元バンドマンの高校生はメジャーデビューの夢を見るのか   作:ハウンド・ドッグ

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転がる岩 Ⅰ

「ちょっ……ど、どうするンすか!? ギターボーカルが辞めたって、そんな急に!!」

 

 『結束バンド』のギターボーカルをやるはずだった少女から出された突然の辞表。真は激しく狼狽える。

 

「……真が代わりに弾けばいい」

 

「無茶言わんで下さいよ山田先輩。今日はギター持って来てませんし、取りに行ったとしても間に合いませんて」

 

 リョウの突拍子も無い思いつきを真は一蹴。バイトだってあるのだ。それに、ガールズバンドに男が一人紛れるのは色々と問題がある、というのもあったりする。あとはバンドスコアの確認、更には練習すらしてないが為、無茶振りにも程がある。

 

「ギタリストがギター持って来てないとか……」

 

「今の所ライブに出るわけでもスタジオ使うわけでも無いンすから持って来てるわけ無いでしょう?」

 

 それよりも、ギターボーカルである。

 

「喜多ちゃんとは……うん。真君ほとんど関わり無かったよね……」

 

「まあ……そっスねぇ……あの『キターン』としたオーラが、というかああいう真性の陽キャは苦手っスねぇ……」

 

 朝日に焼ける吸血鬼の気持ちを理解してしまった、というのは本人談である。

 ちなみに、『喜多ちゃん』というのは結束バンドのギターボーカルをやる予定だった少女の愛称である。フルネームを『喜多郁代』という。

 真は陽キャもどきであり、中身は超がつく程のシスコンであるただの陰キャなのである。学校でもクラスが違うこともあり、彼女とはほとんど関わることが無い。曰く、『住んでいる世界が違う人』ということになる。

 

「……うん。凹んでても仕方無いよね。あたし、新しいギター探して来る……!」

 

「え……ちょ……」

 

 ぱたぱたと靴を鳴らして走り去っていく虹夏。その様子をぽかんとした表情で四人は見送る。

 

「……行っちゃった」

 

「ギターなんて早々見つかるわけ……待てよ」

 

 その時、真の記憶が不意に逆再生を始める。

 

(思い出せ……思い出すんだ、俺……)

 

 今日感じた違和感を思い出せ、そう念じて記憶を辿り続ける。

 

       
ピンクジャージ

赤いバンドT

   
リストバンド

 

 

ギターケース

 

 

 …………あ。

 

 

「……あ"あ"ぁぁぁあああ!!」

 

「うぉっ!? どうした急に!?」

 

「い、いたぁぁぁ!!」

 

「いたって何が!?」

 

「ギター持ってた奴っスよ!! 確か後ろの席の……『後藤ひとり』って子!! まだ高校の近くにいるかもしれねぇ……!!」

 

 真は自身のシルバーカラーのスマートフォンを取り出し、虹夏宛に高速でその特徴を打ち込み送信。程無くして虹夏からのLOINEが。

 

『了解! ありがとう真君! 探してみるよ!!』

 

「取り敢えずこれで、何とかなりますかね……」

 

「ほら、さっさとバイトする」

 

「うっす……」

 

 不安だ、そう呟きながら星歌に促されるまま真は開店準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 人様の前で演奏出来るよう、毎日六時間、それを三年間練習していたら……いつの間にか中学終わってた。

 バンドで出られなかった文化祭。集められなかったバンドメンバー。そもそも友達一人もいなかった三年間……。高校こそは……高校こそは絶対バンドやるんだ……!

 そう意気込んだものの、高校生活も早一ヶ月。心の拠り所はギターだけ。無い無い尽くしの私、後藤ひとりは引きこもり一歩手前の状態です。

 今日もそうだ。というか、入学初日からそうだ。自己紹介で話が合いそうな男子を見つけはしたものの、どう話していいのかわからなくて。というか男子と話したことなんてほとんど無くて。そもそも、どうやって話しかければいいのかわからなくて。そうこうしている内にせっかく出来そうだった友達も作れなくて。

 ギターヒーロー名義で動画上げ始めて暫く経って、閲覧数やチャンネル登録者数もどんどん増えていった。そんな中、コメント欄で見たものを参考にして如何にもバンド少女感を出して登校しても誰も話しかけてくれず……。わかってますとも。受け身じゃ駄目だって……。

 私の居場所はネットだけ。

 ……もう、学校……行きたくない、なぁ……。

 そう、思っていた。

 

「あぁぁぁ!! ギター!!」

 

 公園のブランコに座っている時、大声が聞こえてくるまでは。

 その声が、私の人生全てを変えることになるなんて。

 この時はまだ、知らなかった。




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