人見知りの魔法使いと気弱な剣士くん 作:SS好きのヨーソロー
『人工知能フラクトライト』
僕、こと長田伸一はテレビのニュースを見て目を見開いてしまった。
テレビに映る、金髪の少女アリス
その正体は、人工知能だというのだ。ちなみにインタビュアーが無茶苦茶失礼なことを述べていた。女の子に言うことじゃねえだろそれ
僕はそっと中指を当てましたとさ
「あ、こら伸一。だめよ中指なんて立てたら」
「仕方がないだろ?人工フラクトライト、人間ではないからって女の子に頭蓋を開いて脳を見せろー、って言ってんだぜ?まああの子自身言い返してたけど」
「確かにそれはひどいわね」
おい母親。注意したあなた自身も中指を立てるのかよ。
しっかしまあ
「はぁ、まーたかのキリト御一行の活躍かね?」
「あら、桐ヶ谷さんのところの?」
「そ。ほーんと、すごすぎて嫌になっちゃうね」
やれやれ、と笑いながら部屋に戻る。
部屋に置いてあるスマホを見ると、なんと着信履歴があったのだ。
「おいおい、桐ヶ谷さんからか?一体どうしたんだ?」
珍しいこともあるなと思いながら電話をかける。普段なら待たされるのに、今回は早めに出た。
『あ、長田くん!』
「おー桐ヶ谷さん。どしたー?」
『ちょっとね。ごめん、大丈夫だった?』
「ああ、ニュース見てたんだよ。なんだ、人工フラクトライトのアリスシンセシスサーティ・・・アリスちゃん?か、その子のニュースだけど。どうせ君のお兄さん関連だろ」
『そうそう!そのことよ!一緒にニュース見ないかな、って。いまダイシーカフェってところにいるんだけど・・・』
「おいおい、周囲の音から判断するに君以外に人がいるだろ。僕人と話すの苦手だぞ」
『もう、気にしなくていいのに!とりあえず変わるね!!』
「あ、ちょっ、おい!」
『・・・あー、変わったが。君、なんだか災難だな・・・?』
「同情ありがとうございます・・・あなたは声的に・・・失礼ですが、エギルという方でお間違い無いですか?」
『あぁ、そうだが知っているのか?』
「ええ、噂も耳にしてましたから。SAOでは販売業をしており、斧を使っていた。ALOからはその屈強な顔つきと凛々しい顔とは裏腹に親切でおり、密かに人気のある実力プレイヤーの一人。と言うふうには」
『おいおい、そりゃ照れる認知のされ方だな?
・・・無理に、とは言わねえが、知り合いに関しては大丈夫だと思うぞ。おそらくお前の知っているやつが多いだろ』
「逆を言えばキリトさんのパーティで遺憾無く戦える実力者が多いってことですが・・・もしかして、風林火山のクラインさんもいるのです?」
『お?おお、いるけど・・・』
「なんと!それは興味深い。そちらに訪問してもよろしいでしょうか?」
『き、急に乗り気だな君?』
「はは、すいません。刀には目がなくてですね・・・」
『あ、ちょっと、奪うな・・・おぉ!おめえ刀に目がねえとはいい趣味してんなー!来い来い!俺っちが語ってやろうじゃねえの!
って、ことみたいだ。・・・とりあえず、リーファからここの住所を送ってもらうさ』
「はい、わかりました。・・・バイクって大丈夫ですか?」
『ん?あぁ、大丈夫だぞ。壁にかけておいてくれればいい』
「了解です。では、切りますね」
失礼します、と言い切る。するとすぐに住所が送られてきた。
抑えきれない興奮を胸に、準備を済ませ向かうのであった。
バイクを走らせ、しばらく。目的のダイシーカフェ近くにやってきた。
「マップはこの辺りだけど・・・しっかし・・・」
どこを行けばいいんだ?と頭を抱えていると、肩を叩かれた。
ヘルメットを外すと、そこにいたのは綺麗な亜麻色の髪のお姉さんだった
「話すのは初めまして。・・・もしかして、レコンこと長田伸一くんかな?」
「・・・ええ。もしかしてそちらはアスナさん、でしょうか?」
「うん、そうだよ〜。よかった、お迎えしておいてよかったぁ。まったく、だから言ったのに・・・」
「はは、確かにこの路地は分かりにくい。
お気遣いありがとうございますアスナさん、助かりましたよ」
「ううん、気にしないで。さ、行きましょ」
ニコリと微笑むアスナさんを見て、キリトさんの足を踏みつけたくなったのは僕だけでは無いはずだ。
バイクを壁に立てかけ、鍵をかけてドアを開ける。そこには複数人がいた。
マスター(男)他客男男女女女女(桐ヶ谷さん)
横にいる女(アスナさん)
「キリトさんは一回真面目に呪われるべきでは・・・???」
第一声がこれなのは、正直許して欲しい。
「ち、ちょっと待ってくれよ。初手それはなしだろ!?」
キリトさんは何かええ?と項垂れていた。
「っははは!おめえ始まりの一声がそれとはなかなか面白えじゃねえか!」
ヒィ、腹いてぇとか言いながら頭にバンダナを巻いた人が机を叩く。
「おいおい、叩くな叩くな。・・・まあ、お前さんの気持ちもわからなくはねえぜ」
「まあそうねぇ、アスナはもちろん、シリカもリーファも、シノンも可愛いしねぇ」
「イヤイヤ鏡鏡。スマホのカメラで自分の顔確認しなさいよ」
たまにいるよなぁ、自分の顔の綺麗さ自覚してない人。許せん。許せないと言うか周りの男の見る目がなさすぎる。そいつら果たしてほんとに目が機能してんのか?
そもそも目があるかすら怪しい。・・・いや違うな、普通に可愛くて声かけられないだけだ。こういう子って大体サバサバしてるから不安になるよなぁ、わかるわかる。
まあそんな知り合いそもそもいませんがねぇ!!
「お、おう。へえ、あんたわ、私の見た目を理解してるなんてなかなかじゃ無い」
「あー、レコン!リズのこと口説いてる!」
「いやいや口説いてないツッコミツッコミ状況分析。てかまずリズさん?とは釣り合わないのもいいところだろ、自分の立場自覚しろってALOのやつら言ってくるぞ・・・え、僕の信頼、低すぎ・・・?
しかも、そもそもこのメンツで口説くって顔面偏差値キリトさん並に良く無いといけないんだよ?・・・この人顔良すぎるだよ性格も悪く無いし・・・前世なに?勇者か何か?何回か世界救ってるでしょ。なんなら時の勇者とか言われてません?マスターソードとか振り回してません?」
「どこのゼルダの伝説だよ!」
「ナイスツッコミ!ゼルダの伝説いいっすよねー。まあ僕風のタクトと時のオカリナとブレスオブザワイルドとかしかしたことないですけど。あと夢幻の砂時計とか?」
「チョイス謎だろ、神トラやれよ」
「うわー、なつかし、DS通信してやってたわ。
・・・いやチョイス本当に謎だな君?」
「・・・なかなかに、面白い子だな」
「楽しまないでください大人ぁ」
「はは、ヤケコーラでもするか?奢るぜ?」
「お願いします・・・」
「ははは、俺はウィスキー頼むわ」
「おい、いいのかよ?」
「ったりめえよ!ニュース見るためにわざわざ午後休取ったんだぜ、それにこいつは俺の仲間だからなー!」
「非モテ同士の仲間・・・!?嬉しいような嬉しく無いような・・・!ってかあんたもその割にはカッケェですよね!?なんならそこそこモテそうですよね!?」
「まあ、クラインは・・・な」
「クラインは・・・ねぇ?」
「クラインさんは・・・あはは」
「モテないわね」
「なんなんだよお前らぁ!?つかシノン!言い切るなよぉ!」
「あー、大丈夫っす、今のでクラインさんのキャラわかったんで」
「理解度が高えなおめぇ!?」
「女好きキャラでモテない的なムーブになってるけどかっこいいところはある。
ズバリ、いわゆる残念なイケメン枠ですね?」
満場一致で拍手が起きました。
「まじで理解度高えなおめえ・・・・・・認めたくねえのにな・・・ははっ」
がっくし、と項垂れるクラインさんについ苦笑いする。
ちょうどコーラが届いた。
「まぁまぁ、モテない僕のためにも乾杯してくださいよ、ね?」
「おう、もちろん。刀好きのよしみだぜ!」
「「乾杯!」」
「あー!ねえねえ、えっと・・・」
「あ、まだ名前すら言ってませんでしたね。僕は長田伸一。ALOではレコンです。
名前の呼び方は・・・呼びたい時に好きな方で呼んでもらっていいですよ」
「あ、じゃあ今はレコンって呼ぶわね。レコン!私たちと乾杯しましょうよ」
「え、乾杯ですか?」
「そうよ。・・・なに、嫌なわけー?」
「いやいや、そうじゃなくて。する理由が」
「うっさいわねー!そんなの気分でいいのよ気分で。ほらみんなもグラス構えて!」
「はは、諦めろレコン。この時の彼女は行動力最高だぞ」
「そこ、聞こえてるわよ?・・・まあいいわ。乾杯!」
「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」
「いやぁ、まさかレコンにまた会えるとは思ってなかったよ。まさか初手であんなこと言われるとは思わなかったけどな」
「仕方がないでしょう。顔よし性格よしやってることヒーロー、そんなやつが知り合いにいて呪わないほうが変ですって。首かきむしりますよ」
「え、こわ」
「雛見沢症候群じゃねえか。多分今の子わからんぞ」
「・・・YOUくらいはまだ分かりません?」
「あ、あの曲いいですよね。よく聞いてます」
「ひぐらしよね?・・・ウッディウッディしかわかんないわ」
「んーとりあえずリズさんとは仲良くなれそうですわ」
「というか、俺も自分の力だけじゃできてないよ。あの時も、それこそレコンに助けられたしな」
「へ?あの時?何かしましたっけ」
「・・・世界樹の時のことさ。あの時、レコンがいなきゃ」
「そんなことはない。・・・別に僕があれをしたから何かなったわけじゃない。リーファちゃんは突然の動きに戸惑ってた。あの時はむしろ僕の行いは間違っていた。むしろ謝らないといけないのは」
「オイレコン」
すると、デコピンを食らった。
「っつぅ、なにすんですかクラインさん」
「悪いな。だがこれは甘んじて受け入れろ。
・・・一つ、説教垂れてもいいか?」
「・・・ええ」
「お前さんのしたことは聞いた。
効果がどうだったか、役に立ったか、そんなことは知らねえ。けどなお前。お前あれ使うのにペナルティがなかったとは言わせねえぞ。それも自爆魔法は通常のデスペナルティより何倍もの、取り返すのを諦めたくなるほどのものを失ったはずだ。それをした時の気持ちはなんだった。リーファっちを、キリの字を先に進めるためだろ!?
それを否定するな!それを否定するってのは、昔の自分を否定することになるんだぞ。おめえ自身がおめえを否定してどうする。おめえを認めてやれるやつがいなくてどうする。今のお前がいるのは昔のお前がいたからだろ?
つっても、ここはみんな認めてるがな。むしろ尊敬するしてるぜ」
「・・・私からも、いい?
レコンくん、ありがとう。本当にありがとう。あなたが手伝ってくれたおかげで成功確率が1%でも多く上がった。そのおかげで私、またキリトくんと出会えた。
だから、お礼を言わせて?・・・本当に、ありがとう。レコンくん」
「俺からも言われてくれ、レコン。あの時俺たちがしたのは無謀なチャレンジだった。
お前はALOをしてたから成功確率が低いのは知ってたろ?それなのに手伝ってくれた。それに感謝してるんだ。お前がなんて言うか分からないけど、あの時は一緒に戦った仲間だ。
ま、我儘いうと今も同じ仲間だとは言いたいところなんだけどな?」
「・・・はは、あんたはお人よしだが、パーティメンバーもそりゃこうなるよな」
「なーに言ってんだ、おめえだって似たようなもんだろ。俺たちと同類だぜ?」
「そうそう、俺がお人好しって、あの時ついてきたお前だってお人好しじゃないな。お人好し同士、似た仲間だな」
にっ、と笑いかけてくるキリトさん。
最初から、居場所はあったのかもしれない。
最初から、認められていたのかもしれない。
自分が、勝手に逃げていただけかも知らない。
あの時のことは、決して無駄ではなかった。
今この瞬間があるから。
今この時、出会えているから。
あの時の失敗が、後悔が。
今を作ってくれた。
強くなれた、その上であの後悔も認めてくれたのだ。
一言で表せば、あったかい。これに尽きるのではないだろうか?
「・・・これからどうかよろしく頼むぜ?」
「はは、そりゃこっちのセリフですよ」
互いに手を握る。
夢のまた先、ありえないと思い込んでいた光景が今この瞬間、こうして目の前に広がっている。
これまでの自分を否定する必要はない、認めてあげるだけでいいのだ。
「にっしし、やっぱこうじゃねえとな?」
にっ、と笑うクラインさんにこちらも釣られる。
「でも、レコン全くログインしてなかったから驚いたわよ」
「ん?ああ、確かにそうだったね。最近は別のゲームに集中してたからさ」
「別のゲーム?」
「そうそう。NeoFantasyOnline。通称NFOさ」
「あ、それ聞いたことある!」
「久しぶりのMMORPGでな、懐かしいとも思うよ。今後VRも連動するって聞いたことあるし」
「へえ、そうなのか!そりゃいつかやってみたいな」
「はは、そんときは付き合いますよ?」
「お、頼んだよ。」
こんな交流はなかったのかもしれない。
ただ、悪くはない。そう思えた自分もいたのだった。
少しの嬉しさを含みながら、僕はダイシーカフェを後にしたのだった