人見知りの魔法使いと気弱な剣士くん 作:SS好きのヨーソロー
りんちゃんとあこちゃんとのリアルでの出会い、そしてNFOのイベント参加。
その途中で出会ったキリトくんたちとの交流やハロー、ハッピーワールド!との出会いとライブは自分の中で、大きい経験になった。
世界樹の頃の雪辱を、あの頃の自身に対する無力さの苛立ちや不安に一つの安らぎを与えてくれた。
進む勇気がなかった僕に、一歩踏み出すことを教えてくれたのだ。
「・・・人との交流は、こうも自身を強くしてくれるのか」
前まではマイナスに捉えることが多かったが、今は前向きに捉えられるようになってきた。
せっかくの僕の人生なんだ。楽しまないと損ってやつだ。
そのスタンスで、僕は今日もバイトに勤しんでいた。
「伸一くん、何かいいことあった?」
「え?まりなさん、急にどうしたんですか?」
「いやね、最近の伸一くんすごい生き生きしてる、っていうか積極的に取り組んでるなって。あ、前々から不真面目だったわけじゃないんだけどね?今は特にやる気に満ち溢れている!って雰囲気がしてさ」
「・・・はは、顔に出てるのは少し恥ずかしいですね。
前にRoseliaの宇田川あこちゃんと白金燐子ちゃんとNFO・・・NeoFantasyOnlineっていうネットゲームのイベントに参加して、そこで偶然僕の友人と会って共に協力したんです。その時にハロハピのライブを一緒に見ることがあって。
結構積極的に動いて、とても充実した1日を過ごせたから、僕自身やる気が湧いてきちゃって」
「そうだったんだ、やる気があるのはいいことだよ!向上心があると仕事は一気に楽しくなるからね!」
「・・・えぇ、まりなさんのいう通りです」
ニコリと微笑む。この人の言うことが理解できたからだ。
すると、利用していた人達が出てきた。
「あ、次の予約したいんですけどー・・・」
「はい、今伺いますね。少々お待ちください」
必要書類を手にカウンターへ行く。
そこにいたのはPoppin'Partyのドラム、山吹沙綾ちゃんだった。
「あ、長田くん。こんにちは」
「こんにちは山吹さん。今日もお疲れ様」
「あー!伸一せんぱーい!やっほー!」
「あはは、相変わらず元気があって良いね戸山さん」
明るいハキハキした声で僕の名前を呼ぶ女の子はPoppin'Partyのギターボーカル戸山香澄ちゃん
「えへへへへ、褒められちゃったー」
「褒められちゃったじゃねーよ!他に人いたらどうすんだ!」
「あはは、問題ないよ市ヶ谷さん。今は空いている方だからね」
「そ、そうですか?なら良いんですけど・・・ってよくねー!」
このように反応の面白いツインテールの子が市ヶ谷有咲ちゃん。Poppin'Partyのキーボード担当だ。
「あ・・・な、長田先輩・・・これ、ありがとうございました。とっても面白かったです」
「あぁ、楽しんでもらえてよかった。続編も父さんが持ってるってさ、また貸しにくるよ」
ホラー映画のDVDを手渡してきたショートカットの子がPoppin'Partyベース担当牛込りみちゃん。
「先輩先輩、これ見て。おっちゃん」
「はいはい近い近い。・・・お、これ新しい帽子かい?とても似合ってるね」
「ふふふ〜。さすがよくわかってる。これ作ったんだ」
「へぇ、手作りか。すごいね」
飼いうさぎの写真を見せてくれるこの子Poppin'Partyギター担当花園たえちゃんだ。
「・・・すごいなぁ伸一くん、もう馴染んでるの?」
「いや、ここはみんなが積極的に話しかけてくれるからですよ。特に、ね?」
戸山さんの方を向くが、目があってもなんのことだ?と首を傾げるだけ。その様子がなんだか想像していたのと一致しすぎてつい笑ってしまう。
「えー!?ちょっとー、先輩に笑われたぁ!」
「あはは、ごめんごめん。悪い意味じゃないよ」
「ほんとー?」
「ほんとさほんと」
「えへへ、ならよし!」
なんとかお許しをもらえたようだ。
「あ、そういえばさ!前燐子先輩とあこと出かけてたよねー!」
「ん?あぁ、見られてたのか。ゲームのイベントに参加したんだ」
「え、ゲーム!?」
「あぁ。NFO・・・NeoFantasyOnlineというMMO RPGのネットゲームさ。面白いとは思うからよかったら試してみなよ」
「わー!ねえねえ有咲!やってみよーよー!」
「は、はぁ?なんで急に・・・・・・」
「むー・・・有咲は嫌ぁ?」
「っ・・・別に、嫌じゃねえよ」
「あはは・・・相変わらずの仲だね。ご馳走様」
「わー!長田先輩!変なこと言うんじゃねー!」
顔を真っ赤にして怒る市ヶ谷さん。けどなぁ?
それもう、もはや見せつけられてるもん。ブラックコーヒーとかがないと甘すぎて胃もたれ起きる。
ちなみに他の人は苦笑いしてたよ。ハハッ!!
次の日、バイトもない僕はのんびりと一人帰路に着いていた。
近くの公園では、子どもの声がする。
あぁ、懐かしいなぁ・・・昔はよく公園で遊んでいたっけ。あの時の僕たちってのは、なんでこう元気が溢れていたんだろうなぁ・・・
つい興味本位で公園に寄ることにした。
あぁ、なんだろう・・・ブランコに滑り台、そして砂場。
子どもの時はあれほど大きく見えていたのに今じゃ小さく見えてしまう。それも自分が大きくなったということだろう。
やっぱりどの公園も似たようなもんなんだなぁ・・・と感慨深い気持ちでいると、なぜか泣き声が聞こえた。
ついその声が気になりそちらの方を向く。
すると二人の子供が見えた。よく見ると女の子の方が泣いており男の子は木に登っている。
木の方を見て何事か察した。
枝に挟まったボールを取ろうとしているのだ。勇敢な少年だが、運悪く手を滑らせている。
「危ないっ・・・!!」
カバンを投げ捨てると勢いよく走る。ぶつかる、ぶつからないを考えていちゃ間に合わない。そうするとあの子が怪我をしてしまう!!
「うわぁぁっ!!」
「お、お兄ちゃん!!」
「間に合えッ!!」
勢いよく飛ぶ。手を伸ばし、その少年を掴むと一気に回転し抱きしめると共に背中から地面に滑り込み、衝撃を和らげる。
砂塵が舞い置き、視界が悪くなる。
しばらくして砂塵が収まるとゆっくりと腕に抱き締めた少年を確認する。
少年はびっくりした顔をしているが、目立った怪我はなかった。
「・・・よかった、間に合った・・・のか」
無我夢中で動いたから、一気に動悸が早くなる。身体が行動に追いついていないのだろう。火事場の馬鹿力とはよくいったものだ。
「お兄ちゃん!!」
「・・・君は妹ちゃんかい?大丈夫。お兄ちゃんは目立った怪我はないよ。
君、どこか痛むところはあるかい?」
「え、あ・・・ない」
「そうかそうか、それはよかった・・・っと、失礼」
その子を下ろすと、スッと立ち上がり砂ぼこりを落とす。
自身の腕を見ると、微かに腕に擦り傷ができてしまっていた。
若干の血も滲んでしまっている。家に帰って血を流したら絆創膏を貼らないとな・・・。
「あ、でも・・・兄ちゃんが怪我を・・・」
「ん?あぁ、僕のことは気にしなくて良いぞ。君たちが何もないのが何よりだ」
「・・・ごめんなさい」
「はは、あのボールをとりたかったんだね。妹のために頑張る姿はいいお兄ちゃんだが、もし怪我をしてしまったら悲しませてしまうから気をつけないと。
こういうのは年上に任せりゃ良いのさ。・・・例えば、っと!」
片足を木に当て、それを踏み台にしジャンプする。枝にぶら下がれば本体に足をつけながら起き上がった。
「こう言うふうに、大人に任せれば良いのさ。ほいっと」
ボールを触って地面に落とせば自分も降りる。
その一連の流れを見ていた二人は、嬉しいことに目を輝かせていた。
「かっこいい!!」
「ありがとう。けれど危険だから真似はダメだぞ?」
「わかってるよ。・・・さっきので経験した」
「ならよし!えらいぞ」
ガシガシ、と頭を撫でれば照れくさそうにする様子を見てつい微笑む。
妹や弟がいればこんな感覚なんだろうな、と思っていると妹の方が声を出した。
「私、そういえば名前言ってないよね。初めまして、山吹紗南です!さっきはありがとうお兄ちゃん!」
「・・・俺も、さっきはありがとう兄ちゃん。・・・山吹純です」
「純くんに紗南ちゃんな、どういたしまして。僕は長田伸一だ。好きなように呼んでおくれ」
「じゃあ、伸一お兄ちゃんって呼ぶ!」
「お、俺も・・・いい?」
「ふふ、さっきも言っただろう?君たちの好きなように呼んでおくれって。君たちが呼びたいなら伸一お兄ちゃんって呼んでくれていいよ」
こんな可愛らしい子たちにお兄ちゃん、と呼んでもらえるのだ。嫌な気分になるわけがない。
おっと、下心はないからな?通報されそうで怖いけど。
「えへへ、ありがとう!」
「・・・あり、がとう」
つい二人の頭を撫でる。
すると、少し離れた方から二人を呼ぶ声が聞こえる。
「あ、おーい!純ー、紗南ー!」
よく見ると、それは知っている人だった。
・・・やっぱり、血縁者だったか。
山吹という苗字を聞いてまさかとは思っていたが。
二人はというと、お姉ちゃんがきてくれて嬉しいのだろう。手をブンブンと振っている。全く元気があっていいものだ。羨ましいぞその元気。
「・・・ってあれぇ?長田くん?なんでここにいるの?」
「やあ山吹さん。偶然だね」
「姉ちゃん姉ちゃん!伸一兄ちゃんすげえんだぜ!木の上に乗ったボールを取ってくれたんだ!すげえ格好良かった!」
「へぇ、そんなことがあったんだ・・・ありがとう長田くん」
「いやいや気にしないでおくれ。たまたま僕がその場にいて反応しただけだから」
「・・・あ、でも、俺・・・最初ボールを取ろうとして木から落ちちゃったんだ。
そん時、伸一兄ちゃんが助けてくれたんだけど・・・兄ちゃん、怪我しちゃって・・・」
「そんなことがあったんだ・・・純?ボールをとりたい気持ちはわかるけど木は危ないよ。純が落ちたら軽い怪我じゃ済まなくなるもん」
「うん・・・ごめんなさい」
「あー、まあまあ。姉弟のことに口を出すのは良くないとは思うんだけど、まあ大目に見てやってくれ。僕もきちんとそのことは説明したし、純くんもちゃんと反省して謝ってくれたもんな。
それに、妹のために頑張ろうとしたんだもんな?」
「う、うわぁ!やめてくれって!撫でんな!」
「はっはっは、素直になれ素直にー!」
弟分は可愛いものだ。つい頭を撫でてしまう。
「・・・っはは。長田くん、なんかお兄ちゃんって感じがする」
「そうかな?・・・まぁ僕は君らよりは年上ではあるしさ」
「じゃあ1番上のお兄さんですね!」
「歳の近い兄妹は想像したことないなぁ。僕の友人にそんな人がいるけど・・・」
「とりあえず、長田くん。私の家寄ってってよ。治療していくし」
「いいよこんなの。別に大したことじゃないって」
「純と紗南に悪影響ですー。それにもうちょっと伸一お兄ちゃんと一緒にいたいよねー?」
「うん!いたい!」
「・・・まあ、その・・・うん」
「・・・はは、慣れないな。じゃあ山吹さん、せっかくだしお言葉に甘えて」
「だーめ!」
「へ?」
「せっかくなんだし、私も下の名前で呼んでくださいよ。二人だけ名前なのに私だけ苗字って寂しいし?」
「・・・そういうものなのか?まあよくわからないが、嫌じゃないならいいか。
とりあえず、沙綾ちゃんの家で手当てをしてもらってもいいかい?」
「ふっふーん、任せてください!伸一お兄さん?じゃ、二人とも帰ろっか」
「・・・全く、慣れないものだ」
「あ、私手繋ぎたい!」
「おー、いいよ」
「わーい!」
「お、俺も!」
「おう、こっちの手をどうぞ」
とのことで紗南と純の手を握り進むことになった。
先陣を沙綾が切り、その後ろを進んでいく。
しばらく進み続けると、ちょうどパンの焼ける匂いがしていた。
それと同時にお腹の音が鳴ってしまう。
「あ。お兄ちゃんお腹なったー」
「・・・恥ずかしいなあ。お腹すいちゃってさ」
「もう直ぐですよー!あ、お父さん!ただいま!」
前方を見るとガタイの良い見た目とは裏腹に、温厚そうな顔つきのダンディな方がいた。
エギルさんやクラインさんとはまた違ったイケおじ的な人だろう。
「おかえり沙綾、紗南、純。・・・君は」
「初めまして。僕は長田伸一と言います。ライブハウスCiRCLEという場所でアルバイトをしており、山吹さんとはそこで知り合いました」
「そうだったのか、いつも沙綾が世話になっているね。君が長田くんだったか」
「・・・知っているのですか?」
「あぁ、親しみやすいというふうにね。君、その腕の怪我は・・・」
「ああ、実は今日こんなことがあったらしいの」
「そうだったのか、純を守ってくれてありがとう。それは手当てをしないとな」
「すいません、お世話になります」
「気にしなくていいよ、せっかくだ、夕食も食べていけばいい」
「え!?さ、流石にそれは申し訳ないですし・・・」
「純と紗南が懐いているからな。二人も伸一くんがいると嬉しいだろう?」
「嬉しい!」
「・・・うん」
「・・・な?ま、世話になってくれ」
「ではお言葉に甘えて・・・」
ご厚意により、夕食までご馳走していただけることになった。
テーブルの上にはパンが並んでいる。
「話は聞いているわ。ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます。・・・美味しそうなパン」
「うちのパンですから!美味しいよ!」
「・・・パン屋さんか。あぁ、そういえば見たことあるよその紙袋。クラスメートが食べてるのもそれだったはず」
「えへへ、学生さんが多いからねぇ。伸一くんもきてよ!」
「あぁ、ぜひそうさせてもらうよ」
「あらあらー、沙綾にも春かしら?」
「ちょっと!変なこと言わないでよお母さん!」
「はは、そうですよ。彼女にはもっといい人がいますって」
すでにファンに目をつけられてそうで怖い、そのうちどっかしらからナイフでも突きつけられるんじゃないだろうか・・・
刺されるほうが好きか?なんちゃって。氷室さんってかっこいいよなぁ・・・
「もー!伸一くんは伸一くんで自虐禁止!香澄に聞かせるよ!?」
「おっと、彼女のことだいいところとか語ってくれそうでむず痒い」
「でしょ、ならやめる!」
「善処するよ・・・」
なんだろう、彼女は直葉ちゃんと似ていて芯が強い。だからか自然といられるのだ。
「ふふ、それじゃあご飯にしましょっか」
沙綾のお母さんの一声で夕食をいただく。
そこで食べたパンは、何よりも美味しかったのは言うまでもないだろう。
「では僕はそろそろ帰りますね」
「ごめんなさいね、食器洗い手伝ってもらっちゃって」
「いえ、お母様のことは以前聞いたことがありましたから。
まあせっかく沙綾ちゃんと純くんと紗南ちゃんとも仲良くなれましたし、手伝えることがあったら言ってくださいね」
「ほんと、沙綾をもらってくれたらいいのに・・・」
チョットー!キコエテルヨ!
「・・・ははは」
「・・・それとも、伸一くんは好きな子がいるのかしら?」
「・・・・・・今のところは、まだわかりません。そう言ったことには疎くて」
「まあまあ、学生の時代は私も悩みに悩んだわよー。人間悩みに悩んでなんぼってものよ!頑張ってね!これからも娘たちと仲良くしてあげてね。」
「ええ、もちろんです。頑張ってみます。
では、失礼します」
ぺこりと頭を下げ歩き出す。
好きな人、か。
その一言が、どうしても頭に残ってしまうのだった・・・・・・