そんなことよりゲームしようぜ! 作:ミカサ
百鬼夜行の祓い
「どこだよここ。マジどこだよ」
悪魔との戦闘中に大負けして、この有様だ。
俺は途方に暮れてしまった。
草原の中、大きな滝と巨大な彫像がある。
二人の男が向かい合う物だ。
「あー。シャルロッテ。頼む」
魔眼の悪魔の力を借り、どうにか集落を見つけた。
「遠っ そして田舎っ」
ため息をついて、俺は歩き出した。
ようやくたどり着き、言葉が通じることに安堵し、なのに地理情報が全く役に立たないことに顔を青ざめさせ、高価なアミュレットをごく普通の宝石として売る羽目になり、ようやく当面の資金を手に入れた。
「なんなんだよ、ここは……。過去、じゃないよなぁ」
適当に歩いていると、ひとりぼっちで肩を落とした子を見つけて、驚愕する。
「九尾の妖狐……太っ」
シャルロッテを通して見たその子は、九尾の妖狐にとりつかれていた。
しかし、ふとましい。普通、妖狐はほっそりとしていて神秘的で目を奪われるほど美しい物なんだが……。い、いや。こんな事考えたら殺されるな。
俺の中で、葛葉がうごめく。葛葉も九尾の妖狐だが、信じられん……こいつ、葛葉より格上だ。
「おじさん、なんだってばよ?」
「ああ、いや。そこはお兄さんと呼んでくれ。俺の名前は「祓い」。君の名は?」
「ナルトだってばよ」
「そうか。名前を交したら、もう友達だな」
にっこりと笑いかけて手をさしのべると、少しびっくりした顔をして、少年は手を出してきた。
『ナルト』
葛葉の力を込めて呼ぶと、少しナルトの眼がぼおっとする。なるほど、本名か。
「俺、こっちに来たばかりで何も知らなくてさ。もし誰か案内してくれたら、食事を奢ってもいいんだけどなぁ」
「俺が案内するってばよ!」
「お願いするよ」
元気な少年だ。妖狐にとりつかれているとは思えない、活発な少年で色気も何もない。
うーん、不思議。
こっちの妖狐が違うのか、この妖狐が特別なのか。
あちこち案内されながら、ナルトと会話をする。
ナルトへの視線が厳しい……って事は、たぶん悪魔付きってばれてんな。
「ナルト、今、誰と住んでいるんだ?」
両親とではないだろう。半ば確信を持って聞く。こんな子を育てられる親は少数だ。
「一人暮らしだってばよ」
「はぁ!? その年で!? 師匠とかは!?」
「ししょー? 学校の先生ならいるってばよ」
「学校の勉強以外のことを教えてくれる人はいないのか?」
「いないってばよ。俺って両親いないし……」
ということは、悪魔祓いの師匠はいないって事か。
俺は、自身の過去を思い出す。師匠も、幼かった俺を助けてくれた。
「はぁー。よしっ 俺に任せろ! 今日から俺がお前の父だ!」
「えええええ!?」
「いや、実は今日、泊まるところがないんだよ。道に迷ってさ」
「なんだ……泊めて欲しいのかってばよ」
「そんなとこ。ところで息子よ、お前記憶が無くなった時ある? 他の人に睨まれ始めたきっかけみたいな」
「ないってばよ……。最初から、皆冷たい眼で俺を見るんだ……」
「ふむ……。よし、引っ越ししよう、息子よ!」
「はぁぁぁぁ!? アカデミーはどうするってばよ!?」
「俺が勉強教えられるよ。たぶん。誰もお前を知らない所の方が、やりやすいだろ。そうとなったら地図を見つけて、早速移動だな。挨拶しておく人はいるか?」
「い、嫌だってばよ!」
「立派になったら戻ってくれば良い。……お前は、俺と来た方が良い。絶対後悔させないから」
俺の説得に、ナルトはしばし迷ったようだった。
その後、ぽつんと言葉を漏らした。
「サスケに、さよならするってば」
「よし、じゃあ、そのサスケって人に会いに行こう」
「ナルト!」
ナルトの手を引いてサスケがいつもいるという公園に向かっていると、黒髪の男の子がナルトの名を呼んだ。
「ナルト、そいつ誰だ!?」
「俺は祓い。ナルトの父親になる人だよ」
「あんた、ナルトと初対面のはずだろ!? どこのどいつだよ!」
「うーん。道に迷っちゃったようでね。言ってもたぶんわからないかな。でも、いいだろ? 彼は天涯孤独の身の上のようだし、こんな子供を一人暮らしさせておくなんて俺には無理だよ」
「サスケも天涯孤独だってば」
「そっか。うーん。でもなあ。ナルトは才能があるからな。いや、でもサスケくんも才能ありそうだな。二人までだったら、なんとか……」
その子は、警戒を全身で表していた。
「そんな慈善事業やるやついるわけねーだろ!」
「ナルトくんには才能がある。とても素晴らしい才能がね。それに、ナルトくんは俺の小さい頃にそっくりなんだ。俺はナルトくんの力になりたい」
ナルトの肩に、そっと手を置く。ナルトは顔を輝かせた。素直で良い子だな。
なおさら、妖狐に好かれる理由がわからない。それとも、案外こんなまっすぐな子だからこそ、琴線に触れたのだろうか?
「……わかった。俺も連れてけ」
「いいよ。すぐ連れて行くつもりはないんだ。自己紹介もまだちゃんとしてないしね。そんなに警戒しなくても、俺のことをちゃんと話して、それでも嫌だったら諦めるよ」
そして、子供達を人気のない場所へと連れていく。サスケくんはばりばり警戒しだした。
「ナルト。君の中には素敵な狐さんがいる。そして、君にはその子と仲良くする才能がある。こんな風に!」
コーン。
一声鳴いて、葛葉と悪魔合体をする。
ぼよよんと胸が跳ねる。
狐耳が、尻尾がふんわり広がる。葛葉悪魔合体するとTSするんだよな。
二人は、首をかしげた。
「変化の術?」
「何それ?」
「よくわからないが、ナルトに色仕掛けさせたいのか? 変態か?」
「うーん、黒羽の方が良かったかな?」
キュルルィッ
次に一声泣いて、黒羽と悪魔合体をする。
ばさり、と羽根が出て、二人の上をくるりと飛んでみせると、二人は顔を輝かせた。
降り立った俺に、二人は駆け寄ってくる。
「凄いってばよ! 空飛んだってばよ!」
「今のを教えてくれるのか!?」
「そう。ナルトも出来るし、サスケも頑張れば出来るよ」
「ナルトみたいなドベの方が、俺より才能あるってのか?」
「ある」
きっぱりと言った言葉に、ナルトは目を輝かせる。
「ナルト。お前の中には、狐がいる。九本の尻尾を持った、神と崇められるレベルの狐だ。そいつと仲良くして、力を貸して貰うんだ」
「俺の中に神様がいるの?」
「そう。俺とおんなじ。サスケには、俺の友達を紹介しような」
俺は好評だった黒羽と分離した。
黒羽は大きなカラスの姿をしている。
それでも、異様な空気を二人は感じ取ったようだった。
「黒羽は、人食いガラスだ。今は俺がいるから大丈夫だけど、敬意と恐れ、警戒を忘れてはいけない。どんなに仲良くなってもな」
「人食い……」
「殺したくないって思わせることが、悪魔付きのコツだよ」
「悪魔付き?」
「悪魔付きって言ったら語弊があるかな。九尾のお狐様を悪魔なんて言ったら罰が当たるからね。そうだね……エクソシストとでも呼ぼうか」
「お狐様……。俺の中に?」
「そう。百鬼夜行の祓い。それが俺の二つ名だ。ナルト。君はきっと俺と同じ、いやそれ以上の容量を持っている。最も、サスケ。この黒羽が見えて、怖いと思えるのなら、君にも十分な才能がある」
「本当か!?」
「ああ。じゃあ、サスケ。黒羽に自己紹介をして、黒羽のお名前を聞こうか」
「もう知っているのに?」
「もう知っているのに。だって、それが礼儀だろう?」
黒羽と挨拶をして、サスケは黒羽とふれあう。
黒羽がサスケの中に溶けて、サスケの背から羽が生えた。
「黒羽。サスケを上手く導いてやれ。サスケ。黒羽の事を全身で感じるんだ。黒羽の気持ちがわかれば、飛び方もわかる」
「おおっ 俺もやるってばよ!」
サスケが飛ぶのを見て、俺は眉をひそめた。
黒羽がサスケを気に入りすぎている。そういった人間は、心に闇を持つのだ。
「サスケ。悪魔とふれあうときは、闇に飲まれては駄目だ。それを心するんだ。悪魔は魂の隋落を好む」
「黒羽、俺に力をくれるって」
「安易に飛びついては駄目だ、サスケ。それは悪魔の誘惑と言うんだ。必ず代償がある」
「俺も! 俺もやるってば!」
「ふふふ。じゃあ、俺と手をつないで。俺の友達と遊ぶにしろ、君の中の妖狐と遊ぶにしろ、お伺いを立てなくてはね」
俺は、ナルトと手をつなぎ、精神世界へと潜った。
……なんて立派な封印。でも、見ない形だな。というか、やっぱり妖狐が妖狐と思えない。妖気もないが、神気もない。だが、圧倒的な力を感じる……。
『お前は何者だ!?』
『百鬼夜行の祓いと申します。お名前をお伺いしたく。ナルト、挨拶して』
『俺はナルトだってばよ! お前の名前を教えろってばよ!』
『……貴様らに名乗る名などない。九尾とでも呼んでおけ。名乗って欲しければ、この門を開けてみろ』
俺は、そっと檻の中に入った。
『葛葉。出ておいで』
その言葉に、九尾は息をのんだ。
九尾より二回り小さい九尾の狐が現れたからだ。
『随分と野卑な者よの。同族とは思えぬ』
『九尾と同じ? 葛葉って言うのか? 俺、ナルト!』
『うむ。よろしゅう』
『!???』
『九尾。葛葉と遊ぶ許可か、君と遊ぶ許可が欲しい』
九尾は、眼を細めて俺を見る。
『……なんなんだ、お前……』
『エクソシストと会うのは初めてかな? もう一度名乗るね。百鬼夜行の祓いだ』
『百鬼夜行……。ふん。俺はお前なんざ怖くなんかねぇからな。勝手にその葛葉とやらと遊ぶ分には好きにしろ』
『ありがとう!』
その次の瞬間、ナルトを毛皮が覆っていた。
耳と尻尾付きである。子供がやると中々可愛い。ロリ巨乳である。
「じゃあ、エクソシストの第一歩。葛葉のことを知ろう! 狐ってのは、100年生きるごとに尻尾が一本増えると言われている。最大値が九本。それが葛葉だ」
「じゃあ、葛葉ってばあちゃんなんだってば……苦しい苦しい!」
「ふふふ、葛葉は気位が高いから気をつけて。葛葉は、師匠の師匠のそのまた師匠……ずっと前の師匠とお友達になって、それいらいずっと受け継がれてきているんだよ。そのとき、葛葉は相当なやんちゃでね。皇帝を誑かし、意のままに操り、蛇を貯めた大きな穴に人を落としたり、焼けた鉄柱に人を抱きつかせたりして、沢山の人を殺したんだ」
「え……」
「ふふふ、そのときの師匠は腸を咥えてうっとりとした顔をして空を飛ぶ狐を、それはそれは美しかったと言い残していてね。でも、人を襲うのは困るから、そうとう苦労したと言っていたよ。これは、俺もだな」
「お、俺の中の九尾もそういうことするのか?」
「人食いの臭いはしなかったけど。何かしているだろうね。でないとナルトへの警戒の理由がわからない」
「じゃあ、妖狐は強いのか?」
「そうだね。戦闘力はあんまりだけど、妖狐といえば、化かす能力は凄く高いよね。相手を惑わし、籠絡し、精気を奪う。戦闘能力はさほどないよ。そうだな……。サスケ。それ本名だろう? 葛葉の力を借りて、サスケの名を呼んでごらん」
「おうってばよ!」
『サスケ……サスケ……』
ぼんっとサスケの顔が赤く染まり、困惑する。
「それが、お色気の術。今、ナルトに対して凄く好きだなぁって思っただろ? そういう事をして、時の権力者を操るわけだ」
「へぇー! サスケ俺が好きだってばよ!」
「術の力だ! 術の! もう切れたし!」
「まあ、今のはお試しだからね。実際は効果時間はもっと長いよ!」
「俺の九尾も出来るのか?」
「妖狐だったら、男を誑かすのは大得意のはずだし、変化できない狐なんていないよー」
「すっげー! どうしたら仲良くなれるかな!?」
「油揚とか好きだよね、葛葉は。取り憑かせてあげてあげて、油揚とか食べると喜ぶよ。……後、ナンパとか勝手にされるときついけど、たまには精気を食べさせてあげないと、いけないかなぁ」
「精気ってなんだってばよ」
「うーん。男の人から多く取れる物で、エッチをするときが一番取れる物かな。詳しいことは、九尾に聞けば……」
『おいっ てめぇ! ナルトに嘘八百を教えるな!』
葛葉が吹き飛ばされ、代わりに九尾がナルトと混じる。咄嗟に干渉して、上手く悪魔合体するようにした。
『この俺様は九喇嘛! 九尾の九喇嘛! 妖狐なんて得体の知れないもんじゃねぇ! 大体、長く生きているがお前の言っていることは全部初耳なんだよ!』
「そりゃまぁ、エクソシストは裏の存在だし?」
『うるせぇ! 死ね!』
「はいはい。大人しくしようね」
狐に近い姿を取ったナルトだが、封印してほとんどの力が使えない状態だし、人食いでもない。いくら強いって言っても、ここで負けたら百鬼夜行の名が廃る。
と思ったんだが。
ナルトは、いきなり俺を殴りつけてきた。なんて力だ。悪魔合体してなかったら死んでたぞ、今の!
「ちょっ!? いきなり肉弾戦か!? 狐だろお前!」
『俺は九尾だ!』
「まさか術が使えないなんて言わないよね!? 九尾のくせに落ちこぼれか!」
『んだとぅ!?』
カパッと口を開けて、エネルギーを貯める。うげっ あれはやばい。
「精霊石よ!」
精霊石を投げつけ、怯んだところで大食いと悪魔合体してエネルギー球を喰らう。
「げぷっ」
『得たいのしれん奴め……』
「お前、俺の知っている狐と違うな。狐の攻撃と言ったら炎じゃないのかよ。まあいい、やろうぜ」
師匠の事を思い出す。
師匠も、俺の悪魔合体をコントロールしつつ、俺と思う存分戦ってくれたなぁ。
俺が闇に飲まれぬように。力を引き出せるように。
ナルトも力の使い方を学ぶのにちょうど良いだろう。
「祓いっ」
「心配するな、サスケ。空飛んで見てろ」
これは凄い拾いものだ……。
俺がここまでぼろぼろにされるなんて。
途中から、ナルトの人格も起きて協力プレイし始めた。そうすると俺は防戦一方だ。
これ、封印解けたらどれだけ強くなるんだ。
戦っている間にサスケも交ざってきたのだが、サスケも随分とセンスがある。
一回、黒羽と本契約しそうになってかなり焦って黒羽を止めたけれど……。それがまた九尾を警戒させてしまった。
しかし、随分とまっすぐな戦闘型だ。幻惑の術に簡単に掛かるのが心配である。
ナルトも同じタイプだから、相性は良いんだけど短所を補いあえないのは痛い。
まあでも、今は褒めよう。
「謝るよ、九喇嘛。お前は強く美しい」
『美しいなんて言われて喜ぶ雄はいねぇんだよ!』
「あはは。本当に俺の知っている妖狐と違うな。気に入った。ナルト! 改めて言う。お前の才能は、俺が生かす! 一緒に旅立とうぜ!」
「俺は火影になるってば。だから一緒には行けないってば」
「火影?」
「里の長だってば」
「ふぅ……わかった。でも、それは君が九尾ともっと仲良くなってからだ。それまでは俺と一緒に来て欲しい。君が嫌われているのは、たぶん、君が幼い頃、九尾を抑えきれなかったからだ。俺なら、手助けが出来る」
「俺も強くなる!」
「君は闇に飲まれない訓練をしようね……」
そこで、しばし特訓しているとシャルロッテが警告をしてきた。
「待て。何者かが近づいている! この早さ、ただ者じゃない!」
「え?」
「どういう事だ?」
「悪魔付きが現れたって事さ! シャドウ!」
シャドウを呼んで、準備をしておく。
ガサリ、とクナイを持った謎の覆面が現れる。
「やはり不審者! 先手必勝!」
「あ……っ」
「え……っ」
「ダークウィップ!」
影が覆面の影を絡め取る。
「さあ、逃げるんだ! ナルト! サスケ!」
「今の、通りがかった里の大人なんじゃ……」
「通りがかりが刃物持って覆面しているか! 怪しいわ! ついでだ、このまま旅立とう!」
俺はナルトとサスケを急かして走った。