はボスを務める魔物だ。

 

「それにしても、ドラキュリア様が最初の眷属に人間じゃなくて、蝙蝠を選ぶとは思いませんでしたよ」

 

「こやつを召喚して一目見た時、最初の眷属にしようと思ったのだ。今では我が娘も同然だ」

 

「え?娘?こいつ、メスだったんですか?」

 

「キー」

 

「そうだよ」と返事するように大蝙蝠(ジャイアントバット)は一鳴きした。ちなみに性別は風呂に入れた時にわかった。

 とにかく、俺はこいつが可愛かった。こいつが甘えんぼなのもあって、トイレ以外いつもいっしょに過ごすくらいだ。いっしょに食事を取り、いっしょに修行と勉強に励み、いっしょに空を飛んで追いかけっこをして遊んだ。もちろん、悪いことをした時は何がいけなかったのか丁寧に教えて叱った。まるで親になった気分だった。

 そして今日、俺はこいつを眷属にする。

 

 あれから1年修行してきた。血を飲んで死神(デス)と修行して殺される前より力を付け、ゲームのドラキュラのようにそれなりに戦えるようになってきた。ここで一旦修行を中断し、オール・フォー・ワンとの戦いに備えて人手を増やす方向にシフトする。普通の魔物とは比べ物にならないほど強い大蝙蝠(ジャイアントバット)を、信頼と信用できる眷属第1号にしてさらに強化するのが今回の目的だ。

 

「蝙蝠よ。今日はそなたが生まれた誕生日だ。誕生祝いとして、そなたに私の血を与え、眷属にしたいと思っている。受け取ってくれるか?」

 

 魔物にとって、魔王に血を与えられるのはとてもうれしいことだと思う。もし嫌なら、高級フルーツの盛り合わせや新しいおもちゃをプレゼントを用意するけどね。

 

「キー!!」

 

 俺の問いに大蝙蝠(ジャイアントバット)は翼を大きく広げ、バサバサ音を立てて飛び上がり、俺に向かって抱きついてきた。翼で俺を抱きしめて顔にスリスリする。

 

「そうか、受け取ってくれるのだな」

 

 想像以上によろこんでくれてうれしい。あと、モフモフの毛が気持ちいいです。

 

「血を与える前に、1度そなたの血を吸う必要があるが大丈夫か?」

 

すぐ血を飲ませればいいんじゃないのかって?血を吸うのも、血を飲ませるのもこいつが初めてなんだよ。だからこう、特別な感じにしたいんだ。

 

「キュッキュ!」

 

 大蝙蝠(ジャイアントバット)は首を縦にブンブン振って、「さあどうぞ!」と言わんばかりに上を向いて喉を晒し出す。

 

死神(デス)よ。念の為、治療道具を持て。私も初めてなのでな。万が一に備えよ」

 

「あいよ!」

 

 死神(デス)は元気よく返事すると、虚空からフッと白い救急箱が現れて死神(デス)の手に落ちた。

 

 ぶっちゃけ、俺はヴァンパイアらしく首筋に牙を突き立てて血を吸うのは今回が初めてだ。下手な噛み方で怪我させそうで怖い。それに、可愛がっていたこいつの首を噛んで血を吸うのに抵抗感がある。やることが赤ちゃんにキスするのと訳が違うからな。うーん、どうしようか。

 …………よし。黒髪ロングの色白美少女だと思い込んでいこう。脳内で擬人化すればイケるイケる。

 

「では、始めるぞ。痛かったらすぐに言うのだぞ」

 

「キー!」

 

 大蝙蝠(ジャイアントバット)はうれしそうに返事すると、目を閉じて首を晒す。まるでキス待ちの女の子みたいだ。

 ビビるな俺。前世で培ったオタクの妄想力を働かせろ。相手はデッカい蝙蝠じゃない。キス待ちの清楚な黒髪ロングの色白美少女だと思え。

 

 

(よし、よし!見える。見えるぞ! 大蝙蝠(ジャイアントバット)がキス待ちの黒髪ロングの色白美少女に、「あのキャラ」に見えるぞ!色気がすごい魔性の美少女だ!!それじゃあ、いただきます!!)

 

 

 

 ──────────────────────────

 

 

 

 ドラキュリアは大蝙蝠(ジャイアントバット)の背中と後頭部にソッと手を回して体を引き寄せ、割れ物を扱うようにゆっくり抱きしめる。温かく、トクントクンと鼓動が聞こえてくる。緊張しているのがよく伝わる。

 恐る恐る首筋に口を近づけて牙を当てると、遂に来たとその体に力が入り強張る。首を2ヶ所同時に刺されるのだ。命の危険はないとわかっていても怖くて緊張するのは当然だ。ドラキュリアは大蝙蝠(ジャイアントバット)を落ち着かせようと優しく頭と背中を撫でる。

 

「案ずるな。恐れることは何もない」

 

 耳元で優しく囁き、数分ほど頭と背中を撫でると大蝙蝠(ジャイアントバット)の体から少しずつ力が抜け、ドラキュリアに体を預けて抱きしめ返してきた。どうやら安心したみたいだ。

 ドラキュリアは意を決してズブリと牙を突き立てる。ヴァンパイアの牙は大蝙蝠(ジャイアントバット)の毛皮を簡単に突き破る。鋭い痛みと大きな違和感が首の中に入り、大蝙蝠(ジャイアントバット)は絶句した。

 

 すぐに牙が抜かれて違和感が消えたのも束の間、今度は2つの何かが傷口に触れてまた痛みが襲ってくる。柔らかく、最初と比べると痛みは少ない。それが唇と気づくと甘噛みのように優しく、絞るように傷口から血を吸われた。時折傷口に舌が触れる。傷口をなぞるように舐められると、スーッと痛みが引いていくのを感じた。

 

 痛みが消え、鼓動とリップ音だけが聞こえる。血と共に体温が抜けていく。出血と体温低下は命の危機だ。それなのに不思議と心地よく、腕の中で頭がボンヤリしてだんだんと眠くなってくる。ウトウトしかけた時、唇が傷口から離れて意識が戻った。

 目を開けると、ドラキュリアは右腕を離していた。ヴァンパイアが持つ再生力の応用か、中指の爪を鋭く伸ばして自らの手首を躊躇いなく切り、ドクドク血を流す。

 

「さあ、飲むがいい」

 

 ドラキュリアは血を流す手首を大蝙蝠(ジャイアントバット)の顔に近づける。大蝙蝠(ジャイアントバット)は差し出される手首の傷に口を付け、喉を鳴らして血を飲んだ。母親の乳を飲む赤ん坊のように。

 時間にして数分ほど血を飲んでいると突然、異変が起きた。

 

「ギイィッ!!??」

 

 全身に燃えるような激痛が走り、大蝙蝠(ジャイアントバット)は悲鳴を上げた。

 

「ギイイッ!!!ギュイイイィィィィッッッ!!!」

 

 激痛のあまり暴れる大蝙蝠(ジャイアントバット)。ドラキュリアは腕に力を込めて抱きしめて胸に抑える。

 側で見守っていた死神(デス)が慌てて駆け寄り、救急箱を開けて注射器と鎮痛剤を取り出すが、それを無駄だと嘲笑うかのようにそれは起きた。

 ボワッと音を立てて、大蝙蝠(ジャイアントバット)の体から炎が噴き出した。腕の中で全身が炎に包まれる大蝙蝠(ジャイアントバット)にドラキュリアは目を見開いた。自らも燃えるのに腕を離さなかったのは驚愕以上に愛情があったからか。

 

 暴れる大蝙蝠(ジャイアントバット)はやがて腕の中で弱まり、勢いが落ちていく。最悪の事態を想像して目を見開くドラキュリアと死神(デス)。さらに異変は起きた。

 勢いが弱まっていいく炎の中で大蝙蝠(ジャイアントバット)の体が縮んでいく。蝋燭が溶けて短くなっていくように、2m近い体が縮む。

 逞ましい大きな翼は皮膜が溶けて骨だけを残すように短く小さくなり、5本の指がある腕に変わる。ピンと立っていた大きな耳は縮んで丸くなり、犬のように突き出た鼻と口は縮んで人間の輪郭へと変わる。燃えた毛皮はボロボロと剥がれ落ち、その下から産毛もない雪のように白い肌と、絹のように柔らかくきめ細かい、毛皮と同じ黒の長い髪が露わになった。

 

 炎が消えると、ドラキュリアの腕の中にいた大蝙蝠(ジャイアントバット)は生まれたままの姿の少女になっていた。

 少女はゆっくりと目を開けた。瞳の色は大蝙蝠(ジャイアントバット)と同じで赤い。

 

「ドラキュリア様」

 

 可愛らしい声を発し、恍惚とした笑みを浮かべた唇からヴァンパイアの牙が覗いた。

 




魔物図鑑

大蝙蝠(ジャイアントバット)

ヴァンパイアの化身として恐れられる巨大な蝙蝠。別名、吸血蝙蝠。
「初代」、「血の輪廻」、「月下の夜想曲」に登場するボス。
ドラキュリアが初めて召喚した魔物の蝙蝠がドラキュリアの魔力を1年間浴び続けたことで変異した。名前はまだなく、成長して眷属になってから与えられる予定。
知能は人間レベルの高さで、言葉を理解して筆談でコミュニケーションを取れるほど。ドラキュリアと死神(デス)の普段の立ち振る舞いや勉強に励む姿を側で見て学習し、マナーと礼儀作法と読み書きと計算の仕方を身につけている。

・圧倒的な巨体
・蝙蝠への分裂
・火炎弾

これらドラキュラとの共通点から、この作品の大蝙蝠(ジャイアントバット)はドラキュラの魔力を浴び続けた末に生まれた突然変異種という設定。
悪魔城ドラキュラの世界は蝙蝠だけじゃなく、鷲、梟、烏、犬、兎、豹のような普通の動物もドラキュラの魔力の影響で凶暴化して魔物になって襲いかかってきます。その中から、大蝙蝠(ジャイアントバット)のようにずば抜けて強い魔物が出てきてもおかしくないのかも知れません。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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