元バンドマンの高校生はメジャーデビューの夢を見るのか   作:ハウンド・ドッグ

5 / 11
 今回オリ主出番少なめ

 ぼっちちゃんと虹夏ちゃんがアンケでデッドヒートしている……だと!?


転がる岩 Ⅱ

(う、うぁぁぁ……)

 

 後藤ひとりは狼狽えていた。公園で一人、黄昏れている所をいきなり、それもとても明るそうないわゆるイマドキの女子高生から話し掛けられたからだ。

 

「それ、ギターだよね? 弾けるの?」

 

「う、あ……」

 

「? ……おーい」

 

(どうしよう喋るの久しぶり過ぎて声がぁぁぁ!!)

 

「いきなり、ゴメンね。あたし、下北沢高校二年、伊地知虹夏」

 

「……後藤ひとり秀華高校一年です」

 

 虹夏、と名乗ったその少女にひとりはビクつきながらも答える。

 

「ちなみに、ひとりちゃんはさ」

 

(いきなり名前呼び!?)

 

 今までほとんど経験したことの無い事象にまたもビクつくひとり。

 

「ギターはどのくらい弾ける?」

 

「あ……そこそこかと……」

 

「そっかー! ……あ、あのさ」

 

 先程までの明るい様子から一変し、ひとりの顔色を窺うように、虹夏は口を開く。

 

「……ちょっと今、困ってて。無理だったら……大丈夫なんだけど……大丈夫なんだけど、困ってて……」

 

 絶対に大丈夫じゃないヤツだ、とひとりは身構える。

 

「うん……思い切って言っちゃおう!」

 

 虹夏はぱん、と両手を合わせて懇願するようにこう言った。

 

「お願い!! あたしのバンドで今日だけサポートギターしてくれないかな!?」

 

(……バンド?)

 

 その言葉に目線を少し上げるひとり。

 

「これからライブなのにギターの子が突然辞めちゃって……ある程度弾けたらすぐ出せるから……!」

 

(これから……!? ライブ……!?)

 

 唐突過ぎるその申し出に理解が追い付かず、目をぐるぐると回してしまうひとり。

 

「なにとぞ……! なにとぞ……!!」

 

(え、えぇぇぇぇぇぇ!?)

 

 その時、腕をがしり、と掴まれる。

 

「ありがとう! 早速ライブハウスへGO!!」

 

(まだ何も言ってない!?)

 

 ひとりは返答する間も無く、虹夏にその手を引かれ、下北沢のライブハウス『STARRY』へと向かった。

 

 

 ひとりの心臓がうるさく鳴り響く中、彼女の手を引き歩く虹夏は立ち止まる。

 

「着いた。ここだよー」

 

(ま、魔境……?)

 

 そこは、店名を表した電飾が提げられた、地下空間へと繋がるドアが。ひとりは虹夏の後ろをついていき、怯えながらもライブハウスへと入っていく。

 

「おっはようございまーす」

 

 元気で明るい虹夏の声。ひとりは彼女の声をバックグラウンドで聞きながら周囲を見渡す。

 ライブハウス特有たるこの暗さ、そして圧迫感。

 

(お、落ち着くぅぅ……!)

 

「ひとりちゃん、大丈夫?」

 

「あ、私の家ぇぇ……」

 

「違うよ!?」

 

 常に手元が見えにくい押し入れの中でギターを弾いているひとりにとって、ここはまさに自宅のような環境であった為、その言葉が出るのも無理は無かった。

 

(バンドってどうしても怖そうなイメージあるけど、所詮インドアの集まり。陰の者、陰キャの集団……私と同じ)

 

「そこにいるのが、PAさん」

 

「……おはようございます」

 

「いいいイキってすみません……!!」

 

「急にどうした!?」

 

 PAさんから漂う空気(オーラ)にあてられたひとりは涙目で謝罪。虹夏はその様子に怪訝そうな視線を送った。

 その時、

 

「やっと帰って来た」

 

「リョウ!」

 

 虹夏が率いるバンド、『結束バンド』のベーシスト、山田リョウだ。虹夏はリョウにひとりの紹介をする。

 

「この子が後藤ひとりちゃん。奇跡的に公園にいたギタリストだよ。真君が言ってた子と特徴が一致してたから、もしかしてって思ったんだ〜。あ、ひとりちゃん。真君はここでバイトしてる子だよ」

 

(え……木場君ここで働いてるの……!?)

 

 リョウは虹夏が連れて来たひとりを見てへぇぇ、と呟く。

 すると、三人のもとに洒落たハットを被ったオレンジ色の癖毛の少年、木馬真がやって来た。

 

「伊地知先輩お帰りなさい。あ……後藤さんだ。本当に連れて来てくれたんスね」

 

「本当にありがとね、真君!」

 

(思いっ切り陽キャの服装だ!?)

 

「すすすスミマセン……! 同類扱いして本当にスミマセン!」

 

「どうしたいきなり!? 頭上げろっての!?」

 

 突然謝罪し始めたひとりにぎょっとした目を向ける真。

 

「す、すみません取り乱しました……!」

 

「……まあ、気にしなさんな。……それじゃあ、俺はバイトに戻りますね。ライブ頑張って下さい」

 

「うん! 接客お願いね!!」

 

「よろしくー……」

 

 ぺこり、と頭を下げてカウンターへと戻っていく真を三人は見送る。

 

「あ、紹介が遅れてた。こっちはベースの山田リョウ」

 

 忘れてた、とばかりに虹夏はひとりにリョウを紹介する。

 

「ご、後藤ひとりです……よろしく、お願いします……」

 

 普段からではあるが、無表情のリョウにそれを知らないひとりは怯えながら挨拶する。ひとりのフィルターを通した時、リョウはひとりを睨んでいるように見えた、というのもある。その様子を察してか、虹夏はフォローを入れる。

 

「大丈夫! リョウは表情が出にくいだけだから! 『変人』って言ったら喜ぶよ〜」

 

「嬉しくないし」

 

(嬉しそうだ……)

 

 えへへ、とばかりに表情を緩ませるリョウにひとりがそう思うのも無理も無い。

 

「あ、そうそう。伊地知先輩、言い忘れてましたケド、店長さん、勝手に先輩が抜け出したこと怒ってましたよ」

 

「え、えぇぇ!?」

 

「うん。あと、時間まで練習しとけって」

 

「や、やばい早くスタジオ行かなきゃ!! ……ほら、ひとりちゃんも!」

 

「は、はい……!」

 

 カウンターから身を乗り出しながら真が告げた店長たる星歌の様子、そしてリョウによる伝言に震えた虹夏はリョウとひとりにスタジオに入るよう促した。

 

(現実は怖い……でも、これから楽しいことが沢山待ってる気がする!)

 

 そう意気込みながらSTARRY内のスタジオへと踏み出すひとり。

 

「これ、今日のセットリストとスコア」

 

 虹夏から今日のブッキングライブで演奏する曲とそのスコアを受け取ったひとりはそれらに目を通し、これならイケると確信した。

 

(……でも、ボーカルいない分演奏頑張らないと……)

 

 虹夏曰く、バンドメンバーはこれで全員で今回はインストバンドらしい。

 

(……私、ギター上手いらしいし、やれる……やれるはず……!)

 

 ふん、ふん、と気合を入れる為なのか、それとも緊張で鳴り止まぬ心臓を落ち着ける為なのか、はたまたその両方なのか、どんどんと胸を叩くひとり。

 

「……ゴリラ?」

 

 その様子を目の当たりにしたリョウには、ゴリラのドラミングに見えていた。

 アンプを繋いだひとりはギターを構える。

 

(演奏聴いたら二人共、驚くかも……ネットだと結構、いや割と評判良いし? 登録者数三万人だし? ……よし、やってやる!)

 

「それじゃ、行くよ!」

 

──続く




 よろしければ感想、評価、お気に入り登録をよろしくおねがいします!

ヒロインどうする?

  • ぼっち
  • 虹夏
  • 喜多ちゃん
  • リョウ
  • 星歌
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。