進撃の巨人 リヴァイ兵長の軌跡   作:ARuTo/あると

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女型の巨人戦

 木漏れ日が落ちる森の中を二人の兵士が颯爽と駆け抜けた。

 この場所は【巨大樹の森】と呼ばれている。円柱の城砦のような背の高い分厚い木々が見渡す限り続いており、日中でも地面は仄暗い。

 双方の兵士は腰に鞘を携え、宙を舞っていた。

 立体起動装置と呼ばれるそれは巨人を討伐する為のツール。人類における唯一の対抗手段であった。

 

「奴は……仲間を沢山殺しています」

 

 一人の女兵士が鬼気迫る表情で先頭の兵士に声をかけた。

 ミカサ・アッカーマン。調査兵団に所属する女性兵士。兵団の中でも指折りの戦闘力をもつ優秀な兵士だ。

 

「皮膚を硬化させる能力がある以上は無理だ」

 

 殺伐とした状況であるにも関わらず、冷静な声音でミカサを宥める兵士。視線の先には女の姿をした巨人が駆けている。

 名をリヴァイという。人類最強の兵士と謳われる存在でその実力は一個中隊に相当すると言われている。

 

「ですが……」

 

 ミカサは些か不満げな声を漏らす。

 調査兵団は過酷な訓練を経て兵士となる。その精鋭、数十人が先程、一瞬にして命を絶たれた。無理もなかった。

 小さな反抗を聞き得て尚、リヴァイの判断は揺るぎない。

 

「作戦の本質を見失うな」

 

 目の前の巨人に視線を集中させる。

 

「エレンが生きていることに全ての望みを賭ける。奴の動きは俺が止める。お前は注意を引け」

 

 ミカサは物言いたい思いを何とか飲み込み、判断に従った。

 リヴァイの階級は"兵長"。目上の階級には逆らえない。かくいうミカサは階級など二の次と考えていたが、この兵士は違う。

 ともすれば女型を仕留めることが出来るのではないか、そんな期待感をもっていた。リヴァイ兵長の戦闘力は並外れていた。

 何処までも続く森林。ヒヤリとした冷たさを感じる。

 先頭を征くリヴァイ兵長を見やると、先程よりもやや加速しているようだった。

 気のせいではない。徐々に距離が開いていく。

 そこから読み取れること。女型の巨人は複数の戦闘を終えても尚、疲弊するどころか寧ろ加速していたのであった。

 

 リヴァイは鋭利な目に炎を灯す。

 

 背面越しの巨人は表情が伺いしれない。しかしながら、リヴァイ兵長には巨人の視線が見えているようであった。

 

 最強の兵士は更に加速する。

 

 腰の両端に携えた鞘から黒金に光る二刀のブレードを抜き取ると、グリップを持ち替え刃の先端を後方に突き出した。

 鬱蒼とした森の中を素早い像が駆け抜ける。

 ゆっくりとした時間にも感じられた。

 瞬間、目先の巨人が左腕を大きく振りかぶりこちらに攻撃を仕掛けてきた。

 淀んだ空気を切り裂きながら、凄まじい速度で到達する拳。

 しかしながら、対応する兵士の速度が一枚上手だった。

 途端、リヴァイは身体を激しく回転させた。

 烈火の如く、二刀のブレードを凄まじい速度で斬りつける。

 血飛沫をあげながら腕の先端から肩にかけて削ぎ、女型の顔面に貼り付いて眼球を抉った。

 

 その先は一瞬。

 

 ワイヤーを引き戻した反動で前方回転斬りを見舞うと、周囲の樹々にワイヤーを突き刺しては迅速に巨人の可動部を正確に切り裂いていく。

 右。左。また右。頭上からも。

 神速。捉えきれない。目にも留まらぬ速さ。

 巨人を覆うようにして放たれる無数の剣線。

 

 一撃。また一撃。

 

 ワイヤーを巻き取る音。ブレードの硬質な残響。

 最後の攻撃とばかりに後頭部を削ぐ。すると、弱点を押さえていた女型の右腕が力なく崩れ落ちた。

 一時の間。

 梢が聴こえたかと思うと、遮光がただ一点を照らした。

 巨人の弱点。うなじ。

 

 ---うなじが……狙える……!

 

 ミカサは合図をするよりも先に身体を動かす。一目散に強襲を試みる。

 その時である。リヴァイの怒号が飛んだ。

 

「よせ!」

 

 喚起は間に合わず、二刀のブレードがうなじを捉えた。直後、ガキンッという硬質な音が響き、刃が欠けた。まるで氷塊に弾かれたようだった。

 

 ---刃が……通らない!?

 

 硬質化。皮膚を硬化させる能力により千載一遇の機会を逃した。

 体勢を崩したミカサを即座にリヴァイが捕まえる。が、巨人の手の甲で急停止した反動で片足に大きな負荷がかかった。

 

「ぐッ……」

 

 一瞬の呻きを漏らすリヴァイ。

 作戦は継続された。ミカサを安全な所に運んだ後、直ぐさま行動不能になった女型の口角目掛けて斜線上にブレードを斬りつける。

 

 表情筋が顎ごと落ちると、口内から粘液まみれの塊が姿を現した。人の形をしている。

 恐らくは---

 

「エレン……!」

 

 口を衝いて出た大切な人の名前。

 

 リヴァイは塊を抱えると、迅速に巨人のもとを離れた。

 

「おい、ズラかるぞ。汚ねぇが……多分、生きてる。……お前の大切な"友人"だろ」

 

 冷徹に見えた兵士の口から出たのは仲間を思いやる気遣いだった。

 

「エレンは……私の……」

 

 ミカサは口籠もった。エレンは。エレン・イェーガーは友人などという存在では決して語れない。 

 もっと大切な想いが---

 リヴァイは撤退しながら無残に座り尽くす女型の巨人を見やる。

 人間のように泣いていた。

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