元バンドマンの高校生はメジャーデビューの夢を見るのか   作:ハウンド・ドッグ

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自己紹介で○○○ってよくあるよね

 自己紹介───それは文字通り自己の紹介であり、同時に今後の学校生活を左右すると言っても過言ではない一大行事である。自己紹介を制する者は全て(青春)を制す、逆を消えば失敗した者は消すことの出来ない(黒歴史)を負って三年間の高校生活を送ることとなってしまうのだ。

 クラス担任の促しにより、木馬真が所属するこの秀華高校一年二組においてもまた、その選別が今まさに行われようとしていたのだった……。

 

 

(……と、まあ、大袈裟な導入は程々にして)

 

 そんな大袈裟なこと起こるわけがない、と余裕綽々とした様子で先程まで脳内で流していた導入を頭の中から綺麗サッパリ消し飛ばした真。

 やがて彼の順番が回ってくる。

 促されるままに教壇の前に立ち、周囲を一度見る。コホン、と小さく咳払いして口を開いた。

 

「はじめまして、木馬真です。誕生日は4月1日。趣味はギターと……あとはソロキャンプとかですかね。好きな音楽はハードロックとヘヴィメタル。名前の由来なんですけど……誕生日がエイプリルフールの日で、そこから転じて『嘘から出た真』が由来になってるンす。うちの親、センスがちょっとアレなんで」

 

 ハハハ、と笑う真。

 

「とまあ、一年間よろしくどうぞ」

 

 一礼。

 

 

 シーン…………

 

 

 そして、沈黙。

 数秒後、まばらに拍手が聞こえてくる。

 これらが意味するのは……

 

(自己紹介盛大にしくじったァァァァァ!?)

 

 一体どこで間違ったのだろう───失意と共にトボトボと真は席に付き、一人静に項垂れた。

 

(……やべーよ。空気が死んでたよ。そっか、今時分の高校生ってヘヴィメタとか聞かないもんね。無言だし、「うわぁ……」っていう目で見られてたし……。それに、サイケデリックな色合いの髪の子からは凄い目でガン見されてたし……怖ぇよ……普通にアレは怖ぇよ……)

 

 なんて日だ、と内心で毒づき、その間にも時間は過ぎていく。

 真の高校生活は───終わった。

 

 尚、サイケデリックな色合い、と真が評したピンク色の長髪の女子生徒は後藤ひとり、と言うらしい。自己紹介後半から何やらエクトプラズマらしきものと緑色の謎液体を垂らして半分意識が無い状態だったのが真の記憶に刻まれたとか刻まれなかったとか。

 

 

 

 

「───なんてことがあったンすよ店長さん」

 

「いや……いやいやいや。スベったのはそこじゃないだろ」

 

 放課後、下北沢に存在するライブハウス『STARRY』にて、バイトを初めて少し経つ真は店長たる伊地知星歌に愚痴を溢していた。

 内容を把握した星歌はそこじゃない、とツッコミを入れる。

 

「名前の由来だよ。間違いなくそこだよ。あたしだって今日初めて聞いたけど、ちょっと引いたし」

 

「おやぁー……? 受けを狙ったハズなのに……」

 

「……その受けで盛大に外したんだよ、お前は」

 

 直後、コフッという音と共にモップを持って床を掃除していた真は崩れ落ちた。

 

「店長さん……」

 

「ん? 何?」

 

 星歌はノートパソコンで仕事をしながら返事をする。

 

「今日、休み貰っていいスか?」

 

「いや、働いてよ」

 

「ぐすん」

 

 数分後、店内の床はピカピカに掃除されていたのだとか。

 

「おはようございまーす……って、ええ!?」

 

「ま、まぶしい……」

 

「虹夏にリョウ、来たか」

 

「お、お姉ちゃん……これは……」

 

 星歌の妹、虹夏は異様にピカピカにされた店内を見て目をぱちくりと瞬かせ、その親友たる山田リョウは眩しそうにその目を眇める。

 

「ああ……あれだよ」

 

「あれって……」

 

 そこには、部屋の隅でうずくまりどんよりとしたオーラを放つ真の姿が。

 

「ははははは……まさかアレで外すなんて……俺の高校生活は終わった……あれで面白いとか思っちゃてるヤツ、という悲しいレッテルを張られたまま高校生活は終わるんだ……」

 

「え、待って怖いんですけど。お姉ちゃん、真くんに何があったの」

 

「カクカクシカジカウマウママルマル」

 

「なるほど……それは、うん」

 

「ぷふっ……」

 

「いや、笑わないであげてー?」

 

 今日もSTARRYは平和です。




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